838 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage] - 2011/05/19 15:11:09.28 XaQ1NEIZ0 1/7

投下します
初めて書いたので、お手柔らかにお願いします

元スレ
▽ 【禁書目録】「とあるシリーズSS総合スレ」-28冊目-【超電磁砲】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1304353296/
839 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] - 2011/05/19 15:12:08.37 XaQ1NEIZ0 2/7

人通りの少ない道に肩で息をする一人の少年の姿があった。

「はぁはぁ・・・撒いたか?なにが悲しくて補習の後にむさ苦しい男たちに追い掛け回されなくちゃならないんだ・・・はぁ、不幸だ」

その少年―上条当麻は不幸な人間で、今も学校の補習の帰り道にスキルアウト数人に襲われかけたところを撒いたばかりであった。
これが一度目や二度目なら「運が悪い」だけで済むのだが、彼は見ず知らずの他人が襲われていれば助けに行ってしまう。そのため日常茶飯事とまではいかなくとも、そういった面倒事に巻き込まれることが少なくない。
他にも、能力者や魔術師のいざこざに巻き込まれては大けがをして入退院を繰り返している。故に、普通ならば「運が悪い」と言えるような事が何度も起きるため不幸なのである。
(ただし、巻き込まれるいざこざは世界規模だったり彼がきっかけで世界戦争が勃発したりと規模が普通と呼べる規模ではないのだが、上条はそれらすべてひっくるめてただのいざこざと思っている。)

息を整えながら人通りの多い道に戻ろうとしたとき、上条の耳に誰かの声が聞こえてきた。

「ん?あれは?」

見た感じ中学生ぐらいの少女が、人相の悪い2人に囲まれている。
しかも少女は足が竦んだのか逃げ出そうと思えば逃げ出せるにも拘らず逃げ出そうとしない。
男達の声が今度ははっきりと聞こえた。男達の一方的な会話から少女は無能力者であり、男達は無能力者の少女を能力によって「狩り」をしようとしているらしい。

840 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] - 2011/05/19 15:13:09.85 XaQ1NEIZ0 3/7

(人数は2人、体格も悪くはないが普通……能力がわからないが、いけるか?)

もとより逃げる気のない上条は様子を窺っていたが、男達は2人とも発火能力者(パイロキネシスト)だったらしく少女に向けて炎を放ったため、急いで少女の前に出て右手を炎に向けてかざした。

「なっ!?」

突然、自分達以外の人間が現れ、相手の能力がわからないうちに自分達の炎を消されたことにより男達に空白が生まれた。
その一瞬の隙のうちに上条は片方の男を殴り倒した。もう片方も呆気にとられて能力を使えないうちに倒されてしまった。

「てめーら、自分の能力に傲って女の子を襲ってんじゃねーよ!反省しやがれ!」

そうやって男達に文句を言った後、上条は振り返って少女に声をかけた。

「大丈夫だったか?」

「え?あ、はい。大丈夫です」

「とりあえずここは人通りが少ないから、一旦公園に行こう。そこなら襲われるようなことはないだろうからな」

そう言うや否や上条は少女の手を取り、引っ張りながら少女を公園に連れて行った。


「ここまで来たら大丈夫だろ。それより、体とかは無事か?えっと……」

「あ、私、佐天涙子って言います。助けてくれてありがとうございます」

「いや、無事でなにより」

「……」

「どうした?」

「私、今日ほど自分が無能力者であることに嫌気が差したことはありません……。
無能力者が嫌で能力者に憧れたから幻想御手を使って、能力を使えるようになったと思ったらそれは一時的なもので、しかもそのせいで友達に迷惑かけちゃったし……。
今日だって私が無能力者だから襲われたんですよ?やっぱり私はいらない子なんです……」

841 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] - 2011/05/19 15:14:05.29 XaQ1NEIZ0 4/7

「……佐天って言ったっけ?お前バカだろ」

「ば、バカってなんですか!自分は高位能力者だからって人をバカにして!わたしの気持ちなんて知らないくせに!」

「あぁ、お前の気持ちなんてこれっぽっちもわからねーよ。ただし俺は高位能力どころか能力者ですらない、お前と同じ無能力者だけどな。」

「嘘つかないでください!さっきわたしを助けてくれたとき、相手の能力を消してたじゃないですか!」

「確かに俺はあいつらの能力を打ち消したけど、それだけだ。俺の右手にはそれが何であれ異能であれば触れた瞬間に打ち消す幻想殺しが宿ってるけど、右手以外は全部普通のどこにでもいる無能力者だよ。」

「け、けどあの2人組を倒してたじゃないですか!」

「あれは単に殴り倒しただけだ。大体の能力者ってのは自分の能力を過信してるからな、殴れば大体のやつは倒れる。けど、あれが3人以上だったら迷わずお前を連れて逃げてたよ。」

「……」

「お前さっき友達に迷惑をかけたって言ったけど、その友達はお前のせいで危険な目にあったとか言って友達に責任をなすりつける様なやつか?」

「違います!」

「なら迷惑かけたって良いじゃねぇか」

「え……?」

「迷惑かけたことを迷惑って言うようなやつならともかく、迷惑かけたって思い詰められた方が逆に相手には迷惑なんじゃないか?友達って迷惑かけても許しあえるから友達なんじゃないか?」

842 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] - 2011/05/19 15:14:43.62 XaQ1NEIZ0 5/7

「許しあえるから友達……」

「それと俺の学校にも無能力者はたくさんいるけど、そいつらはお前みたいに能力で悩んでなんかいない。
無能力者であることを受け止めて、前を向いて生活してる。お前が自分はいらない子って思ってるなら、まずはそのふざけた幻想をぶち殺してやるよ。」

そう言って笑いながら佐天にケータイを開いて見せる上条。その画面はメールが開かれており、そこにはこう書かれていた。

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to 上条当麻
------------------------------
from 御坂美琴
------------------------------

アンタに限って有り得ないだろう
けど、もしその娘にいかがわしい
ことをしようとしてるなら私の友
達から離れなさい!
でなきゃ超電磁砲を撃つわよ




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それを見た瞬間、少女は衝撃を受けた。
それは目の前の少年が自分の知ってる少女と知り合いだったことや、少女がこの少年を信頼していそうなことにではない。
そのことも衝撃と言えば衝撃だったのだが、それ以上にその少女が自分のことを“友達”と言ってくれたことに最も衝撃を受けた。

843 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] - 2011/05/19 15:15:16.25 XaQ1NEIZ0 6/7

彼女は学園都市が誇る超能力者(レベル5)の1人であり、自分とは“それなり”の仲である。
自分たちの仲をそれなりと評するのは、知り合ったきっかけが風紀委員に所属する親友の同僚の先輩であったこと、いくつかの事件を共にしたがそれは自分がただの後輩以上友達未満だと思っていたからである。
しかし、相手は自分のことを“友達”と思っていてくれた。だからそのことに戸惑いを隠せない。
少年は少女のその表情をどう受け取ったのか、こう言って再び声をかけてきた。

「良いことを教えといてやるよ。お前の周りの幻想(世界)は…お前が考えるよりも…ちょっとだけ優しいんだよ」

その後少年は近くで様子を窺っていた少女に「スーパーの特売があるから後は任せた」と声をかけてその場からいなくなってしまった。

844 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage] - 2011/05/19 15:20:52.58 XaQ1NEIZ0 7/7

以上です

いろいろな禁書SSに触発されて自分で書いてみたものの、これだけの量を書くのに1ヶ月近くかかりました
はじめは上条さんが佐天さんに幻想御手を使ってレベルが一時的には上がったんだから、能力が使えるんじゃないかって諭すシナリオを考えてたんですけど、気づいたら方向性が変わってて方向修正ができなくなったのでこんな感じになっちゃいました