737 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage] - 2011/03/23 17:11:41.02 rfgq8VzJo 1/11

原作3巻(または超電磁砲6巻)の鉄橋シーンから唐突に分岐するifストーリーですが
妄想激しく改変ひどいのでご注意を
9レスくらい

元スレ
▽ 【禁書目録】「とあるシリーズSS総合スレ」-25冊目-【超電磁砲】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1299734320/
738 : 「私はここにいるよ」 1/9[saga] - 2011/03/23 17:12:59.94 rfgq8VzJo 2/11


 ぽた、ぽたた、と温かな雨が降る。

 それは少年の頬を濡らす雨。

 擦り切れて枯れ果てた筈の少女の心から降る、涙の雫。

「なに……やってんのよ、アンタ」

 見上げた少女の顔に、上条は笑いかけ、手を伸ばす。

「――何で、そんな顔で笑ってられるのよ」

 ボロボロになって、苦しくてもそれを口に出せず、「助けて」の一言も誰にも言えないほどに冷え切った少女の心に、温もりが戻った事。
 自分ばかり責めて、自分一人で抱え込んで、自分の命まで投げ出そうとまでした少女の頑なな心を、解き放つ事が出来た事。
 それが何よりも上条は嬉しくて、泣き濡れる少女の頭に優しく手を置いて言った。

「もう、一人で泣くなよ、御坂」

 少女に笑って欲しくてかけた言葉は、しかし更にその涙を溢れさせてしまった。まるで、少女の心に溜まった檻を洗い流すかのように。


739 : 「私はここにいるよ」 2/9[saga] - 2011/03/23 17:13:53.97 rfgq8VzJo 3/11


 美琴が泣き止むのを待って、上条は自分の考えを打ち明けた。
 美琴は心底びっくりした顔をして、すぐに必死の形相で止めようとするが、上条は譲らなかった。

「何一つ失う事無く、みんなで笑って帰るってのは俺の”夢”だ」

 信じられないものを、自分が心から望んでも決して与えられる筈もないと諦めていたものを目にしたかのように、少女は呆然と少年が笑うのを見つめていた。

「必ず御坂妹は連れて帰ってくる」

 ずるい、と美琴は思った。そんな顔されたら、引き止めることなんて出来やしない。

「約束するよ」

 だから、美琴は気付いてしまった。なんで彼といるとこんなにも心が安らぐのか。なんで彼の前では、被った仮面もあっさり剥がれ落ちてしまうのか。

「教えてくれ御坂。今夜の実験の行われる場所を」

 少年の言葉に、少女の心が揺れ動いた。

 ざわり、ざわりと。


740 : 「私はここにいるよ」 3/9[saga] - 2011/03/23 17:14:20.18 rfgq8VzJo 4/11


 少年が走り去った後、その後姿が見えなくなった後も、少女はその闇を眺め続け、立ち尽くしていた。
 さっきまで温もりを感じていた心は、もう既に冷え切っている。
 でも、その冷え切った心の片隅に、かすかな温もりが燻り続けているのを、少女は確かに感じていた。

 それは、少女が気付くには早過ぎる、恋心という現実。

 少女の鈍い感性が本来なら気付かぬまま通り過ぎ、いずれ時が過ぎ去った後にそれと気づく筈のもの。
 その事に、少女は今、気付いてしまった。
 そして、その事が、少女の最大の幸福で、最悪の不幸だった。

「ごめんね……」

 少女の呟きは、再び誰にも届かない所で闇へと消える。

「ホント、ごめん……」

 決して届かない筈のその呟きを、小さな黒猫だけが聞いていた。

 少女は踵を返し、少年が消えた闇とは逆の闇へと足を踏み出した。
 はじめは躊躇いがちに踏み出されたその足も、すぐに迷いを振り切るかのように早まり、やがて走り出す。
 少女の走る姿は何かに立ち向かうかのように力強く、そして何かから逃げるかのように弱々しかった。

 少女が去った後、闇の中で黒猫が、寂しげに鳴き声を上げる。
 少年の消えた闇と少女の消えた闇、どちらにも行けず黒猫はただ孤独に鳴き続けていた。


741 : 「私はここにいるよ」 4/9[saga] - 2011/03/23 17:14:50.05 rfgq8VzJo 5/11


「はぁっ、はぁっ、はぁっ……こ、ここ、か……?」

 予定時間をやや過ぎ、朦朧とした意識を必死で繋ぎ止めながら上条当麻はその場所へと辿り着いた。
 そこは、やや高台に位置する開けた空間。
 僅かに残る建材がそこにかつて何かの建物があった事を示すが、街灯もない暗闇では判別もつかない、ただの瓦礫だ。

「…………誰もいない、のか?」

 美琴に教えられた通りの場所に着いた筈なのに、人影は一つもなく、増してや”実験”と称した殺し合いの気配など全く感じられない。
 もしかして間に合わなかったのか、とも思ったがそれにしては争った形跡も無ければ前に路地裏で見たような血生臭い光景も見当たらず、上条の頭は混乱した。
 ふと、足を止め高台の端から街を見下ろすも、闇に包まれた街は沈黙に包まれ、遠くで巨大な風車がゆっくりと回るのみだった。

「…………?」

 上条の思考にかすかな違和感がよぎった。
 慌てて再度街並みに視線を戻す。
 闇と沈黙に支配された風景、遠くで煌々と光を放つ繁華街、先程まで美琴といた鉄橋もここからなら見下ろす事が出来た。

 そこまで考えて上条は気付く。
 美琴を探す為、風一つ無い夜にゆっくりと動く風車を見て上条は鉄橋に到達した。
 であるならば。
 何故、鉄橋近くの風車は今は動いていないのだろう。
 何故、鉄橋を挟んで逆方向に辿れば辿るほど、そこに立つ風車の回転速度が速いのだろう。

 上条の心が、理解する事を拒否するかのように思考を空転させる。
 その可能性に気付きながらも見てみぬ振りをする上条の前で、風車はゆっくりと回り続けている。


742 : 「私はここにいるよ」 5/9[saga] - 2011/03/23 17:15:24.79 rfgq8VzJo 6/11


 気付いた。気付いてしまった。
 上条は、体を張って、声を張り上げて、そこまでしても想いが少女に届かなかった事に。
 少女の心の傷を癒しきる事が叶わなかった事に。
 少女の決意を曲げる事が出来なかった事に。

 実際は、少年の思うような事はなかった。
 少年の心は少女の心に間違いなく届いたし、少女の心の傷は既に痛んでなどいなかったし、少女の決意は一度は完全に挫け切っていた。

 しかし、それは同時に少女の心に新たな火を灯してしまったのだ。

 少女は、少年の想いに誰よりも応えたいと想い、しかしそれ以上に少年の心を裏切ってまでも貫き通したい別の意志を抱いてしまったのだ。
 少女は、その選択が少年の心を何よりも傷付け、彼の夢を粉々に砕いてしまう事も分かっていた。
 分かっていたけど、その道を選んでしまった。


 それでも、少年に死んで欲しくないと、生きていて欲しいんだと、そう思ったから。


743 : 「私はここにいるよ」 6/9[saga] - 2011/03/23 17:16:01.69 rfgq8VzJo 7/11


 少年が呆然と立ち尽くすその視界の奥、夜空に一筋の雷光が迸った。
 強烈に明るく、遥か上空までまっすぐに貫くその光は、少女の咆哮だった。


――私はここにいるよ


 そう、少年に告げるように、その光は力強く轟いた。


――私はここに生きたよ


 その光は激しく少年の目を焼いたが、その痛みに抗うように少年はそれを見つめ続けていた。


――私は……幸せだったよ


 その光から目を逸らす事は、少女の最期の言葉を聞き逃す行為だと、何故だか少年にはそう思えたから。


 やがて、数分にも数時間にも思えた刹那の後、閃光は消え去り、沈黙が再び街を包み込んだ。
 ゆっくり、ゆっくりと風車が回転を弱め、やがて止まり行く。
 その光景から目を逸らすように、少年は駆け出し、闇へと消えて行った。


744 : 「私はここにいるよ」 7/9[saga] - 2011/03/23 17:16:29.10 rfgq8VzJo 8/11


 やがて、少年が操車場に辿り着いた時、そこには僅かな焦げ痕と、何かが焼けるような臭いしか残されていなかった。
 のろのろと辺りをうろついていると、爪先に何かが当たる感触と、チャリ、という乾いた音が聞こえた。
 拾い上げると、どこかで見たようなデザインのコインだった。
 それが何なのかは、知らなかったが、彼は何となくそれが事実の全てを物語ってる気がして、立ち尽くした。

 それは、少女の二つ名である超電磁砲、それに良く使われる弾丸代わりのメダル。
 失われた記憶の中にしかその知識は存在しないのに、上条はそれが美琴がここにいた何よりもの証拠である事を何故だか確信した。
 何が起きたか、上条には何も分からなかった。
 何が起きたか何も分からなかったが、それはもう終わってしまった事だけは上条にも分かった。



 その日以来、上条は毎日学校をサボって街中をうろついた。
 そのズボンのコイン一つ忍ばせ、昼の路地裏、夜の繁華街、深夜の廃墟構わず歩き回り、探し続けた。
 もっと効率の良い探し方がある事も、協力を仰げるツテがある事も知っていながら、ただ自分の足と目で少女の姿を探し求めた。

 彼の心が壊れている事は誰の目にも明らかだったが、彼は誰の言葉にも手にも目も向けず、振り払い続けた。
 そしてただ一人、街中をうろついて美琴を探し続けていた。


 少年がそのしばらく後に学園都市の闇にその身を落とす事を、結局周りの誰もが止める事が出来なかった。


745 : 「私はここにいるよ」 8/9[saga] - 2011/03/23 17:17:26.87 rfgq8VzJo 9/11


 冥土帰し、と呼ばれる医者が学園都市にはいる。
 どんなに瀕死の患者であっても不治の病に侵された病人であっても癒せるとまで言われた知る人ぞ知る名医だ。
 その彼が勤めるとある病院の地下奥深くに、彼のみが存在を知る病室があった。
 それは、彼の最近出来た新しい患者の求めに応じ、彼自身が用意した秘密の隠れ家でもあった。
 その病室に一人立ち尽くし、ベッドに横たわる少女を見つめ続ける少年がいた。
 少女が眠り続ける原因となった元凶であり、死に掛けた彼女をこの病院に運び込んだ本人でもあり、彼こそが冥土帰しの”最近出来た新しい患者”である。

「よォ。元気で病人やってるかよ」

 一方通行、の二つ名で呼ばれる白髪の少年は、眠り続ける少女に向かって呟いた。
 決して、返事が返ってこない事を知っていながら、毎日のように彼は彼女に語りかけ続ける。
 望む返事が返ってこない呼びかけなど、これまで散々やってきて慣れていた。

「お前の守りたかった妹達は、今も全員元気だぜ。もっとも、俺が殺しちまった分までは、取り返せねェけどよォ……」

 あの日、第一〇〇三二次実験の夜、操車場で何が起こったのかを知る者は少ない。
 しかし、その夜から少年は、妹達と呼ばれるクローン体を殺す事をやめ、実験は永久凍結となった。
 処分される筈だった妹達は少年の働きと冥土帰しの協力によって全て延命措置を取られる事となり、それぞれが信頼できる施設へと引き取られ調整をされている。


746 : 「私はここにいるよ」 9/9[saga] - 2011/03/23 17:18:00.07 rfgq8VzJo 10/11


「なァ。いい加減教えてくれよ。あの時なンでお前は俺の前に立ち塞がった? 何があれだけお前の事を突き動かしたンだ?」

 少年の心を何が動かし、贖罪とも取れる行動を取らせたのか、それは少年自身にも良く分からなかった。
 だから、その答えを知るため、少年はこうして毎日眠り続ける少女に尋ね続けていた。

「そして……なンで俺はそンな事で、あのクソ下らない実験を止める気になったンだ?」

 少年に立ち向かってきた無謀なる少女は、ただの一撃で敗北を喫し、無様に倒れた。
 しかし、その時の少女の顔を、瞳を、そこに宿る炎を見た少年は、心の奥で何かが音を立てて砕け散るのを感じた。
 それ以来、少年の心に何かが燻り続けている。
 その事が少年を苛立たせ、気が付けばこうして毎日病室へを足を運び続けていた。

「教えてくれよ……御坂美琴よォ……」

 答えのない質問を繰り返す彼に”最強”の面影は最早無かった。
 それはまるで、両親に置いてけぼりにされて泣いている子供のように、弱々しく歪んでいた。


 しばし無言のまま少女の寝顔を見つめていた少年は、諦めたかのように無言で病室を後にする。
 一人残された少女はただ、昏々と眠り続けていた。


747 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage] - 2011/03/23 17:20:38.39 rfgq8VzJo 11/11

鬱気味注意って書くの忘れてたすいません。
色々とご都合過ぎるけど気が付いたらそういう妄想展開になってたんですごめんなさい。
このまま風呂敷広げまくって行こうと思ったけどなんか上手く行かず放り投げ。

なんていうか色々とすいませんでした