727 : 十人十色[sage] - 2011/01/13 00:11:48.07 y/ID8doL0 1/15


身勝手ながらも完結だけはさせようと思い投下させていただきます。13レスほど使用します。
本作が『十人十色の幸福シリーズ』最後の作品となります。当作に限って鬱・過激な描写はありません。
本シリーズに端を発した幾つかの問題については>>741で謝罪文を掲載させていただきました。
こちらのシリーズを苦手とする方は誠に勝手ながら謝罪文のリンクを使って本編全投下後まで飛んでいただけると幸いです。


※関連(>>434)
十人十色の幸福と、その結末に伴う不幸――――
http://toaruss.blog.jp/archives/1019704850.html

※関連(>>488) 派生エンド
十人十色の幸福と、三者三様の解釈方式 ――――――― Ver. Last Order ; End type D.
http://toaruss.blog.jp/archives/1020185940.html

※関連(>>554) 派生エンド
十人十色の幸福と、三者三様の解釈方式 ――――――― Ver. Accelerator ; End type NⅠ
http://toaruss.blog.jp/archives/1020186032.html

※関連(>>639) 派生エンド
十人十色の幸福と、三者三様の解釈方式 ――――――― Ver. Shelley Cromwell ; End type B
http://toaruss.blog.jp/archives/1020186241.html

元スレ
▽ 【禁書目録】「とあるシリーズSS総合スレ」-21冊目-【超電磁砲】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1294925147/
728 : 十人十色の幸福と、三者三様の解釈方式 ――――――― Ver. Accelerator ; End type NⅡ1/13[sage] - 2011/01/13 00:12:48.76 y/ID8doL0 2/15







「なあ、やっぱり納得できないんだ……今更だっつーのは理解してる。それでも、俺は……」





上条当麻は目の前で眠る少年の、同性とは思えない程に細く白い首筋に指をかけた。
かつて彼が纏っていたような漆黒のチョーカーを丁寧に巻きつけてゆく。



「ちゃんと、お前自身の言葉が聞きたい」



そして、彼が手を静かに離すと、少年の赤い瞳がゆっくりと瞼を開き―――――――







729 : 十人十色の幸福と、三者三様の解釈方式 ――――――― Ver. Accelerator ; End type NⅡ2/13[saga] - 2011/01/13 00:14:27.73 y/ID8doL0 3/15




一方通行の引き渡しが迫っていた。
アレイスター統括理事長のいない学園都市は3年半に渡る長い歳月をかけ何とか復興の兆しが見え始めてきた頃だった。


だからこそ余計に。
政治体制に余裕が出来てきた今だからこそ余計に、学園都市は『学園都市第一位』という貴重な資産を大人しくイギリス清教へと渡してしまう事を躊躇っていた。
繊細な時期だった。


学園都市もイギリス清教も『一方通行』という存在をモノとしか認識していない。
国境で見つかった金塊をどちらの国家に利権があるかで争うような、そんな光景が彼の背後で見え隠れしていた。


上条当麻は悩んでいる。
確かに妹達、強いては打ち止めという少女をただ護る為にここまで交渉を運んだのは一方通行本人だ。


だが、これで本当に良いのだろうか。
彼が犠牲となったのは自分達の所為だと自身を責めてしまう心優しいクローン達は?
取り残されてしまう未だ幼い少女は?
これが、本当に『幸せな光景』と言えるのだろうか。



否。
そんな筈がない。
見てみろ。彼を殺す為に生まれながら彼との生活を楽しんでいたあの娘の今を。
いつもの様に悪態を吐きながら、でも何も反応しない彼を見て一人こっそり泣いていた夜を。


見てみろ。彼を一番慕っていたあの娘の瞳を。
彼に向けて微笑みながら、時折影を射す年齢にそぐわないあの悲しげな表情を。



これを『幸福』と、呼べる筈がない――――――――。



「言ってみろよ一方通行。もっとアイツらと居たいんだって、お前の言葉で。
 お前が自分で手を伸ばせば、俺達はいつだってその手を取ってやれるんだよ――――――っ!!」



そして、上条当麻の指が一方通行の細い首筋を伝わった。


730 : 十人十色の幸福と、三者三様の解釈方式 ――――――― Ver. Accelerator ; End type NⅡ3/13[saga] - 2011/01/13 00:15:28.28 y/ID8doL0 4/15






3年前の8月31日、彼にとっての運命の夜。
あの日、脳に負った損傷から言語能力と計算能力の全てを失った彼へと、冥土帰しから託された演算補助装置を装着させる。



『ミサカネットワークじゃなくても彼の演算補助には様々な手段があるし、それを全て再現できる自信が僕にはある。
 ―――――― だが、彼がそれを拒むんだよ』



カエル顔の主治医から聞かされた言葉を思い出す。
何度装置を取り付けても、自らそれを壊しこの現状を維持させようとしたという彼。
でも、今回ばかりはそんなことはさせない。


チョーカー型の演算補助装置を一方通行へと装着させた上条は、そのまま彼の両手を自身の右手で一掴みにする。
栄養剤の入った点滴と他人の手ずから与えられる僅かな食事で食を保っていた彼の両手は驚くほど細く、
常人に比べ異常なくらい骨の感触が感じられた。


両腕を力強く握られた事でゆるゆると思い瞼を開けた一方通行が、
状況把握する為の理解力を手中に収めた優秀な頭脳で赤く輝く瞳の焦点を急速に合わせてゆく。



「かみ、じょォ……とォ、ま……?」



長くまともに機能していなかった所為か、掠れたアルトボイスが病室内に小さく響いた。
4年後、契約、イギリス清教―――――。



「―――――っ、離せ!!離せっつってンだよ上条当麻ァ!!!」



学園都市第一位を誇る頭脳で、
視覚に映るこの男が、自分の計画通りに事が進んだのならば目の前に居る筈のない人間だと気付いた一方通行は
今にも折れそうな体を激しく揺らしながら首筋に付けられた装置を何とか壊してやろうと暴れだす。



731 : 十人十色の幸福と、三者三様の解釈方式 ――――――― Ver. Accelerator ; End type NⅡ4/13[saga] - 2011/01/13 00:16:24.03 y/ID8doL0 5/15




「―――――― 駄目だ!!!」



半ば怒鳴りつけるように上条が叫ぶと、シン、と狭い室内を静寂が取り巻いた。
怯えた様にビクリと肩を震わせた一方通行が目を見開きながら上条を窺う。



「もう逃げるな、一方通行――――― お前はとっくに理解してんだろ?学園都市第一位なんて呼ばれる優秀な頭で。
 『自分が犠牲になれば確かに打ち止めは助かる。………でも、本当は自分もアイツと居たいんだ』って」



一方通行の動きが止まった。
暴れようとしていた体も、怯えるようにしていた肩も全てを停止し、ただその見開いた瞳で上条を見据える。



「正直になれよ、一方通行。判ってたんだろう?自分のやっている事は『ただの善意の押し付け』だって。
 一人置いて行かれる打ち止めが、身代わりになった自分を見送る妹達がどんな顔するかなんて、
 最初から全部知ってたんだろ………―――――――――?」



その光景は、まるで一方通行という化け物が同じく理不尽な大人の世界に振り回されていた打ち止めと出会ったあの光景に酷似していた。
『実験』について指摘され、自分の感情を勝手に推測され、自分でさえ掴み切れていなかった深層心理を包み込むように優しく撫でる言葉の数々。


上条当麻の、言う通りだった。


一方通行は全てを理解していた。
自分の行いで必ず妹達が助かる事も、同時に、その所為で一番大切に思っていた少女に一番させたくなかった顔をさせるであろう事も。
学園都市最高峰を誇る優秀な頭脳は、それらを全て理解していた。


自分の行いが烏滸がましい善意の押し付けであることを寸分違わず誰よりも正確に把握した上で、
それでも、『ただ彼女が生きてさえいれば、きっと誰かが彼女を幸せにしてくれる』とそう思ってきた。
自分の気持ちを、押し殺して。



732 : 十人十色の幸福と、三者三様の解釈方式 ――――――― Ver. Accelerator ; End type NⅡ5/13[saga] - 2011/01/13 00:18:16.38 y/ID8doL0 6/15




「っだったら、だったら何だっつーンだよ!!
 あのガキが真っ当に生きて、学校行って、ダチ作って、普通に生活出来るんならもォそれでイイじゃねェか!!!
 俺みてェな糞汚い世界じゃねェ、アイツにとびきり似合う様な光ン中で生きていければ、いずれアイツは自分から幸せに向かっていく!!


 ――――――― 俺みてェなクソッタレが、所詮アイツの笑顔なんて守れるワケ無かったンだよォ!!!」



それは一方通行の、本心からの叫びだった。
一人ぼっちでしかない『特別クラス』という名の檻、第一位として敵視しかしない周囲、
暗く閉ざされた闇の中で自分からあの非道な『実験』に手を出してしまった罪悪感、肉と硝煙に塗れた血溜りの上の毎日――――。


一方通行にとって、打ち止めは何処までも『光の世界の住人』だった。
クソッタレと自負する自分の隣でいつだって笑って手を差し伸べてくれる美しい存在。
手の届かない存在。


善も悪も光も闇も関係がないのだと知った今だって、しかし心の何処かで線引きしている。
こんな自分が触ったら、あの綺麗な手が汚く黒ずんでしまうのではないか。
あの幼い体を、あの『実験』の時の様に見る影も無いほどに弾き飛ばしてしまうのではないか。


一生消える事のない経歴という一種のコンプレックスに全てを縛られた一方通行は、
だがロシアでの一件を通して得た『こんな自分でも彼女を正しく救えるのではないか』という自信もこのクローン問題で全て打ち砕けてしまった。


考え抜いてやっと見つけた、打ち止めを救う為の唯一の方法。
その行動自体が彼女に涙を造る事を正確に理解出来たからこそ、彼は『自分では打ち止めを幸せには出来ないのだ』と錯覚してしまった。



「――――― 結局よォ、俺はアイツが生きていてくれさェすりゃァ、……それでイインだよ。
 成長して、普通に暮らして、オトコ作ったりなんかして、そンでソイツが最後まであのガキを笑わせてやりゃァそれで構わねェンだよ」



自嘲気味に呟いた一方通行の頬を、勢いよく何かが弾いた。
左頬に走る強烈な痛みに目を向けると自身のそれが赤く腫れ上がっている。
怪我をした患部の隣では自分のモノとは違った逞しい拳が震えていた。
彼にしては珍しく、その拳が上条当麻の物であるということを認識するのに数秒を要してしまった。



733 : 十人十色の幸福と、三者三様の解釈方式 ――――――― Ver. Accelerator ; End type NⅡ6/13[saga] - 2011/01/13 00:20:54.53 y/ID8doL0 7/15



「―――――― だから、それを逃げだって言ってんじゃねえか!!!!
 何だよ、『打ち止めがいつか笑えればそれでいい』って!『誰かが幸せにしてくれればそれでいい』って!!
 それってつまりお前自身がどうにかする事を、お前が放棄しちまったっつー事じゃねえか!!

 これが逃げじゃなくてなんだって言うんだ!言ってみろ、一方通行!!言ってみろよ!
 『お前は本当はどうしたいのか』、言ってみろっつってんだよ!!!!!」



呆然と上条を見つめていた瞳が揺れる。
静かに俯いてしまった彼からは表情が何も窺えない。
それでも、上条には分っていた。
難しい事を考えるのを止め、本心に素直になった何の力も持たない彼が、自分の隣で打ち止めという少女が笑う事を純粋に望んでいたのを。



「――――――いてェよ、………ずっと一緒にいてェよ、俺だって!!
 でも出来ねェだろォが!現実をよく見てみろよ!俺はアイツに、こンくれェしかしてやれねェだろォがあああああ!!!!!」



上条の右手がゆっくりと一方通行の左手へと伸びた。
極力優しくその手を取って、小さな子供に言い聞かせるようにして自分などより数段優秀な筈の彼を説き伏せていく。



「言えたじゃねえか、ちゃんと。その言葉を待ってたんだよ、俺達みんな。
 お前が自分で手を伸ばせば俺達はいつだってその手を取ってやれる、
 学園都市だろうが魔術組織だろが何だって敵に回して、一緒にソイツらと闘ってやれる、俺達にはその覚悟がある。

 待ってたんだよ、お前の言葉を。ずっと、ずっと……――――――――――」



一方通行の瞳から、暖かな雫が音も立てずに流れ落ちた。
それを拭う手は一つじゃない。求めればいつだって体温ある手が汲み取ってくれる。



「いたい、いたいっ……―――――
 黄泉川と、芳川と、番外個体と、妹達と、………打ち止めと一緒にいたい―――――っ!!」



組んだ両手を目の上に押し当て、時折しゃくりを混ぜながら掠れた声が小さく吐き出した。
―――― お前がしたいようにすれば良いんだよ。
頭上から響いた声に、一方通行は再び滴を溢れ溢した。

734 : 十人十色の幸福と、三者三様の解釈方式 ――――――― Ver. Accelerator ; End type NⅡ7/13[saga] - 2011/01/13 00:22:21.56 y/ID8doL0 8/15






その日は快晴だった。
極僅かな人間以外完全に秘匿された『決戦の日』は暖かな日差しと穏やかな風を伴って彼らを迎えた。



「――――――うし、行くぞ」



上条の声に、皆が静かに頷いた。
皆が皆いつも通りに振る舞いながら、小さな違和感の中だけに『作戦』を決行してゆく。


最初に動いたのは芳川桔梗だった。
一方通行への面会に何度も訪れる彼女が今日もまた彼への訪問を申し出たところで、彼を見張る監視員たちは一切疑問を抱かなかった。


来客である芳川へ監視員達が一応のボディチェックを行っている間に、冥土帰しが一方通行への急な検診を命じる。
芳川へのチェックに人員が僅かとはいえ裂かれた事で、彼への警戒が少しばかり揺らいだ。


様々な精密機材が蔓延る検査室では監視員の立ち入りが制限されている。この瞬間だけは一方通行の監視が2人だけになるのだ。
「では、いつも通りに2名までで」と看護婦から声をかけられた監視員が携帯した武器を確認してから入っていく。
そして、初めから病院で生活していた為にほぼノーチェックだった看護婦に扮した御坂妹が彼らを鮮やかな体術で音を立てぬよう昏倒させる。


魔術師たちは、一方通行と妹達の間に生まれた絆を浅く見すぎていた。
非道な『実験』における片や加害者、片や被害者である立場を見れば、確かに妹達が一方通行救出に手を貸すなどと考えられないかもしれない。
だが、言葉では説明できなくとも明らかな絆で彼らは確かに結ばれていた。


一方通行の首にナノコンピュータに繋がったチョーカー型の電極を装着させた御坂妹は手早く彼に看護師の制服と黒髪の鬘を手渡した。
見ていないといわんばかりに背を向けた御坂妹に、一方通行有難くその場で着替えさせてもらう。



「院内の地図を。この部屋の天井裏には1階男子トイレへ繋がる通気口から病院関係者の振りをして駐車場まで向かって下さい。
 黄泉川愛穂が警備員用の戦闘車を演習と称して同僚名義で手配しています。そこで彼女と合流するようにとの事です、
 とミサカは上条当麻の伝令を正確により判りやすく伝えました」



735 : 十人十色の幸福と、三者三様の解釈方式 ――――――― Ver. Accelerator ; End type NⅡ8/13[saga] - 2011/01/13 00:23:26.91 y/ID8doL0 9/15




頷いた一方通行は迷うことなく通気口へと飛び込み、御坂妹に手を差し出す。
彼女もまたこの通気口から別室へ移動し、芳川を保護した他の妹達と合流する手筈になっている。


天井裏を進む途中で彼女と別れた一方通行は能力使用モードの切り分けを上手く行いながら目的地を目指していた。
これから大量に電力を消費するのだから、ここで無駄遣いは出来ない。
御坂妹の言っていた1階男子トイレへと辿り着いた一方通行はそこから指示通り駐車場に停めてあった戦闘車へと乗り込んだ。
だが、予想に反して運転席に座っていたのは見知らぬ女だった。否、少女というべきかもしれない。



「誰だ、テメェは……?」

「か、勝手に勘違いしないで下さい!私は黄泉川先生にお願いされて来たんです!……それに、私はあなたにあった事があるんですよ……?」



警戒し戦闘態勢を取ろうとした一方通行に焦った女がブンブンと手を振って否定の動きをしながら弁明する。
忘れちゃったんですか……?と甲高い声で問われた一方通行が記憶の彼方へ思考を巡らせると―――――



「オ、マエ!!あのときの『250年法』の女!!」

「だ、だから先生は立派なオトナなんですっ!七不思議とかそうゆうシリアスな存在じゃないんですう!」



運転席に座った月詠小萌はいい加減行きますよと言いながら無理矢理高さを調整したのであろうアクセルペダルを勢いよく踏み込んだ。
「『打ち止めちゃん』という子なら、黄泉川先生と一緒に飛行場へ向かってるですよ」。
小萌のその言葉に一方通行が小さく息を吐く。


どうやらここまでは上手くいっているらしい。
後部座席に普通の服が用意してありますからと言われた一方通行は助手席から後ろへと回り鬘はそのままに着替えを始めた。
病院から一歩出てしまえば、この格好は目立ちすぎる。


月詠小萌の運転で第23学区の飛行場に到着した一方通行は派手な騒ぎが起こっている場所へと駆け出した。
ここに来るまでの間に『作戦』に気付かれたのか、すでに戦闘は始まっていた。



736 : 十人十色の幸福と、三者三様の解釈方式 ――――――― Ver. Accelerator ; End type NⅡ9/13[saga] - 2011/01/13 00:24:40.14 y/ID8doL0 10/15




一方通行は今や科学サイド魔術サイド双方が手に入れたがっている存在だ。
互いに渡すくらいならばその前に殺してしまったほうがマシだ、そう思われるほどに。


『一方通行』という最先端技術の結晶の流出を恐れた科学サイドと、『学園都市第一位』という存在が復活し自分達に牙を剥く事を魔術サイドが
彼を学園都市という檻から脱出させようと上条達がハイジャックを決行していた飛行場に結集していた。


自動操縦ヘリの電気機器の制御を最強の電撃使いである御坂美琴が行い、
それを阻止しようと攻撃を仕掛ける魔術師を上条当麻とインデックスが、能力者は片手間ながらも美琴が次々と蹴散らせてゆく。


キキーッ!と轟音を鳴らしてこの場には全くそぐわない趣味の良い普通車が、銃痕や爆発の名残を残しながら駆け込んできた。
立て付きの悪くなった自動ドアを強引に手動で開けて、中から2人の女性と1人の少女が抜け出てくる。


「お姉様!こっち追ってきたヤツらは全部撃墜させといた!!」

「よくやった、流石は私の妹!!」


打ち止めと運転手の黄泉川を護りここまで奮闘を重ねてきた番外個体が自慢するように声を張り上げる。
彼女の手には所々掠り傷が見受けられたがそれすらも勲章のように誇らしくしていた。


「あの人は!?ってミサカはミサカはお姉様に尋ねてみるっ!」


疑問符を浮かべた打ち止めを取り敢えず安全になった機内に押し込めながら、
アイツならすぐ来るからとだけ言って美琴は再び戦場へと駆け出した。


陳腐なゲームセンターのコインを高く放り、それを弾いて自身の異名である超電磁砲を解き放つ。
彼女が吹き飛ばした敵の中には能力者以外に魔術者も数名いたが、圧倒的な能力の前では慣れ不慣れは関係の無いようだった。


自分が倒した敵が全員ちゃんと気絶したことを確認した美琴は仲間の援護に入ろうと他で起こっている戦闘を探す。
その中で美琴は、かつてトラウマになるほど痛めつけられたチカラの残滓を見た。
ありとあらゆるのベクトルを掌握し絶対防御の壁の中で高圧的且つ暴力的な能力を奮う学園都市最強の詩存在。



「―――――――来たわね、一方通行!!!」



737 : 十人十色の幸福と、三者三様の解釈方式 ――――――― Ver. Accelerator ; End type NⅡ10/13[saga] - 2011/01/13 00:25:48.42 y/ID8doL0 11/15



一方通行は、その圧倒的な能力で能力者・魔術師関係なく自身に攻撃を加えた人間全てを打ち倒していた。
時には最強の超能力を。時には警備員の戦闘車両から拝借したショットガンを用いて、
嘗て『グループ』にいた頃にスキルアウト相手に使っていた手段を応用させ煮詰めていく。


反射の上手く通用できない魔術が彼の頬を微かに掠めた。
だが一方通行はそれを気にしない。
不自然な軌道を描いて反射される敵の攻撃すらも集団戦に挑む敵の仲間へと強制的にぶつける事で大勢の魔術師達をも彼は膝を地に着かせた。


打ち止めが乗った飛行機は一体何処だ。
一方通行の目的はただ一つ。機内で打ち止めと合流し、この学園都市を脱出する事。
手当たり次第に騒ぎの集まる場所を一掃して回っていた一方通行にここ数日で聞きなれた声がかかった。



「一方通行!!打ち止めは右から3番目のヘリに乗ってる!制御調整は御坂がしてあっから、スグにでも脱出できるはずだ!!」



上条の言葉に従い右から3番目だというヘリを見て、一方通行はギョッとした。
順番など関係ない。横にズラリと並んだヘリ全てを纏めて一掃しようと、遂に学年都市が本気を出したのだ。


――――――『六枚羽』。
この第23学区より発進する学園都市最新鋭の無人攻撃ヘリが、
搭載した摩擦弾頭と対ミサイル兵器をヘリ全体に標準を合わせ攻撃開始しようと迫る。


六枚羽の後方には超電磁砲に使うコインを構える御坂美琴が見受けられたが、美琴は明らかに能力の行使を躊躇っていた。
無理矢理それを破壊したとき、六枚羽の下にある打ち止めの乗ったヘリへとその巨大な破片や爆風の衝撃襲う事に思い至ったのだ。
だが、いち早く六枚羽を対処せねば、あちらからの攻撃で打ち止めが死にかねない。



「――――― 撃て、超電磁砲!!!!」



張り上げられた一方通行の声にピクリと反応した美琴が、半歩遅れて自身の必殺技とも言える『超電磁砲』を派手に撃ち放った。
一瞬でバラバラとなった1機250億円の化物は、爆発を上げながら各々意味を持たない大きな欠片と変わって下に並んだヘリ群を襲撃する。


爆風の煽りと六枚羽の欠片が打ち止めの乗ったヘリを襲う直前、一方通行の体がふわりと軽やかに宙を舞った。
空中を突き抜けるような速さで移動した一方通行の体がそのまま衝撃と激突し、彼を襲う敵意全てを跳ね返す。


738 : 十人十色の幸福と、三者三様の解釈方式 ――――――― Ver. Accelerator ; End type NⅡ11/13[saga] - 2011/01/13 00:27:56.09 y/ID8doL0 12/15




超電磁砲によって破壊された六枚羽が催す全ての攻撃を反射した一方通行がするりと体を滑らせて打ち止めの居る機内へと入り込んだ。
『作戦』の打ち合わせの為にここ数日、懐かしい顔ぶれと何度も顔を合わせたが、
この幼い少女とだけは彼は今日この時久々に真正面から向き合う事となった。


逃げてんじゃねえよ、という上条当麻の言葉を思い出す。
ああ、そうだ。
自分は逃げていたのだ。


自身の我儘の所為で彼女を茨の道へと伴ってしまう事を、本当に彼女が後悔していないのか。
尋ねるのが恐くて顔を合わせなかった。



「―――――お前は、本当に後悔しねえンだな。
 ………確かにアイツらは、俺達がまた帰ってこれる様に居場所は作っておくつった。黄泉川も芳川も家で待ってるつった。
 だが、全てが収まるまで無事に逃げ切れる保証も無けりゃァ終わりが何年先になるかも分からねえ。―― それでも、本当に解ってるんだな?」



最後のチャンスだった。
ヘリの外では自分達の出発を今か今かと待って激しい戦闘に臨んでいる仲間の顔が窺えたが、こればかりは譲れなかった。
彼女がやはり嫌だといえば、それを優先する意思があった。覚悟があった。だからこそ、



「馬鹿言わないで!、ってミサカはミサカは激怒してみる!!
 何言ってるの?本当に解ってるのって聞きたいのはコッチだよ!!ミサカの事、本当に解ってるの!?」



だからこそ、打ち止めが一方通行に抱いたのは『怒り』だった。



「ミサカの幸せはあなたが幸せな事だよ?
 ………陳腐な自己満足じゃなくて、心の底から笑っているあなたを『あなたの隣で』いつまでも眺める事なんだよ!!
 ミサカは言ったじゃない、あなたも言ったじゃない。もう、違うの?――――『ずっと一緒にいたかった』って言葉は、嘘じゃないよね?」



打ち止めが泣いていた。
ヒクリヒクリとしゃくりを上げながら、それでも真っ直ぐな瞳で一方通行を見抜き凛とした態度で彼と対峙する。
これは苦難への『覚悟』じゃない、一方通行という人間と共に歩みたいと言う『願い』なのだと言葉で、体で示している。


739 : 十人十色の幸福と、三者三様の解釈方式 ――――――― Ver. Accelerator ; End type NⅡ12/13[saga] - 2011/01/13 00:29:11.17 y/ID8doL0 13/15






「――――― ゴメン、」



一方通行には、それしか言葉が見つからなかった。
勝手に無謀な選択をしてしまった事、それが原因で悲しませてしまった事、これから共に居て貰う事、
それら全てを小さな声で謝り、そして、



「こうゆう時はね。『ありがとう』って言うんだよ、ってミサカはミサカはあなたに教えてあげてみたり」



涙を流しながら打ち止めが、同じ様にいつの間にか自分と同じ大粒の滴を零す一方通行の両目をハンカチで拭いながら優しく応えた。


大丈夫だよ、
そう言って一方通行の骨ばった右手に自身の小さな右手を重ねる。


あと必要なのは、ボタン一つだった。
自動操縦で発進する機体の起動ボタンへと、愛しい人の手をとった右手が静かに伸びて、




そして――――――――――









740 : 十人十色の幸福と、三者三様の解釈方式 ――――――― Ver. Accelerator ; End type NⅡ13/13[saga] - 2011/01/13 00:31:57.85 y/ID8doL0 14/15





『――――― 続いてのニュースです。長期に及んだ学園都市とイギリス清教におけるクローン問題も、
 クローンの人間性を支持する各国での運動から徐々に解決の兆しが見え始め―――――――――――――――』



混雑を極めた空港から様々なチェックを終え漸く飛行機の座席に着けた少女が、ふぅ、と小さく溜息を吐いた。
まだ出発すらしていないのに既にいかにも気が滅入りましたという状態の少女に、
通路を挟んで隣に座っていた人の良さそうな老婦人の妻がクスクスと笑いながら声をかける。



「今日は空港も一段と混んでましたものね。私達も学園都市まで帰るのに一苦労……―――――― お二人は?ご兄妹で観光にでも?」


尋ねられた少女は当初こそきょとん、としながらも最後の言葉には満面の笑みを浮かべ胸を張り堂々と応えた。



「はい、観光じゃないけど家族ですっ!ってミサカはミサカは良いお兄ちゃんなんだよ~なんてあの人を自慢しながら答えてみる!!」



少女の台詞に照れたのか白い顔を耳まで真っ赤にさせた兄が、妹へと軽いチョップを入れた。
そんな兄の態度にニヤニヤとしながら一瞬意地悪そうな顔をした妹が肘で兄を小突きながら、だってそうでしょ?と小首を傾げる。




「~~~~~~あァ、そォだよ家族だよ!――――――……ずっとずっと一緒のな」





彼らの乗った飛行機がゆっくりと、学園都市へと向けて飛び立っていった。








十人十色の幸福と、三者三様の解釈方式 ――――――― Ver. Accelerator ; End type = Normal EndⅡ.(完)


741 : 十人十色[sage] - 2011/01/13 00:33:48.09 y/ID8doL0 15/15


以上です。
以下あとがき及び謝罪・弁明となります。


まず本編について。
長くお付き合いいただいた『十人十色の幸福シリーズ』もこれで全編終了となります。
ここまで読んでくださった皆様、本当に有難うございました。


次にこのシリーズにおける過激な鬱・グロ描写について。

シリーズ本編、およびそこから派生した感想レスなどにより気分を害してしまった方、
またスレ自体が描写制限における議論方向に入ったことで投下に支障をきたしてしまった方、レスの方向性に不快を感じてしまった方、
本当に申し訳ありませんでした。

本日投下した最後の話をご読了頂いた方にもご理解いただけるかは定かでありませんが、
弁明させて戴くと「どんなに綺麗事を並べたってやはり彼の選択は間違っていたんだ」という事をより深く意識してもらえるよう
前回の過激な描写は必要と判断して投下させて致しました。

スレ立ての申し出に対しては、
全編を通しても1スレ分には満たないだろうという理由と個人的な事情から総合での短期連載という形を取らせて戴きました。

しかしながら>>662様や>>668様,>>682様の仰ることは最もであり、『>>1に従った明記を行った』という理由を盾に
公共の場であることに対し考えの浅い投下を致してしまったと自負しております。
こちらの作品、および派生した関連事項において不快に感じられた全ての方に改めて謝罪申し上げます。


最後に、問題が発生する以前から本作を最後にシリーズを終わらせる意思があった事、
問題が生じた事による内容変更等が一切無かった事を明記して全コメントを閉じさせて戴きたく思います。

長々と失礼致しました。
有難くも感想などを付けていただける場合には、真に勝手ながら本編内容やこちらの謝罪に関して極力触れないものをお願いします。