516 : フィアンマ「俺様がお前の世界を救う」[] - 2011/06/04 19:27:35.88 s0S2Kpds0 1/7右方×禁書の1巻再構成。未完です。
聖ピエトロ大聖堂。そこにとある青年がいた。その青年を一言で表すと『赤』。服から髪の色まで、真っ赤に染まっているその姿は美しく、神々しさすら感じる。常人には到底纏えない、奇怪なオーラを放つその青年が不気味な笑みを浮かべながら一人つぶやく。
「ついに『知識の宝庫』がイギリスを出たか。しかも、イギリス清教の追っ手はたった二人。なかなか上手くことが運んでいるな。これで必要な『素材』のひとつが手に入る」
青年の名は『フィアンマ』。ローマ正教の暗部、禁断の組織『神の右席』に所属する十字教最強の魔術師にして、ローマ教皇をも凌ぐ権力者。
「さて向かおうか、『学園都市』へ。世界のすべてを救うために……」
『神の如き者』の圧倒的な力を所持する青年は向かう。『Index-Librorum-Prohibitorum』
――禁書目録のもとに……。
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学園都市の路地裏を純白の修道服を着た少女が走っていた。その様子はただ単純に駆けているというより、何かから逃げてるように見える。そして事実、少女は追っ手から逃げていた。『魔術師』という名の追っ手から……。
(学園都市に逃げ込んだら流石に諦めると思ったのに……。思ったよりしつこいかも)
息を切らしながら必死に魔術師を撒く方法を考える。
(やっぱり、人ごみに紛れたほうがいいのかな。むこうもここで魔術サイドの人間が目立っちゃいけないことくらい分かっていッ!)
ヒュンッ!という風を切る音とともに高速の斬撃が少女に直撃する。魔術師が放った、一瞬と呼ばれる間に七回人を殺めることができる技『七閃』。コンクリートすらバターのように切り裂く『七閃』を受けた少女は……
「び、びっくりしたかも」
無傷だった。かすり傷ひとつついてはいなかった。それも当然、少女『インデックス』が着ている修道服の名は『歩く教会』。法王級の防御力を誇る、極上の防護結界である。
「もう逃げるのはよして下さい、インデックス」
ふいに魔術師から声がかかる。その声は無機質、まるで機械のように事務的な声色だった。
「いくらあなたのような『天才』でも、これ以上逃げるのは不可能です。諦めてください」
「ふんだ、私はあなた達みたいな人には屈しないんだよ!」
その言葉を聴いた魔術師は一瞬だけ悲痛な表情をし、顔を背けた。まるで何かに耐えるように。しかし、すぐに無表情に戻り、インデックスのほうを見て宣言する。
「……分かりました。ではやはり、力ずくで『回収』します!」
魔術師が『七閃』を再びインデックスに放つ。アスファルトを切り裂きながら進む鋼糸。しかし、『七閃』はインデックスを切り裂くことはなかった。それは『歩く教会』に守られたためでも、魔術師が標準を誤ったからでもない。インデックスが先ほどまでいた場所から姿を消したからである。
「!?」
魔術師が困惑する。インデックスは確かに『魔神』と呼ばれる程の知識を有している。だが、インデックス本人には魔力がないため魔術が使えないのだ。しかし、彼女は『聖人』と呼ばれている魔術師に気付かないほどの速度で姿を消した。
「いったい、どうやって?」
魔術師は先ほどの出来事について思考する。彼女本人には姿を消す手段がない。つまり……
「第三者の介入ですか……」
魔術師はそう結論付ける。
「しかし、まずいですね。私が視認出来ないほどの速度で『禁書目録』を連れ去ることが可能な人間が『魔神』の知識を所有するのは……。一刻も早く『回収』しなければ」
魔術師は再び『禁書目録』回収に動き出す。それがどれほど自分の身を危険にさらすとは知らずに……。
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インデックスを連れ去った張本人であるフィアンマは、とあるビルの屋上で学園都市の町並みを見下ろしながら、一人先ほどの魔術師について考えていた。それは魔術師の戦力を危惧しているわけではない。魔術師が浮かべた表情に関してのことだ。
(さっきの魔術師は一瞬だが悲哀の表情を見せた。あれは『禁書目録』に対しての同情というような感じではなかった。いったい何故だ? まさかあの魔じゅ)
「ありがとう」
突然後ろからかかった声に、フィアンマの思考が中断された。フィアンマが後ろを振り向くと、インデックスが警戒しながらも感謝の表情で彼を見つめていた。
「何について礼を言っている?」
「さっきの魔術師から助けてくれたことなんだよ。あなたが助けてくれなかったら、一晩中あの魔術師と追いかけっこするはめになっていたかも」
「……オマエは俺様が魔術師だと気付いているよな?」
「当たり前なんだよ。私を見くびらないでほしいかも」
「なら、何故礼など言う? 魔術師が『禁書目録』を連れ去るなど、利用するという下心があるに決まっているだろう?」
「それでも助けてくれたという事実は変わらないんだよ」
フィアンマの問いに対してインデックスは答える。純粋で綺麗な笑みを浮かべて。
「……ふっ」
「む、なんで今鼻で笑ったのかな!」
「いや、特に意味があるわけではない。気にするな」
「なんだか馬鹿にされている気がするんだよ……」
「そんなことはない」
そう言うフィアンマはどこか楽しげな表情をしていた。まるで無くしていた玩具が見つかった子供のように。
(久しぶりだな、純粋な『正』の感情をみたのは……。俺様がこの世界を救えば、この笑顔が世界に満ちるのか。……なんとしてでも世界を『浄化』させなければならないな)
「ねぇ」
「ん? なんだ?」
「私は事情によっては魔道書の知識を教えてあげてもいいんだよ。そのかわり……」
「そのかわり、何だ?」
「お腹減ったからご飯くれると嬉しいな!」
こうして、赤き青年と白き少女は交差した。
『神の如き者』と『魔神』が交差するとき、物語は始まる――
522 : フィアンマ「俺様がお前の世界を救う」[] - 2011/06/04 19:38:30.39 s0S2Kpds0 7/7以上です。初めてss書いたのでおかしなところばかりだと思いますが、読んでいただけたら幸いです。