373 : ホットケーキ ◆YPHCWg3Zr2[saga] - 2010/08/02 20:00:15.27 yTJmnRc0 1/10
電磁通行ばっか書いてんじゃねぇ!!と言われたので、チビチビ書いてた通行止めを投下。短いけど。
数年後を想定して下さい。
トントントン。
そんな何かの音がする。
音がしているのはとある人物の指とテーブルの接触部分。
白い指が木製のテーブルに叩きつけられる度に、乾いた音が鳴る。
「……貴方、もう少し落ち着いたら?」
「無理」
そんな"彼"を見て"彼女"はため息を吐いた。
落ち着かない気持ちも分かるが、何もそんなにそわそわしなくてもいいだろうに。
ため息を吐いたことを若干後悔しつつ、彼女はまだ落ち着かない彼に話しかけた。
「そこまで速攻即答大否定しなくても……」
「無理なもンは無理なンだよ。指が勝手に動く」
トントントン。
叩く音は止まない。
音を止めるのを諦めた彼女は、話でそれを誤魔化すことにした。
「でも……貴方のスーツやっぱり似合ってるよ。センスいいね」
「今更かよ……それにこいつはオマエの姉がほぼ強制的に着せやがったヤツだ。俺ァ選ンでねェ」
首元に右手を当てながら、彼は忌々しそうに答える。
彼の姿は細い体にピッチリした黒いダークスーツ。彼の肌が白い分、黒とのコントラストがもはや芸術的だった。
「あの野郎……三下に振られてから、オマエに肩入れしすぎだろ……」
「お姉様なりの応援と、自分みたいに泣くような結末にさせたく無かったからじゃない?」
「……」
トントン…………。
にっこり微笑みながらの彼女の言葉に、彼の指が止まる。
カタン、と自らが座る椅子の背もたれに寄りかかり、彼は天井を見上げる。
だが、その瞳は閉じられている。
「なァ……?」
「なぁに?」
「ホントに、オマエ良いのかよ……?」
「うん」
彼のその問いに、彼女は間髪入れずに即答した。
言葉はしっかりと発せられており、其処に迷いなど一片たりとも感じられない。
返答が気にいらなかったのか、彼はチッ、と舌打ちを一つ。
「舌打ちは酷いんじゃないかな?」
「オマエ等のバカさ見てたら舌打ちの一つでもしたくなるっての」
どいつもこいつも……と彼は記憶の中の人物達が自分と彼女の仲を進展させようと頑張っていたことを思い出し、苛立つ。
「貴方への気持ちを一回拒否された時、お姉様達が居たから今がある」
「オイオイ、俺が悪いってか?普通拒否ンだろォ」
一万三十一人を虐殺した男ーー
それが、彼の最大の罪。
目の前の彼女と似た姿形をした少女達を、彼は殺しまくった。
闇の世界の、最悪な、クソったれの悪党。それが、彼。
対して少女は違う。
光の世界の、普通に笑う権利がある、一般の少女。
今でも思う。
彼女は何故、自分を好きになったのかと。
何故自分は、好かれてしまったのかと。
何故自分は、彼女を好きになってしまったのかと。
「答えは既に出ているんでしょう?」
「……まァな。あンだけ殴られりゃ、な」
数年前のことを思い出し、彼は苦笑する。
思えば随分やられまくった。あれは知り合い全員に殴られ、説教されたのだったか?
彼が三下と呼ぶ男、超電磁砲の少女にそのクローンの一人、父親母親。変態テレポーター。
次は白いシスターに赤髪の神父、ジーンズ女。黒髪女、AIMの女、槍使いの女。
仕事仲間のシスコンショタコンストーカー。
黄泉川に芳川、小萌などといった教師陣。
正直、あそこまで拳と説教のオンパレードがあるとは思っていなかった。
だが、それらのお陰で、彼は今ここに居る。
それだけは、絶対に未来永劫何があっても変わりない。
トントントン。
「あー、またトントンし始めた……緊張しすぎ」
「そういうオマエだって、
語尾のアレはどォした?」
「はうっ!?いや、それはって"ミサカ"は"ミサカ"はお茶を濁してみたり……」
「どォせ、緊張してたせいだろうが」
「うぐっ!ミサカはミサカは言葉が詰まったり……」
ニヤニヤと、意地悪な笑みを浮かべる彼に彼女は頬を膨らませる。
そんな怒りの姿さえ、可愛いく見えるが。
「後、服、オマエも似合ってンよ」
「……!有難う!ってミサカはミサカは笑顔で答える!」
普段余りない、彼の褒め言葉に彼女の頬も自然と緩む。
バカ正直な彼女の心の動きに彼は小さく、見えないくらい小さく、優しく笑った。
「でもね、この"ドレス"に着替えてる時にあの上条って人が部屋に入って来たの、ってミサカはミサカは特徴的なツンツン頭を思い出しつつ報告してみる」
「よし、オチ読めた」
「思いっきりあの子にビンタ喰らってた……空中で三回転くらいしてたよって、ミサカはミサカはリアル竹トンボにゾッ、としながら言ってみたり」
「俺も後で四回転、いや五回転くらいさせっかァ……」
あの不幸不幸うるさいラッキースケベ野郎をボコすと彼は決めた。
そして、椅子から立ち上がる。
「そろそろ行くぞ」
「杖は?ってミサカはミサカは立ち上がりながらも尋ねてみる」
「邪魔だからイラネ。どォせ電極は一時間持つンだ、心配ねェだろォよ」
彼は、手を彼女に差し出す。
彼女はその白い、女性と思われる程綺麗なその手をしっかりとつかみ、
「じゃァ行くか、打ち止め(ラストオーダー)」
「行こう、一方通行(アクセラレータ)」
知り合い達が大量に待つ、『結婚式場』へと向かい始めた。
黒いスーツが光を弾き、白いドレスの裾が揺れる。
まだセミが鳴く、八月三十一日のことである。
383 : ホットケーキ ◆YPHCWg3Zr2[saga] - 2010/08/02 20:07:53.82 yTJmnRc0 10/10
短いですよね、さーせん。
この結婚式の何年か前には一方通行と打ち止めの恋愛話があるんですが、思いっきり長くなるんで止めました。
あれです、一方さんが打ち止めの告白断って、そこから始まる一ヶ月ぐらいの恋愛ストーリー。
正直、妄想の段階でやばい。なんか色々やばい。
あっ、上条さんと結婚してるのはインデックスさんです。
ビンタで三回転させたのもインデックスさん。