741 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage] - 2011/03/05 00:41:38.61 vKcqBOCO0 1/8

6レスお借りします。

ステイルと小萌のお話です。

駄文ですが、よろしくお願いします。

元スレ
▽ 【禁書目録】「とあるシリーズSS総合スレ」-24冊目-【超電磁砲】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1298034529/
742 : 雨天の一服[saga] - 2011/03/05 00:44:52.83 vKcqBOCO0 2/8

 学園都市に設けられた数少ない喫煙室。

(こういうのを、「風情がない」と言うのかね……)

 赤髪の長身神父、ステイル・マグヌスは喫煙室の中で煙草をふかしていた。

 ステイルが吐き出す煙は、彼が座る机の穴に吸い込まれていく。

 これは分煙装置と言うらしい。
 喫煙者とそうでない者が、同じ空間で過ごすためのものらしいだが、ステイルは好きではない。

 煙が周りを漂う心地よい空間を、この装置は壊してしまう。何も喫煙室にまでつけなくてもいいだろう。

 ステイルはガラス張りの喫煙室から、忌々しげに外を見る。
 空は灰色に曇り、激しい雨が降り注いでいる。

 いつもなら、全面禁煙などどこ吹く風で煙草を吸う。
 しかしこの雨のせいで、屋内で煙草を吸う羽目になってしまった。



 ガチャリ


 ステイルのが座る椅子の後ろで、扉を開ける音が聞こえた。

「ふ~、やっと一息つけるのです」

 小さな女の子の声だ。わざわざ喫煙室で一息着くということは、雨宿りなのだろうか。

「あれ?」

 いや、違う。
 自分はこの声を知っている。
 ある意味、上条当麻よりも厄介な人の声。
 

「あー!!もしかして、あの時の神父さんですか?」

 ステイルは恐る恐る後ろを振り返った。
 扉の前には、見た目は子供でも中身は高校教師、月詠小萌が笑顔で立っていた。

743 : 雨天の一服[saga] - 2011/03/05 00:46:54.33 vKcqBOCO0 3/8

「会いたかったのです。この前はちゃんとお礼も言えなかったし―」

「ただの応急処置だ。礼はいらない」

 ステイルは小萌の言葉を遮った。

 確かに、自分が魔術で『吸血殺し』を治療した。
 ただ、それはこちらにも借りがあったせいもあるのだ。


「……むしろ礼を言わなければならないのは、僕の方だ」

「え?どういうことですか?」

 小萌は首を傾げた。

「あの時あなたが治療を施してくれなければ、あの子の命は危なかった」

「あの子?」

「7月20日と言えば、わかるかい?」

「あ」

 小萌が口に手を当てた。

 かつて、小萌が魔術の発動を手伝ってくれなければ、自分が最も大切な少女は死んでいた。
 さらに、部屋の天井を破壊される事態まで引き起こしたにもかかわらず、今もインデックスと仲良くしていることも聞いている。
 ステイルにとって、小萌は頭の上がらない存在と言えるのだ。

「あの時はシスターちゃんの言うとおりにしただけなのです」

「それを言うなら、姫神秋沙の件も貴女の知識があったからこそ可能だった。僕は少し手を貸したに過ぎない。お礼を受け取るほどではないさ」

「むう……どうして先生にお礼を言わせてくれないのですかね~」

 そうはいっても、お礼を受け取るのはどうしても納得できない。
 ステイルは話題を変えるものはないかと考えた。

 そう時間はかからずに、案は出る。

「それより、ここに来た目的を忘れているんじゃないか?」

「話をそらそうとしているのですか?」

「いいえ」

 無論、話をそらすつもりだ。

「……じゃあとりあえず失礼するのです」

 小萌はステイルの横に座り、持っている鞄を開けた。

 しばらくごそごそと鞄をあさる音がした。

「あれ?」

 音が激しくなる。そして、

「煙草、ないのです……」

 落胆した声が聞こえた。

744 : 雨天の一服[saga] - 2011/03/05 00:48:20.27 vKcqBOCO0 4/8

 どうやら、家に忘れてきたらしい。

「うう、せっかく用事が終わったのに」

 子萌はがっくりと肩を落としている。

 まあ、同じ立場だったら自分も似たような反応をするだろう。ステイルは同情しつつ、口に咥えていた煙草を消した。

 懐から煙草の箱を取り出し、新しい煙草を1本引き抜く。

 ふと箱の中に目をやる。
 残り本数にはまだ余裕がある。

「…………」

 馬鹿なことを思いついた。
 普段ならまずやらないことだ。


「へ?」

「ヘビースモーカーの苦しみは多少わかる」

「で、でも」

「僕の手持ちにはまだ余裕がある」

 ステイルは煙草を一本、子萌の目の前に差し出した。

「ありがとう、なのです」

 子萌はゆっくりと煙草を受け取った。

「火は?」

「ライターはあるのです!」

 小萌は安物のライターを鞄から取り出し、掲げた。

 ほどなく、2つの煙がゆらゆらと上がる。

745 : 雨天の一服[saga] - 2011/03/05 00:49:50.36 vKcqBOCO0 5/8

 学園都市内において、自分が目立つ格好であることは自覚している。
 しかし、自分の横で煙草を満足げに吸う幼女(に見える大人)ほどではないだろう。

 ステイルはそんなことを考えながら、小萌を横目で見ていた。

「ん?」

 小萌の煙草を吸う姿に、ステイルは何かを感じた。

「はい?」

「いや……少しね」

 彼女の仕草はどこか見覚えがある。
 しかし、知り合いで煙草を吸う者はそう多くはないはずだが……。

 考え込むステイルを小萌は不思議そうに見つめた。

「そうか、そういうことか」

 既視感の正体がわかった。ある意味これは盲点だった。

「貴女の煙草の吸い方は、僕の吸い方と同じなんだ」

「ふ、ふふふぇ!?そ、そうですか?」

 ステイルの発言に小萌はたじろいだ。

「煙草の吸い方は人それぞれ微妙に違うものだと思っていたが……」

「あはは、ぐ、偶然ですねー……」

 小萌は顔を逸らして、ごにょごにょとつぶやいた。
 心なしか耳が少し赤く見える。

(?何か気に障ったのか?)

 それ以降、小萌は一言もしゃべらずに煙草を吸っていた。

 ステイルとしては、静かに煙草を吸うという目的が達成できたので、喜ぶべきことではある。
 しかし、何か釈然としないものがあった。

746 : 雨天の一服[saga] - 2011/03/05 00:51:16.88 vKcqBOCO0 6/8

「そろそろ行くか」

 ステイルは煙草を消し、立ち上がった。

「へ?もう行くのですか」

「一服はもう済んだ。外もマシになったようだしね」

 先ほどは激しく振っていた雨も、今は小降りになっている。
 部屋を出るにはいい頃合いだろう。

「それでは失礼するよ。もう前みたいに追いかけてこないように」

「ちゃんとお礼をさせてくれたら、そんなことはしないのです!」

 呆れたような口調のステイルに、小萌は反論した。

 ステイルはやれやれと肩をすくめた後、扉の前に移動した。

 そして、扉の取っ手に手をかけようとした時。

「ちょっと待ってください!」

 後ろから小萌の声が聞こえた。

「何だい?」

 ステイルは面倒くさいと思いつつ振り向いた。

「あの……神父さんとはまた会えるのですか?」

 小萌は不安げな目でステイルを見つめた。

747 : 雨天の一服[saga] - 2011/03/05 00:52:51.20 vKcqBOCO0 7/8

「…………」

 自分と彼女は住む世界が違う。よって、会えない可能性の方が高い。

 そう言って、部屋を出れば済むことだ。

 だが、ステイルはそれを口に出せなかった。

 普段は上司にすら暴言を吐くというのに。



「……煙草」

「え?」



「僕は基本的にイギリスの煙草しか吸ったことがなくてね」


 今日は何かがおかしい。


「できれば、でいいのだが」


 任務で疲れたのか。
 煙草を吸いすぎたのか。
 それとも。



「今度会ったときは、日本の煙草をいただけるとありがたい」



 自分はこの人の、汚れなき目に惹かれてしまったのだろうか。

  了

748 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga] - 2011/03/05 00:54:09.18 vKcqBOCO0 8/8

以上です。

小萌は未成年の喫煙を注意しないのかとか。
ステイルはこんなキャラじゃねーだろとか。

色々ツッコミどころは多かったと思います。すいません。

でも、この2人に会話させるのって結構難しいんだよ……。