147 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[] - 2011/03/31 20:04:12.66 tJ7wZl5SO 1/3


「……またかァ……」

 思わずうめいた一方通行の視線の先にいたのは、地下街の通路に五体投地よろしく倒れ伏したシスターだった。

 金の刺繍が各所に施された真っ白い修道服と、フードの縁からさらさらと流れる銀髪、雪のように白い手指──間違えようもない。

 あの日、積み上げられたハンバーガータワーを蹂躙し尽くした、白いシスターの皮を被ったゴジラだ。

(またなのかァ………………いや、そうとは限らねェよなァ?)

 そうだ、まだ行き倒れているとは限らない。本当に少女は五体投地を実践し、礼拝を行っているのかもしれないではないか。それならば神聖な儀礼の最中に声を掛けるべきではなかろう。

 一方通行は自身の説に頷くと、杖先を少女とは反対方向に向けた。あァ? 五体投地は仏教の作法だ? ンなこたァ知ってる。
 と。

「…おぉぉなぁぁかぁぁすぅぅいぃぃたぁぁ…」

 暗く悲痛な訴えが、地を這い一方通行の背に届く。

 撤回しよう、あれは礼拝ではなく呪詛だったらしい。一方通行は仕方なく振り返った。

「ゾンビか地縛霊かテメェは」

「仮にも神に遣える修道女に向かって失礼なんだよ!」

 純白の修道女インデックスは、五体投地の姿勢から顔だけをあげて威勢よく抗議してきた。実に首の痛そうな姿勢だ。

 その訴えに加勢するように、少女が懐に抱えていた子猫が顔を出してニャアと鳴く。そういえば、五体投地より猫の姿勢というほうが近いか。

「仮にも修道女なら、往来でそンな様さらしてンじゃねェよ。しかも何度もよォ」

「残念なことに神に遣えていてもお腹はとても空くんだよ」

「もっと残念に思うとこあるだろォが」

「…………ご飯が一日三食な事とか?」

「食う事から離れろこのなンちゃってシスターがァ!」

「……うぐぐ……」

 反論を口に乗せる前に、案の定、少女の首に限界がきたらしい。インデックスは一方通行をにらむのを諦め、再び顔を伏せた。

 チッ、と舌打ち一つ。一方通行は少女に向き合った。


元スレ
▽ 【禁書目録】「とあるシリーズSS総合スレ」-26冊目-【超電磁砲】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1301325535/
148 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[] - 2011/03/31 20:06:25.55 tJ7wZl5SO 2/3



「で? 今日もまた人探しかァ?」

 インデックスは首を振ろうとして姿勢にムリがあることに気付き、ようやく身体を起こした。

 地べたにアヒル座りをして、膝の上に乗せた子猫を撫でながら答える。

「ううん、今日は待ち合わせなんだよ。待ち合わせなんだけどね……」

「待ちぼうけってかァ」

「とうまの不幸体質は重々承知してるし、一時間くらい遅れるかもって連絡を受けただけ、いつもよりましなんだけどね……」

 体質的な不幸ってなンだ。ツッコミを入れる前に、ため息を吐き出したインデックスが顔をあげた。

「気に掛けてくれてありがとう」

 とんでもなく甘ったるい菓子を口に放り込まれた──ような気がした。

 慣れぬその味を、なんとか噛み砕き、ゆっくり喉に通して腹に落とす。

「あなたの方は……今日は、買い物かな?」

 一方通行が手に持つ袋を見やり、インデックスが首をかしげる。

「あァ。買い物が済ンだところだ」

 一方通行は口中に残る甘さを吐き出して、新しく吸い込んだ空気で言葉を発した。

「だから、疲れてンだ。ちょっと付き合え」

「え?」

 驚き見上げてきた、少女と子猫のまんまるの目から逃れるように、首を反らす。

「鼻利かせて、この辺でうまいコーヒー出しそォな店あてろ」

「わたしもスフィンクスも犬じゃないんだよ……」

「案内の駄賃に、ケーキくらいなら奢ってやる」

「がんばるんだよ!!」

 即座に立ち上がり、地下街の天井に決意の拳をあげるインデックスと、それを真似る子猫。

 一方通行はそれを横目に、再び吐息した。まだ舌に味が残ってやがる。まったく、なンてしつこい味だ。

 自分には今、早急に苦いコーヒーが必要だった。



149 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[] - 2011/03/31 20:10:08.90 tJ7wZl5SO 3/3

以上、失礼しました

白コンビは見ても書いても癒される