130 : 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします[saga] - 2010/12/14 13:34:43.64 08FeGoco 1/8ここんところの良作・大作ラッシュで、かかるプレッシャーがマッハなんだが……大丈夫か俺
だいぶ間隔空いちゃったけど、「幻想殺しが見る幻想」の第二話、行っちゃいます
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幻想殺しが見る幻想 第一話
http://toaruss.blog.jp/archives/1016628819.html
「へぇ、上やんは常盤台の超電磁砲にお熱なのか」
「お恥ずかしながらわたくし上条当麻、中学生に惚れてしまいました」
「御坂も隅に置けないなー」
俺は今、隣に住む土御門の家にお邪魔し、恋路の相談ついでに飯をごちそうになっていた。
ちょうど舞夏が遊びに来ていたため、幸運にも超豪勢な料理にありつけた俺は、今日の本題を切り出したのだ。
この一見軽薄そうな悪友は、なんだかんだで真剣に相談に乗ってくれる、ということを俺はよく知っている。
ちなみに居候シスターは、今晩小萌先生の家で鍋パーティーをやるらしく、姫神とともに出かけている。
「ん? 舞夏、お前御坂と面識あったのか?」
「まあなー。メイドの研修で常盤台の寮にはよくお邪魔するのだ」
「な、なるほど……」
意外なところで接点があるもんだな。
……という俺の動揺を見抜いたのか、舞夏はにんまりと笑って言った。
「なんだなんだー? 上条当麻の顔に『御坂に関する情報が欲しいです』って書いてあるぞー?」
「上やんはわかりやすいからにゃー」
義兄妹にいじられる俺。
二人ともニヤニヤしすぎだこんにゃろう。
「ぐっ……舞夏様、モテない男上条当麻めに、御坂美琴のことを教えてくださいませんか」
「(よく言うぜよ、この旗男が)」
兄貴の方が何かつぶやいたように見えたが、あまり気にせず俺は妹に懇願する。
「そうだなー。まああんな性格だし、男はいないみたいだぞー」
「ほ、ホントか!」
「ふふん、私の情報網に狂いはない」
俺は自分でもわかってしまうほどにほっと胸をなで下ろした。
あんなビリビリ凶暴女(俺に対してだけだけど)でも、外見、さばさばとした取っつきやすい性格、そしてその圧倒的な存在感から、寄ってくるであろう男はごまんといる。
現に俺は、そんな男の一人と一発やり合い、『御坂とその周囲の世界を守る』という約束までしたのだ。
それだけに、御坂に特定の男がいないとわかると一安心だ。
「だが安心はするなよー。これは女の勘だが」
しかしそんな俺の安堵は、次の舞夏の一言により、一瞬で崩れ去ることになる。
「奴には、惚れている男がいる!」
「なん……だと……」
これほど「がーん」という文字が似合う場面が、今までの俺の人生にあっただろうか。
「そ、そんな……御坂には、すでに意中の相手がいるってのかよ……っ」
普段の御坂の態度から顧みて、その男=上条当麻でないことは確かだ。
だとすると、もはや俺が御坂の心をつかむのは絶望的と言える。
意気消沈した俺を横目に、兄はやれやれといった感じであきれ、妹はなぜか少し楽しそうにして俺に言う。
「フフフ、あきらめるな少年」
「どうしろってんだよ……」
「先も言ったとおり、御坂には気になる男こそいるが、まだ恋仲にはなっていない」
得意げに人差し指を立てて、舞夏は鼻息荒く宣言した。
「つまり! これから奴の心が上条当麻に向くチャンスも十分あるのだ!」
「……そううまくいくもんかね」
「もーしゃきっとしろよー上条当麻」
未だに立ち直れない俺の背中をバンバンとたたいて、舞夏はそういえば、と付け足した。
「御坂が見たいって言ってた映画があったなー」
「映画?」
「そうそう。なんか一緒に見に行く人がいない、ってため息ついてたぞー」
舞夏が口にしたタイトルは、対象年齢5歳前後という、ファンシー全開のお子様向けアニメ映画だった。
まぁ、中学生が好んで見に行くようなもんじゃないな…………御坂を除いて。
「まぁ、どうするかは上条当麻次第だなー」
そう言うなり舞夏は、机の上の食器をまとめてキッチンへ引っ込み、洗い物を開始した。
土御門(兄)はお茶を飲みながら、俺の方を見た。
「それで? 上やんは、超電磁砲にはもう好きな男がいるからあきらめちゃうのかにゃー?」
「それは……」
俺は言葉に詰まる。
御坂に好きな男がいる、ということはかなりのショックだ。
俺に御坂が振り向いてくれる、ということもあまり考えられない。
だが、それでも俺は決意した。
「俺は……やっぱり、御坂のことをあきらめたくない。あいつがどうしても好きなんだ」
「ほう」
その俺の言葉を受け、土御門は湯飲みを机の上に置く。
コトリ、という音とともに、いきなり部屋の空気が変わった気がした。
「一つだけ聞かせてもらおうか、上やん」
冷たい声に、俺は驚いて土御門を見やる。
するとその表情は、すでにいつものバカなクラスメートのものではなく、驚くほど真剣なものになっていた。
「もし、お前と超電磁砲が結ばれることによって、悲しむ人間が何人もいるとしたら?」
舞夏は洗い物に集中していて、こちらの様子にはまったく気づいていない。
「土御門……お前、何を言って――――」
「いいから答えろ。もしそうだとしても、お前は超電磁砲を追い求めるのか?」
土御門が言っていることの意味が、よくわからない。
俺と御坂が恋人同士になったら、何人もの人間が悲しむ?
一体誰が?
どうして?
土御門の質問の意味も、そしてそんな質問をする意図もわからない。
だが、俺が答えることだけは決まっていた。
「…………俺が御坂のことを好きだってことに間違いはないし、それはずっと変わることはないと思う。周りの人間がどう思おうとなんと言おうと、俺は御坂を求める」
「…………」
「だけど」
俺は一呼吸置いて、土御門の顔を改めてまっすぐ見た。
自分が思っているままのことを言う。
「それで他の人が悲しむってんなら、俺はそいつらの不幸もまとめてぶち殺してやる。俺も御坂も、それ以外の人間も誰一人不幸にならない結末を迎えてみせる」
土御門は、一瞬黙り込んだ。
しかし、すぐにいつもの不敵な笑みを取り戻すと、ニヤリとしながら言った。
「はは、上やんならそう言うと思ったぜよ」
「こ、これでいいか?」
「上出来だ」
なんでこいつ上から目線なんだよ。
さっきの冷たく張り詰めた空気が嘘のように解け、俺たちは笑った。
□ □ □
「色々サンキューな、土御門」
玄関先で、俺は改めて土御門に礼を言った。
「なあに、もし上やんに彼女ができたら、青ピと一緒に精一杯いじらせてもらいますたい」
「それはご勘弁を!」
じゃあな、と言って俺が背を向けると、土御門が「上やん」と呼び止めた。
「ん?」
「お前が進もうとする道には、多かれ少なかれ……間違いなく苦悩や苦難が待っている」
「……あぁ」
言われるまでもなく、わかっていることだった。
「だが、その歩みを止めるなよ。前に進むことをやめたら、上やんらしくないぜい」
「あぁ」
俺は今度こそ土御門に別れを告げた。
別れ際の、土御門のつぶやきは小さすぎて聞き取れなかった。
「……ねーちんや五和も大変だにゃー」
俺の腹は決まった。
迷うことなく、俺の足は映画館の券売所へと向かう。
つづく!
あ、ありのまま今起こったことを話すぜ!
「俺は上琴SSを書いてた思ったら、美琴が登場していなかった」
何を言ってるのかわからねーと思うがry
上条さんの心理描写のみで上条さんの鈍感具合を出すことが恐ろしく難しいってことがわかった
あと土御門との友情とか結構好き
ではまたそのうち、おそらくそんなドロドロ真っ暗なお話にはならないと思います