大きな荷物を背負って、夜の街を歩く
慣れ親しんだこの道とも今日でお別れ
眠りについた街に名残惜しさも感じるけど
これが一番いいと思うから
大切なあの子に手紙を一枚残して抜け出した
「上条当麻……」
上条「おう、お前らか」
交差点に立つのは見慣れた影
年下の大男と、浮かび上がる
一方「本当に行っちまうのかァ」
上条「ああ。後の事いろいろ頼む」
ステイル「……あの子には話したのか」
上条「いいや、手紙は書いたけどな」
幻想殺しの奥にあった力
それを学園都市の暗部と世界中の魔術師
に知られてしまった
いや、中には最初から知っていて
待っていたような連中もいるかもしれない
上条「インデックスの事頼むな」
だから、大切な人たちの為に離れよう
自分を狙ってくれば
みんな安全になるはずだから
上条「みんなによろしくな」
それだけ言って二人と離れる
これ以上いたら余計な事まで言ってしまうから
上条「いろいろあったな」
この街での思い出は多すぎて
必要なものだけ持っていくつもりだったのに
随分と大荷物になってしまった
「ちょっと待ちなさいよ」
ふりむくと、やっぱり
大切な腐れ縁の少女で
上条「……御坂」
美琴「随分と大荷物じゃない」
上条「お前こそ」
そう、美琴も上条のように
大きな荷物を背負っている
彼女も、これからどこかに行くかのように
美琴「どこいくのよ?」
上条「わかんねぇ、特に決めてない」
美琴「アバウトね」
上条「別にいいだろ、じゃあな。お前にも世話になった」
あまり話していると
この街にいたくなってしまう
だから、強引に話を切り
美琴に背を向けて歩き出す
上条「……」
美琴「……」
上条「……」
美琴「……」
上条「いつまでついてくるんだよ」
ずっと上条の後を一定の間隔をあけて
美琴がついてくる
美琴「いつまでかしらね」
上条「はぁ、俺これからこの街でるんだけど」
美琴「そうなの」
上条「わかってんのか」
美琴「この街にも飽きてきたところだしね」
上条「危険なんだぞ」
美琴「知ってる」
上条「だったら!」
美琴「アンタだって危険じゃない」
上条「俺は別にいいんだよ」
美琴「別に良くないからついてくの」
上条「いいの」
美琴「良くない」
上条「何で良くないんだよ」
美琴「アンタがこの街を出てくのと、同じ理由よ」
上条「……俺は狙われてるんだぞ」
美琴「知ってるわよ」
上条「だったら!」
美琴「アンタを守りたいって思っちゃいけないの」
「アンタは勝手にみんなを守ってるのに、アンタを守るのに許可が必要なの?」
上条「ぐぅ」
美琴「置いてっても追いかけるからね」
上条「……はぁ、しかたねぇ、ついてこいよ」
美琴「これからよろしくね」
そういう彼女の笑顔に
寂しさが少しだけ薄れて
上条「じゃ、いくぞ」
これからの旅路がほんの少しだけ
楽しみになった
了