943 : 上条「性分だからね」 1/5[] - 2011/01/17 00:00:15.68 1gbReJuo0 1/7

買い出しに行った家主たちを待ちながら、
僕は、夕飯の下ごしらえをする。
日本人ならお米、そんな定型文に従って
米を研いで、野菜を切る。

番外個体「ただいま」

打ち止め「お留守番ご苦労様! ってミサカはミサカ労ってみたり!」

家主の姉妹(だと僕は思っている。真相は教えてくれない)が、
姉はけだるげに、妹は元気よく挨拶をする。

上条「おかえり」

打ち止め「晩御飯できたってミサカはミサカは覗きこんでみたり」

上条「こら、行儀悪いでしょ。まだ途中だし、向こうに行ってなさい」

後ろから乗り出して、僕の手元を覗き込む妹さんに注意する。
姉の方は、僕の事など気にせずにリビングに入っていく。

打ち止め「ねぇ、今日は何?」

上条「ん、まだわからないよ」

打ち止め「もうお野菜を切ってるのに? ってミサカはミサカは疑問に思ってみたり」

不思議そうな声を出す妹さん。
僕は手元の野菜から視線を外さずに、

上条「切りながら、考えてるんだ」

打ち止め「そんなに適当でいいの?」

上条「ダメかもしれないけど、性分なんだ。昔から」

打ち止め「嘘つきだね」

上条「性分なんだ。生まれた時から」

僕はまたあっさりと嘘をつく
記憶が無いから、昔の事なんてしらないのだ。

元スレ
▽ 【禁書目録】「とあるシリーズSS総合スレ」-21冊目-【超電磁砲】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1294925147/
944 : 上条「性分だからね」 2/5[] - 2011/01/17 00:00:50.84 1gbReJuo0 2/7

あの日、気がつくと僕は二人組の少女に看病されていた。
二人の話によると、雪原でひとり気を失っていたらしい。
その時、既に僕は自分の名前さえ忘れてしまっていた。
日本人なのに、どうしてこの国いたのかも。

「記憶喪失か、まいったな」

番外個体「あまり、まいってるように見えないけど」

「いや、自分の名前さえわからないんだ。これはメンドクサイな」

打ち止め「アナタは上条だよ」

「ん、どうして」

番外個体「あった事あるもの。知り合いってわけじゃないけど」

「そうか。じゃあ、僕は上条だな」

打ち止め「ぼく?」

「ん、どうしたんだ」

打ち止め「な、なんでもないってミサカはミサカはごまかしてみたり」

なんて会話の後、僕は「上条」になった。
いや、戻ったのかもしれないけど、僕は知らない。
覚えていないから記憶喪失なのだから。

945 : 上条「性分だからね」 3/5[] - 2011/01/17 00:01:22.98 1gbReJuo0 3/7

ついでに、彼女たちはとてもよく似ていたので、

上条「君たちは姉妹なの」

と、聞いてみた。そしたら、

番外個体「そ、ちなみにミサカが妹」

と自分を差して年上の少女が言った・
実にいいかげんだ。
でも、嫌いではない。

946 : 上条「性分だからね」 4/5[] - 2011/01/17 00:02:22.80 1gbReJuo0 4/7

上条「そういえばさ」

番外個体「何? くだらないことなら無視するけど」

彼女たちには、時折玄関を眺めて物思いにふける
癖が、二人ともに共通してある。
僕には留守番している子どもが、
親を待っているように見えるにしかみえない。
でも、口には出さない。怒らせると結構怖いのだ、二人とも。

上条「僕の知り合いと知り合いって、前に言ってたよね」

この時は姉(繰り返すが僕がそう思っている方)が、
キッチンでテーブルに頬杖をつきながら、玄関を眺めていた。

番外個体「うん。確かにそう言ったね」

上条「連絡とれないの」

番外個体「とれるけど、とらない」

上条「どうして?」

番外個体「あなたが、聞いてた話と全く別人だからね」

上条「そうなのかな」

と言っても、僕は昔の自分がどんな人間だったのか。
全く知らないのだから、違いなどわかるはずが無い。
もしかしたら、とんでもなく悪い奴で、
女の子を、泣かせてばかりだったのかもしれない。
ま、鏡を見る限り違うだろうけど。

番外個体「だから、様子をみてるの」

上条「様子?」

番外個体「そ、いろいろと観察して信用できそうなら連絡してあげる」

上条「疑り深いんだね」

番外個体「そういう性格なの。生まれつき」

上条「僕は生まれつきの信頼に足る男だよ」

番外個体「また、いい加減な事をいうんだね」

性分だから仕方ない。
僕はこういう男なのだ。

947 : 上条「性分だからね」 5/6[] - 2011/01/17 00:03:04.47 1gbReJuo0 5/7

夢なんだと思う。
真っ白いビル街。
道路の真ん中で、女の子が二人泣いている。

一人は銀色の髪をした女の子で、
真っ白い服を着ていた。

もう一人は、家主の姉妹に良く似ていて、
あの二人の真ん中くらいの年頃だ。

「どうして私の手をとってくれなかったの」
「どうして許しだけ求めて言っちゃったの」

二人が泣きながら言うけど、
僕には何が何だかわからない。
ただ、二人の泣き顔は見たくない
それだけは思うのに、
話し掛ける事も出来ない。

「悪いな、迷惑掛けちまって」
「俺が原因なのにな」

気がつくと、僕の後ろに二人の男の子が立っていた。
ふたりとも、黒髪のツンツン頭でよく似ていた。
双子なのかもしれない。
そして、見たこと無いはずなのに
どこかで見たような気がする。

上条「いや、迷惑ってなんだよ。そんなことより、あの子たちが泣いてるんだけど」

夢だからか、僕は自分の要求だけ二人に告げる。
普段なら、二人の話を聞いてから言ったかもしれない。
でも、この夢の中で僕は、自分の都合を押し付けた。

「俺達にはできない」
「でも、お前なら……」

上条「無理だろ。だって……」

僕はあの子たちが何故泣いているのか、
いや、あの子たちの名前さえ知らないのだ。

そう告げようとした時に目が覚めた。

948 : 上条「性分だからね」 6/6[] - 2011/01/17 00:03:52.88 1gbReJuo0 6/7

打ち止め「お姉様に連絡を取ろうかってミサカはミサカは提案してみる」

上条「お姉様?」

リビングに掃除機をかけていた時、
テレビを見ていた妹さんが僕に話しかける。
最初は僕もテレビを見ようとしていたのだが、
ロシア語がわからなくて諦めた。

打ち止め「そう、アナタの知り合いなの」

上条「前言ってた人かな」

打ち止め「そうだよってミサカはミサカは肯定してみたり」

上条「んー。そうだなぁ」

僕はこれまでの人生(と言っても一カ月ちょっとの生活)を振り返る。
日々の家事に、言葉の通じない街かど。
玄関を眺める二人に、

夢の中の少女と少年。

上条「遠慮しておく」

打ち止め「どうして?」

上条「お姉さんの方に、まず信頼されなきゃならないし、それに」

打ち止め「それに?」

上条「なんか、どうでもよくなった」

言いながら、僕はもう一度
あの夢の事を思い返す。

あそこに全ての答えがある。

打ち止め「またそういう事を言うんだね」

上条「性分なんだよ。僕が生まれた日からの」


949 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[] - 2011/01/17 00:06:03.59 1gbReJuo0 7/7

以上です

新刊でたら使えなくなるそうなネタを今のうちに書きたかったんです。

お目汚し失礼しました