725 : 初めての…[] - 2011/05/16 01:29:47.60 7rmRtvqN0 1/6

 ピリリリ


「はう!?」


 とある学生寮の一室で携帯電話が鳴った。

 それはこの部屋の主である姫神秋沙のものではない。

 遊びに来た銀髪のシスター、インデックスのものである。


 ピリリリ、ピリリリ……


「わ、わかったから大人しくしてほしいんだよ……」

 インデックスは修道服から、急いで携帯電話を取り出した。

「携帯電話は。口で命令しても動かない」

「わかってるんだよ、あいさ。……よっと」

 インデックスはボタンを恐る恐る押した。

『もしもし、インデックス?』

 聞こえてきたのは、男の子の声。
 姫神のクラスメイトであり、インデックスの同居人である、お人よしな不幸少年の声。

「な、何?とうま」

『悪い、補習が長引きそうでさ。帰りが予定より遅くなる』

「わかったんだよ。今あいさの家にいるから、もうちょっとゆっくりしていくね」

『姫神の家か。あんまり迷惑かけんじゃねーぞ』

「むっ、馬鹿にしないでほしいかも!」

『どうだか……あっ、すいません先生!今行きます!』

 ツーツー

 通話口から無機質な音が響く。

 その音でインデックスはほっとした表情を浮かべた。
 携帯電話で話すことは、彼女にとって気楽なものではないらしい。

元スレ
▽ 【禁書目録】「とあるシリーズSS総合スレ」-28冊目-【超電磁砲】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1304353296/
726 : 初めての…[] - 2011/05/16 01:31:07.74 7rmRtvqN0 2/6

「また。上条君は。補習なの?」

「うん」

 姫神の問いかけに、インデックスは目を伏せてうなずく。

「つまり。寂しさを紛らわすために。あなたはここに来た」

「ち、違うかも!!休日なのに、とうまにかまってもらえないのが寂しいとか考えてないんだよ!!私は大切な友達であるあいさに会いに来たかったんだよ!!」

「それなら。そういうことに。しておく」

 インデックスの言葉が言い訳にしか聞こえないのは確かだが、自分を「大切な友達」と表現してくれたことは嬉しい。

「最近、ここからのとうまの声が大きく聞こえるかも。何でかな?」

 先ほどの上条の声は、インデックスと机を隔てた位置に座っている姫神にもよく聞こえた。

「少し。それを貸して」

「?うん」

 姫神はインデックスから携帯電話を受け取った。

 調べてみると、通話ボリュームが高く設定されている。

「普通より。声が大きく聞こえるように。設定されてる」

「設定?うーん……そういえばこの前変な操作しちゃったかも」

「元通りにしようか?」

「うん。お願い、あいさ」

 姫神は手早く設定を変更し、インデックスに携帯電話を返した。

「このケイタイデンワは使いこなすのが、難しいんだよ。めーる?っていうのもできるらしいんだけど」

「メール。したことないの?」

「うん、とうまの説明じゃよくわかんなくて。おかしなことして壊しちゃうのも嫌だし」

 この科学サイドの総本山で携帯電話のメールを使えないのは、恐らく彼女だけではなかろうか。 今時機械に疎い人間でも、メール程度ならできるのが普通である。

「……私が。教えようか?」

「へ?」

「メールの。使い方」

727 : 初めての…[] - 2011/05/16 01:32:04.56 7rmRtvqN0 3/6

「それでは。始めます」

 姫神はインデックスの携帯電話を机の上に置き、説明を始めた。

 インデックスは真剣な表情で姫神を見る。

「始めに。この手紙の絵がかかれたボタンを。押します」

「どうして手紙の絵なの?」

「メールとは。簡単に言えば。科学サイド用の手紙だから」

「手紙?」

「紙を使わず手紙を書くのが。科学サイドの一般的な流儀」

「ふーん」

 姫神の予想通り、インデックスは携帯電話の根本的な部分を聞いてくる。

 恐らく上条は彼女の多すぎる質問に辟易して、うまく使い方を教えられなかったのだろう。ただでさえ、彼は波乱に満ちた日常生活を送っているのだから、無理はない。

「では。手紙のボタンを。押します」

 姫神がボタンを押すと、画面が切り替わった。



「文字の打ち方には。規則性があります」

「規則性?」

「例えばこの1のボタン」

 姫神は1のボタンを押す。

「おっ、文字が出てきたんだよ!」

「さらに。何回も押していくと」

 画面の文字はあ行のループを繰り返す。

「ふむふむ、つまり1のボタンはあ行を順番に表示することができるんだね。だから1のボタンに『あ』が書かれているんだね」

「それでは。ここで質問」

「何?」

「それ以外の番号は。それぞれどんな文字を。表示できるでしょう?」

「えっと……」

 インデックスは携帯電話のボタンをじっと眺める。

「2はか行、3はさ行っていう風に、番号のそばに書かれている文字に対応してるのかな」

「正解」

「ふむふむ、法則だけはわかってきたかも。どういう原理で文字が出てくるかは理解できないけど」

「それは。私にも。説明できない」

「むーそこも知りたいのにー」

「実践あるのみ。体を使えばわかることもある」

 机にうなだれるインデックスを姫神は優しく諭した。

「……そうだね!まずはとうまを見返すのが先かも!」

728 : 初めての…[] - 2011/05/16 01:33:26.56 7rmRtvqN0 4/6

「ただいまー」

「!?お、おかえりなさい、とうま」

 補習でくたくたになって帰ってきた上条が玄関の扉を開けると、なぜかインデックスが慌てた。

「どうした?」

「何でもないんだよ!それよりもうお腹がペコペコかも!」

「……はいはい。晩飯作るからもうちょっと待ってろ」

 インデックスが何かごまかしているような感じではあったが、まずは彼女の腹を満たすのが先決だと上条は考えた。自分も腹が減っているし、下手に噛みつきの刑に処されたくもない。

 何か食材が残っていただろうかと、上条が冷蔵庫の前に立ったその時。

 ブー、ブー

「ん?メールか?」

上条のポケットからバイブ音が聞こえた。一瞬手をポケットにかけたが、すぐ手を引っ込める。

「……何でメールを見ないの?」

「晩飯作ってからでも十分だろ。緊急なら直接電話がかかってくるだろうし」

 上条はインデックスの問いかけに答えつつ、冷蔵庫の扉を開けた。

「だ、だめだよ!」

「は?」

 インデックスの予想外の言葉に上条はあっけにとられた。いつもはメールのことなど口出しはしてこないはずなのだ。

「メールは科学サイドのお手紙なんでしょ?早く見てあげないと失礼かも!」

「いや、その認識は間違っていないけど……ちょっと大げさすぎないでしょうか?」

「大げさなんかじゃないよ!早く見ないと!」

「わ、わかったよ」

 上条はインデックスの態度に気圧されつつメールの画面を開いた。

「このアドレス……」

 メールの送り主は機械にとにかく疎い人物である。一応アドレスは登録しているが、メールなどできないはずだ。

 疑問に思いつつ上条はメールの本文を見た。

729 : 初めての…[] - 2011/05/16 01:34:25.25 7rmRtvqN0 5/6




『ほしゅうおつかれさま。』



「インデックス……お前のメールなのか?」

「か、漢字に直したりとか長い文章作ったりとかもできるんだよ?で、でもちょっとだけ時間がかかるから―」

 目線を泳がせながら言い訳を述べるインデックスが、上条にはとても微笑ましく見えた。

 先ほど彼女が慌てた様子だった理由は、上条がいない間に慣れないメールを打とうとしていたからだったのだ。

 上条は静かに彼女のそばに歩いていき、柔らかい銀髪の頭に手を乗せた。

「すごいじゃねーかインデックス。上条さん驚いてしまいましたよ」

「へ?あれだけなのに」

「当たり前だ。あんな心のこもったメール読んで嬉しくないわけがないだろ」

「そ、そう言ってもらえると、ちょっと嬉しいかも……」

 頭を撫でる上条から目を逸らしながら、インデックスはもごもごとつぶやいた。

「よーし、今日の晩飯は気合い入れて作らねえとな!」

「そ、それこそ大げさかも」

「あれー?今日はおいしいご飯がほしくないんですかー、インデックスさん?」

「それはほしいんだよ!さっさと作ってほしいかも!」

「はいはい」

 声を荒げるインデックスに苦笑しつつ、上条は食事の準備にとりかかった。


 その後、同居人の初メールを保存したのは彼だけの秘密である。

   了

730 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[] - 2011/05/16 01:36:13.50 7rmRtvqN0 6/6

以上です。5レスになっちゃいました。失礼しました。

論理的な説明さえあれば、インデックスは機械類を使いこなせると思ってる。