503 : VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] - 2011/01/10 15:44:10.99 yWBJ+7OSO 1/14

>>388-399
で、麦のん通行書いた人です
正直、罵倒を予想していたので皆さんの温かい言葉には驚きました

続きが出来ましたので投下します


※関連

麦野「王子さま……」
http://toaruss.blog.jp/archives/1019704394.html

元スレ
▽ 【禁書目録】「とあるシリーズSS総合スレ」-21冊目-【超電磁砲】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1294925147/
504 : 麦野「王子さま……」[] - 2011/01/10 15:46:13.67 yWBJ+7OSO 2/14

「何処に目ぇ付けて歩いてんだチビ!!」

「でけぇ図体で道塞いでんじゃねぇよチンカス野郎!!」

ビルとビルの隙間。一般的に路地裏と呼ばれる薄暗い世界への入り口。
その一つで、罵声がハーモニーとなって響いた。

一人はやたら図体の大きい筋肉質な男。いかにもそちら側という顔と雰囲気を出している。
もう一人は小柄で中性的な顔立ちの少年。対峙する男と負けていないのは射ぬくように鋭い眼力だけである。

触れたら爆発するような張りに張った剣呑な空間が出来上がっているが、この二人はそこで軽くぶつかっただけ。

沸点の低さと気性の荒さでは同等のレベルを持っているようだ。

505 : 麦野「王子さま……」[] - 2011/01/10 15:48:12.97 yWBJ+7OSO 3/14

………………………

『アイテム』の弱い所は高位の空間能力者と視覚操作系能力者がいないことだ。
お陰で、堅い守りの要人の暗殺をしなければならなくなった時等は多少強引に進めなければならなくなる。


キャップを深く被り、長い栗色の髪を黒く染め上げ後ろで一本に結い、だて眼鏡を掛け、自慢の胸を押し潰して膨らみを削り、さらに何枚も重ね着して疑わしさを消す。そして、ジーンズと厚底の靴を履けば完了。
中性的な美少年が出来上がる。

麦野沈利が仕事帰りにこうして変装し、路地裏を歩くのも全ては暗殺下手な組織のせいなのだ。

(あっちぃんだよ、クソ。ムカつく……)

額に浮かび上がる汗の玉を拭う。

今の時期、麦野のしている厚着は寒がりでギリギリ通るか通らないかの気温になってきている。
寒がりでも暑がりでもない彼女には負荷のかかる格好だ。

その上に背後からの追っ手にも注意を向け続けなければならないのだから、苛つきも当然。

そんな時に横道から出てきた大柄な男にぶつかった。

「でけぇ図体で道塞いでんじゃねぇよチンカス野郎!!」

頭の中の何処かにある防壁が崩れた麦野は、任務の完全遂行を放棄して男に食ってかかった。

506 : 麦野「王子さま……」[] - 2011/01/10 15:50:05.26 yWBJ+7OSO 4/14

………………………


「チンケなクセに威勢だけは一流だな。坊や、悪いこと言わないから泣く前にお家にお帰り」

「ヒャハハハハ!テメェみてぇなゴリラが坊やなんて気持ち悪いんだよ!笑いでも取ろうとしてんのか!?」

男の首筋の血管がピクリと反応を示す。
二回のぶつかりだが口喧嘩の方は麦野が圧倒的な優位に立っていることが判った。

「ガキが。調子乗ってると痛い目見るぞ」

男の手に銀色の光が走る。
入手がしやすいバタフライナイフが麦野に向けられる。

「玩具のナイフがどぉしたってんだよ!もしかしてそれで脅せてるつもりなのか?アヒャヒャヒャ!傑作過ぎる!ボケの才能有るよお前!!」

「こ、こぉんのぉぉお!」

ナイフが振られる。愚鈍そうな見た目に反して素早い。

「もう暴力かよ!?どんだけ早漏なんだよテメェは!」

だが、所詮は素人の怒りに駆られた単調な攻撃。
身体を捻って躱し、そのままカウンターの蹴を入れる。
全身のバネを大きく使って放たれたその蹴は、華奢な身体からは想像もつかないような破壊力を纏い、米噛みへと吸い込まれた。

男の全身が吹き飛ばされた顔に引っ張られて揺れる。
一撃で沈ませるに十分な威力だった。

507 : 麦野「王子さま……」[] - 2011/01/10 15:55:14.75 yWBJ+7OSO 5/14

「グッ……!」

だが、痛みに顔を歪ませたのは麦野の方であった。

何故かノーダメージですんでいる男は、その隙に右手を突き出す。
麦野は鍛えられた反射速度で直ぐに軸足で跳ねた。しかし、完全には間に合わず、腹部が熱を吹き上げた。

右足の激痛に耐え切れず、その着地にも失敗し、無様に地面を転がる。

「ほぉら、痛い目見ちゃったよ?」

下卑た視線が麦野を見下す。

「クソがクソがクソがクソがぁぁぁぁ!!」

油断、過信、軽率
腹が立つ

愚弄、慢心、優越
殺意が芽生える

「ちょと堅くなれるぐらいでゴキブリ以下が見下してんじゃねぇぇ!!」

攻撃の威力は相手に伝わっている。体勢が崩れたからそれは判る。
ということは、絹旗のように壁を張っているいるワケではない。肉質そのものの変化。或いは、頭蓋が鉄で補強されているか。

「良く判ったな。誉めてやるよ」

男の言葉は上から降り注ぐ。

足が折れ、腹部に刺し傷を負った華奢骨細な少年一人。
自分の手にはナイフと能力。
負ける要素を探せないのだろう。

「お前、ブチコロシカクテイだよ!!」

麦野の手に青白く光る電子の壁が創造されていく。

「ハッハッハ!光るだけの能力で殺せるかよ!!」

男は優位を信じている。

彼は知らない。目の前の少年がレベル5の一人であることを。
彼は知らない。二人の間に圧倒的実力差があることを。

「キエロ」

壁を男に向ける。

そして、麦野の視界から目障りで不愉快な人間の一人消えた。

508 : 麦野「王子さま……」[] - 2011/01/10 15:57:17.65 yWBJ+7OSO 6/14


おかしなことになっていた。

昨晩、突然倒れた麦野を背負い、彼女の指示通り『アイテム』のアジトまでやってきた。
この時点で何か間違っている気がしないでもないが、自分と彼女が敵対する組織の最終兵器同士であることを省けば、まだ許容できる範囲だろう。

連れてきてから直ぐに去るつもりだった。元より馴れ合う予定はない。

敵もそうだと思っていた。

だが、予想とは反対に『アイテム』の面々は自分を歓喜の声で出迎えた。

酷い悪人だというレッテルが剥がされ、新たに女の子を殺めない紳士という評価付けがされて懐かれた。

4人の中で唯一の男である浜面と名乗った少年には特に気に入られ、彼の「泊まっていかないか?」という提案に皆が賛成の意を示し、反対する間もなくベッドと部屋を用意されてしまった。

そのまま流されて眠ったのは自分の失態だ。


そして、今。

一方通行の目の前にはお米、味噌汁、鮭、浅漬けといった健康的な倭の朝御飯が並べられている。

隣ではエプロンを着た麦野が、期待に目を煌めかせて自分の感想を待っている。

彼は悩んだ。
自分が朝はコーヒー一杯で済ませる人間であることを彼女に言うべきかどうか。
そして、どうしてこうなったという根本的な問題を。

何かが間違っている。

509 : 麦野「王子さま……」[] - 2011/01/10 15:58:39.15 yWBJ+7OSO 7/14


いつになく賑やかで晴れやかな困惑した朝を『アイテム』は迎えていた。

「あくせられーた、たべないの?」

「えっ、あ、いや、その…なンて言うか……」

現在進行形で敵であり、朝食とにらめっこしている一方通行に滝壺が視線を向ける。
彼女はこの状況を何一つ不思議に思っていないようだ。

「も、もしかして朝食は抜く方だった?」

エプロン姿の麦野。その目は今にも涙を零しそうに濡れている。

「いや、そうじゃねェンだが、アレがちょっと、アレで……」

そんな彼女の様子を見て鬼となってコーヒーだけで良いと言えない。
だが、此処でいただきますと言ってしまえば残してしまうのは明白で、そちらも言うことが出来ない。

深い葛藤に逢い、学園都市第一位はただ言葉を濁すしかなくなっていた。

「分かった。みんなと一緒に食べたいんだね」

「お、おォ!そうなンだよ!」

しまいには少女が出してくれた助け船にしっかり掴まる始末。
それが、ただ問題を先送りにするだけの案と分かっていても。

「そっか!皆で食べた方が美味しいもんね!」

「うん」

「ハハハ……」

いつもより嬉しそうな一人。
いつも通りマイペースな一人。
いつもが判らないが、憔悴していることは見て判る一人。

510 : 麦野「王子さま……」[] - 2011/01/10 16:00:11.15 yWBJ+7OSO 8/14

そんな三人の朝を他の三人は蚊帳の外から困惑気味に眺めていた。

「結局、何がどうなっているか分かんない訳よ」

「超難解です」

「ちょっと、推理してみよう」

浜面の意見で三人は部屋の隅へ移動し、円卓会議を始める。

議題は麦野の変化について。

「やっぱ昨日だよなぁ」

今まで見たことの無い隙だらけの麦野。論理と事実を辿れば、前日二人がぶつかってからの変化だと推測出来る。

「でも、急に超変わるもんですかね」

この推測の穴。
転換が激しすぎること。

恋を知れば人は変わると言われているが、どうにも過ぎている。
それは、今までの怒の感情を尖らせていた方がやせ我慢していた麦野で、今現在の誰よりも女の子らしい麦野が本当ではないかとつい疑ってしまう程に不自然だ。

511 : 麦野「王子さま……」[] - 2011/01/10 16:01:21.88 yWBJ+7OSO 9/14

「熱烈に口説かれたとか?」

「いや……」

浜面の視線が苦笑を浮かべる第一位へ流れる。

「それはないだろ」

口説いていたら、二人で一つの甘いケーキでも作っている筈である。

会話が止まる。

「……結局、本人に聞くのが一番早い訳よ」

早いネタ切れに三人分のため息が零れる。

「でも、超聞き辛いです」

「ああ。何時にも増して近寄りがたいよな……」

小声で付け足す。

「気味悪くて……」

その時、青い光線が浜面の目の前を掠めた。
鼻頭に赤い線が入り、床に血の跡を残す。

「はぁまぁづぅらぁ~?」

三人が首を横に向ける。

口角を吊り上げ、目を三日月型に細め、黒々としたオーラを吐き出すいつもの麦野沈利がそこに居た。

「あ、き、聞こえてましたか」

浜面の顔の横を汗が伝う。

「うん」

絹旗とフレンダが自然にフェードアウトしていく。

「えーと、その…ごめんなさい?」

引きつった笑顔で頭を下げる浜面の横を麦野が握っていた包丁が通過する。

「アハッ!オシオキだねっ!」

兎と猟師に別れ、アジトの外へと二人は駆け出して行った。

512 : 麦野「王子さま……」[] - 2011/01/10 16:04:34.69 yWBJ+7OSO 10/14


呆然と開いたままの扉を見つめる一方通行。
その手を滝壺が包む。

「あれが何時ものむぎの。嫌いになった?」

「いや……」

一方通行は口の汚い第四位の噂を前々から知っていた。その片鱗をちっとも見せないからこそ、混乱していた部分がある。

突然で驚きはしたが、あれがいつもの彼女だと言われて、むしろ安心していた。
何かは判らない。とにかく、ほっと一息着けたような感覚が在る。

「からっかてたンだな」

表面的に確かな情報を集めて出した答え。

「あくせられーたは自分に意地悪だね」

ギクリとして、自分の手を掴む小さな少女を見る。
のんびりとしているのに意外な程鋭い。

麦野の態度は演技ではない。理解している。
でなければ、自身の毒牙が抜かれるようなことは無かったのだ。

それでも、一つだけ信じられないことが在る。

513 : 麦野「王子さま……」[] - 2011/01/10 16:05:42.91 yWBJ+7OSO 11/14

「むぎのは貴方が好き。本当に好きなんだよ」

「……有り得ねェだろ」

自分を

この世で一番汚泥を被っている自分を

好きになる

それが信じられない

だから、冷たく認識しようとする

相手も自分も下手に傷付かなくて済むではないか

「ううん。ちゃんと恋してる」

なのに、この少女は

その逃げ道を塞いだ

お陰で一方通行が振り替える羽目になった

受け止めなければならなくなった

向き合わなければならなくなった

溜め息が出る。

「初めて恋してる。だから、自分でも気持ちの使い方が分からないんだと思う」

「良く判るな」

「むぎのも私も同じ女の子だから」

「じゃァ、男の子のオレには理解出来ねェ代物だな」

一方通行は視線を滝壺から反らし、麦野が出ていった扉へ戻す。

彼女の笑顔を思い出しながら、朝食を食べ終わった後のことをぼんやりと考え始めた。

514 : 麦野「王子さま……」[] - 2011/01/10 16:07:09.26 yWBJ+7OSO 12/14


「フレンダ」

「なに?」

安全圏であるソファーを確保した絹旗とフレンダはそこに寝転がり、中空を見つめていた。

「フレンダはどうするの?」

「だから、なにが?」

少し間が開く。

絹旗の中の躊躇いが口を重くするのだ。

此処までは台本を回すような会話。次からはアドリブになる。
その移行をしていいのか判らない。

「麦野のこと」

だが、覚悟を決める。避けては通れない道なのだ。

「ああ…」

フレンダは少し言葉を震わせた。

「それは、仕方ない訳よ」

「でも……」

絹旗にははっきりしたことが分かっていない。
麦野に引っ付いて回り、誉められても怒られてもいつも嬉しそうに笑うフレンダの想い。

それが、憧れなのか恋なのか。

「見てたら判る訳よ」

でも、そこに独占的な欲があることだけは判る。

だから今、彼女は悲壮に心を切り、一言一言に涙を堪えるおまじないを掛けながら話している。

515 : 麦野「王子さま……」[] - 2011/01/10 16:08:33.49 yWBJ+7OSO 13/14

「麦野のあの笑顔……」

彼女の意思を知っても自分には何も出来ない。何もしない。

ただ、フレンダが話す。
それだけで救える何かが在ると知っているから、無理して聞き出した。

「ホントに判りやすい……」

「うん。超判りやすいですね……」

麦野が一方通行に向ける顔。
あれは、女の子の顔だった。

「私じゃ…麦野はあんな風には笑わないから……」

深い呼吸。

「結局……麦野の幸せが……私の幸せって…訳よ………」

ゆっくり、紡ぐように、慎重に、力を込めて、おまじないを掛けて、嗚咽を飲み込みながら、愛情と悔しさを滲ませ、幸せを混ぜて。

フレンダは答えを作った。


作りかけの朝御飯の良い香が、それ以上言葉の無い二人の鼻孔をくすぐった。

516 : むぎー[] - 2011/01/10 16:14:52.65 yWBJ+7OSO 14/14

以上
もう、表現が滅茶苦茶です。ごめんなさい

早く完結させたいんですが、自分でもエンディングが見えません。それどころか一寸先も見えません
血反吐吐きそうです


後、専用スレは立てないつもりです。もし、立てるなら別な形の麦のん通行書くと思います