5 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸)[saga] - 2011/03/29 00:47:04.73 IVqluFhAO 1/16前スレも埋まりそうなんで建って早々投下させてもらいます。
前スレ>>914->>919の続き。鬱暗いんで注意。ばっと書き上げて未推敲なんで乱文ですが、よろしくっす。
どこまでも報われない不幸な不幸な上条くんのお話
http://toaruss.blog.jp/archives/1026441412.html
上条当麻はぎゅっと瞼を閉じる。まるでこの現実から逃げるように。
上条当麻は強く手のひらで耳を塞ぐ。自らの幻想に逃げ込む為に。
「―――ミ―――は」
しかし、それは彼の右手が許さなかった。
そっと瞼をあげる。
そこには見知った人間、御坂美琴を6~7歳若返らしたような子供が毛布に車って横たわっていた。
上条「……ッ」
耳を塞いでいたと腕をだらりと下げる。途端、上条当麻は現実を突き付けられる。
打ち止め「ミサミサミサmpkmwミサカミカはmajptミサミサミサミサミサカミカミサhqumミサミサagmjae」
ウィルスに犯され、壊れたテープのように声を吐き出す打ち止めの姿がそこにあった。
上条「くそっ、どうすりゃいいんだ……ッ!!」
どうすればいい。そんな問がぐるぐると頭の中を周り、しかし答えは返ってこない。彼が打ち止めを救い出す為に撃破した敵。すぐ側で気絶している天井亜雄とかいう研究員が仕込んだウィルスコード。打ち止めを介し残り8000人に送られる無差別攻撃指令。もし、そんなモノが現実のモノになったら――
上条「……ッ」
全てが無駄になる。
妹達が生まれた意味も、殺された意味も、
御坂美琴が投げ出した命も
上条「くそッ!!くそくそくそくそッ!!」
そんなのは嫌だ。嫌だ嫌だ嫌だ。
だが、わからない。
上条当麻には分からない。
脳にウィルスが仕組まれた、ならどうすればいいのか、打ち止めに張り付けてある電極がなんの為のものなのか、モニターに表示されているBC稼働率とはなんなのか。それを映している機械はなんの為のモノなのか、分からない。
無能力者の頭脳では、とてもではないがそれは理解できなかった。
彼の右手、神様の奇跡でさえ殺す事ができるその右手は、この局面に置いて何の役にもたたなかった。
打ち止め「ミサミサミサミサカミカはミシミサミサミサミサカミカamはミサシミサミサミサミサカミカはayミサマミサkimaaサミサミサカミカはミミサミミサミサカミカミサミサミサミサカミカハミサシハミサマシミサミサミサミサyahaaカミカハミサマシミサミサミサミサカミカハミサマシ」
吐き出される声は止まらない。既にこの状態になってから数分が過ぎている。
上条「………ッ」
いまだにどうすればという言葉を浮かべる事しか出来ない上条当麻にタイムリミットが差し迫る。
焦りと焦燥にかられた自己の胸中に冷たい一言が浮かびあがってきたのは、その時だ。
上条「…………」
違う。それは違うだろ上条当麻。そう自分に言い聞かす。そんな最悪な選択肢を選ばなくともまだ道はあるはずだ。インデックスの時だってそうだったろ?
上条「何か手はあるはずだ」
どんな手があるんだよ。
上条「…………」
気絶した天井の懐は既に探ったがヒントになるようなモノは何もなかった。あったとして、そもそも上条当麻に理解出来たかどうかも怪しいが。
上条「……冗談だろ」
ツー、と玉になった汗が頬を流れる。嫌だ、そんなのは嫌だ。だって自分がこの少女の手を取ったのは、助ける為だったのに、
助けられなかった御坂美琴を、それでも救いたいと願ったから手を伸ばしたのに、
上条「……、しか、ないのかよ」
殺すしかないのかよ。
上条「――――ッ」
手が震える。今まで幾度となく幻想を殺してきたその手が、震えた。
打ち止めと妹達8000人。
比べるなんて馬鹿げてる。8000人だろうが1人だろうが、命の重さなんて変わらない。
ただ、ここで1人を生かした場合。被害は8000人どころでは済まないだろう。クローンとはいえ強能力者8000が無差別に暴れればどうなるか、そんな事は無能力者の馬鹿でもわかる、
きっとそれだけでは終わらないだろう。妹達は処分され、国際法を侵した学生都市は弾圧され、悪くて解体。230万人の学生は居場所を失い。『能力者』というレッテルを貼られ過ごしていく。
そしてなにより、
なにより、御坂美琴はどうなる。
8000人を救う事を望み死んでしまった彼女は、死んでしまったとしても永遠に貶められ蔑められ恨まれていく事になるだろう。
上条「…………」
そんなのは、余りに報われない。
上条当麻はそっと震える腕を伸ばす。
御坂美琴と同じ顔をした、打ち止めの細い首に。
上条「――ハッ――ハッ」
呼吸が荒くなっている事に気付く、心臓は圧縮され、腕の震えは止まらない
打ち止め「ミサミサミサミサカミカハミサマミサミサミサミミサミミサミサミサミサカミカハミサマシサミサミサカミカハミミサミサミサミサカミカハミサマシサマシサカミカハミサマシシ」
微かに触れた打ち止めの首はとても暖かった。
どんな表情をしていようが、その顔は御坂美琴そのものだった
上条「う、あ……」
上条当麻は手をかける。その右手で、打ち止めの首をそっと締める。
打ち止め「ミサミサミサミサカミカはミサマミサ――ッ――ッ――ミッ――」
打ち止めの声が、詰まる。それはラジオからはっせられらるノイズのようで、壊れたテープが無理やり再生されてるようで、
上条「あ、……」
思えばこれまで彼に降りかかってきた不幸は代償、もしくは対価だったのかもしれない。
幻想を殺す、その代償。
なら、今彼が殺そうとしているその代償は、一体なんなのだろう。
上条「あ―――」
分からない。今の上条当麻に分かるのはたった一つ。
打ち止め「――――」
上条「あ、ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!」
彼は今日、始めて幻想以外のものをその右手で殺した。
たった一つ、救いたかったハズの幻想と共に
「ねぇ、朝だよ上条くん。起きて」
なんて、その日はそんなインデックスの声で目が覚めた。
禁書「ねぇねぇ、上条くん。おきてってば」
上条「ん……ああ、わるい。おはようインデックス」
禁書「うん、おはようなんだよ。上条くん」
上条「…………」
小さな命と沢山の命と誇りを天秤にかけ、結局は世界を救って数日が経った。
数日も経ったが、上条当麻の朝は変わらない。
禁書「ねえ、上条くん。おなかすいたんだよ」
相変わらずインデックスは上条当麻をよそよそしく呼ぶし、腹が減ったとねだってくる。上条はそれに答え、台所に立つ。
禁書「ねぇ上条くん。今日はお友達を呼んでいいかな?出来ればご飯も出してくれると嬉しいかも」
上条「もやし炒めでよければな」
む~、とインデックスは頬を膨らます。あの時のインデックスと同じように。
上条「学校行ってくる」
禁書「今度ははやく帰ってきてね」
インデックスはいつものように笑ってそう言う。
禁書「上条くん」
インデックスの姿形をした女は笑ってそう言った。
数日経っても上条当麻の日常は変わらない。
ただ、一つ変わった事があった。
上条「…………」
街で御坂美琴を見かけなくなった。
いや、実際彼女は死んでいるのだから見かけるとおかしいのだが、そういう事ではない。
妹達をこの数日1人も見かけないのだ。
学生都市に残っているのが僅かだといえ、顔ぐらい見せてくれてもいいのに、と思う反面、会いたくないとも彼は思う。
自分は妹達の1人に手をかけたのだから。
天真爛漫、そんな言葉が似合う、御坂美琴と同じ顔をしたあの少女を絞め殺した。その事実は上条当麻の心にのし掛かる。
上条「…………」
御坂妹「こんにちは、とミサカは呆けたあなたに声をかけます」
唐突だった。
唐突に後ろから御坂妹に声をかけられた。
上条「え、あ……よう」
なんて言えばいいかわからず、声に出して言えたのはそんな返事。
御坂妹「ああ、忘れていました」
御坂妹はそんな上条に疑問を抱く様子はなく、当然のように無表情でいい放つ
御坂妹「はじめまして」
上条「……お前、何体目?」
軽く聞いてしまった事に上条は後々後悔する事になる、しても遅い、それは彼にとっての小さな不幸。
御坂妹「ミサカの検体番号は20000ジャストですが、とミサカは最後に残った妹達であるという事を誇示します」
上条「……色んな意味で運がいいなそりゃ」
笑える皮肉だ。内心笑い、そんな言葉を吐く。上条当麻は気付かない。ミサカ20000号の言葉の意味に。
御坂妹「ああ、そうだ」
上条「ん?」
あなたに言うべき事がありました。という言葉に上条の体が無意識に強張った。
上条「なんだよ」
打ち止めの件だろうか、そう考え、脳裏に蘇えるのは暴れる打ち止めを抑えつけるように力を込めた自分の右手、そして手の中で冷たくなっていく打ち止め。
責められるのだろうか。と上条はぐっと右手を握る。
打ち止めをその右手で殺した代価として叩きつけられるであろう不幸に身構え、覚悟する。
そんな上条当麻が抱えた幻想を砕いたのは、妹達の言葉か、それとも彼の右手か
御坂妹「先日の件で軍用クローンの危険性を認知した理事会が妹達の全処分の決定を下しました」
どのみち、この世界は上条当麻が思う程優しく出来てはいなかった。
世界を救った。
学生都市も救った。
御坂美琴の尊厳は保てた。
ただ、妹達20001人と御坂美琴は救えなかった。
そして御坂美琴の死も無駄になった。
文字通り、無駄になった。
上条「…………」
上条当麻はふらふらと夜道を歩いていた。その足は自身が住む寮に向かっている。少女の言葉を思いだし、寮に向かっていた。
上条「…………」
御坂妹とはあのまま別れた。これからどこへ行くのか、何をしにいくのか、どうなるのか、聞きたくもないし、考えたくもなかった。
ただ、これだけは確定している。
この先、一緒、自分は御坂美琴にもその姿をした人間にも会うことは無いだろう。
いつの間にか寮の前に付き、ドアを開けた。中に入ると顔を綻ばすインデックスと、もう1人、髪をくくりメガネをかけた少女、おどおどしていてこちらに目を合わせようとしない。
誰だろう、と一瞬考え、今朝のインデックスの言葉を思いだした。
禁書「上条くん。この子、私の友達で風斬氷華っていうんだよ」
風斬「あ、あの……その」
禁書「ほら、ひょうか」
握手して。
そう言われ風斬という少女はそっと手を差し出す。上条から見て、その左腕をそっと前に突き出した。
風斬「あの、はじめまして……」
上条「……ん」
そして上条当麻はそれに応える。差し出された左手を握る為に、その右手を突き出した。
上条「はじめまして」
それが最初で最後の言葉になるとも知らずに、
そっと、風斬氷華という幻想をぶち殺した。
上条「――えっ?」
それはきっと対価だったのだろう。先程抱いてしまった幻想を殺した代価。その不幸。
そして上条当麻が払う新たなる代価、新たなる不幸。それは、
禁書「……上条、くん?」
どこまでも報われない不幸で不幸な上条当麻の物語は、終わらない。
19 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸)[sage] - 2011/03/29 01:04:59.14 IVqluFhAO 13/16こんな所で。インデックスとの関係もおしまいですね。
今書いてるSS終わったらまた練り直して書きたいな。
ではでは、お粗末さまでした。
20 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[sage saga] - 2011/03/29 01:07:21.98 1CWAnveGo 14/16辛いな……
21 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[] - 2011/03/29 01:07:55.84 PMhpgAOzo 15/16乙
これはガチで不幸だな上条さん…
22 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage] - 2011/03/29 01:08:29.92 lFHc+NMwo 16/16心がへし折れそうだ・・・・・・・
前作が前作だけに覚悟してたんだが・・・
乙