898 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga] - 2011/05/21 17:05:19.33 kkavufUn0 1/17

15レスほど借ります。

元スレ
▽ 【禁書目録】「とあるシリーズSS総合スレ」-28冊目-【超電磁砲】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1304353296/

前スレ

美琴「答えなさい、アンタは誰?」
http://yutori7.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1269254002/l50

一方通行「帰ンぞ」
http://yutori7.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1269586016/l50 (1スレ目)
http://yutori7.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1269794132/l50 (2スレ目)
http://yutori7.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1269964549/l50 (3スレ目)

一方通行「帰ンぞ 欠陥電気」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4gep/1270052377/
(725からスクリプト爆撃。そのまま1000到達)

↓その続き(総合スレ)

一方通行「帰ンぞ、欠陥電気」
http://toaruss.blog.jp/archives/1019287902.html

899 : 帰ンぞ、欠陥電気1/14[saga] - 2011/05/21 17:07:09.45 kkavufUn0 3/17






昼間の喧騒が嘘のように消え去った深夜の住宅街。
等間隔に配置された街頭が照らす道ではなく、その街灯を蹴るようにして空を疾走する白い影があった。
その影は器用に街灯の頭を蹴って加速し、ときにはマンションの壁面を滑るように駆け抜けた。

「……」

白い影、一方通行は無言のまま目的の場所へとただ向かう。
目的地は欠陥電気が囚われているであろう第二一学区。
貯水用のダムばかりある筈の学区で、忌々しい茶番の最終幕があることを一方通行は知った。
このことを知ったのは、ほんの少し前だ。
そして、用済みになった土御門の置き土産を粉々に握り潰し投げ捨てたのもつい先程のことだった。

不意にポケットに収められた携帯から着信音が鳴り響く。
一方通行はマンションのベランダから突き出した細いアンテナを足場にして弧を描くように大きく跳ぶと、舌打ちし発信者を確かめた。
(……芳川、か)
また嫌なタイミングで嫌な奴から電話が掛かってきやがったと毒づく。
芳川からの電話でそれが吉報だったことは皆無だ。そして、二言目には“殺せ”だ。
出る必要がなければ絶対に出たくはないが、無視するわけにはいかない。
芳川が一方通行に電話をするということは、つまりそれだけの状況だということ他ならないのだから。



900 : 帰ンぞ、欠陥電気2/14[saga] - 2011/05/21 17:08:19.47 kkavufUn0 4/17





「……、……ンだよ」

『あら? 思ったより元気そうで何よりよ、一方通行』

今の言葉のどこをどう解釈したらそんな意味不明な回答がでてきやがるんだ、と一方通行は顔を顰める。

「下らねェお喋りに付き合う暇はねェンだよ。さっさと本題に入れ」

『そうね、そうするわ。今どこにいるのかしら?』

用件を言えと言った先からこれだ。
文句の一つでも言ってやろうと思ったが、この女には何を言ったところで無駄だということは理解しているので素直に答えた。

「……、一五学区だ」

『そう、キミのところにも来たのね』

「あァ?」

『彼女、欠陥電気だったかしら? その欠陥電気の居場所は第二一学区。違うかしら?』

一方通行は息を呑み、葉の枯れ落ちた背の高い木の枝に着地すると足を止めた。

「芳川、オマエも―――」

『“も”ということはやっぱりそうなのね』

被せる様に言った芳川の言葉に大きく舌打ちすると、一方通行は停止状態から一瞬で加速し再び大きく跳ぶ。
第七学区のすぐ隣にある第一五学区。学園都市最大の繁華街がある学区であり、テレビ局など情報の発信元でもある。
そして、その第一五学区の北西側に隣接する形で第二一学区があった。
第二一学区は以前欠陥電気の実験が行われていた第一九学区とは真反対に位置しており、研究機関などが皆無である筈の学区だ。
どういう理由でそんな場所で実験を行うのか、どうしてそんなところに研究施設があるのか、
どうやって欠陥電気の居場所を突き止めたのかは知らないが、今はあの金髪野郎の情報を信じるしかない。



901 : 帰ンぞ、欠陥電気3/14[saga] - 2011/05/21 17:09:42.93 kkavufUn0 5/17




「……あの金髪にはしこたまぶン殴られたぜェ、クソッたれが」

『キミが殴られたの? それは怖いわね。でも残念だけど、本人には直接会ってはいないわ。
 私のところに来たのは一通のメールよ。送り主は正義の味方の自称味方、らしいわ』

正義の味方というのは、恐らく金髪の言っていた上条当麻とかいう無能力者のことだろうと、一方通行は眉をひそめる。
間違いない。そのふざけたメールの送信者はあのクソ野郎だ。
一方通行が土御門のことを思い出し苛立ちを募らせていると、珍しく言いよどみ、言葉を選ぶようにして芳川は問いかけた。

『………それで、キミはどうするの?』 

「……」

何を馬鹿なことを、芳川は一方通行が第二一学区に向かっていることは知っている筈だ。
いや、そうじゃない。そこではなかった。芳川の問いの意味することは、つまり、

『沈黙ね……。分かり安すぎるわよ。キミが決めたことなら私は何も言わないわ。
 ただね、これだけは言わせて。キミは自分を卑下しすぎだわ。今回のことはむしろ……』

「ケッ、クズ同士が傷の舐めあいってかァ? 冗談じゃねェ、前回も今回もねェンだよ。
 とっくの昔に俺もオマエも堕ちるとこまで堕ちてンだよ。二度と下らねェこと言うな、胸クソ悪ィ」

『……相変わらずね、キミは』

「はン、ここ最近学んだ教訓ってやつを教えてやる。人間そう簡単に変わったりしねェってことだ。
 ほぼ例外なくクズは死ぬまでクズだ。そンで俺はどうしようもねェクズ野郎確定ってこった」


902 : 帰ンぞ、欠陥電気4/14[saga] - 2011/05/21 17:10:23.38 kkavufUn0 6/17




その言葉は虚勢ではなく、本心からのモノだった。
欠陥電気を助け出したつもりがより深い闇へと突き落とし、結局最後まで手を下すことができなかった自分。
挙句、己を見失い守るべき打ち止めに手を上げる始末。
なにをどうしたらここまでやれるのか、自分自身を問い詰めたいくらいだった。

一方通行は今回の件で思い知った。いや、分かり切っていたことを改めて突き付けられただけだ。
本当に自分は度し難いクズだ。改善の余地なんてものは存在しない。
壊れているガラクタの欠けた部品は、初めからどこにもありはしなかったのだ。
そのことに薄々気付いていた筈なのに、強引に嵌め込んだ歪な欠片で全てを誤魔化していた。
何のことはない、見ない振りをして気付かない振りをして無理に使い込んだソレがとうとう壊れ、正体を現した。それだけの話だった。
自分には、土台無理な話だったのだ。
一体何を期待していたのか。
打ち止めのときと同じだ。
誰かを救えば、もう一度やり直す事ができるかもしれないと。僅かでも考えてしまった自分。
そしてそれが下らない幻想だと理解していた筈だ。
そんな都合のいいことがある筈がないのだと。
だというのに、いつの間にかそんな当たり前のことすら忘れていた―――……

「こうするのが一番イイってことくらい、始っから分かってンだよ」


903 : 帰ンぞ、欠陥電気5/14[saga] - 2011/05/21 17:10:58.42 kkavufUn0 7/17




眩しい日向に一時でも居られたことが、一万人も殺した果てに行き着いた最悪の一方通行には奇跡的な幸運に過ぎなかったのだ。
誰もが聞いたことのある童話でも同じような愉快な話があった。
蝋で固められた翼で空を飛べた、だが空を飛んだバカ野郎は忠告を忘れ愚かにも太陽へと近づき―――……、後のことは語るまでもない。
ああ、そうだ。
初めて欠陥電気にも出会ったときにも言われた。
今さら普通の人ぶるな、と。
(……傑作過ぎンだ、クソが)
打ち止めとの何気ない日常が。
欠陥電気が加わった騒がしい毎日が、一方通行のギザギザに尖がっていた心を包み込み、決して忘れてはいけない罪を忘れさせてしまった。
いや、忘れたわけではなかった。だがソレを意識する時間は確実に少なくっていった。
許されない罪を犯した自分が、一万人分もの掛け替えのない明日を奪った自分が、全てを忘れのうのうと平穏を享受していた。
だからこそ、当然過ぎる結末を迎えただけなのだ。

「……これで終いなンだよ」

欠陥電気とは、もう二度と会うことはないだろう。
それは予感や確信ではなく、必然なのだ。必然にしなくてはならない。
一方通行に残された仕事は、欠陥電気との完全な別離であり、決別。
そしてそれを完璧なまでに仕上げること。


904 : 帰ンぞ、欠陥電気6/14[saga] - 2011/05/21 17:11:37.16 kkavufUn0 8/17




過去の年中無休で学園都市最強の看板を背負っていた自分に、愚かにも徒手空拳で立ち向かったあの無能力者。
今になって考えてもみてもさっぱり分らない。どうやったらこの学園都市最強の自分が負けれたのか。
冷静になればあの無能力者を殺す方法など即座に百通りは考え付く。
未だに理解できない無能力者との接触時に起きた不可解な“現象”を前提にしていてもだ。
だが、最早そんなことはどうでもいい。
その無能力者が欠陥電気の元へ向かっていることこそが重要なのだ。

欠陥電の救出と進化法の凍結。
単純な難易度を比較した場合、難しいのは圧倒的に後者だ。
こんな比較に意味はないが、学園都市最強の自分を止めてみせたのだ。
今回も欠陥電気の救出くらいやってもらわなくては困る。他の誰でもない一方通行自身が困るのだ。
自分はもう、欠陥電気を助けるわけにはいかないのだから。
そうでなくては、また勘違いしてしまうかもしれないのだ。
欠陥電気ではなく、自分が。
もうそんなことがあってはならない。その思い違いは決して許されない。

ああ、そうだ。打ち止めとも別れた方がいい。少しでも早く。
いつだって他人を傷つけることしかできない自分とは、一緒に居ない方が打ち止めのためだ。
打ち止めを守る? 馬鹿げた話だ。
守り通すのに一緒にいる必要性は皆無だ。
過去の能力に制限のない自分ならまだ言い訳も効くが、ほんの僅かな時間しか能力を行使できない無様な自分が一緒にいて何になるというのだ。
単に危険が増すだけで、打ち止めの身を守ることに何一つ繋がらない。
だから、この辺りが潮時なのだろう。
いい加減嫌気も差した。
守ることにではなく、守るべき対象が守っているつもりの自分に引き裂かれる笑えない喜劇に。


905 : 帰ンぞ、欠陥電気7/14[saga] - 2011/05/21 17:12:20.47 kkavufUn0 9/17




あの無能力者は知っているのだろうか、今回のことに統括理事会の意志がないことを。
実験を滅茶苦茶に壊したところでお咎めがないことを。
欠陥電気を助け出したところで、学園都市が敵に回らないことを。
この下らない茶番劇の真相を――――。

――――違う。関係ない。
あの無能力者にはそんなことは関係ないのだ。
無能力者である以上、学園都市の存在意義であり、同時に闇である能力開発そのものに関わってはいない。
そう、あの無能力者は何の後ろ盾もなく。何のチカラもなく。何の確信もなく挑んできたのだ。
この学園都市最強である自分に、この都市では何の価値もない単なる学生である無能力者が。
ただただ、妹達を救うという無謀極まりない決意を抱いて。
冷静に考えれば、無能力者であるあの野朗が欠陥電気を助け出すことなど不可能だ。
しかしあの無能力者は過去に不可能を可能にしてみせた。それは身を持って体験した。今でもよく覚えている。忘れるわけがない。
だから、

「……ッ」

一方通行は巨大なアンテナを次の足場とし、苛立ちをぶつける様に蹴った。
弾丸のように白い影を発射した巨大アンテナは軋みを上げ、激しく鳴動する。
一方通行が言葉を忘れたかのように闇夜を疾走する中、沈黙を破るようにして芳川は電話越しに口を開いた。


906 : 帰ンぞ、欠陥電気8/14[saga] - 2011/05/21 17:13:11.59 kkavufUn0 10/17




『……浸っているところ悪いけど、大丈夫なの?』

芳川の問いに一方通行は無言を貫く。
その態度に芳川は呆れたようにため息をつくと、こう続けた。

『時間、あまりないわよ? キミのことだから、無茶すれば距離なんて大した障害じゃないでしょうけど』

その言葉に一方通行は眉を顰める。
先程の大丈夫なのかという問いかけは一方通行自身のことでなく、時間に対しての発言のようだ。
そのことに気付いた一方通行は舌打ちし、声を荒げ詰問する。

「おい、そりゃどォいうことだ」

『はぁ……、知らなかったのね。時間がないから端折って言うわよ?』

どこか焦ったように、芳川にしては珍しくやや早口で一方通行に事情を話した。


907 : 帰ンぞ、欠陥電気9/14[saga] - 2011/05/21 17:14:02.91 kkavufUn0 11/17




物理的に外部のネットワークから隔離されている研究施設は、この学園都市においてそう珍しいものではない。
それには単純に理由がある。情報の秘匿。ただそれだけだ。
だが、この情報の秘匿には大きく二つの性格がある。
一つは技術漏洩を防ぐためだ。これはそう珍しくない非常に真っ当な理由といえる。
もう一つは研究内容を、その存在自体を秘するために外部のネットワークから隔離するのだ。
そして、今回の欠陥電気の実験が行われる施設は後者にあたる。
今現在行われている量産型能力者計画の中枢は、学園都市内部からも完全に隔離された闇の中にあるのだ。
見つけることは難しく、探し出すのは容易ではない。
本来であれば一方通行は決してたどり着くことはできなかった。

だが、その事態は幸運にも回避され、見つけ出したのであれば一方通行にとって後のことは赤子の手を捻るようなものだ。
さらに幸運なことに、その施設は外部とのネットワークが繋がっていない。
ようは、情報を持っている人間を一人残らず殺してしまえば、今度こそ終わる。終わらせることができるのだ。
しかし、そう簡単にはいかない。

「衛星、だァ?」

『そうよ。現実的に考えて完全に外部との接続を断つなんてありえないわ。
 三棟ある施設をそれぞれ独立させて開発、研究、生産を一手に行える一個完結型の馬鹿げた規模だけれど、ね』



908 : 帰ンぞ、欠陥電気10/14[saga] - 2011/05/21 17:15:26.00 kkavufUn0 12/17




三棟ある施設をそれぞれ目的に応じて特化させた研究機関。
与えられた指示に沿って開発を行い、より高性能に進化させ、自ら生産を行う。
学園都市に溢れる先進技術や電子機器の一部を、果ては武器から兵器に至るまでのあらゆるものの製造を無秩序なまでに貪欲に担う巨人。
当然、能力開発に関する研究も行われているが、その規模は他と比較にならない程小さい。
まるで興味がないと言わんばかりに。あくまでも表向きにだが。

『だから、定期的に衛星を通してやりとりしてるってわけね。
 ついでに言っておくと、詳細は不明だけどそのお相手は“外”よ。』

「……チッ、ンなこと一言も聞いてねェよ。あの金髪野郎、舐めた情報寄越しやがって」

物理的な接続は皆無であり、唯一間接的にだが情報をやりとりしているのは学園都市の外。
特殊な研究機関が多い学園都市においても、ことさら特異な体制を持つソレは外からの莫大な出資や投資によって成り立った経緯があった。
そして、外と隔絶した技術格差を持つ学園都市の先進技術のライセンス料で膨大な利益を出し、それを元に投資を行いさらに研究を加速させる。
今、この瞬間にもソレは、その巨体を膨らませ続けているのだ。

「―――クソ、が。そォいうカラクリかよ」

舌打ちと同時に一方通行は顔を歪め吐き捨てた。
これは単なる見せしめだ。
似たような連中への警告も含んだ、ただそれだけの顛末だった。、
研究機関が外からの金で成立したことに何の問題もない。それ故に多少の贔屓があったとしても仕方のないことだろう。
だが、やりすぎた。ただそれだけ。本当に、たったそれだけの理由だった。
統括理事会は欠陥電気の存在など初めから気にも掛けていなかったのだ。



909 : 帰ンぞ、欠陥電気11/14[saga] - 2011/05/21 17:16:11.30 kkavufUn0 13/17




『私たちの行動は筒抜けだったってわけ。上手に立ち回ったつもりだったけれど、所詮は一介の研究者ね。
 あの承認の見返りに統括理事会は武器や革新技術の一部を手に入れ、彼らは仮初めの時間を手に入れた』

「手のひらの上っつーわけかよ」

恐らくこの行動は想定内なのだろう。
仮に一方通行が動かなかったとしても、統括理事会自ら動いて出る杭を叩き潰すつもりなのだ。
単なる先進技術の枠に収まらない、学園都市の核。能力開発に関する情報を外部に漏らすことなど許すはずがないのだから。
統括理事会にとって欠陥電気に価値があるとすれば、一方通行を動かせることができるかどうかの一点だ。
そして、それすらも経費節約程度の意味合いしか持たない。
(……やってくれンじゃねェか)
無意識に腕に力が篭もり、携帯はギシギシと軋み上げた。

『話はここまで。本当に時間がなくなってきたわよ? 衛星と交信を行うのは三日置きの奇数日、午前1時丁度。
 次の通信まであと1時間2分ってとこね。一方通行。キミは、この意味が分るわね?』

「……」

承認が効果を持ったのは一昨日の朝。
どこまでも統括理事会の思惑通りに事が運んでいるようだ。



910 : 帰ンぞ、欠陥電気12/14[saga] - 2011/05/21 17:17:00.50 kkavufUn0 14/17




一方通行は顔を歪め、くっと哂う。欠陥電気にはもう一つの役割あったことに気付いたから。
能力開発に関わる情報を外部に漏らすとなれば、それは学園都市に対する宣戦布告も同義だ。
どういう仕掛けで統括理事会は衛星との通信を妨害するつもりなのかは想像がつかないが、一方通行にはそんなことはどうでもよかった。
重要なのは宣戦布告と受け取った学園都市が、統括理事会がどう動くのかということ。
間違いなく、部隊を差し向ける筈だ。それもチンピラとは訳の違う本物の連中を。
なんのことない。因縁をつける為の、戦争を正当化する為の道具なのだ。欠陥電気の存在は。
それにどれだけの意味があるのか、そんなポーズにどれだけの価値があるのかは政治家でもなければ分かりはしないだろう。
ただ一つ言えるのは、そいつらに欠陥電気の救出を期待するなんてのは論外だということ。
なにせ、統括理事会にとって欠陥電気はたったそれだけのどうでもいい存在なのだ。
よくて無視され、最悪で連中ともども抹殺。統括理事会の部隊が欠陥電気の存在を気に掛けて攻撃の手を緩めるなどありえない。
そしてそれを予想した上で連中はソレを迎え撃つ。ここまでの筋書きは両者共に同じ。
違いがあるのはそれ以降だが、

「……芳川、連中はなにを狙ってやがる」

『そうね。統括理事会に、学園都市に戦争して勝とうなんて国家規模でもなければ不可能な話だわ。
 でも、勝利条件によったら不可能も可能になる』



911 : 帰ンぞ、欠陥電気13/14[saga] - 2011/05/21 17:18:11.97 kkavufUn0 15/17




連中の目的。それも学園都市に啖呵を切ってまで欲するモノ。そして、現実的に手中に収めることのできるモノ。
恐らく能力に関する情報であり、欲を言えば能力者そのもの。つまり、初めから目的は欠陥電気自身だった。
能力自体は強能力程度の“欠陥電気”とはいえ、学園都市に7人しかいない超能力者の複製。
なにより、その能力は徐々にだがオリジナルの超電磁砲に近づきつつある。
成程、よくよく考えれば喉から手が出るほど欲しい被験体だろう。
大方派手にドンパチかまして、その混乱に乗じて外に連れ出すといったところか。
学園都市相手に無謀極まりない計画だ。本気で成功すると思っているのだろうか。或いは飛び切りの隠し玉を持っているのか。
どちらにせよ、馬鹿な連中だと一方通行は断じる。

そして、どす黒く濁った感情のうねりを、一方通行は感じた。


「ふざっけンじゃねェぞ!! ナメやがってェえええええええええええええええッ!!」


『一方通行!?』

突然の絶叫に驚愕する芳川だが、その声が一方通行に届くことはなかった。
(これがこの茶番劇の本当の真相だってェのかァッ! クソがッ! クソったれがァ!!)
一方通行は次の足場となった街頭を全力で蹴り加速すると、弾丸となって小高い丘に造られた公園の広場に粉塵を巻き上げ着地した。
足場になった街頭は周囲の地面を盛り上げ滅茶苦茶に破壊されていたが、そんなことはどうでもよかった。
(殺す! 殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す、ぶち殺スッ!!)
絶対座標から位置情報を取得。視界のない土煙の中で視線を見えない標的に固定し、同時に全てのベクトルを統括制御。
地についた足から地球の自転すらも手中に収め、莫大な演算能力を行使し能力を全開した。



912 : 帰ンぞ、欠陥電気14/14[saga] - 2011/05/21 17:19:21.82 kkavufUn0 16/17




「がっ、ァァああああああああああああああああああああああああああッ!!」

欠陥電気の決意は無意味なものだった。連中は初めから終わらせる気などさらさらなかったのだ。
欠陥電気を踏み躙って、使い潰してこれから、一から始めるつもりだったのだから。
だから殺す。
決意でも意地でもなければ、ましてや誓いですらない。単なる衝動。純粋な殺意だった。

惑星の回転エネルギーを搾取し、その体を弾頭と化した一方通行は標的を真っ直ぐ射抜く。
彼我の距離は凡そ7キロ超。地上高130メートル。その線上にあったありとあらゆる障害物を無視し、一方通行はその距離を一瞬で0へと変える。
彼のいた小高い丘はその半分を無くし無残にも抉られ、周囲の木々は衝撃波によって薙ぎ倒されていた。

「ァァアアアああああああああああああああ―――ッ!!」

三棟ある施設の内、研究を担う研究機関唯一の有人施設。
その屋上に設置された衛星通信用の大規模アンテナを紙のように切り裂くと、そのまま空いた左で拳を握り一方通行は無造作に振り下す。
瞬間、大地を揺るがす轟音とともに三十階はあろうかという施設の階下が一部、地面に呑まれた。
凡そ1,000,000トンという巨大質量を悠然と動かしながらも、一方通行は忌々しげに表情を歪め言い放った。

「―――手加減はこれっきりだ。こンなもンで終わったと思うンじゃねェぞ、クソったれめ」










913 : 帰ンぞ、欠陥電気15/14[saga] - 2011/05/21 17:21:46.05 kkavufUn0 17/17


投下終了。長々と失礼しました。
大体半年振りくらいですね。多分次のもそれくらいになりそうです。
なんか2,3の投下で終わる予定だったんですが、どうにもまとめて書けそうにないので小出しになってさーせん。
で、なんですが。次の投下は時間もさることながら、投下場所を変えるかもしれませんので先に言っておきます。
理想郷とかに過去分も修正して載せるかもしれないような、するような感じです。編集できるって魅力的ですよね……。

今回はなんかごっちゃに絡んでいて意味不明になっていないか心配ですが、読んでて不都合がなければ幸いです。
自転パンチの台詞を丸パクさーせん
ではまた~