408 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage] - 2011/02/25 17:03:32.68 LyCaoQGB0 1/7

このスレで『座標移動と折り鶴』と『ウソツキと折り鶴』を投下した者です。
3作目ができましたので、投下します。
出演者は神裂とステイルです。


※関連

座標移動と折り鶴
http://toaruss.blog.jp/archives/1024419250.html

ウソツキと折り鶴
http://toaruss.blog.jp/archives/1024738108.html

元スレ
▽ 【禁書目録】「とあるシリーズSS総合スレ」-24冊目-【超電磁砲】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1298034529/
410 : 女教皇と折り鶴[saga] - 2011/02/25 17:06:27.33 LyCaoQGB0 2/7

―イギリス清教「必要悪の教会」―


「うーん」

男のうなり声が、そばの部屋から聞こえてきた。

片手に書類を持ちながら、廊下を歩いていた神裂火織は立ち止まった。
聞こえてきた声は自分が今探していた人物のものだったからだ。

コンコン

「どうぞ」

一拍置いて返事が来た。
神裂は扉を開けた。

「……君か」
「探しましたよ、ステイル」

部屋には赤髪の神父、ステイル・マグヌスがけだるそうに座っていた。

411 : 女教皇と折り鶴[saga] - 2011/02/25 17:07:51.00 LyCaoQGB0 3/7

「例の魔術結社の報告書です。近々作戦を決行すると」

「ふむ……」

 ステイルは神裂から受け取った報告書を読み始める。

「珍しいものがありますね」

 ステイルの前の机には、このイギリスではめったに見ない折り鶴があった。

「ああ、ただの研究さ」

 ステイルは報告書を見ながら答える。

「研究……」

 ステイルの研究とは、ただの折り紙の作り方を意味していない。
 つまり、これは魔術関係のものだ。

「土御門の使う魔術に興味を持ってね。制限付きとはいえ、奴の魔術はなかなか使える」

「そうですね」

 神裂も同僚の土御門元春とは、一緒に仕事をしたことはある。その中で見た、彼の魔術は確かに見事なものだった。
 彼が魔術を多用できない体であることが悔やまれる。

「これは触っても大丈夫でしょうか?」

「構わないよ。魔力は込めていないからね」

 神裂は机の上の折り鶴を手にした。
 赤い紙で作られた折り鶴は少し型くずれている。

(懐かしいですね)

 幼いころの記憶が蘇る。
 昔、よく折り紙遊びをした。大人顔負けの作品を作って、周りを驚かせることが楽しみだった。

「内容は把握した。まあ、手こずるものでもないだろう」

 ステイルはしゃべりつつ、報告書を神裂に返した。

「ええ、油断しなければ問題ないでしょう」

「そんなヘマはしないさ……ところで神裂」

「はい」

「少し聞きたいことがあるんだが……」

「何でしょう?」

 少し躊躇う素振りを見せた後、ステイルは口を開いた。

「君は折り鶴を作れるか?」

412 : 女教皇と折り鶴[saga] - 2011/02/25 17:10:26.70 LyCaoQGB0 4/7

「見よう見まねでやってみたんだが、うまく作れなくてね……そのザマだよ」

「見よう見まねにしては、よくできていると思いますよ」

「しょせん出来損ないさ」

 神裂が褒め言葉を言っても、ステイルは不機嫌な表情を変えない。
 魔術の研究に関して、ステイルは人一倍熱心に取り組む。専門外の魔術とはいえ、なかなか思い通りの結果を出せないのが気に入らないのだろう。

「わかりました。昔作ったことがあるので、やってみましょう」

「すまない、神裂」

「これぐらい構いませんよ」

 机の上には折り紙の束があった。神裂はそこから一枚抜き取り、手早く折り始めた。

「……」

 ステイルは神裂の手元をじっと見ている。
 久々に折り紙を触るところを見られるのは、少しこそばゆい。

「できました」

 神裂は青色の折り鶴を完成させた。
 ステイルのものと比べると、その美しさは歴然としている。

「貸してくれ」

 ステイルは神裂の折り鶴を、手にとって観察し始めた。

「僕のものとは折り方が違うようだが?」

「折り紙には様々な流派がありますからね。土御門のものと違っていてもおかしくありません」

「折り方でも魔術の性質が変わる、ということか。奥が深いな」

 ステイルは神裂の折り鶴を自分のものの横に置いた。

「参考になりそうですか?」

「ああ。ただ、僕自身の知識が足りない。今度はもう少し別の方面から見てみる」

「研究もいいですが、たまには休んでくださいね」

 体から音を鳴らしてのびをするステイルに神裂は優しく言葉をかけた。

 目の前の同僚が、日頃どれだけ魔術の研究にどれだけ時間を割いているかはよく知っている。

413 : 女教皇と折り鶴[saga] - 2011/02/25 17:12:02.68 LyCaoQGB0 5/7

「……っと、そうだ」

「?」

 ステイルは机の上の折り鶴に手をかざした。

「役目を果たした折り鶴は、すぐに後始末するものらしい。君のも構わないかい?」

「どうぞ」

 神裂が答えた瞬間、ステイルの手から炎が現れ、折り鶴を灰にした。

「それにしても、あなたが研究の手伝いをお願いするのも珍しいですね」

「少し行き詰まっていたからね……一人で専門外の研究をするのはやはり難しい」

「……ふふ、そうですね」

 神裂は口に手を当てなから微笑んだ。

「何だい?」

「いえ、昔のことを思い出して」



「あの子と出会ったころは、よくルーンの配置で口喧嘩していましたね」

「……」

 当時、ステイルは自分なりのルーンの配置を研究していた。
 彼が一人で黙々とルーンを配置していると、かつての親友が口出しをしてくることがあった。

 理論的には、多くの魔導書の知識を持つ親友の言い分が正しいはずだが、彼はそれをなかなか認めようとしなかった。

 結局、神裂が仲裁に入るまで口喧嘩を続けるというのがお決まりになった。

「あのころは自分の力を過信していたからね。正論をすんなり受け入れるほど大人ではなかった」

 ステイルは煙草をくわえて、火をつけた。
 その目はかつての自分を哀れむようだ。

「それがあったからこそ、あの子との絆が深められたのでしょう?」

「やがては失われる絆を、ね」

 ステイルはため息と共に、煙を吐き出した。


 今の親友は自分たちと過ごした日々を覚えていない。


「これ以上、あの子の記憶が失われることはありません。絆も作り直せます」

「上条当麻の受け売りかい?全く、あの男はどれだけ人に影響を及ぼせば気が済むんだ」

 ステイルがとある少年の名を、忌々しげに口にする。

 親友を救い出し、今は自分たちがいた場所に立つ少年の名を。

「……あの男のことを思い出すと疲れる。君の忠告通り休むとしよう」

 ステイルは椅子から立ち上がり、静かに部屋から出ていった。

414 : 女教皇と折り鶴[saga] - 2011/02/25 17:13:42.26 LyCaoQGB0 6/7

「…………」

 親友と出会ってから、ステイルは少しだけ人に頼ることを覚えた。
 それは、彼が成長するきっかけとなった。

 ただ、素直に頼めない部分も未だにある。
 先ほど折り鶴を作るよう頼んできたときも、少し迷いが見えた。

(……私も人のことは言えませんが)

 天草式のみんなのこと、そして上条当麻のこと。

 自分も素直になり切れない部分が多い。



 そういえば。
 あの少年はまた厄介ごとに巻き込まれて入院中と聞く。

(千羽鶴でも送りましょうか)

 今までのお礼ではなく、早く治りますようにという純粋な想いなら、彼も受け取ってくれるかもしれない。

 神裂は彼が喜ぶ顔を思い浮かべて部屋を出た。

  了

415 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga] - 2011/02/25 17:16:49.62 LyCaoQGB0 7/7

以上です。お読みいただきありがとうございました。

このシリーズもこれで終わりです。