519 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage] - 2011/03/20 22:12:31.42 YsaWWvlGo 1/6

禁書二次創作の黎明期に
一方さんが打ち止めを救えなかった(天井の銃撃から身を守ってしまった)と言う設定で
脳に障害を負った打ち止めが首輪とリードを付けられて
ヤンデレ化した一方さんと一緒に暮らしている
という話を展開していたサイトがあってだな

元スレ
▽ 【禁書目録】「とあるシリーズSS総合スレ」-25冊目-【超電磁砲】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1299734320/
544 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県)[sage] - 2011/03/21 03:38:57.36 nJc58NUz0 2/6

>>519の作品を全く知らないのに凄くそそられて涎が出たので自家発電してみた。
けど、なんか……違う……でも取り敢えず4レスほど頂く



その時。
がさり、という物音が一方通行の耳に入った。
ウイルスコードを上書き修正しながら目を向けると、運転席のドアに挟まれて気絶していたはずの天井亜雄が、いつの間にか一方通行の側まで近付いていた。

それだけならば、何の問題もない。
だが、彼の手には黒光りする拳銃が向けられていた。


「邪魔を……す、るな」


血走った目で、天井亜雄が呻き声をあげる。
残りコード数は23891。
まだ手は放せない。断片的に残ったコードが誤作動を起こせば、打ち止めの頭が破壊される恐れも考えられる。

モニタの警告文はもう数えられるほどしか残っていなかったが、一方通行にはそれが打ち止めの状態を示しているように見えた。
一つでも警告文が存在してはいけないのだ。


互いの距離は四メートル弱。外そうと思っても外せる距離ではない。


「く……っ!?」


今の一方通行は打ち止めの脳内の信号を操るために全力を注いでいるので、『反射』に力は割けない。
そんな事をすれば電子顕微鏡クラスの、精密な電気信号のやり取りに狂いが生じる。
それは打ち止めの脳を焼き切る事を意味していた。

残りコード数は7001。
警告ウィンドウはわずか9つ。
作業はまだ終わらない。ジリジリと時間が緩く速度を落とす。
天井は恐らく一方通行が何をしているのか、それを理解していない。
だが、天井からすれば、絶対に死なれては困る打ち止めを、一方通行なんて化け物に触れられるだけで気が狂いそうになるのだろう。


「邪魔を、するな」


天井亜雄の口から泡が飛ぶ。その目が赤く血走る。
一方通行に銃を向ける事がどれだけ無謀な事かも分からなくなっているようだった。
だが、今の一方通行は『反射』に力を割けない。この状態では、どうする事もできない。

あのチャチな鉛弾一発当たれば、それだけで彼は死ぬ。
打ち止めから手を放せ、と生存本能が告げる。『反射』を取り戻せと絶叫する。
確かにそうすれば彼は助かる。
拳銃どころか核兵器が降ってきたって傷一つつかないだろう。

だけど、それでも彼は打ち止めから手を放せなかった。
それだけは素直に、彼という少年の勇気を称賛してやるべきだ。




例え、手を放せなかった彼が、そのまま無意識に『反射』を展開させていたとしても。





545 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県)[saga] - 2011/03/21 03:40:17.02 nJc58NUz0 3/6




残るコード数は、わずか102。
警告ウィンドウはたった1つ。


「邪、ば、を……ごァああ!!」


絶叫する天井亜雄の震える手が、握られた拳銃が、その銃口が、一方通行を睨みつける。
避ける術などない。
彼はただ、引き金にかかる指の動きを呆然と眺めている事しかできない。

乾いた銃声。
それが耳に入る前に、ハンマーで殴り飛ばすような衝撃が一方通行の眉間に襲いかかった。
頭に受けた衝撃で、背が大きく後ろに仰け反る。
首の辺りで嫌な音が聞こえた。彼の足が、衝撃に耐えきれずに宙に浮いた。

それでも、彼は手を放さない。
絶対に、放さない。


はずだった。


衝撃など空想だった。
自分を襲うはずの銃弾は逆再生されたように天井亜雄へと引き戻し、そのまま彼の腹を穿った。
ジワリと広がる真っ赤な液体が、一方通行に自分の行いを明確に自覚させる。

―――――……なンだ、コレは。

放さなかったはずの手は確かに少女の額の真上にそのまま翳されてはいたが、
繊細で精密な作業自体は想定外の行動パターンが加わった事により
真っ直ぐに敷かれていた演算ルートから軌道を逸らし、結果に御動作を生じさせていた。

ガタガタと震えだす打ち止め。
口からは涎が滴り、獣の様な甲高い叫声だけが一方通行の脳を刺激する。


「……あ、ァ……あァ……ッ!!」



反射、してしまったのか。
一方通行から声にならない悲鳴が零れた。
絶対に、手だけは放してはならないと思った。打ち止めという少女を護るために、この手だけは放してはならないと、そう思った。

結果、自分はその手こそ放さなかったものの、
普段から自衛のために無意識の内に展開させていた『反射』を、『死』を目前に何時の間にやら発動させてしまっていた。
そして、コードの削除から軌道の外れた演算はそれ自体が害意と化し、小さな少女の脳を蹂躙している。

今ならまだ、間に合うかもしれない。
生体電気を弄るだけのチカラが、自分にはあった。もしかしたら破壊してしまった脳細胞を修復する事ができるかもしれない。


一方通行が再び打ち止めの額に向かって手を伸ばした。
しかし、絶望は更に加速する。




546 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県)[saga] - 2011/03/21 03:41:13.94 nJc58NUz0 4/6




ビィイイイイ――――――――……

打ち止めの頭に装着された電極へと繋がるノートパソコンが、奇妙な音を発した。
騒音の隣で打ち止めが意味を成さない雄叫びをあげながらバタバタと足を上下して暴れ続ける。

一方通行は恐る恐る画面を除いた。嫌な予感しかしない。

そもそも、自分は何のためにウィルスコードを削除していた?
何のために、打ち止めから手を放してはならないと思った?

第一位の頭脳を持ってしなくても、答えは単純明快だった。


「あ……ァ……」


BC稼働率、脳細胞の稼働率が数値を急激に上昇させていくのが分かる。
だから、手を放してはいけなかったのに。
『反射』をしてはいけなかったのに。

ウィルスコードが、遂に起動を始めたのだ。

いくら一方通行でも、一度ミサカネットワークがウィルスに感染してしまってはどうにかする手立てはない。
このままでは、世界中に散らばる妹達が一斉に暴走を開始する。
それが示唆するのは、すなわち『世界の終り』。


「くそったれがああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」


認めてくれたのに。
『絶対』になんてならなくても、『最強』ですらなくても。
たった一人の少女だけが、認めてくれたのに。

彼はきっと、その時抱いた何かを失いたくはなかった。
そして、失いたくはないと感じる自分がいる事に、彼は心のどこかで歓喜していた。
何かが、変わろうとしていた。
何かを、変えられるかもしれないと、思う事ができた。
それなのに、

一方通行には、選択肢が残されていない。


(考えが甘すぎたンだ。今さら―――――――)


何かを願った所で、結局何も叶わない。
何かを必死にかき集めた所で、結局全ては掌からこぼれ落ちていく。


(―――――誰かを救えば、もう一度やり直す事ができるかもしンねェだなンて)


残されたのは、まだウィルスは完全にネットワークには流出していないかもしれないという希望を胸に、
打ち止めを『処分』するという選択肢のみ。



そして、一方通行は






547 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県)[saga] - 2011/03/21 03:43:33.87 nJc58NUz0 5/6




一方通行の生活する学生寮を訪れた芳川桔梗は、小さく息を吐いた。
彼の自室は長らくスキルアウトから襲撃を受けていない。恐るべき第一位が、常に自宅にいついているためだ。
『彼ら』は芳川が持ち込んだ食料と嗜好品のみで生活している故に、外に出る事が決してない。
芳川が何も運ばなければ必然的に『彼ら』は外出せざるを得ないが、恐らく『彼ら』は餓死してでも外へ出向く事はないだろう。

一方通行は、外を極端に恐れている。
正確には、外へと『彼女』を連れ立った際に『彼女』に害が及ぶ事を。
より正確には、害が及んだ『彼女』を護れないかもしれないという未来を。

ジャラジャラという鎖の音が鳴り響き、チャイムを鳴らした芳川を出迎えるようにドアが開かれた。
目の前に立つのは相変わらず独特なデザインのシャツを着込んだ一方通行と、そして


「わざわざ運んでもらってすまねェな芳川―――――……ほらオマエも礼くらい言え、打ち止め」


ジャラリ、金属音と共に引かれた鎖によって少女の首が引き摺られる。
幼い彼女の細い首を飾る太い首輪に絞めつけられたのか、あー、と少女から非難の声があがった。
奇跡的に生き残りはしたものの、言語機能も計算機能も完全に破壊された少女からはまともな声があがる事はない。


「悪ィ悪ィ打ち止め、そう怒るなよ」


子供特有の柔らかそうな頭を、一方通行の長い指が撫でつける。
あーうーと続く言葉に、そう催促するなよ、と一方通行から笑みが漏れた。


『実験』の都合上彼とはそれなりに長い付き合いを交わしてきた芳川ではあるが、
一方通行のこんなにも幸せそうな笑みなどこれまでにみたことがなかった。
それどころか普通に笑っているところも、思春期の少年らしく強い感情を示したところも見た事がない。


「………ねえ一方通行、まだ、そんな生活を続けるのかしら………?」


怖々と尋ねたのは果たしてこれで何度目だろうか。
少なくとも、数える事を放棄するほどには彼を説得したはずだ。
だが返って来る答えはいつだって同じ。
少女の脳が壊れた時に、少年の脳も同じように、きっと壊れてしまったのだ。


「だって、これなら安心だろォが。――――――――もう絶対に、この手を放したりはしねェ。絶対にだ」


そして一方通行は、ただ護るための道を歩む。



それがどれだけ間違っていたとしても




>>519に触発されて書いてみたらこんな時間になったけど気にしない。
そして絶対こんな話じゃなかったはずだけど気にしな…………うん違うね、なんか自分で書いてもオイシクないね、だって所詮オ○ニーだもんね

549 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[] - 2011/03/21 10:49:46.02 n66NpaXa0 6/6

>>547
う、うわあああGJ!!超GJ!!!
ヤンデレ一方通行の破壊力すごい…ゴクリ
流行んないかな…打ち止め視点とか読みたくなっちった