204 : 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします[sage] - 2010/12/06 18:18:50.55 wkIFHe.0 1/11

規制に巻き込まれたのか、結局投下できずしまいでした。
長々と使ってもアレかと思い分割したのですが、まとめて投下でおKとのことでしたので、お言葉に甘えさえて頂きます。長いですが、ご容赦を。


※関連

佐天「嫁にして下さい」一方通行「ゴメン、ちょっと待って」
http://toaruss.blog.jp/archives/1017049672.html

佐天「嫁にして下さい」一方通行「ゴメン、ちょっと待って」2
http://toaruss.blog.jp/archives/1017049711.html

佐天「嫁にして下さい」一方通行「ゴメン、ちょっと待って」3
http://toaruss.blog.jp/archives/1017473718.html

佐天「嫁にして下さい」一方通行「ゴメン、ちょっと待って」4
http://toaruss.blog.jp/archives/1017474484.html

佐天「嫁にして下さい」一方通行「ゴメン、ちょっと待って」4.5
http://toaruss.blog.jp/archives/1017475828.html

佐天「嫁にして下さい」一方通行「ゴメン、ちょっと待って」5
http://toaruss.blog.jp/archives/1017476222.html

佐天「嫁にして下さい」一方通行「ゴメン、ちょっと待って」6
http://toaruss.blog.jp/archives/1017805378.html

元スレ
▽ 【禁書目録】「とあるシリーズSS総合スレ」-18冊目-【超電磁砲】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4gep/1291435546/
205 : 佐天「嫁にして下さい」一方通行「ゴメン、ちょっと待って」7[saga] - 2010/12/06 18:24:28.92 wkIFHe.0 2/11

今日の買い物はやめにしよう、そう無理矢理結論付ける。



「きゃッ」


ドンという衝撃とバサバサと本が落ちる音。

佐天は慌てて本を拾っていく。


「あ、あの、ごめんなさい。私考えごとしてて」

「いえ、私の方こそよそ見してたから」

ぶつかってしまったのはよくよく見れば佐天とあまり年の変わらぬ少女だった。細いラインに、グラマラスな身体。

髪を二つに結んだ少女は、一つか二つくらい年上だろう。

整った顔立ちは、子供っぽさが抜けつつあり、可愛いというよりも綺麗と称されるものだ。自分には無い大人っぽさに目を奪われる。

佐天は拾い上げた本を整える。自然と表紙が目に留まった。


「お料理好きなんですね?」

「え?」

「あ、ごめんなさい。いっぱい料理の本買ってるなって思って、つい」

少女は手渡された本を受け取ると、困ったように眉間に皺を寄せる。

「まだ好きって言えるレベルじゃないんだけどね。目下練習中っていうところ」

「ああ、だからそんなにいっぱい買い込んでるんですか」

カートに乗せられた二つの買い物かごに目が行く。

一人分の食料には見えない。


「って私、いきなり会ったばかりなのに何立ち入ったこと言ってるんだか。気を悪くさせちゃったらごめんなさい」

「ううん、いいのよ。そういう貴女も買い物かしら?見たところ何もまだ買ってないみたいだけど」

少女の目線の先には空の佐天のかご。

「あはは、冷蔵庫の残り物でまだまだいけるなぁ~って気づいちゃって。今野菜高いし節約しないと」

本当は習慣と一方通行に食事を作りに行くつもりで来ていただけなのが、それを初対面のこの少女に話しても意味が無い。

少女は、佐天の言葉に少しだけ驚いた顔をする。何をそんなに驚いているのだろうかと首を傾げる。


「貴女って見たところ中学生みたいだけど、残り物とか作って料理出来ちゃう人?」

「え、ええ。まぁ」

「もしかして、料理得意だったりする?」

「得意かぁ…そうですね。一通りは作れますよ~」


事も無げに放った言葉は少女にとっては衝撃であったのか、口元ひくつかせる。

「一通りは…って、あっさり?そんな当然のスキルなの?」自分で呟いた言葉にダメージを受けたのか肩を落とす。


206 : 佐天「嫁にして下さい」一方通行「ゴメン、ちょっと待って」7[saga] - 2010/12/06 18:25:36.44 wkIFHe.0 3/11


「そっか~……そうね、貴女いかにも家庭的っぽいものね。料理なんて簡単なんだろうね」

「えっと、どうかしたんですか?」

「…気にしないで。ちょっと自己嫌悪に陥ってただけだから。野菜炒めすらまともに作れないだけだから」


気にするなという方が無理な話だと言いたくなるほどにわかりやすくしゅんと項垂れる少女。

なにやらナーバスになるような切実な問題であったのだろう。佐天は急激に罪悪感に駆られる。

自分よりも大人びた少女が子猫のように項垂れる様は、一層痛ましい。こうなってしまっては、放っておけない。

佐天の世話焼き属性がムクムクと頭を擡げる。



「あぁ、あのですね。いきなりかもしれないけど、もしですよ?もし、よかったら何ですけど私で良かったら聞きましょうか?もしかしたらお役に立てるかもしれないし」

「役にって…料理の?」

佐天はにっこりと笑い、頷く。

「人の経験談って案外参考になるんですよ。ちょっとした失敗を直すだけで料理って結構味とか変わってきますし」

少女の瞳が驚きに丸くなる。

「いいの?本当に」


「ハイ、お姉さんが宜しければ。私も……ちょっと予定が無くなっちゃってて。だから全然オッケーですよ。あ、私、佐天涙子っていいます」


期待を瞳に秘め、少女がおそるおそる伺う。これではどちらが年上かわからないなと佐天は苦笑する。


「そっか。私も用事済んじゃったから大丈夫だよ。私は結標。結標淡希。よろしくね、佐天さん」


二つ結びの少女 ――― 結標淡希は何か慣れぬ事をするように頬を染めて、微笑む。

美人は笑うと更に美人なのだなと、佐天は感心と共に内心羨望の念を抱いた。

207 : 佐天「嫁にして下さい」一方通行「ゴメン、ちょっと待って」7[saga] - 2010/12/06 18:27:04.99 wkIFHe.0 4/11


「結標さん。受け取ってくれませんでしたね、小悪魔ドジメイド」

「そうだにゃー。一体何が行けなかったのかにゃー色使いか?いや、レースが足りなかったのか?」

「露出が足りなかったのでは?」

「そ・れ・だ!」


結標によって引き裂かれたドジメイド衣装を自前のアステカ式ソーイングセットからアステカ式縫い針とアステカ式縫い糸を取り出しちくちく補修する海原。

隣りでは土御門がテーブル一面に様々なデザイン案を広げている。

ゴスロリ仕様からビッチ仕様、本場英国メイドまで。

この男にこれほどの絵心があったのか、と上条当麻が見ていれば驚愕に震えずにはいられないだろう。


「それにしても意外でしたよ。貴方がまさか結標さんを応援するなんて」

「何言ってるにゃー。土御門さんは恋する乙女諸君の味方なんだぜい。まぁ、それ以上にメイドさんの味方であり、妹と呼ばれる者の味方であるんだがにゃ」


こめかみをこりこりとペンの頭で搔きながら土御門は海原を見ずに答える。

苦笑を浮かべながら海原は器用に縫い糸を通していく。


「意外なのはその喋り方もですね。『そのキャラ』は友人限定では?僕達に仲間意識など無かったはずですが」

「んーまぁ確かに殺伐とした関係なのは否定しねんだがよぅ。上やんの言葉じゃねぇけど、これからも殺伐としてなきゃならねってわけじゃないからにゃー」

「新しい関係の構築というやつですか。さしずめこのドジメイドはその第一歩だと」

「流石に、結標が一方通行とくっ付く保証なんざないけどにゃーそれはまぁいいとして」

おや、と海原は土御門の言葉に含みがあることに気付く。


「その言い方だと、単純に結標さんを応援するだけじゃなさそうですね。

一方通行が無能力者の表の世界の子と交流を持っているのと関係でも?」


「鋭過ぎると気味が悪いな。それもアステカの魔術か海原よ?」

「急に変わらないで下さい、違いますよ。ただ、御坂さんのことを見守っていれば、自ずと彼女の交流関係にも目は届くわけですので」

「佐天涙子。出来ればあの娘は関わらない方がいい。闇の世界なんて知らないに越したことはない。一方通行もそれがわかってるはずだ」



野暮だとはわかってるんだけどな。

苦味を含んだ土御門の言葉が重く響いた。


208 : 佐天「嫁にして下さい」一方通行「ゴメン、ちょっと待って」7[saga] - 2010/12/06 18:30:50.15 wkIFHe.0 5/11


世話になっている黄泉川家、その一室に番外個体は間借りしている。

一方通行に借りを作ることなど真っ平ゴメンだとばかりに噛み付いたものの、『打ち止めを守るためには側にいた方が楽だろォ』という言葉に渋々従うことになった。

学園都市を始めとしたあらゆる闇から守れという彼の依頼を引き受けてしまった手前もある。

約束を反故にすることに抵抗があるあたり、番外個体もまた、御坂美琴の律儀さ、真面目さを根本では受け継いでいるのかもしれない。


「だからぁ、何でミサカがあのバカん家に行くのは全部あのバカを殺す為なんだっての」


ベッドに寝転がりながら、宙に視線を向けたまま声を荒げる少女こそが、この部屋の主である番外個体。

下着姿にワイシャツ一枚という、はしたない格好でゴロゴロとベッドを転がる。腕の中には目つきの悪いウサギの人形。

部屋を見渡せば所狭しと並ぶぬいぐるみの数々。枕元には三頭身の可愛らしくデフォルメされた一方クン人形が四人仲良く座っている。

余談であるが、芳川プロデュース上条クン人形は夏、冬、体操着、私服の計4タイプが販売され、一方クン人形はウルトラマン、ダダ、黒翼、冬セラレータ、エンジェラレータの計5タイプが好評販売中である。



「はぁ!?何で抜け駆けなんだよ。意味わかんねぇっての。つーかさ、何度同じこと言わせるんだよ糞姉共が」


忌々しげに番外個体が舌打ちるする。端から見れば独り言をぶつぶつ言っている危ない少女にしか見えないのだが、彼女は立派に会話をしている最中だ。

会話の相手は彼女にしか見えない妖精さんだったりキューピット様であったり、スタンドでもない。

ミサカネットワーク、シスターズ同士の脳波によるネットワークによって、遠く離れた姉達と彼女は会話をしているのだ。

このままでは埒が明かないので、彼女達の会話を覗いてみることにしよう。


『出たーー!!ミサワさんの48の殺人技の一つ、『殺す殺す詐欺』だーーー!!とミサカはいい加減マンネリと化してきた番外個体の口癖をディスってみます』

『大体、殺 す事とセロリのヤツに飯作ってやることに何の関係があるんだよ。いい加減通い妻だって認めちまえよww』


「ちっげーし。あんなロリコンどうでもいいし。興味ねーっていうか、寧ろ目障りなくらいだし。野菜嫌いのバカセロリに嫌がらせするために決まってるって言ってんだろう!!」


『その為に料理本に幾ら使ってるんだか…とミサカは試食に付き合わされて体重が3キロ増えた悪夢の日々を思い出し涙します』

『その挙句に、JCお持ち帰りしてきたセロリ見て泣きながら帰るし。『ちょw修w羅w場w』ってwktkしながら全裸待機してたミサカの時間を返せww』

『大体、こちとら遠く離れているところであの人を思うことしか出来ないのに通い妻とかズルイんだよ!!ってミサカは一方通行様の部屋の合鍵を持っている末妹に嫉妬の念をぶつけてみます』

「泣いてねーし。あのモヤシが中学生どうしようが知らねーよ。大体どうしてミサカが泣かないといけねーんだよ」


『そう言いながらもメソメソ引きこもっている番外個体なのであった』

『wwwww』

『wwwww』

『wwwww』

『wwwww』


脳内で示し合わせたように広がる哄笑に、番外個体のこめかみがビキィと悲鳴を上げる。

噛みあわせた奥歯が軋みを上げる。そして、頬、耳、首が見事に真っ赤に染まる。

怒りと屈辱と、羞恥にぬいぐるみを抱きしめた腕に力を込める。

209 : 佐天「嫁にして下さい」一方通行「ゴメン、ちょっと待って」7[saga] - 2010/12/06 18:32:41.09 wkIFHe.0 6/11

「メソメソしてないんだっての!!全然平気だし。あんな糞モヤシのことでミサカがウジウジ悩むこと自体ありえねぇから。

明日にでもあのバカん家襲撃かけて嫌がらせしてやるつもりだし。あの中坊がいたらセロリ確定だねって弄り倒してやんよ。ぐげげげげけけけけ」

口元を歪に歪めると、挑発するように厭らしい笑い声を上げる番外個体。

端から見ると怖い光景であるが、それはこの際どうでもいいことだ。

何人もの妹達の溜息がミサカネットワークに木霊する。

ミサカネットワークの接続を切ると、番外個体はせいせいしたと鼻を鳴らす。

そうだ、あの憎くて憎くてしょうがないムカつく糞野郎に何の遠慮が必要だろうか。

深夜だろうと早朝だろうと、襲撃をかけてやろう。そうだ、あの馬鹿の意思など関係ない。必要ない。

あの気に入らない第一位が嫌がる顔、困った顔をするのが自分の存在意義にして、一番の楽しみなのだ。

しなやかな脚を上げ、スプリングを軋ませて勢いよくベッドから跳ね起きる。立ち上がった拍子にきゅぅと小動物の鳴き声のような可愛らしい音がお腹からする。

あの日以来食欲が何故か湧かなかった為碌に食べていないのを思い出した。そうと決まればまずは食事だ。

ふと鏡を覗き込むと、ボサボサの髪に、一層濃くなった隈。何よりも日の光を浴びず、食事も碌に摂っていなかったせいか顔色が悪い。

唯一の救いは肌が荒れていないことだろうか。若さのおかげと言えよう。しかし、それを差し引いても無惨な顔だ。年頃の娘の顔ではない。

こんな顔をぶら下げて一方通行に会うのか、とふと考える。


「……食事したらお風呂だね。そう、あの糞っタレの中二もやしをいたぶりに行くんだから、しっかりリフレッシュしておかないとね」


うん、と何に対してか頷くとリビングへ足を運ぶ。


「ねーヨシカワ~~何か食べるもの無い~ミサカお腹空いちゃっ…… ――― た……?…」

「よォ。こンな時間まで寝てるなンざァ、いい身分だなァ」


テーブルで芳川桔梗と向かい合っているのは、先ほどまで話題の中心になっていた学園都市最強の真っ白しろすけ。

芳川は淹れたてであろうコーヒーを一方通行の前に置こうとしている。

番外個体は一方通行の姿を、一週間ぶりの姿をまじまじと見る。

顔色が良い。自分がいない間の食事はどうにかしていたのだろうか。

というか何を暢気に茶をしばいてやがる糞野郎。

大体誰のせいでミサカがずっとブルーだったと思ってるンだ。

少しは申し訳無さそうにしろよ、マジ屑男だな。

言いたい文句、罵詈雑言が浮かんではシャボン玉のように消えていく。


「しかしよォ。お前寒くねェのか?この冬にンな格好曝してよォ」


210 : 佐天「嫁にして下さい」一方通行「ゴメン、ちょっと待って」7[saga] - 2010/12/06 18:34:34.25 wkIFHe.0 7/11

眉を顰める一方通行の視線を番外個体はゆっくりと追って行く。

シャツのボタンを殆ど留めずにおいた胸元からは薄水色のブラと、くっきりはっきりとした谷間がこんにちは。

姉とは似ても似つかぬ、全てのミサカシリーズの血涙交じりの嫉妬を一身に浴びる困ったちゃんなバストがデンと存在を主張している。

そして、引き締まったウエストには可愛らしいおへそがちょこんと収まっている。

そして、薄水色のブラとお揃いの薄水色のパンツ。そこからすらりと伸びた優美なラインを誇る脚。

ようやく番外個体は自分の格好を把握した。そして、一方通行がそれを見ているという現状も把握する。


「死ね!!糞助平モヤシ野郎!!!!」

「ぶふッ!?」

憤怒と羞恥に顔を染めた番外個体は手にしていたぬいぐるみを全力で一方通行にぶつけた。




「恥じらいを持つなンざァ…アイツもなンだかンだ言って成長してやがンだなァ」

顔を真っ赤にした番外個体は荒々しくリビングを後にする。

彼女の出て行った方を見つめながら、しみじみと、感慨深げに呟いた一方通行に噴出す。

「なンだよ?」

「それ父親の台詞よ丸っきり」

「いいだろォが別に」

打ち止めだけではなく、番外個体、そして他の妹達は彼にとって守るべき家族である。

完全な庇護すべき対象として見る姿勢は兄というよりも父親。だからこそ、彼女達から向けられる暴言も受け止められるのかもしれない。

さながら思春期の娘にどれだけ暴言を吐かれようと邪険に扱われようと、娘を守ることを放棄する父親が居ないことに似ているのかもしれない。


211 : 佐天「嫁にして下さい」一方通行「ゴメン、ちょっと待って」7[saga] - 2010/12/06 18:36:05.57 wkIFHe.0 8/11


「ま、それはいいとして。なるほどね…」

芳川桔梗が一方通行の前に彼専用のカップを置く。熱々の湯気が立ち上るカップを手にすると、一口だけ飲む。

安っぽく、舌にべとつく苦味。インスタントの味に顔を顰める。すっかり自分が佐天の淹れる珈琲に慣れ親しんでいることに気付く。

その事を考えぬよう舌に絡まるべとつきを気にしながらコーヒーをもう一度口にする。

くすりと芳川が小さく笑う。

「まさか貴方が無能力者の娘と仲良くなるなんて」

じろりと睨まれても、涼しい顔で芳川は自分のカップを傾ける。

舌打ちをすると、一方通行は顔を伏せる。

「仲良くなざァねェ。あのガキが勝手に入り浸っていやがっただけだァ」

吐き捨てるように呟くと、コーヒーを一気に飲み干す。

熱くないのかしらなどと、気の抜けたことを思いつつ芳川は口を尖らせる一方通行を微笑ましく見る。

彼は気付いているのだろうか。自分や黄泉川の前でだけは子供じみた仕草をすることを。

生い立ちが生い立ちだけに、それをおかしいとは思わない。


「その割には随分と元気がないのね。フラれた男みたいよ?それとも女房に逃げられた駄目亭主かしら」

くすくすと薄い唇に笑みを浮かべる。

舌打ちをするだけで何も言い返さない一方通行に、おや、と芳川は眠たげな瞳を僅かに見開く。

罵声、毒舌、挑発、憎まれ口、彼がその形の良い口から吐き出す言葉は悉くが碌なものでない。

それが誤解を招き、誤解が不和を呼ぶ。

彼を人から孤立させる要因であり、彼の望みでもある。


その言葉の裏の真意に、彼の性根に気付けるものにとっては精一杯虚勢を張っている子供にしか見えず可愛いのだが。


「で、能力の無いことへの苦悩をそっけなく跳ね除けたことに後悔してるわけだ」

「してねェよ。ンなモンするかよ。わからねェもンはわからねェし、仮にわかってたって俺に言えるかよォ」

役目があンだろうが、と苛立ちを言葉に込める。

やれやれ、本当にこの少年は。


「優しいんだから」

「ああ゛ァ?」


剣呑な視線をそよ風のように受け流しながら芳川は苦笑を浮かべる。


212 : 佐天「嫁にして下さい」一方通行「ゴメン、ちょっと待って」7[saga] - 2010/12/06 18:37:28.51 wkIFHe.0 9/11


「能力なんて関係無いなんて、そういう“無能力者を無意識に見下した能力者が言う”ような言葉が彼女にとって何の救いにもならないんだってわかってるんでしょう」

「 ――― 」


持つ者が持たざる者に『持つことなど大したことではない』と言うこと程残酷な言葉はない。

それが悪意ではなく、純粋な善意、友愛、親切から来る言葉であればあるほど、言葉を向けられた者はそれを受け止めなければならない。

悪意であれば、悪意を持って跳ね返せるけれども、善意を跳ね返すことは出来ない。それが互いに善良な心根を持つ者であれば尚更。

無邪気さ、正直さは時として何よりも残酷なものになる。優しさが悪意よりも鋭い言葉となることもあるのだ。

それを自覚していれば、上手く受け流すことも出来ようが、たかだか14年の人生しか生きていない少女には出来ようハズもない。

持たざる者の持ってしまった者への無理解から来る純粋な憧憬という形によって、それを十分に理解出来る一方通行という少年は、それだけ傷ついてきているということを意味する。

だからこそ、一方通行はかけるべき言葉にためらったのだ。


「でもさ、一方通行」

芳川桔梗は、一方通行の心を本当の意味で沈めてしまっている理由を指摘する。

「貴方、本当はその子が欲しがってる言葉をわかってるんでしょう?」

「………なンの話だ」

「その子が欲しがってる言葉よ」

だからこそ口から零れてしまったのだろう。


『お前にもきっとわかンねェよ。俺がどんだけ           かをなァ』


などと言う言葉が。


「何を躊躇う必要があるのかしら?きっと佐天という子も望んでいると思うわよ?その言葉」


そして、その『先』も。


「わかンねェよ…」

伏せた瞳を二、三瞬きさせる。一方通行の長く整った睫がふるふると揺れる。

そうか、要は怖いのだ。自分の抱く感情を拒まれることがではない。

自分の抱く感情が分けがわからずに、混乱している現状そのものが。それはまるで途方に暮れた子供のようだ。

213 : 佐天「嫁にして下さい」一方通行「ゴメン、ちょっと待って」7[saga] - 2010/12/06 18:40:58.46 wkIFHe.0 10/11


抱きしめてあげようかしら。


芳川はらしくもない考えを抱く。

黄泉川が時折一方通行を抱きしめていたのを目にしていたが、なるほど、そうかと納得が行く。


学園都市最強のレベル5、裏世界を闊歩する最凶の化け物。暴君。

勝手にへばりついてきたこれらの肩書きは真実である一方で、欺瞞に満ちている。


彼が時折覗かせる幼さや脆さ、臆病さや危うさを知るとそのことがわかる。


そんな時、あの母性の強い親友は堪えられずに抱きしめるのだろう。我が子を抱く母のように。

10歳にも満たない打ち止めにすら母性を感じさせる程に、一方通行は脆く儚い。


「ま、それならそれでいいわ。わかるまで悩みなさい」

「はァ?」

「どうせ貴方のことだもの。私がこれはこうよって説明したって素直に聞かないでしょう?だったら答えがわかるまで精々悩みなさい」


学園都市最高の頭脳なんでしょう?と芳川はウインクをよこす。

悩んでいる自分が、その悩みを芳川に相談しようと足を運んでいたことが、その事にようやく気付いたことが一方通行は無性に馬鹿馬鹿しくなった。


「チッ…役に立たねェ保護者だなァ」

「あら?甘やかすだけが母の愛じゃないのよ?」

「気持ち悪いこと言ってンじゃねェ…ってなでンな!!」


子犬をそうするように、わしゃわしゃと芳川は一方通行の柔らかい髪を撫でる。

嫌がりながらも、逆らわないこと自体、芳川に無意識に甘えているということなのだと一方通行は気付かない。

214 : 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします[saga] - 2010/12/06 18:43:44.65 wkIFHe.0 11/11

長々と失礼いたしました。
上条さんは甘えたがりな子に、一方さんは甘やかしたがりな子に好かれやすいと思います。
浜面?浜面はちょっと電波入ってる健気な寡黙少女とか、メルトがダウナーな鮭好きなお姉さんタイプに好かれやすいに決まってんだろうJK。