697 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga] - 2011/03/23 04:17:21.39 0XFRUnIL0 1/14

>>263 及び >>338 及び >>638です
収拾がつかなくなる前になんとか収拾つけました。
というわけで12レスもらいます。

木原と一方通行が仲良く一等賞を目指すお話……だったのに……

※関連

第一位のつくりかた
http://toaruss.blog.jp/archives/1025839277.html

第一位のつくりかた2
http://toaruss.blog.jp/archives/1025839682.html

第一位のつくりかた3
http://toaruss.blog.jp/archives/1026250002.html

元スレ
▽ 【禁書目録】「とあるシリーズSS総合スレ」-25冊目-【超電磁砲】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1299734320/
698 : 第一位のつくりかた4 1/12[sage saga] - 2011/03/23 04:18:10.05 0XFRUnIL0 2/14



五十メートルで力尽きた。

そもそも運動など嫌いなのだ。彼は典型的なもやしっ子である。


飛んで追いかけてくる第一位から走って逃げて来た一方通行は、病院のブロック塀に寄りかかってぜえぜえと息をついた。

十秒もしない内に垣根が追い付いてくる。

「流石にへばるの早過ぎんじゃねえの……追い詰めがいのねえキツネだな。第二位のクローンですら逃げに徹した時はもうちょっと持ったぜ」

狩る側の気楽な態度。
垣根は腰に手を当てて過呼吸気味の一方通行を見物していた。

699 : 第一位のつくりかた4 2/12[sage saga] - 2011/03/23 04:19:30.01 0XFRUnIL0 3/14



「どっちかって言えば……オマエの方が……キツネっぽいだろォ……」

呼吸を整えながら一方通行は必死に考えを巡らせる。

(理屈で言やァ、俺がこいつに殺される事はねェはずだ。こいつの『未元物質』を反射できるって事は実証済みなンだから)

それでも、足がすくむ。

先程見て来たものがすべてとは限らない。
相手は広い学園都市の中でも最強なのだ。
他にどんな隠し玉を持っていてもおかしくない。

人を殺すための手段は、両手の指で足りないほど持っているに違いない。

そう思うと、途端に恐怖心が襲ってくる。
相手の余裕に満ちた顔がさらにそれを増幅させた。


(ちくしょォ……)



(帰りてェ……)


と、一方通行は思ったが、
とはいえ「帰りたいのですが」と頼んで喜んで帰してくれるほど垣根帝督が親切な人間だとは思わない。

反射できる。
その気になれば勝てる。

一方通行はとにかくそれだけを考えようと努めた。

701 : 第一位のつくりかた4 3/12[sage saga] - 2011/03/23 04:21:18.28 0XFRUnIL0 4/14




垣根帝督は右の掌を上にして、『未元物質』を出現させた。
玉状に固めたそれをひょいとキャッチボールのように一方通行へパスする。
すると、放物線を描いて白い前頭部へ落ちていった未元のボールは、同じ起動を逆に辿って戻って来た。

一歩脇へ寄ってそれを避け、垣根帝督は考える。

(本当にきっちり返してきやがる。しかしこちらから何もしなければ無害、か)

かといって、何もせずに仲良くお別れ、などというつもりは丸きり無い。
殺してこそ意味がある。

(色々試してみればいいか)

翼を使って飛び上がり、標的めがけて『未元物質』の矢を降らせる。
放った瞬間にその場を離れて跳ね返ってくる矢を回避すると、そのまま相手の後ろに回りこんだ。


「チッ……!」

目の前の矢に注意を逸らされていた一方通行は、背後に降り立った垣根が放った白い羽根を、ぎりぎりの所でなんとか反射した。
震える足でよく出来たものだと、第一位は心の内で賞賛してやった。

身構える一方通行を前に、第一位は追撃をするでもなく腕組をして立っていた。
反撃される心配も逃げられる心配も、全くしていない。
暇つぶしのパズルを解いているような軽い調子で語り出す。

「なるほど。知覚できる物しか反射できないのか。不意打ちには弱いのか?」

(……正解だよ、クソッタレ)

レベル3であり続けるため、一方通行がわざわざ自分の能力に掛けている制限。
たった数分のやりとりで、垣根はその穴を的確に分析していた。

「だが意識して全方向へ反射を効かせていれば、どこからの攻撃にも対処できるだろうな。……レベル3にそんな演算が可能なら」
「!」

何の音もしなかった。
気が付くと、一方通行は八方から白い羽根に囲まれていた。

704 : 第一位のつくりかた4 4/12[sage saga] - 2011/03/23 04:25:25.63 0XFRUnIL0 5/14



「上、下、右、左、前、後。これからお前をあらゆる方向から切り刻む。いくつ反射できるかな?」


ザザ!! っと、取り囲む『未元物質』が一斉に襲い掛かってきた。

その最初の一枚が肌に触れるか触れないかまでの一瞬で、一方通行は思案する。

レベル3の実力では、これをすべて反射するのは無理だろう。
一度解析はしてしまったものの相手は未知の物質だし、数も速度も方向も無数である。
能力で反射できるのは三割程度、二割くらいは根性で避けるとして、残り五割は食らうしかない。

もしすべて反射し切ってしまったら、流石に強能力者では通らなくなる。
垣根以外に目撃者はいないだろうが、その第一位に実力が知れるのはまずいのだ。
彼はどうやら好敵手を求めているらしい。あくまで狩る目的でだが。そしてそれは、能力が高ければ高いほど歓迎されるようだ。

これくらいの攻撃は彼本来の実力を持ってすれば楽に防げる。
しかしそれをすれば、さらなる面倒事が待っている。

受けるしかない。

五割。




(いや、痛ェのは無理だろ)



一方通行はすべて反射した。

705 : 第一位のつくりかた4 5/12[sage saga] - 2011/03/23 04:26:41.76 0XFRUnIL0 6/14



流石に垣根も目を見張った。
まさかすべて弾き飛ばすとは思っていなかったのだ。
ざっと七割は食らって血まみれになるはずだと。

自分の方へ返された羽根を自分の翼で防ぎ、再び広げてレベル3の方を見る。


逃げていた。


「また五十メートル走か? その身体であまり無理はしない方がいいと思うけどな」
「あァ? ……ッ!!」

走りながら、掛けられた言葉に一方通行は首を傾げる。
その身体で無理をしない方がいい。
まるで病人に向けるような言葉。


と、

ドグンッ ……と。


突然、胸に締め付けられるような激痛を感じて、一方通行はその場に倒れこんだ。


「かっ……は……?」
「ハッ! やっぱ、知覚できる物しか反射できないってのは大きな弱点らしいな」

呼吸もままならない一方通行を愉快げに眺めて、学園都市最強の能力者は笑う。

「『未元物質』はどんな形状にも固められるもんだってのは、今まで見ていて何となくは分かっただろ? 集合させればいくらでも大きく出来るし――逆にどんな小さい状態でも操れる。それこそ、素粒子レベルまでな」

平伏す一方通行に近寄るその足取りは、相変わらず優雅に、余裕に満ちている。

706 : 第一位のつくりかた4 6/12[sage saga] - 2011/03/23 04:27:28.11 0XFRUnIL0 7/14


「お前が羽根の方に気を取られている内に、大量の『小さな未元物質』を体内に潜り込ませた。で、内臓のど真ん中で集合させてしこりに変える、と。これで重病人の完成だ。反射してみるか? どの向きにしろ身体にめり込む事に変わりは無いけどな」

「う、う……」

勝ち誇った様子で種明かしする垣根に、一方通行は何も言い返せなかった。

声が出ない。

痛い。
苦しい。

怖い。


「死ぬほど苦しい」というのは初めての経験だった。


「……さて、ちょっとは驚かされたが、案外あっけないもんだったな。こりゃクローン千人分はねえか。第二位に悪い事しちまったかな?」

死。
生き物が動かなくなる事。

これ以上ないくらい恐ろしい事のはずなのに、それを目の前にしようとしている第一位は、驚くほど冷静で、冷徹だった。

(イカれてンのかよ……)

明滅する意識の中で、一方通行は思った。


(もォ帰りてェ……)


707 : 第一位のつくりかた4 7/12[sage saga] - 2011/03/23 04:28:09.48 0XFRUnIL0 8/14



(……帰ったらやっぱ殴られンのかな。あいつ特に意味なく俺の事殴ンだよな)

もちろん殴られたいわけでは無い。
そして、命からがら帰ったからといって、あの男が「おかえりなさい、あーくん」とか言って抱き締めてくれるわけでもない。

(つゥかやられたら俺が殴るわ)

それでも。

帰って、研究室を訪ねて、「よォ」くらいの挨拶をしたら。
「おー」くらいは返してくれるだろう。


(……充分だ)

自分をここまで追い込んだ張本人の元へ、彼は帰る決意をした。
帰る場所はそこしかないのだし、別にそれでもいいと思っている。
五年前まではそんな最低な居場所すら持っていなかったから。

708 : 第一位のつくりかた4 8/12[sage saga] - 2011/03/23 04:28:55.93 0XFRUnIL0 9/14



体内の『未元物質』のベクトルを掌握する。
固体の形にまで集合している『未元物質』を体組織に害のないレベルまで強制的に分解。
各個の『未元物質』にばらばらのベクトルを与えて体外へ排出。


レベル3どころかレベル4ですら難しいほどの、超緻密なベクトル操作。

「な、何……だ……?」

自分の能力の制御を乗っ取られて、垣根の表情に初めて、じとりと焦りのような物がにじみ出た。


「テメェ、一体何した!?」
「ゲホ、はっ……反射ァ」
「嘘をつくな!!」

(俺の『未元物質』を操った!? レベル3の反射能力者にそんな真似が出来るわけねえだろ)
(やっぱり何か隠してやがった……こいつの能力はただの反射だけじゃない! 強制的に向かう方向を変えられた。向きの変換……ベクトル操作?)

じり、と、垣根は不気味なレベル3から一歩離れる。

(だとしたら、反撃しかできねえってのは大ボラだ)

垣根が見つめる前で、白い少年は、地面に這いつくばったまま路面に右手を叩き付けた。

(こいつは、能動的に攻撃ができる――?)


地割れが起きた。

地面が、白い右手の当たった部分から裂け出したのだ。
裂け目は轟音と共に垣根へ向かってまっすぐ突き進んでくる。


垣根が横へ飛んでやり過ごすと、地割れはブロック塀まで突進し、外壁を倒壊させた。
四方へ派手に飛び散る破片。
夜の町にガラガラと大きな音を立てて、「突進」は終わった。

ただ手をついただけ。
それでこの圧倒的な破壊力。

知らず知らず、垣根は笑っていた。
それは、それまでのような余裕の笑みではなかった。


「ッ……テメェ、おもしれえよ。こりゃ本格的に殺」

ごん。


衝撃で上へ飛ばされたブロック塀の特大の破片が、学園都市第一位の後頭部にまともにぶち当たった。
白目をむいて崩れ落ちる垣根帝督。


「……ケッ」

口の中で血の味が広がっていた。
意識が朦朧とする。

一方通行は最後に一言呟くと、


「楽勝だ、超能力者」


気を失った。

709 : 第一位のつくりかた4 9/12[sage saga] - 2011/03/23 04:29:42.32 0XFRUnIL0 10/14




木原数多は爆笑していた。

「ぎゃはははははっ!! マジかよ本当に勝ちやがんの!」


一部始終を撮影していた部下からの報告を聞いて、彼は大笑いしていた。
いつまでも笑い転げている上司にうんざりしているのを気取られないよう、『猟犬部隊』の隊員はこっそりと嘆息する。

「あ~あ、面白かった。で、あのガキはそのまま入院だって?」
「はい。腕のいい医者がいまして、普通なら全治二ヶ月のところ一週間だそうです。……あの、木原さん。もしかして一方通行が勝つと分かっていたんですか?」
「いやぁ、全然。十中八九死ぬだろうと思ってたよ。残り一、二割でうまい事逃げ延びられたらもう少し様子見てやろうと思ってたんだがよ、まさか勝っちまうとはねえ……。ま、あれじゃ大勝利とは言えねえけどな。痛み分けって感じか」
「殺す気だったんですか? 五年一緒だった子供を」
「ば~か。五年も面倒見てやったのにちっとも成長しねえようなガキをいつまでも置いとけるか。死ぬか強くなるかだろ。チャンスをやったんだよ」
「…………」

部下は、分からない、という顔をしていた。
木原としても彼に理解してもらいたいとは思っていない。
報告を終えて下がっていく下っ端にひらひらと手を振り、彼は一人で考える。


十中八九死ぬだろうと思っていたというのは、本心ではない。
木原の予想はむしろ逆で、十中八九生き延びるだろうと思っていた。
第一位と対決して勝つかどうかは別として。

(あのガキ、やっぱり測定器騙してやがった。反射しか出来ませんだと? ナメた真似しやがって)

思っていたとおり、一方通行はレベル5相当の能力を隠し持っていた。
それどころか、学園都市第一位ですら凌駕する実力の持ち主であった。
つまらないトラウマに駆られてバカを演じているに過ぎなかったのだ。

しかし、それももう終わり。
彼は自らの能力を示してしまった。

猟犬部隊のカメラの前で、その本領を発揮してしまったのだ。


(言い逃れはできねえぞ、自称レベル3のクソガキ君)


(次の測定が楽しみだねえ……)

710 : 第一位のつくりかた4 10/12[sage saga] - 2011/03/23 04:30:43.40 0XFRUnIL0 11/14




一方通行が退院してすぐに、能力の再測定が決行された。
今回は特別仕様。
あの学園都市最強の超能力者、垣根帝督を破った謎のレベル3の再測定に、多くの研究者達が興味津々で集まっていた。
測定器の精度も最高級だ。


「……つまりアレはこォいう事かよ。木ィ原くン?」

死体回収のバイトの意味を理解し、赤い瞳で睨みつける一方通行。
普通の人間なら射すくめられて固まるか震えるかしてもおかしくない迫力だが、木原は全く動じない。

「もう後戻りはできねえぞ。お前は第一位に勝っちまったんだからな」
「…………」

ため息をひとつ。
測定器の前に立ち、一方通行は目を閉じた。

大人たちが遠巻きに彼を囲んで見守っている。
カメラも数台。

十歳までの記憶が蘇る。
遊んでくれるでもなく、ただ観察ために黙ってこちらを見つめる幾つもの目。


顔を上げる。


「――分かったよ」


「特別に見せてやる。これが、俺の実力だ」


711 : 第一位のつくりかた4 11/12[sage saga] - 2011/03/23 04:31:28.78 0XFRUnIL0 12/14




「し、信じられない」
「こんな事があり得るのか……」
「木原、貴様……」

測定終了。

彼が叩きだした数値に、研究員たちは愕然とする。
ある者は言葉を失い、ある者はため息をついた。
皆、一方通行と木原を交互に見つめている。

学園都市第一位の垣根すら圧倒した、日蔭の能力者の底力。


耐久力  :10 kg・m/s2
対応入射数:3方向/1sec
反射誤差 :0.5°/1m

総合評価 :2



青筋とともに刺青が浮き上がった。

木原は切れた。

「ゴルァァァァアアアアアアア!!!! なぁぁに手抜きしてんだクソガキィィィ!!!!」

「いやァ? 俺バカなんでェ、こンくらいが限界だわ」


レベル3からめでたくレベル2にシフトした一方通行は、ニヤニヤ笑いながらそう言った。


712 : 第一位のつくりかた4 12/12[saga] - 2011/03/23 04:32:15.82 0XFRUnIL0 13/14




帰所した途端、まず一発本気で顔をぶん殴られた。
そしてその後に、本気でぶん殴られた。
その次もまた、本気でぶん殴られた。

測定から木原の研究室へ帰って来た一方通行を待っていたのは、そんな感じの出来事だった。


おわり

713 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[saga sage ] - 2011/03/23 04:33:50.30 0XFRUnIL0 14/14


以上です。

未元物質の解釈は、多分間違ってると思います
お話の都合上、とっても便利になってもらいました
垣根△

あと測定値ですが、完全に適当です
物理とか数学とかだめなんですよ
適当にネットで調べてコピっただけです
もっとイイ感じの項目・単位があると思うんですが…

そんなわけで、全然第一位つくれてないですけど
そこまで続けると流石に長すぎてこのスレには向かないので、ここで終わりにします
タイトル詐欺すまない

長々と失礼しましたー