956 : 1 ◆d.DwwZfFCo[sage saga] - 2011/03/09 16:57:22.91 +5LJBXhx0 1/3


「easy come easy go ですわ」

俺の目の前に居る少女は、パイプ椅子に腰掛けると同時にそう言った。いったい何を言ってやがるこのガキは。
ツインテールの小柄な少女。年齢は中学一年生ほどだろうか、名門お嬢様学校である常盤台の制服に身を包んでいる。
ハッキリ言ってこの場所には最も似つかわしくない人種だ。法を犯した犯罪者が収容されるこの刑務所では。
防弾ガラスの向こう側に座る少女に、こちら側に座る俺。決定的に確定的に違う。犯罪者と一般人。あぁちょっと違うな。
確かコイツは風紀委員だった。法を犯す者とソレを取り締まる者。正しくはこうだ。
コイツの名前など知らないが、それだけは知っている。なぜかって、答えは簡単。俺がコイツに捕まったからだ。
我ながら情けない限りだが、強盗をしている時にたまたま居合わせたこのガキに取り押さえられてしまった。

あぁ、あれからもう一年も経つか。

「生憎と学が無いんでな、言っている意味なんて分かりやしねぇぜ」

「なら調べるか、誰かに教えて貰うことですわね」

「ッハ!誰が」

肩を竦めて首を横に振ってみせる。
コイツの意図が分からない。なぜこのタイミングで俺の元を訪ねたのだろうか。
それにしてもコイツの口調はいちいちお嬢様風をふかしているようで気に食わない。

「今日は貴方が真面目にやっているか確認に来ましたの」

「おーおー、随分と上から言うじゃねえか。真面目も真面目、大真面目だぜ。能力も使えやしねぇし、やることなんざ何もねぇ。
 退屈は人を殺すっていうけど、ありゃ本当だな」

決められたスケジュール通りに決められた作業の繰り返し。たまに自分が機械か人間か分からなくなる。

「それなら良いですの」と満足げな笑みを浮かべて頷くツインテールのガキ。

「貴方のお陰で風紀委員として一歩前に進めましたから、感謝していますのよ」

元スレ
▽ 【禁書目録】「とあるシリーズSS総合スレ」-24冊目-【超電磁砲】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1298034529/
957 : コテ間違えたorz[sage saga] - 2011/03/09 16:58:44.40 +5LJBXhx0 2/3

「犯罪して感謝されるっつぅのも可笑しな話だな」

「ええ、自分でもそう思いますわ。可笑しな話――貴方には早くこちら側に復帰して貰いたいと思うのも」

「あぁ!?」

その言葉に耳を疑う。おいおい、どっかで螺子落っことして来たんじゃねぇか?コイツ。

「あれだけの能力ですもの。レベルを上げるのには相当努力したんじゃありませんの?」

「…………」

「努力のできる人間は、間違いを犯してもそれに気が付く事ができると思っていますわ。だから簡単にその結果は失われませんの」

それだけ言うと立ち上がりさっさと面会室から出て行ってしまう少女。
それに合わせて部屋の角に座っていた看守が「行くぞ」と短く呟いて俺の腕を引っ張り、退室を促す。

「なぁ、あのガキが言った英語の意味は何だ?」

なんとなく、看守に尋ねる。

「あ?easy come easy go ってあれだろ?簡単に手に入ったものは簡単に出て行くっていう意味だろうよ。そのままだけどな」

何を言ってるんだコイツ、と怪訝な顔をした看守の言葉に意味を理解する。
はは、なるほど。まさに俺にピッタリな言葉だ。

犯罪仲間も、金も、全て無くなった。下法な手段で集めた成果は全て消えた。
残っているのは、この能力だけだ。必死こいて強度を上げて、レベル5を目指して無駄に頑張って得た、この能力だけだ。

絶対等速。俺の投げた物体はソレが壊れるまで止まらない。どんなに遅くても、どんなに少しづつでも、前に進む。
愚かにも夢見ていたあの頃の俺にピッタリな能力だった。

「は」

小さく、笑う。
決めた。あのガキに言われたからではないが、俺はあの頃に戻ろう。
どうせ暇な人生だ。無駄に上を目指しても悪くは無い。ゆっくりと歩いていこう。

壊れるまで、進んでいこう。




終わり

958 : コテ間違えたorz[sage saga] - 2011/03/09 17:00:33.35 +5LJBXhx0 3/3

以上です。
絶対等速さんは間違いなくイケメンだと思う僕は可笑しいでしょうか?