694 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県)[saga] - 2011/04/27 00:11:51.38 jY7dqkec0 1/19

流れをぶった切ってすまない。
お勧めスレで美鈴通行が盛り上がっていたのを見て激萌えたから書いてみました。
12レスほど頂きます。

元スレ
▽ 【禁書目録】「とあるシリーズSS総合スレ」-27冊目-【超電磁砲】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1302720595/
695 : 御坂美鈴の学園都市7泊8日一人旅 1/12[saga] - 2011/04/27 00:12:56.38 jY7dqkec0 2/19




自分一人が問題ないと判断したところで、周りが納まる訳がない。


学園都市とローマ正教の対立を受けて街から子供達を避難させる為の活動を率いていた御坂美鈴だが、
先日の10月3日に<偶然> 訪れた学園都市で <偶然> 巻き込まれた事件から彼女は
「これだけ支えてくれる人がいるならば娘は安全だろう」と判断し活動から手を引くことと決めた。

決めた。
――――はいいが、同じ活動に勤しんできた仲間達がそう簡単に納得する筈もなく、
自分が安全だと判断した根拠を説明したところで「アンタの娘はそれで良いかもしれないが俺達の子供はどうなる!?」と一蹴された美鈴は
否定を許さない威圧に押され、結果として一つの条件を呑むこととなったのだった。


≪学園都市に一週間滞在し、その環境と状況を根拠とする安全性をレポートせよ≫


巻き込まれた事件の捉えられた先でこっそりと救出に来た人間に声を上げてしまうような疎さもあるが、
冷静になれる場合であるなら美鈴とてそう馬鹿ではない。
馬鹿ではないから、馬鹿正直にスキルアウトに絡まれた事など言わなかった。

結果、コレだ。
誰しもいざ戦争が始まりかねない現地に自ら足を運びたくはない。
娘・息子の為ではあるが、代われる人間がいるなら代わって欲しい。そう考えてしまうのが人の性というものである。

子供が生活する環境を確認したいが、今外部からあの街を訪れるのは危険すぎる。
皆がそう判断する中で、つまり美鈴は格好の餌となった訳だ。


「―――――……ま、やっぱり避難計画は中止よー、なんて急に言いだした私が悪いんだけどね……」


他人が美鈴の立場で美鈴が他人の立場だったら、美鈴が中止を宣告される立場だったら自分もきっと非難した。
だからこそ仕方ないのは分かっている。
分かってはいるが、


「なんでこんな時にパパは南米なんか行っちゃってるかなぁあああああ!!」


当初は夫婦二人で訪れる予定だった筈が、パートナーである旅掛の急遽決まった海外出張からそれもオジャンとなってしまった。
何でも環境問題云々の手伝いに向かったらしいが、そんな事よりまず妻の周囲環境の問題を片づけていって欲しいものだ。

娘の友人(もしかしたら義理の息子候補かもしれない)上条当麻が言うところの <武装したギャングみたいなもん> に
つい最近襲われたばかりの美鈴の内には、娘の安心を確信するきっかけになったとはいえ、あの街には多少のトラウマが未だ根付いている。

学園都市への再びの来訪を一人で行うのは些か不安が残ったが、こうなってしまっては仕方がない。


こうして、御坂美鈴の学園都市7泊8日一人旅が正式に決定したのだった。






696 : 御坂美鈴の学園都市7泊8日一人旅 2/12[saga] - 2011/04/27 00:13:59.25 jY7dqkec0 3/19




「それにしても、案外と簡単に滞在許可が降りたものねー」


前回は大学側からの紹介状があったが、今回は違う。
自分の様な一応はまだ <避難計画実行者> 側の人間は歓迎されないと考えていたが、敢えて招き入れることでイメージ改善でも図っているのだろうか。

そうかもしれない、と美鈴は一人納得する。
以前事件に巻きこまれた自分は学園都市に最悪なイメージを抱いているだろうから、これを機に良い印象を持ってもらおうとしているに違いない。

彼女はそう勝手に解釈したが、実際の所半分正解、半分不正解だったりする。
学園都市が御坂美鈴を <避難計画> の他のメンバーを鎮まらせる為の材料にしようとしている事は事実だ。
だがその背景に娘を思い人とするアステカ人の、曰く <醜い手> が回っていた事を、美鈴は知らない。



知らないのでこの話題は割愛しよう。
何はともあれ上手いこと学園都市へと足を踏み入れた御坂美鈴は、その足取りを滞在先のホテルへと向けた。
最上級ホテルのスイートルームを一週間分ポケットマネーで用意するのだから、この親にしてこの子ありである。
着替えの為だけにホテルを借りる娘・美琴の根源が窺えた。

タクシーを拾いホテルに着くと、すかさずドアマンが荷物を受け取り、豪奢で重厚な扉を開く。
それを当たり前の様に受け流す美鈴はスムーズに受付を済まし、案内された部屋まで到着すると慣れた手つきでチップを荷運びへと手渡した。


「さて、折角だから何処か遊びに行っちゃおうかな~~」


腰かけたスプリングのよく利くベッドの上で、学園都市特有のアトラクションが立ち並ぶ第六学区の遊園地やら
極薄ガラスと特殊建築技術が売りの第八学区の水族館や、娘がよく口にするテナントが入った第七学区の複合大型ショッピングモールを想像した美鈴であったが、


「――――――……ダメね、お仕事に来たんだもの。お仕事に」


計画中止を言い渡した時の仲間達の冷めた目線を思い出して、欲望を頭ごと振り払った。


「………とりあえずそこら辺ブラブラ歩いてみましょっか、ね」


忘れてはならない。自分は子供達の環境を確認しに来たのだ。
立場はさながら、深夜の街頭補導員である。






697 : 御坂美鈴の学園都市7泊8日一人旅 3/12[saga] - 2011/04/27 00:15:35.99 jY7dqkec0 4/19




「――――美琴ちゃんは大丈夫だろうけどコレ、………他のお子さん大丈夫かしら」


2時間後。
<皆さんのお子さんも絶対安全ですよ> という旨をどう皆に伝えようかと悩んでいた美鈴の心は、早くも折れかけていた。

30分かけて滞在先のホテルから他学区の学生達の多いゲームセンターなどの娯楽施設が並ぶ大通りへと出た美鈴は、そこで直ぐにナンパされた。
あら年下の男の子に誘われるなんて私もまだまだ若いものね。
そう余裕の態度をとっていられたのだから、ナンパ自体はなんら気にする必要がない。問題はその後だ。


『風紀委員ですの!それ以上女性を無理に連れだそうとするのでしたら、婦女暴行で拘束しますわよ!!』


素早く対応してくれた学生治安維持機関に美鈴は感心したものだ。
風紀委員の名を聞いて舌打ちしながらもナンパ少年達が立ち去るのを見送ると『大丈夫ですの?』と気にかけてくれたのも好印象だ。

だが、


『―――――お姉、様……?』


おや。何か既視感が。
助けてくれた風紀委員が大覇星祭の時に娘に摺り寄っていた百合少女だと美鈴が気付く前に、


『お姉様オーラ大噴出のご家族キタぁあああああ!!!親娘丼でも姉妹丼でも黒子ったら何でもありで困ってしまいますのォおおおお!!!』


もしあの時何処からか飛んできたコーヒー缶が少女の頭に命中しなかったら、果たしてどうなっていた事であろうか。
年下とあらば男の子でも女の子でもチューしちゃったりする美鈴であるが、…………流石に貞操を奪われるのは洒落にならない。



その後も何かと散々であった。
立ち入ったコンビニの出口で足を引っ掛けてしまった不良にガンつけられて暫く追いかけ回されたり、
逃げ回って疲れたので自販機を利用しようとしたら1万円札を呑み込まれたり、挙句の果てには嘆きながら向かった別の自販機が突然の停電にショートしたり。

勘違いしてはいけない。
これはこの日の美鈴が運勢最悪で何処ぞの少年張りに不幸であっただけで、
実際こんなに災難が重なる事は滅多にない(しかも気付かないだけで最後の原因は娘である)。

しかしながらこの街をよく知らない美鈴にそんな判断がつく筈もなく、


「………幸先、不安しかないんだけどコレぇええ……」


滞在期間、残り7日。






698 : 御坂美鈴の学園都市7泊8日一人旅 4/12[saga] - 2011/04/27 00:16:41.58 jY7dqkec0 5/19




不幸な事に、次の日も御坂美鈴が遭遇したのは災難ばかりだった。
立ち寄った銀行を強盗が襲ったり、煙草を買おうとした所を警備員に咎められて身元確認をされたり(見た眼の若さを評価されたのだと若干嬉しかったが)。

ラッキーと言えば昼食を取ろうと入ったファミリーレストランのレジを通ろうとしたらどうにも財布を落としたらしく清算できずに困っていた時に、
同じ店内に居たらしい少年が、十数杯分の自分のコーヒー代と一緒に美鈴のランチ代を払ってくれた事だろうか。
自分の座っていた席に戻って美鈴が財布を探している間にレジへ向かった少年が、見かねて自分が金を出すと申し出てくれたらしい。

結局財布は見つからなかったのでカード類を全部ストップさせる事となり色々と面倒だったが、それだけは確かにラッキーだった。
この体験は必ずレポートに書いておこう、と御坂美鈴は心に決めた。



学園都市滞在5日目。
3日目と4日目も相変わらず災難しか無かったので、申し訳ないが此処では省略させて頂く。
何故って書いたら直行☆美琴ちゃん共々学園都市の子供達を安全国へ!になりかねないからだ。

美鈴は学園都市のキャンペーンガールでもイメージアップ戦略委員でもなんでもないが、
娘が望む以上母親として美琴をこの街に居させてやりたいと思っている。
直接尋ねた事はないが、気になる男の子が学園都市に残ると言う限りは――――そう言う事なのだろう。


「よおっし!気分変えて今日はいっその事ちょっと隠れ小道的な所行って見ちゃおっかなー………
もうフラグしか立ってないような気がするけど、こういう場所のチェックが重要なのよね」


くどい様だが美鈴は学園都市の治安、特にそこで暮らす学生達の環境を視察しに来たのだ。
若者が好む様な娯楽施設は無論の事、歓楽街や深夜のコンビニ、はたまた人の視覚となる路地裏やビル裏まで調査しなければ意味を成さない。


「行くは良いけど実際にヤクとかやってる子見つけちゃったらどうしよう……取り敢えずはすぐに警備員を呼べるように携帯構えといて―――――」


しかして、美鈴の予想通りと言うべきか物語の進行上と言うべきか。その行為は紛れもなく<フラグ> であったりするものだ。
だがその理はフラグという言葉が生み出された頃合いから完成しているのだから仕方あるまい。


「――――――………へ?」


御坂美鈴の目線の先に、何処か見覚えのある少年が一人ポツンと座り込んでいた。
真っ白な髪に血を滴らせて。意識を彼方へ飛ばしながら。






700 : 御坂美鈴の学園都市7泊8日一人旅 5/12[saga] - 2011/04/27 00:18:06.00 jY7dqkec0 6/19




数年前の事だ。
段ボールに入った青年をしがないOLが拾い隠れてマンションに連れ込むドラマがあった。
アレを見ていて本当に良かったと、美鈴は頭の片隅にそんな馬鹿な事を思い浮かべる。

致命的な外傷がないか一通り少年の体を眺めてから、年の割には軽すぎる彼を美鈴はその背に背負った。
着ていたパーカーのフードを被せて顔を隠した少年を連れ出来るだけ人目に付かない道を、しかし絡まれない様それなりに人通りのある道を慎重に選びながら
美鈴はホテルまでの帰路を目指す。

途中タクシーを見つけたので呼びとめてそれに乗り込んだ。グッタリとした少年を気遣う心優しい運転手を
彼は気分が悪いから滞在先へ急いでいるのだと何とか誤魔化し(その言葉にスピードを速めてくれた運転手に美鈴の良心が痛んだ)、
ホテルの前で降りると再び彼を背負い降りた。

医者を呼びましょうかと尋ねるドアマンを、さっき病院に寄って来たからと退けようとしたら鋭い目で見られたために一瞬心臓が跳ねたものの
流石は超一流ホテル。客への詮索はしないという仕来りが徹底していたのでとても助かった。

美鈴がそうまでして彼を隠し、医師にも診せなかった理由はただ一つ。


意識を失って座り込んでいた彼が、杖を持つ手とは逆の手に、拳銃を握り締めていたからだ。


彼の拳銃は今、美鈴の懐にある。
本当は警備員や風紀委員を呼んで捜査してもらうべきなのかもしれない。
正確な事情聴取を受けてもらう方が彼の為なのかもしれない。

だが、美鈴はそんな手段を選ぶことができなかった。
あの時自分を助けてくれた少年を
何処か捻くれた、心の優しい少年を
無暗に引き渡す様な真似をしたくはなかったのだ。


「―――――……話、ちゃんと聞かなきゃ………」


髪から滴っていた血は彼の物ではなかったらしい。
そう、他人の。
<彼が撃ったかもしれない誰か> のもの。

きちんと話して、それから、どうするか考えて。

焦るばかりの美鈴の心境など知らぬように、未だ少年は目覚めない。






701 : 御坂美鈴の学園都市7泊8日一人旅 6/12[saga] - 2011/04/27 00:19:08.04 jY7dqkec0 7/19




所々掠り傷を負っていたようなので買ってきた応急セットで何とか手当はしてやった。
一つしかないフカフカベッドも譲ってやり、寝心地の度合いは下がるがそれでもスプリングの利いたソファで美鈴は一晩を明かした。

朝食を2つルームサービスで調達する。少年の嗜好が分からなかったので、洋食と和食1つずつ。
朝になれば流石に起きてくれるだろうかという彼女の期待を裏切って少年は変わらず目を閉じたままだったので、
多少躊躇はあったものの美鈴は彼を、娘がまだ家に居た頃そうしたように彼の体を小さく揺すった。


「ねえ、起きて?詳しい事は後で良いから、取り敢えず朝御飯にしましょう?」


起きて、起きて。
何度か続けてやればゆっくりと少年が瞼を開いた。薄ら除いた瞳が見慣れぬ深紅に染まっている。
その色合いを見て、美鈴はドキリと体を弾いた。
以前あった時は暗がりで気付かなかったが、少年には全身真っ白というそれ以外に身体的特徴がもう一つあったらしい。


「………起きれる?てゆーか私の事覚えてる?」


尋ねてみるが、返答はない。
大丈夫?何処か痛むの?
何度も声をかけてみるが、「あー」だの「うー」だの籠った様な声を出すだけでまともな返答をしない彼に、
頭でも打ったのだろうかと美鈴は医者に診せる事を再検討した。

だが、拳銃を持っていた事実と返り血をつけていた事実が美鈴にそれを躊躇わせる。
どうしたものかと悩む美鈴が悶々と考えを張り巡らせていると、


ぐー。


気の抜けた音が自分から発せられたのではないと気付き、少年を見た。
何処か様子のおかしい少年の目線が、それでも本能なのか机に並べられた朝食に向かっている。


「――――――取り敢えず、ご飯にしましょっか」


その時点で美鈴は、考える事を半ば放棄した。






702 : 御坂美鈴の学園都市7泊8日一人旅 7/12[saga] - 2011/04/27 00:19:58.22 jY7dqkec0 8/19




今の彼に箸を持たせても覚束なそうなので、握るだけのフォークで食べられる洋食を彼に譲った。
が、フォークを持たせ目の前に食事を並べても一向に彼は食べようとしない。
皿の上の黄金色をしたふわとろスクランブルエッグをじーっ、と見つめるばかりで、口に運ぶ気配がちっともない。
食欲がないのだろうか。いいやそんな事はない、腹が鳴っていたのだから空いてはいるのだろう。

どうしたものか。
悩んだ美鈴は「あーん、」と戯れと冗談で卵料理を乗せたスプーンを彼の口元へグイグイと押し付けてみる。
文句を示したり抵抗したりする素振りを見せれば、恥ずかしかったら自分で食えとからかってやるつもりだったのだが、


「んぐ、」


モキュモキュ、ごっくん。
普通に口に含んだ上に、もっとと口を開いて催促するものだから、拍子抜けしてしまったのは美鈴の方だ。


「………あーん、」

「ん」


何だろう、この光景は。





その日の昼食も夕食も、同じ様にして彼に食べさせた。
本当は宿泊客以外が部屋に泊まるのは御法度なのだが、咎められそうになった際に幾らか金を積んでしまえば超能力者の身内という事もあってか事は収まった。
寧ろ空いている2人部屋へ御案内しましょうかと申し出られたので、じゃあお願いしますと任せると


「………なんでダブルベッド?」


金や権力で何でも解決すると思うなよ、というホテル側からの逆襲にしか思えなかった。
実際には本当にそこしか空いていなかっただけなのであるが。

しかも部屋を移動したのは夕食を取ってからだったので寝る時間はもう間近に迫っている。
どちらにせよその前には風呂というビッグイベントが控えているのだが


「まあ手当の時に脱がしたし、私だって夫子持ちだし関係ないか」


片や学生。片や一時の母。
気にするほどではないだろう。赤の他人、白痴趣味もどき、世間体といった要素を除けば。


学園都市滞在、6日目
少年との再会、2日目
終了。





703 : 御坂美鈴の学園都市7泊8日一人旅 8/12[saga] - 2011/04/27 00:20:45.15 jY7dqkec0 9/19




一度割り切ってしまえばもう何にも動じない。
結局はバスタオルを巻いただけの格好で全裸に剥いた少年の体を洗ってやったし、大きなベッドの同じ毛布に包まって一緒に眠った。

傍から聞けば危ない関係にしか聞こえないが、美鈴としては幼い頃の美琴を思い出して懐かしいばかりだった。
少し目を離せば予想もつかない事を自覚無しにやってのけ、構って欲しいと何かと手を伸ばしてくる幼い子供。
出会った時とは全く違う印象の彼であったが、幼子を護ってやりたいという母性本能のままに、美鈴はそんな彼を介抱した。

あまり子供扱いし過ぎても良くないのかもしれないが、寝ている彼を部屋に残して向かった本屋でついつい絵本を買って来てしまったりもした。
随分前に娘に読んでやった童話は、その知名度もあってか学園都市の本屋にも平積みになっていた。

ベッドの上で兎と亀の競争シーンを音読しながら「幾らウサギそっくりだからってアンタはこう頭に乗っちゃダメよー」と声をかければ、
きょとん、と見上げてきたのが可愛らしかった。

テレビをつけた瞬間流れた大きな花火の音にビクリと背中を揺らした姿に、思わずクスリと笑ってしまった。

ルームサービスが続いたからと一緒に外で購入してきたオムライスを口に運べば、中から出て来た大きなピーマンの塊に眉を寄せたのが愉快だった。

ピーマンを飲み込めた御褒美にプリンを開けて食べさせてやると、安心したようにホッと息を吐いたのが面白かった。



元来の世話好きか、このワケあり少年に美鈴は思わず肩入れしてしまった。
肩入れし過ぎてしまった。

現実は残酷だ。
今日は学園都市滞在7日目。明日はとうとう、帰る日だ。



元々一時的に彼を匿うだけのつもりだった。
どうしてあんなところで気絶していたのか。どうして銃を持っていたのか。一体何をしていたのか。
一通り話を聞いたら、これからどうしていくか、彼と一緒に考えてあげるだけのつもりだった。

しかしイレギュラーな展開に美鈴は自分の事情も、そして彼の事情も半ば忘れて、
否。
彼の口から何が語られるのか聞くのが恐くて、イレギュラーを利用する様に彼の世話を焼く事で現実逃避して、
美鈴はこの3日間を過ごして来た。


だが、もう限界だ。


どうあがいても明日はやって来る。
美鈴にだって家族がいる。護るべきモノ、抱えるべきモノが別にある。
少年に最後まで付き合ってやる事は到底できない。


「―――――………どう、しよっか……――――――?」


常と変わらず、少年は何も答えなかった。






704 : 御坂美鈴の学園都市7泊8日一人旅 9/12[saga] - 2011/04/27 00:22:02.89 jY7dqkec0 10/19




悩んだままに朝を迎えた。昨夜はあまり眠れなかった。
この3日間そうしたように、隣で眠る少年を、声をかけながら揺り起こす。

目を擦りながら起き上った彼を確認して一息。
着替えを済まして歯を磨いて。眠気覚ましのコーヒーを煎れ、一杯口に含んだら。


「………朝御飯、頼もっか」


洋食のプレートを2つ。内戦越しに注文を通す。
あとは出会った初日に買って来た服の中から適当に選んで少年に着せ、朝のニュースでもダラダラと見ていれば直ぐに朝飯にありつける。


ピンポーン、


注文をして30分。
このホテルを利用し始めてからルームサービスが届くのはいつもこのくらいの時間だったので、美鈴は何の疑問も抱かずにドアへと駆け寄る。

「朝食をお届けにあがりました」と案の定聞こえる声に、確認もせずチェーンロックを外した美鈴が扉を開けると


「―――――御坂美鈴さん、ですね」


見知らぬ少年が、立っていた。





ホテルマンにしては若過ぎる。
勿論、頼んだルームサービスなど持ち合わせていない。


「一方通行さん………あなたが連れ込んでいる『彼』の回収に来ました。お部屋に上がらせて頂いても?」


柔和な笑みを浮かべながら言う見知らぬ彼の言葉に、美鈴が急いでドアを閉める。
閉めようとした、がドアはしっかりと押さえつけられて彼と美鈴達を隔離するに至らなかった。

嫌な予感が美鈴の中を駆け巡る。
もしかしたら、この少年は


「『彼』に危害を加えようとする存在、もしくは『彼』が敵対していた存在かもしれない。……でしょう?
 違いますよ。自分達は『彼』の味方――――とは言えませんが、同僚にあたる存在です。『彼』に合わせて下されば、それも直ぐに分かるのですが………」


そんな事を言われた所で信じられる筈がない。
味方じゃないと、自分ではっきり言っているではないか。同僚など、まるで何かの組織に『彼』がいるみたいではないか。


「………あなたがあの子に何もしないって保証が、何処にもないわ」

「はい、確かに。しかし何かをするという確証も、貴女にはありません」


少年の言い様に、美鈴が息を詰らせる。
そんな彼女を見て『彼』の同僚を名乗る少年は困った様に小さく笑い、そして



「では、こうしましょう。自分が『彼』に何かをしようとしたら、貴女が自分に反撃すればいい。―――――懐に持った、『彼』の拳銃を使って」



跳ねた鼓動に、万一に備えていつも仕舞っていた内ポケットの中の拳銃がカチリと鳴った。






705 : 御坂美鈴の学園都市7泊8日一人旅 10/12[saga] - 2011/04/27 00:23:00.09 jY7dqkec0 11/19




少年はゆっくりと『彼』に近づいた。
美鈴はそんな少年に、言われるがまま震える指で引き金に手を掛ける。

穿いている仕立ての良いスーツのポケットに少年の手が伸びたのをみて、美鈴の指に思わず僅かに力がこもった。
それを刷りきれそうな理性で制し、少年の一挙一動に目を配る。

少年が取り出したのは端末に適応される様な、小型の充電器だった。
充電器から伸びたコードを、律儀に美鈴の許可を得てからコンセントに繋ぎ、もう一方の差込口を手持無沙汰に弄りながら


「『彼』の付けていたチョーカーは何処へ?」

「ち、治療の時に外して………机の、牽き出しに……」


またもや美鈴の許可を得てから少年が引き出しを漁る。
ホテルから支給された幾つかのアメニティ類しか他には入っていないそこからは、すぐに目的の物は見つかったらしかった。

少年は先程の差込口をチョーカーへと取り付け(チョーカーに充電機能がついている事など美鈴は全く気付かなかった)、
コードが伸びたままのチョーカーを手際よく『彼』に装着してゆく。
最後にカチリと一見しては見えづらい場所に隠されたスイッチを切り替え、


「このまま暫く待って下さい」


数分間の沈黙。
美鈴の触れ得る爪先が時折鳴らす、トリガーと奏でるカチカチという演奏音が実に居心地悪かった。

カチカチ、ガチガチ。
最早爪先の当たる拳銃からなのか噛み締めた歯からなのか、音源が分からない。


「………そろそろですかね、」


少年の声に、緊張に凍っていた美鈴の意識が揺さぶり動いた。
『彼』に近寄る少年に反射的に銃口を向け、少年から提案された通りに威嚇をする。

つもりが。

御坂美鈴は当たり前だが、銃の扱いになど慣れていない。
全くの素人であり、おまけに極度の緊張状態にあり、反射的な動作であったために正確な狙いなど付けていないまま
不幸な事に引き金に掛けた指に力の重心が動いてしまった彼女は、


パァン!!


少年ではなく『彼』に向かって、その銃弾を発射させていた。






706 : 御坂美鈴の学園都市7泊8日一人旅 11/12[saga] - 2011/04/27 00:25:16.23 jY7dqkec0 12/19





「――――――状況はどォなっている?」

「標的の方は既に始末が着きましたよ。ただ、不休連戦でバッテリーを消耗し切った一方通行さんをロストしてからこちらで発見・回収する前に
 貴女がそちらの女性に保護されてしまいましてね―――――――今朝割り出しに成功し、お迎えに来ました」


『彼』が、普通にムクリと起き上った。
異常な圧力を受けてひしゃげた鉛弾が足元に転がっているのを、彼は意にも返さない。


「下に車を用意してあります。せっかく結標さんを使わなかったのですから、一通りお別れが済んだら降りてきて下さいね」


あ、一応コレ気付け用のコーヒーです。最近お気に入りだったコンビニ限定の。
言い残してあっさりと帰ってゆく少年がバタリと部屋の戸を閉めると、力の抜けた美鈴の膝がへなへなと床をついた。


「………え、えっと………」


何かを言おうとするのだが、突然進展した様々な出来事に未だ処理が追いつかない所為か口が回らない。
回らない所為で、『彼』は美鈴を一瞥すると興味を失った様に少年の置いていった10本から一つ選び、缶コーヒーのプルを開けた。
美鈴の言葉を今度は理解しているようだが、コーヒーをゴクゴクと飲むばかりでこちらの話を聞こうとしない。

カコン。
早くも10本のコーヒーを飲み終えた『彼』が、近くに会った化粧台に残った空き缶を無造作に置いた。
そのままスタスタと美鈴に近づくと、力の抜けた彼女の指から無遠慮に自身の拳銃を奪って行く。


「―――――ね、ねえっ!」


駄目だ。このままきっと、『彼』は何処かへ行ってしまう。
何をしているの?銃なんて持っちゃダメだよ?死んじゃうかもしれないんだよ?
どれだけ美鈴が言葉を並べたところで、それら全てを言いきる前に『彼』は帰ってしまうだろう。

端的に、一言で。
自分の言いたい事全てを凝縮して、『彼』に何かを伝えなければ。

それは、数日間で芽生えた母性から来るものだったのかもしれない。
それは、大人としての責任感から訴えられたものだったのかもしれない。


「君が死んで、咽び泣くヤツもいるんだからね!絶対、絶対に―――――少なくとも、此処に一人!!」


それは、美鈴の知らない因果が生んだ、<運命> だったのかもしれない。


「―――――、……世話ンなった」


キィ……
先程の無遠慮さとは打って変わって静かに扉を開けると、彼はそのまま去っていった。

現実離れした思考のまま、美鈴はグルリと、一人残された部屋の中を見渡してみる。
ここ数日間着るために買ってあげた洋服類。
読み聞かせてあげた幼児用の絵本。
一時間前まで『彼』が寝ていた乱れたベッド。

それに。


「………ホント、優しいクセに不器用なんだから……」


化粧台の上に残された、風紀委員の百合少女に襲われた時に飛んできたものと同じ銘柄の空き缶。
ファミレスで代金を肩代わりしてくれた少年が飲んでいた、中毒と思えるほどの量のコーヒー。


「……あくせら、れーた。――――今度会ったら、あーくんって呼んじゃうぞ、バカ息子」






707 : 御坂美鈴の学園都市7泊8日一人旅 12/12[saga] - 2011/04/27 00:26:52.93 jY7dqkec0 13/19








<避難計画実地委員会への学園都市報告レポート>


学園都市はとても安全な所だと思いました。
何故ならあの街で、私に優しい息子ができたからです。
捻くれ者だけどとても優しくて、あんな子が育つ街ならきっと安心なんだろうなあと思いました。


                                御坂美鈴



「作文んんんんんんんんんんんん!!?」












一方通行がホテルを出ると、先に出ていた海原光貴が入口の前で待ち構えていた。


「どうでした、ここ数日間の安寧の日々は?」

「馬鹿か。覚えてる訳ねェだろ、電極作動してなかったンだぞ」


どォせさっきのコーヒー缶にでも盗聴器仕掛けてたから聞いたンだろォが、「世話ンなった」っつーのはあの女の顔を立ててやっただけだ。
そう言い張る一方通行に「そうですか」と一言頷いた海原は、先に彼を黒塗りのバンへと乗せると、
次に自分も乗り込みながら気付かれないよう小さく溜息と愚痴を吐き出した。


「どうせ覚えているからこそ『反射』じゃなくて『ベクトル操作』にしたクセに……本当、素直じゃないんですから」






≪ 御坂美鈴の学園都市7泊8日一人旅 ≫(完)






708 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県)[saga] - 2011/04/27 00:28:32.45 jY7dqkec0 14/19

以上です。
因みにお勧めスレで美鈴通行書いて下さると言っていた御人とは別人の、ただの通りすがりの白痴一方さん&御坂一族と絡む一方さん萌えですのであしからず。
てゆーかあの人是非本当に書いて下さい。萌え過ぎて飢えてるんだ、美鈴通行。

あとやっぱり精子の流れぶった切ってゴメン。さあ投下終わったから気にせず続けてくれたまへ。

709 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage] - 2011/04/27 00:29:59.48 ns+dym9Do 15/19


電池切れ一方さん可愛いよ電池切れ一方さん

っつーか続けろって言われても続けられるかwww

720 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga] - 2011/04/27 03:01:03.97 ns+dym9Do 16/19

>>708に妄想を掻き立てられたので1レス美鈴通行
台詞回しと細かい描写が苦手、よってほぼ即興プロットのまま投下
誰かがこれを元に書いてくれたら喜びのあまり大躍りする

721 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[] - 2011/04/27 03:03:05.64 ns+dym9Do 17/19

平和となった学園都市を訪れた御坂美鈴と、ふとした事で再開した一方通行
色々と質問と交えて雑談していく内、何故かショッピングに行く事に
互いに服を見立てていき、ふと美鈴がデートのようだと呟く
その場では馬鹿言ってンな、と返した一方通行だが、寝る前になんとなく思い出してしまう

「……やっぱ馬鹿だ」

三日後、美鈴に呼び出され第六学区へと強制連行される一方通行
ますますデートの様相を深めていく
明るく笑う美鈴の顔を見て打ち止め、番外個体を思い浮かべ、連れて来てほしいと言っていた事を思い出す
今度は黄泉川や芳川と一緒に五人で来るか、と考えていると、美鈴が顔を近付けてくる
曰く、デート中に他の女の子の事を考えるのはマナー違反だ、と
はァ?と言いつつも何故か一瞬早まった鼓動に、考えていた事を当てられたからだとアタリを付けて忘れる
夜、美鈴からメールでツーショット写真が送られてくる

「…………」

しばらく眺め、なんとなく消去せずに就寝

翌日、打ち止め、番外個体と共に美鈴との待ち合わせ場所へ向かうと美鈴がナンパされている現場を目撃
イライラしながら男を威嚇、撃退
格好良かったと言われて顔を赤らめる一方通行、それを見て不機嫌になる打ち止めと番外個体
三人の反応を見て笑みを深める美鈴、一方通行の左腕に自身の右腕を絡ませる
ますます赤くなる&不機嫌になる三人を引っ張り、ショッピングへ
次第に機嫌は良くなっていく二人に安堵の溜め息を吐く一方通行
ぼーっと買い物姿を眺めていると、自分が美鈴ばかり目で追っている事に気付く
四日前、昨日、そして今日と美鈴と関わってばかりだからだ、と溜め息
その日の晩、黄泉川達の前でファッションショーを繰り広げる打ち止めと番外個体
ワイワイと騒ぐ四人を尻目に、そう言えば美鈴は明後日に帰ると言っていた、とボンヤリと思い出す
かちかち、とメールを打ち込む一方通行

「……なァに考えてンだか」

そして次の日、待ち合わせ場所へ向かう一方通行
待ち合わせ時間にはやや早い
時計を眺めながら、あと何分か、と数えてると後ろから目隠しをされる
だーれだ。この数日で耳慣れた声に美鈴さンと答えて振り向く
五日前、一方通行が見立てた服だった
思わず硬直する一方通行。似合う? と聞かれ、無言で頷く
良かったと微笑む美鈴、用事って?
ややどもり、昨日の礼だと言って歩き出す一方通行
その隣を歩く美鈴。今日は組まれない左腕がなんとなく寂しいと感じ、首を振る
どうかしている、と
瞬く間に時は過ぎ、夕方
美鈴が泊まっているホテルに彼女を送り、どうせだからとバーに誘われる
引き攣りながらも応じて同行、案の定酔った美鈴に振り回される
少しだけ、と勧められた酒を口にして……その後の記憶は無い

翌朝
目が覚めた一方通行。見覚えのない部屋
設備からホテルの一室だと気付き、美鈴から宛てられたメモを発見する
気持ち良さそうに寝ていたから起こさなかった、この一週間は楽しかったと
複雑な表情でそれを眺め、部屋を後にする一方通行

そうして、一方通行の片想い未満の一週間は終わった

722 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage] - 2011/04/27 03:14:16.12 ZhDakZoxo 18/19

>>721
早くスレを立てるんだ
母性への憧憬と恋愛感情がごちゃまぜになってる一方通行かあいいよぅ
ていうか、美鈴さん、あんた人妻やでえ…
そりゃ、あんないい女なのにほっとかれたら欲求不満にもなるわなあ
旅掛ェ…

724 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage] - 2011/04/27 03:18:23.12 ns+dym9Do 19/19

>>722
母性云々を読み取ってくれてthx
一方通行って絶対マザコンの気があると思う。異論は認める

一応美鈴さんは「年頃の息子とお出掛けする若作りな母親」のイメージで書いてみた