「おや、目が覚めたようだね」
「・・・っ」
「ああ、治療の影響でしばらく声が出ないから。一応そこにノートとペンがあるから何かあったら使うといいよ」
「・・・」
「あと君の身体に関してだけど、火傷や傷なんかは治すことができたけど、腕や眼は完全に消滅してたからデバイスに頼ってもらった。見た目は気にしなくてイイよ。ただ機能面では君の能力に頼り切りだから、もし能力が使えなくなったら、動かなくなってしまう」
「・・・」 コク チラッ
「あの少年が気になるかい?」
「・・・」 フイッ
「心配しなくてもこの部屋の前にずっと居るよ」
「!!!」 カキカキ
『会いたくない もう関わりたくない』
「そうかい。あぁあと暗部組織の事だけど、もうあんな仕事しなくてもいいから。君はもう普通の生活に戻れるよ」
『どういうこと なんでそんなことがあんたにわかるの』
「まあ僕の仕事は患者の要望に応える事だからね。頼まれたんだ。"アイツを助けてやってくれ、普通の女の子にもどしてやってくれ"ってね」
「・・・っ」
「彼もなかなか変わった人だね。自分もボロボロになってるのに他人の心配ばかりしてる」
「・・・」
「じゃあ僕はもう行くよ。新入りナースとランチの約束があるから。杖はここにおいておくからね」
カエルの顔をした医者が出て行ったようだ
私は顔を拭い、杖を手に取った
部屋を出るとすぐ前のベンチで眠りこけていた
私はどうしたらいいのかわからなくなって、とりあえず隣に腰掛けた
となりの少年を見る
ツンツン頭が規則正しく揺れていた
私はこれからどうすればいいんだろう
居場所はなくなった
いつ裏切られてもいいと思ってたのに
もうずっと化け物でいようと思ってたのに
宙ぶらりんになってしまった
1人がつらくなってしまった
私はいつの間にか彼の手を握っていた
それに気づいて離そうしたら、彼はしっかり握って離そうとしてくれなかった
彼は私に恐怖とか奇異とか憎しみとか哀れみとかそういうものを一切向けなかった
まっすぐ私を見据えてた
拳だけを握って化け物の私に向かってきた
そして泣きそうな顔をして私を打ち砕いた
これからどうすればいいんだろう
許されない事をたくさんした
もう他人を信用なんてできないかもしれない
でも1人は怖くて怖くて仕方がない
握ったままの彼の右手は暖かい
涙が止まらなかったけど
私はこの手を離すことができなかった
889 : VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] - 2010/07/03 15:29:05.07 KECZHvI0 3/3むしゃくしゃしてやった
盛り上がりに欠けるのはご愛嬌で
麦野報われてほしい…