432 : 9月1日[sage] - 2011/02/12 01:24:14.47 nKmgWxEAO 1/3

 日差しの強い午後、ある病室に一人の男が訪れる。


「加減はどうだ」

「あら、今日も来たの?」

「…迷惑だったか?」

「ふふふ、別に迷惑では無いわ。それと体調の事だけど」


 顔に意地悪い笑みを浮かべながら女は言う。


「すこぶる良好よ。不思議とね」

「良くなったのであれば、少しは嬉しそうな顔をしたらいいのでは?」

「そうね、でも朝起きたら元気になってました。
 そんな不思議な事がいきなり起きたら手放しに喜べる?」

「…つまらない事を気にするのだな」

「ええ、悪い?」

「悪くは、無いな」


 目を瞑りながら男は笑みを浮かべる。


「笑ってるの?似合わないわね」

「私だって笑う事はある」

「…ふふふ」

「何がおかしい」

「その顔の傷がおかしくって。猫にでも引っかかれたの?」

「…ちょっとした事故だ」

「それに目の下の隈、随分疲れる事があったのかしら?」

「どうでもいい事だ、君には関係無い」


 男と女、普通ならば少しは甘い言葉が飛び交うのかもしれない。
しかし、どうやらこの二人の間にはそのような物は必要が無さそうだ。


「ねえ、一つ聞いていい?」

「聞くだけならば」

「あなたが『治して』くれたの?」

「私『では』ない」

「ふうん…。じゃああなたは何もしてない訳?」

「答える必要は無い」

「なんだ、つまらないの」

「何がだ?」

「私のピンチを格好いい騎士様が助けてくれたのかと思ってたのに」

「随分つまらない妄想だな」

「あら、酷いのね。でも間違って無いと思うのだけど」


 そう言うと女は再び意地悪い笑みを浮かべ、こう続けた。


「昨日、夢を見たのよ。黒い服来た男、それにツンツン頭の少年の夢」

元スレ
▽ 【禁書目録】「とあるシリーズSS総合スレ」-23冊目-【超電磁砲】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1297083486/
433 : 9月1日[sage] - 2011/02/12 01:26:33.72 nKmgWxEAO 2/3

「夢の中でも私は病室に居たわ。夢の中くらい元気であってもいいのにね」

「…続けてくれ」

「そこにその男二人が入って来たのよ。そうしたらその二人は何したと思う?」

「………」

「ツンツン頭の少年が私に手を伸ばすのよ。襲われるのかと思ったわ。
 でも私は動けないからなすがまま。…これだけ話すと少し変かもね」

「あまり男に話す夢では無いな」

「確かにね。でもそういう類の夢ではなかったわ。
 少年が私に触れるといきなり不思議な音がしたのよ。すると―」


 そこまで言って訪れたのは沈黙。不思議に思い男は女の顔を覗くと、すぐさま沈黙は破られた。


「そろそろ話してくれてもいいんじゃないかしら?」

「私『は』何もしていない」

「あの少年が助けてくれたって事?」

「その通りだ」

「ふふふ、素直じゃないのね…。あの少年はあなたが呼んで来たのでしょう?」

「答える必要は無い」

「…呆れた。その疲れた顔と雰囲気で少しは察してしまうのよ」

「…勝手に思えばいいだろう」

「そう、じゃあ一つだけ聞かせてくれる?」


 男は首を少し動かし肯定の意を伝える。


「私のために、あなたは頑張ってくれたの?」


 その質問に男は、少年のような目を開き答える。


「自分のためだ、決して君のようなつまらない女のためでは無い」

「…顔と言葉が合ってないわよ」


 確かに男は言葉に合わない優しい顔をしていた。それに気付いて今度は、ばつの悪そうな顔をしてこう言う。


「…ただ、ほんの少しは、君の事を考えたかもしれない」

「ふーん…、そういう事も言えるのね」

「…似合わない事をした」

「ふふふ…。ねえ、黒い服以外は持ってるの?」

「なぜ急にそんな事を?」

「一緒に歩くのだから、そんな暑苦しい格好は控えて欲しいと思ってね」

「…用意しておこう」


 柔らかい雰囲気、心地よい沈黙。おそらくこれからもこの時間は続くのだろう。
 9月1日、晴れ。つまらない男の戦いはこの日を以て終わりを告げた。

434 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage] - 2011/02/12 01:29:40.71 nKmgWxEAO 3/3

以上です、妄想だだ漏れ失礼しました