189 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方)[sage] - 2011/04/17 18:31:02.17 GSJLvnfG0 1/6
初SSです(※ここに書き込むのは的な意味で)
台本書きなら一度だけどこかで経験しましたが自分の能力ではかなり難しかったということで
今回は無謀ながら地の文に挑戦してみました
・通行止めです
・ただいちゃついてるだけ、妄想補正あり
・時間系列はロシア編の後で平和満喫
・初心者なのでアドバイス頂けたらありがたいです
では三つほど投下します
「あなたにお願いがあるのってミサカはミサカは上目遣いを駆使しながら懇願してみたり!」
それはとても不格好な図だった
とあるスーパーに二人の男女がいた。
まるで兄と妹を連想させるように、ちいさな少女は高校生くらいの彼にピタリとくっついていた。
なぜその普通なら微笑ましく思える光景に違和感を感じるのか━━━それには理由がある。
まずその彼というのは学園都市最強の超能力者であり
核兵器を向けられても平然と生きられるほどの怪物であることだ。
そんな人物が平和ボケしたこの表の世界で一昔前のラブソングをBGMに
一般人と同じように買い物に来ていること自体少々不似合いな光景であるのに
さらに少女連れというのはもっと信じがたい光景であるのだ。
でも闇と手を切った彼は早くこの違和感に溶け込まなくてはならない。
「……ンだよクソガキ」
かわいらしい10歳前後であろう少女は
そんな無愛想な返答と鋭い視線にも物怖じひとつせず
にこりと幼い笑みを見せればアホ毛を揺らしながらきゅっと彼の服の裾を握る。
一方通行と呼ばれる彼はそれを拒まなかった。
「さくらんぼが食べたいなってミサカはミサカは物欲しそうな顔をして訴えてみたり」
「あァ?吉川に頼まれたモンにはいってねェだろ」
「どうしても食べたいんだもんってミサカはミサカはダダをこねてみたり!」
年相応に頬をぷくっとふくらませすねる態度を見せる打ち止めと呼ばれるその少女に
彼は心底うんざりとしたような表情で対抗策としてスーパーの広告を見せつける。
赤い油性マジックでまるの印がついた商品を買ってきてほしいと頼まれたことは少女も無論知っていた。
しかしそれでもなかなか諦めず、ついに少女は地団駄を踏んだかと思えばその場にへたれこんでしまった。
ここまでごねたのは初めてかもしれないと一方通行は頭の片隅で思いながら一息つくと「…くっだらねェ」と吐き捨てるかのように呟けば動かない打ち止めを無視し止めていた脚を進めた。
どこか重みを感じながらも。
段々と小さくなるその背中に少女はまだなにか言いたそうだったが唇をきゅっと噛み締めるように結ぶと
スッとその場から立ち上がり寂しさを匂わせる表情を隠すかのように妹達の一人からせしめたゴーグルを装着するとのろのろと不安定な足取りで後を追う。
しかし、それでも彼の背中との三メートルほど離れた気まずさのある距離を埋めようとはしなかった。
━━━が、ふと額になにかがぶつかる。
びく、と反射的に肩を揺らせばゴーグルを外し顔をあげる。
目の前にはいつのまにか仏頂面の彼がいた。
そして微かに痛む額にぶつかったものの正体は彼の手の中にあるケースで。
その中には少女が渇望していたおいしそうな真っ赤なさくらんぼが並んでいた。
「━━━わあ…っ!」
少女の表情に花が咲く。
それは彼が待ち望む未来の象徴。
(あなたはやっぱり素直じゃないけど優しいねってミサカはミサカはうれしそうにハグしながら言ってみる!所謂ツンデレ属性だってミサカはミサカは心情を吐露して━━ふえ!?)
(ラストオーダーちゃァン?)
(な、何でそこで拳に力が入るのー!?ってミサカはミサカは癒し系マスコット的な笑みを浮かべて…ご、ごめんなさーい!)
「んんうー!甘酸っぱくておいしいってミサカはミサカは子供特有のだだっこ攻撃で手に入れた戦利品の感想を述べてみる!」
ちいさな口を一生懸命開いて戦利品という名のさくはんぼを頬張る少女。
彼はというと興味なさそうにソファーに寝転がっていた。
どうやら今、同居人である黄泉川や芳川さらに番外個体まで不在らしく打ち止めのはしゃぎ声だけが部屋を満たす。
特にやることもなく一方通行は欠伸を漏らせばゆっくりと瞳を閉じる。
数分たつと寝息を立て始めた彼は頬に当たるなにかに気付く。
「……なンのつもりだァ?クソガキが」
━━━目の前には頬をつんつんとつつく少女がいた。
じろりとその異質な赤い瞳で睨みをきかせてみれば
そのすぐに壊れてしまいそうな細い指はパッと離れる。
先ほどまでたのしそうにさくらんぼを食べていたのにもう飽きたのだろうか。
その行動の目的を問うが少女はもじもじとしたまま。
なかなか口を割ろうとしない。
「トイレならさっさと行ってこい」
「ち、ちがうもん!あなたって人はもう…!ってミサカはミサカはレディーに向かって言う台詞じゃないことを指摘してみたり」
じゃあ何だと一方通行は再度問うが
やはりすぐその威勢はなくなりまるで風船のようにしぼむ少女
意味がわからなくてとにかく面倒くさく感じた彼は不機嫌そうに「寝る」とだけ呟く。
すると目の前の少女はワンピースのすそをきゅっと握り、意を決したように言葉を絞り出した。
「さっ、さくらんぼをあなたに食べてほしいのってミサカはミサカは一生懸命お願いしてみる!」
━━━そんなことかよ、と感じたのが読み取れるような表情を見せる彼に
少女はすかさず残りのさくらんぼが入った小皿を差し出す。
たしか少女は出会って間もないころ
誰かと一緒に食べるとそれだけでおいしい、などという精神論を語っていたことがあったなと不意に思い出す。
断ろうとしたがいつもは無邪気な年相応の表情しか見せない少女があまりにも真剣な瞳のせいでなかなか口に出せない。
こうなると絶対に譲らないと一方通行は知っていた。
諦めたように仕方なく溜息をつけば、その小皿からさくらんぼをひとつつまむ。
少女はそれを見てうれしそうに頬をふにゃりと緩ませる。
そしてこの後、一方通行は少女がさくらんぼを買いたがった本当の目的を知ることになる。?
「早く食べてみてってミサカはミサカはあなたに促してみる!」
「……ったく」
やれやれと言った感じに指先でつまんだ小さな甘い実を打ち止めに促されるままに口の中へと放り込む。
その様子をうれしそうに口元に弧を描きながら覗く少女を尻目に。
口の中にその果実は甘酸っぱさの余韻を残して。
口内に残り邪魔となった茎と種を捨てようと
寝転がったその状態でも手を伸ばせば届くほどの距離にあるテーブルに視線をやる。
正確にはそのテーブルの上に置かれる水玉模様のかわいらしい柄をした小皿へと、だが。
しかし彼の人並みよりも細身なその腕が伸ばされる前にそれを察した少女がスッと小皿を取り上げた。
その行動の意味もわからず眉を普段以上にひそめる一方通行は
打ち止めに舌打ちを投げかければ今の自分の目的を彼らしく最も短い言葉を述べた。
「よこせ」
「あなたがお願いを聞いてくれたらいいよってミサカはミサカは交換条件を持ち出してみる!」
「フザけンな」
いたずらっぽく茶目っ気盛んに舌を出して子供じみたアピールをするが一方通行にそれは通用しない。
即答で拒絶、おまけに連続チョップまで額にくらわせてみる。
しかしここで折れる打ち止めではない。
そもそもさくらんぼを食べたいと言い出したのもこのお願いが目的であったのだ。
もちろん自分自身も食べたかったのだけれど。
「茎を舌だけ使って結べるかやってみてってミサカはミサカはお願いの詳細を懇切丁寧に述べてみればあなたをじっと見つめてみたり」
「なンでそんなことしなきゃいけねェンだよ」
「どうしてもってミサカはミサカは……」
最後はあやふやに言葉を濁してしまった少女はどこか気まずそうに俯いて
諦め気味にうしろに隠していた小皿をスッと彼に差し出す。
━━━するとなんの予兆もなく彼から小皿へと返ってきたのは何の変哲もない種とちいさく結ばれた茎。
「え、なんでってミサカは…」
「テメェがこんなクソ面倒くせェことを頼んで来たんだろォがよ」
プイっとそっぽを向いた一方通行は心底バツが悪そうな表情だったが
少女はそれが照れ隠しだと知っていた。
しかし不器用なそのやさしさが表に出ることを彼は嫌う。
それを考慮して打ち止めはそれについて突っ込むのはやめたが
代わりにソファーに身体を乗り出すと
寝転がるいとしい彼の耳元でうれしそうに囁いた。
(あのね、さくらんぼの茎を舌で結べる人はキスが上手いんだってミサカはミサカは黄泉川にこっそり教えてもらった情報を開示してみる!だからあなたで試してみたかったのってミサカはミサカはあなたのテクニックの高さに驚愕しながら…あ、でもキスは結婚を前提でだよってミサカはミサカは━━━)
(……クソッタレ)
193 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方)[sage] - 2011/04/17 18:48:17.23 GSJLvnfG0 5/6以上で投下終了です
色々ごちゃごちゃしてます…
題名とかはあまり考えていません
打ち止め「チェリーボーイ?」一方通行「あァ?」みたいな感じでいいかな
gdgdですいません、ありがとう御座いました
194 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府)[sage] - 2011/04/17 19:28:04.12 ez/z1TRC0 6/6乙!
表現が丁寧で微笑ましすぎる様子が頭にうかんだ