336 : 愛より青し[saga] - 2011/04/03 18:21:29.80 CaaV/GUs0 1/7


テレビのヒーローに憧れていた。

自分にもあんな力があったら、テレビの前で子供心に何度も思った。

特に惹かれたのは、好きな子の為に戦う等身大ヒーロー。

普段は冴えないヤツが、密かに憧れている子の為に戦うような話が特に好きだった。

不特定多数の為に戦い抜くヒーローはカッコ良くて立派だとは思ったけど、なりたいとは思わなかった。

それよりも、何度叩きのめされても、好きな子の為なら笑って立ち上がり、最後勝利するヒーローに強くあこがれた。

それがこの街に来た理由。

それが超能力者になりたかった理由。

そして、子供の頃憧れた能力を手に入れた俺は ――――







                                                  ―――― 人殺しになった。




元スレ
▽ 【禁書目録】「とあるシリーズSS総合スレ」-26冊目-【超電磁砲】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1301325535/
337 : 愛より青し[saga] - 2011/04/03 18:22:37.10 CaaV/GUs0 2/7


開発の結果見出された能力は『強いけど、それだけ』というもの。

七位のように珍しいものでもなければ、三位候補のように応用の利くものでもない。

強さにしたって、一位、二位のような超越したものというわけでもない。

よって、研究対象としても、科学技術への転用材料としても魅力的ではない強いだけの俺は瞬く間に暗部に放り込まれた。

強いだけの能力。それを上は有望な能力者のための露払いに丁度良いと判断したのだ。

まだ小学生のいずれ第三位に仕立て上げる少女を外部から守り、まだ詰めの甘さの残る第四位のフォロー役に俺は投入された。


使い捨てにしては効率の良い武器 ―――― それが学園都市第六位という超能力者に『予め』割り当てられていた役割であった。


故に無名。

消耗品のローテーションは早い。



そして、消耗品らしく今俺は雨に打たれて横たわっている。


不思議と雨は冷たくない。


寧ろぬるま湯のように心地良い。

それは多分、俺の身体の方が冷たくなっているから。


重りを付けたように動かない腕をどうにか腹に伸ばしてみる。

ぬるりとした感触が指先に伝わる。雨に紛れてさえ、それとわかる感触。

何発撃たれたんだろうか。第一のようにオートで弾くなんて出来ないのだ。

辛うじて皆殺しにはしたものの、力尽きてアスファルトにこうしてカエルのように無様に倒れる羽目になった。



このまま死ぬのだろうか。



わかりきった疑問を自分に投げかける。

モルモットとしても標本としても魅力の無いことは自覚している。

能力の強さはレベル5だけど、質としては3にも4にも俺と同じようなのはゴロゴロしている。

きっと、二、三日もすれば新しい六位は用意されているだろう。

野良犬のように放置されるだろう。所詮そんなものなのだ、俺の価値は。

もうどうでもいいけど。どうせ死ぬのだから、死んだ後の扱いなんて気にしても仕方が無い。

それよりも眠くて仕方が無い。さっさと寝てしまおう。



338 : 愛より青し[saga] - 2011/04/03 18:23:06.55 CaaV/GUs0 3/7




「しっかりしてください!」


瞼を閉じようとすると、甘ったるい声が耳朶を打った。

閉じかけた視界には小さな女の子の姿。

少女趣味全開の、漫画かアニメにしか出てこないピンク色の女の子女の子している子供の姿。

こんな夜に、しかも雨の中で一人何をしているのだろう。

親はどうしたんだ?

俺になんて構ってないで、早く家に帰りな。



「何言ってるんですか!」



甘ったるいくせに、妙に迫力のある声が頬を打つように響いた。

知らない内に声に出していたみたいだ。

子供は俺の身体の上に指していた傘をかけると、自分の着ているコートまで被せてくる。

少しでも冷やすまいとするように。

何やってるんだよ、風邪引くだろ?


「そんなことどうでもいいです!それよりも今救急車を呼んだのです。もう少しですから頑張るのですよ」


少女は目に涙を浮かべている。


「ゴメンなさい。私一人じゃ君を運んであげられないのです」


その子は袖で涙を拭いながら、何度も謝罪を繰り返す。

雨にすっかり濡れて、身体も冷えているのだろう、吐く息は白いというのに、自分のことなんて露ほども気にかけず何度も謝ってくる。


ゴメンなさい。


ゴメンなさい。


ゴメンなさい。


此方の方が罪悪感を覚えずにいられないような声で何度も。



「大丈夫です、大丈夫ですから …――― 」



温かい感触に、辛うじてまだ動く目だけを向ける。

小さな手が、俺の手を必至に握っていた。


本当に温かい。




「――― だから泣かないで下さい」




339 : 愛より青し[saga] - 2011/04/03 18:24:12.54 CaaV/GUs0 4/7



死ぬ事に怯えてると思われたらしい。

そんなビビリじゃねぇって、普段なら即座に否定してるのに、それとは裏腹に俺はただ頷いた。

そうすることで、少しでもその子が安心してくれると思って。

死ぬのが怖くて泣いたんじゃない。

握られた手が不意討ちのように温かったせいだ。

こんなどうしようもない惨めで俺らしい最後の最後に、こんな優しい子に看取られて死ぬんだと思ったら何だか泣けてきたんだ。


「最後なんて言っちゃダメなのです」


また声に出てた?参ったな…カッコ悪過ぎるだろ。

子供の前で弱音とか情けねぇ。


「子供じゃありません」

泣き顔で言われても説得力が無いんだよ。

どうしてアンタが泣いてるんだよ。

別に死んだって俺は構わないってのに。


「そんな悲しいこと言っちゃダメです。それに、人が死ねば悲しいのです。痛い思いをしてる子を見れば、胸が苦しくなるのです」


そういうものなのか。

ゴメン、わかんないや。だって、毎日人は死んで行ってるんだ。

散々ゴミみたいに死んでくのを見てるんだ。

今更過ぎて苦しいとか、悲しいとか、全然わからないよ。

「だったら尚更生きなくちゃダメです!」

子供の温かい手が頬を撫でる。





「生きて、命の大切さを学ばないとダメなのです。“今更”なんて言葉この世には無いのですよ?」






340 : 愛より青し[saga] - 2011/04/03 18:25:08.37 CaaV/GUs0 5/7



優しく甘い声が耳といわず、身体中に染み込んでくるようだった。

俺は思わず息を呑む。

涙に濡れたぐちゃぐちゃの顔で笑ってるのに、その笑顔は凄く大人びて、綺麗だった。

まるで先生みたいな言い方だな。

笑おうとして、血の塊を吐き出す。

子供は泣き笑いのような、それでも何処か母親みたいな顔で見下ろしてくる。


「そうです、先生なのです。だから、貴方のような困ったちゃんは放っておけないのです」


困ったちゃんか…

そんな風に言われたのは初めてだ。

いいな、アンタが先生とか。アンタの生徒になれたらきっと楽しいだろうな。


「君みたいな子は毎日補習なのですよ?」


そりゃいいや。そういう普通の学生っぽいのに憧れてたんだ。

そんでもってアンタが先生っていうのはいいかもな。

俺は困った生徒で、先生のアンタは毎日怒るんだ。

で、俺はアンタを守って日夜影ながら戦う。


中々熱い展開だろ?


「楽しみにしてるのです」


ああ、俺も…楽し、みだ……


「しっかりするのです!!」





                   ―…***…―







「―――― ゃん…」


甘い声がする。

耳障りではない、柔らかい声。


341 : 愛より青し[saga] - 2011/04/03 18:27:05.51 CaaV/GUs0 6/7


「青髪ちゃん起きるのです!」


おお、小萌先生。

おはようさん。


「ハイ、おはようございま…じゃないのです!!先生の授業で居眠りなんて許しませんよ」

いや~小萌先生のハニーボイスが心地良過ぎるのがアカンのや。

「むぅ~~反省の色がありません。今日は青髪ちゃんは居残りなのです!」

おひょ~小萌先生と放課後プレイとかご褒美や。






「青髪……お前…」

ん?どうしたんやカミやん?

あ、わかった。さては僕が羨ましいんやろ?

小萌先生を独り占め出来る僕が。

「いや、それはねー。つーかよくやるなお前……」

そんなに褒められたら何や照れてしまうわ。

「いやいや、褒めてないから」

「ホント、小萌先生の補習受ける為に赤点取ってみたり…青ピも大概だにゃー」

イヤやな~ツッチーまで。




小萌先生の側にいられるんやったら僕は何でもするんよ?







                   ―…***…―






テレビのヒーローに憧れていた。

特に惹かれたのは、好きな子の為に戦う等身大ヒーロー。

普段は冴えないヤツが、密かに憧れている子の為に戦うような話が特に好きだった。


342 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage] - 2011/04/03 18:28:26.41 CaaV/GUs0 7/7

以上で投下終了です。
勝手な捏造話で恐縮です。ふと書きたくなったので…
それではお目汚し失礼致しました。