433 : VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] - 2011/01/09 21:41:28.29 mNQU7a5X0 1/11


>>407の続き。
なんで引き取り4年後にしたのか書き忘れたので。あと>>416スマン、熱の所為ってことで。


※関連

十人十色の幸福と、――――
http://toaruss.blog.jp/archives/1019704478.html

元スレ
▽ 【禁書目録】「とあるシリーズSS総合スレ」-21冊目-【超電磁砲】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1294925147/
434 : 十人十色の幸福と、その結末に伴う不幸―――― 1/9[saga] - 2011/01/09 21:42:58.94 mNQU7a5X0 2/11






「なあ。……アイツら、あれで本当に良かったと思うか?」




上条の問い掛けに、尋ねられた少女は首を傾げながら応えた。
少し寂しそうに。少し悲しそうに。少し申し訳なさそうに。少し嬉しそうに。





「さあ……今となっては、彼女の真意なんて解りませんよ――――――」





『アイツら』の事も解らなければ、少女の事も解らない。
結局上条当麻には、どの答えだって見つからない。





435 : 十人十色の幸福と、その結末に伴う不幸―――― 2/9[saga] - 2011/01/09 21:44:23.40 mNQU7a5X0 3/11













第七学区に多額の謎の寄付金が送られてきたのは、ミサカネットワークが切断される一週間前。
丁度寝たきりとなった人間一人が1460日ほど入院できる金額だという。

1460日間、―――――4年間。


一方通行の資産は彼が予め手配していたらしい弁護士によって彼が残した手記の通りに振り分けられる事にいつの間にかなっていた。
黄泉川愛穂と芳川桔梗が廃人同然となった彼につぎ込むであろう金額、打ち止めにこれから掛かるであろう教育費、
一人年齢設定を吊り上げて製造された番外個体の調製費用、残りの大半は均等に他の妹達へと。


そして彼の監視役となったインデックスと上条当麻の下にも迷惑料のつもりなのか、上条が毎月貰える奨学金の何倍もの金額が振り込まれていた。




今日も彼に来客が来る。
上条は彼の病室を訪れなければならない。見舞ではなく、監視の為に。







436 : 十人十色の幸福と、その結末に伴う不幸―――― 3/9[saga] - 2011/01/09 21:45:49.27 mNQU7a5X0 4/11











「―――――有難う。……また、来るわね」



その細い髪を母親らしい優しい手つきでゆっくりと撫でられた一方通行が、心なしか気持ちよさそうに目を細めた。
言葉と共に離れようとする暖かい手をのろのろと伸ばした右手で追いかけ母親を求める本能的な思考で求めては縋り付く。


その仕草に申し訳なさそうに笑った女性は静かに彼の右手をとって両手でしっかりと握りしめた。
どうしてもと言う様に扉の前に立つ上条へと顔を向けるが、
彼が首を振って否定すると悲しげに彼の顔へと首を差し出し、小さな子供に言い聞かせるように囁く。



「……ゴメンね。もう、時間が来ちゃったから帰らなくちゃいけないの。………ゴメンね」



まるで置き去りにされた捨て猫を家では飼えないからと猫へと謝る様な別れだった。
可愛くて、可哀想で、飼ってあげたくて、でも色々な事情が複雑に絡み合って飼えない。
心意気は家族のつもりでも家族になれない苦々しい感情、そんな光景だった。



「済みません美鈴さん………融通、利かせてあげる事ができなくて」

「上条君は悪くないわ。……あの子がこうしてくれているお蔭で、大事な娘達が護られてるのも理解してるつもりよ、ちゃんと」



437 : 十人十色の幸福と、その結末に伴う不幸―――― 3/9[saga] - 2011/01/09 21:46:42.31 mNQU7a5X0 5/11




妹達の存在が『正確』に御坂夫妻へと伝えられたのは魔術サイドと科学サイドの間でクローン問題が解決された後だった。
御坂の父親は何かしら掴んでいたらしいが流石に魔術サイドとの面識がなく手が出せないでいた所で一方通行の交渉が締結したらしい。


夫妻が住んでいたのは学園都市の外であるが現在は学園都市在住の妹達、そして一方通行との面会の為に事あるごとに学園都市を訪れている。


初めは御坂共々酷く戸惑っていた。
一万の妹達をその手で殺め、残り一万の妹達を文字通り命を掛けて護った存在。
恨めばいいのか、崇めればいいのか、蔑めばいいのか、奉ればいいのか。
―――――どれを選んでも、4年後には全てを失い消える少年。





結論として、母親の美鈴は彼に小さな感謝と労いを与える事を選んだ。
「ありがとう、」
「頑張ったね、」
「大変だったでしょう、」


恐らく、彼が今まで望んでも掛けられなかった言葉の数々。
母親が子供を抱きしめながら囁くような優しい一言を与えられる度、彼はとても綺麗な瞳を輝かせて美鈴を見つめた。
彼女の言葉は届かない。しかし彼の中の奥底に眠る幼い感情が、無意識に母親を求めていた。







438 : 十人十色の幸福と、その結末に伴う不幸―――― 5/9[saga] - 2011/01/09 21:48:05.14 mNQU7a5X0 6/11











「アンタさぁ、―――――なんでアイツが自分の引き渡しを4年後なんて指定したか、聞いてる?」



アイツというのが一方通行を指している事は直ぐに解った。
御坂は自分の母親が彼の髪を撫でる姿を、何処か遠い世界の光景の様にいつも遠目から眺めている。



「打ち止めが私と同じ年齢になるまでの間、なんだって。それくらいになったら安心できるから、って……」



初耳だった。

今打ち止めは、実年齢は兎も角世間一般には10歳を名乗っている。
4年後。14歳。
中学2年生の御坂と同じ年齢。


目線の先では件の打ち止めが一方通行の座る車椅子を押しながら病院の庭先を散策していた。
打ち止めが話しかける度に時折一方通行が口を開くが、彼の喉から意味有る言葉が発せられる事はない。


精々が言葉を覚え始めた赤ん坊が「あー」、だの「うー」だの話す程度で、
しかし響きだけは優しげなその声音を聞くと打ち止めは頬を染め上げてにっこりと笑っていた。








439 : 十人十色の幸福と、その結末に伴う不幸―――― 6/9[saga] - 2011/01/09 21:50:08.18 mNQU7a5X0 7/11








「なあ。……アイツら、あれで本当に良かったと思うか?」



上条はミサカ10032号―――御坂妹と呼ぶ個体に一度だけ聞いた事がある。
一方通行に尋ねる事は不可能だったし、打ち止め本人に聞くほどの勇気はなかった。



「さあ……今となっては彼女の真意なんて解りませんよ、とミサカは解答します」



ミサカネットワークという一つの共通意識を失った彼女達では、既に様々な個性を持ち始めた他の個体の感情を一つ一つ読み取るのは難しいという。
ましてや幼いながらも独特の考え方を形成していた彼女の心は推し量れないそうだ。



「ミサカ個人の感情と致しましても生き延びられた喜びと彼に全てを背負わせてしまった罪悪感とが入り混じった自分でも整理の付かない状況です。
 個体によってその比率は異なるでしょうし中には全く別の感情を抱く個体もいるでしょう、とミサカは推測します」



御坂妹も自分の喜びと罪悪感の比率を上条に教える事はなかった。
ただこの場を去る前に一言だけ、上条の芯を揺るがす言葉だけを残していった。


「抗うお積りならこのミサカは手を貸す意思もあります、とだけミサカはお伝えします」



彼が引き渡されるまでの4年間の中で、その現実に抗う意思。


彼の決断は間違っている、………様な気がする。
しかし上条はそう断じきれないでいる。
初めて見た一方通行の純粋な笑み、打ち止めの満面の笑顔。


何が正しいのか解らなかった。



440 : 十人十色の幸福と、その結末に伴う不幸―――― 7/9[saga] - 2011/01/09 21:51:26.86 mNQU7a5X0 8/11










結局のところ解決には、逃げていた打ち止めと向き合うしかなかった。
一方通行と木陰で寛ぐ彼女にそっと近づくとさり気無く尋ねてみる。



「なあ、お前はこれでいいのか?大事なんだろ、一方通行が。なのに、こんな……このままじゃ……」



上条の問い掛けを黙って聞いていた打ち止めから一瞬表情が消えた。
まるで深い闇の中に立っていた彼に、真っ直ぐでいて罪も罰も償いも抗いも全て一人で背負った彼に良く似ていた。


そして酷く大人びた貌付きで口を開くと、徐にこう語った。






「ミサカの一番の幸せは、あの人の幸せだよ……――――ってミサカはミサカはただ揺るぎない一つの事実を述べてみる」





441 : 十人十色の幸福と、その結末に伴う不幸―――― 8/9[saga] - 2011/01/09 21:52:44.74 mNQU7a5X0 9/11






上条は最初から間違っていた。
向き合うべきは目の前の現実でも打ち止めでもない、一方通行本人だった。





大きな広葉樹へ心地良さそうに寄り掛かる彼に上条は目を向ける。



「―――――なあ、本当にお前は幸せか?」



尋ねた上条の腕に一方通行の細く白い手が静かに伸びた。
言語を理解する機能を失った脳細胞が描いた表情に上条は静かに笑って―――――










―――――――やはり上条は、様々な疑問のどの解答すら得る事が出来なかった。









442 : 十人十色の幸福と、その結末に伴う不幸―――― 9/9[saga] - 2011/01/09 21:54:13.32 mNQU7a5X0 10/11








向けられたその表情が脳裏に焼き付いて離れない。
一つの名作、絵画ともとれる光景。

理解はできる。
ただ、納得できないだけ。





全ての解答は、彼がイギリスへ飛ぶ前の夜に。









――――――― 十人十色の幸福と、その結末に伴う不幸。そして、得られたほんの僅かな幸福 ――――――(完)




443 : VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] - 2011/01/09 21:58:37.68 mNQU7a5X0 11/11

以上。書き忘れ書けてスッキリした。
多分本当にこれでラスト。お付き合い頂いた皆さん、有難うございました。

さて……下ネタ書くぞおおおおおおお!!!!!!!
なんか接続不調なんだけど同じ文章誤爆してない?もし見つけたら連絡ください、謝りに行くから。