278 : アックア 「必要悪の魔導書図書館であるか……」0/22[saga] - 2011/06/18 00:37:59.89 X2gtDqmjo 1/24

20レスと少々借ります。
>>211-225の続きです。

【関連】
アックア 「必要悪の魔導書図書館であるか……」
http://toaruss.blog.jp/archives/1033830110.html

元スレ
▽ 【禁書目録】「とあるシリーズSS総合スレ」-30冊目-【超電磁砲】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1307804796/
279 : アックア 「必要悪の魔導書図書館であるか……」0/22[saga] - 2011/06/18 00:38:43.34 X2gtDqmjo 2/24

………………

学園都市 第七学区 とある陸橋

アックア (………………)

上条 「くそがッ……!!」

アックア (……なるほど。このメイスを目の前にしても逃げぬのであるか)

アックア (それどころか、私から目を逸らそうとすらしない……)

アックア (立ち振る舞いや構えはまるで素人。されど気概だけは一人前であるな)

アックア (だが、)

上条 「うぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」

アックア 「――――素人が戦場に立つものではないのである!!!」

280 : アックア 「必要悪の魔導書図書館であるか……」2/22[saga] - 2011/06/18 00:39:27.96 X2gtDqmjo 3/24

上条 (っ……あんな重そうなもん振りかぶりながらで……なんてスピードだ! バケモンか!)

上条 (だが……)

御坂 「ばっ……ばか! かっこつけてないでさっさとどきなさいよ!!」

上条 (……いくらレベル5だからって……どんなに強くたって……)

上条 (残念ながら、中学生置いて逃げられるほど上条さんは人間やめてないんですよねぇ!!)

――――――ザッ……!!!!

上条 「うぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」

アックア 「素人が戦場に立つものではないのである!!!」

上条 (あんなメイスを振られちゃ勝ち目はねぇ!!)

上条 (だったら先に、その間合いの下に潜り込んで、)

上条 「――――――――ぶん殴る!!」

アックア 「………………」 フゥ 「……その発想が素人なのである」

上条 「……!?」

上条 (なっ……! 左手一本で俺の相手をする気なのか……!?)

281 : アックア 「必要悪の魔導書図書館であるか……」3/22[saga] - 2011/06/18 00:40:15.14 X2gtDqmjo 4/24

アックア (……ああは言ったものの、ここは元より戦場ではない)

アックア (戦場でない場所で戦士でないただの学生をどうにかする必要もない)

アックア (聖人としての身体を持つ私とぶつかれば、あの少年は間違いなく死ぬのである)

アックア (ならば……)

――――スッ……………………

アックア (聖母の慈悲を用いた簡易的な十字教魔術で吹き飛ばせばいいだろう)

アックア 「……少年。その心意気は買うが、想いだけでは誰も守れぬのである」

上条 「ッ……!!」

 アックアが圧倒的な速度で上条に迫る。
 左手を掌底のようにして、上条にたたき付け、それだけで勝敗が決するはずであった。

 しかしこのとき、アックアにとっても、上条にとっても、思いもよらない出来事が起こった。
 それは、ふたりの相互の認識の齟齬から生まれたものであった。

 ひとつに、上条の右手に “あらゆる異能を無効化する” 『幻想殺し』 があったこと。

 ふたつに、アックアの左手が物理的な攻撃ではなく魔術的な攻撃であったということ。

 アックアはそのまま左手に展開した魔術により上条を死なせることなく昏倒させるつもりであった。
 だから上条が右手を自分の左手の動きに合わせてきても気にとめることもなかった。

 上条はただ単純にアックアの左手を防御をするために右手を出しただけだった。


 だからこそ、それは起こりえたのである。



――――――――キィン……!!!!!!


アックア 「!?」 (なっ……!?)

上条 「へ……?」

282 : アックア 「必要悪の魔導書図書館であるか……」4/22[saga] - 2011/06/18 00:41:05.04 X2gtDqmjo 5/24

 アックアには訳が分からない。
 何しろ、自分自身の魔術が魔術を使うことなく破られたのだから。

 上条にも訳が分からない。
 ただ触れただけで、相手が左手ごと大きくよろめいたからだ。

上条 (いや待て、これは間違いなく……)

 そして、正気に返るのは上条の方が早かった。 

上条 (チャンス……!!)

 右手を握りしめるのに0.1秒もいらない。

 体勢を崩している相手にねらいをつけるのに0.1秒もいらない。

上条 「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」

 咆哮を上げ、全力で殴りかかる。

アックア 「!?」 (っ……!)

 無論、アックアはそこらの不良とはわけが違う。いわば戦闘のプロである。
 本来であれば、たとえ体勢を崩していようが、上条の拳が飛ぶ前に相手を吹き飛ばしていたであろう。

 しかし彼は、自らの魔術が破られたことに対して思考を割いてしまっていた。
 そして、素人の拳なら受けても問題はないという思考を生んでしまったのだ。

 ――――結果として、それは大きな誤算となる。

 上条の “右” 拳がアックアの頬を正確に捉え、打ち抜いた。

283 : アックア 「必要悪の魔導書図書館であるか……」5/22[saga] - 2011/06/18 00:42:06.34 X2gtDqmjo 6/24

アックア 「ッ……!?」 (なん、だと……!!?)

 当然、それはアックアに大した物理的ダメージを与えることはない。
 彼は聖人である。その肉体は通常の人間とは比較にならないほど頑丈に作られている。

 しかし、だ。

アックア (馬鹿な……! 事前に施しておいた魔術的加護が、)

アックア (――――――すべて打ち破られただと……!?)

 繰り返す。上条当麻の右手には “あらゆる異能を無効化する” 『幻想殺し』 が備わっている。

 そしてそれはたとえ 『聖人』 が自らの身体に施した防御術式であっても例外ではない。

 その瞬間、アックアは “準備を万全とした魔術師” から “ただの魔術師” となった。

 かつて傭兵として様々な戦場に立った彼には嫌というほど分かる。

 今の己が、いかに無防備な状態であるのかが。

アックア (これは……この、少年は……!)

 その時点でようやく、アックアは上条に対する認識を改めた。

 ――――――ただの少年から、一刻も早く排除すべき対象へと。

284 : アックア 「必要悪の魔導書図書館であるか……」6/22[saga] - 2011/06/18 00:42:41.36 X2gtDqmjo 7/24

 そして素人である上条にそんな変化など見抜けるはずはない。

上条 (よっしゃ! なんか知らんが相手は戸惑ってる……!)

上条 (このままあの棍の射程に入らないくらい間を詰めたまま戦えば……!)

 だから上条はもう一度右手を振りかぶり、そして――――――

上条 「――――――へ?」

――――――――――――――――――――――――――――ドバンンンッッッッ……!!!!

上条 「――――ごッ……!!?」

アックアが振るった目にもとまらぬ速度の左拳によって、橋の欄干まで吹き飛ばされた。

上条 「がっ……!!」

御坂 「あ、あんた……!!」

アックア 「………………」

御坂 「ッ……!」 ギリッ 「あんたが用があるのは私でしょう!?」

御坂 「なのに、あいつを……!」

アックア 「……彼については謝罪しよう。無論、治療もさせてもらうのである」

御坂 「なっ……。ふ、ふざけてんの! あんたは!」

アックア 「ただ昏倒させるだけのつもりだった……しかし、彼は、一体……」

285 : アックア 「必要悪の魔導書図書館であるか……」7/22[saga] - 2011/06/18 00:43:26.43 X2gtDqmjo 8/24

 目の前の男は、本気で戸惑っている様子だった。

 御坂美琴には相手の心を読むことなどできはしない。
 しかしこう思わされたのだ。

 この男は嘘をついてもいないし、彼が吹き飛ばした少年に対し本当に申し訳なく思っている、と。

 しかし、だ。

御坂 「……――――……っざ……っ、けんな……」

 ――――――夕闇の下、紫電が散った。

アックア 「む……?」

御坂 「――――ふざけてんじゃないわよあんたッ!!!!」


                         バヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂ……!!!!!!


アックア 「………………」

アックア 「……なるほど。大した出力である」

御坂 「………………」

御坂 「……あいつはべつに、友達ってわけじゃない」

御坂 「仲良しこよしってわけでもないし……ムカつくし……」

御坂 「……むしろ……たぶん、嫌われてるし……でも、だからって……」

御坂 「目の前で知り合いがいいようにやられて、黙って見てられるほど人間できちゃいないのよ私は!!」

アックア 「……先に彼の治療をさせてはくれないようであるな」

アックア 「ならば君を早々に蹴散らし、不運にも戦士の戦いに巻き込まれてしまった少年を治療するとしよう」

御坂 「不運ですって……? ふざけんな!! あんたがやったんじゃないのよ!!」

アックア 「………………」

御坂 「いいわ。……たしかレールガンは効かないんだったわよね?」

御坂 「だったら見せてやるわよ……私の、異名以外の全力をねッ!!!」

286 : アックア 「必要悪の魔導書図書館であるか……」7/22[saga] - 2011/06/18 00:44:09.37 X2gtDqmjo 9/24

 暗闇に影が落ちた。

 少なくとも、アックアはその矛盾する感覚を憶えた。

 そしてそれは、紛れもない事実だったのである。

アックア 「……なるほど。科学による異能も侮れぬものであるな」

御坂 「………………」

 こちらを睨んだままの少女。おそらくあれは、彼女が呼び寄せたのであろう。

 紫電をまとった巨大な浮遊物体――――


 ―――――――― 『雷雲』――――――――

御坂 「稲妻は光速よ。あんたがいかに速かろうと避けられない」

御坂 「……殺すつもりで落とすわ。あいつに謝ってもらうんだから、死なないでよ?」

アックア 「………………」

フッ

御坂 「……!? 何が可笑しいのよ!」

アックア 「……さすが学園都市の権威の象徴、レベル5である」

アックア 「『聖人』 である私の弱点もしっかりとお見通しというわけか」

アックア 「魔術についても造詣が深いとは……なるほど。これは少々侮りすぎたのである」

御坂 「……?」 (こいつ……何を言っているの……?)

287 : アックア 「必要悪の魔導書図書館であるか……」9/22[saga] - 2011/06/18 00:45:21.27 X2gtDqmjo 10/24

御坂 「……まぁいいわ! さっきも言ったけど、死ぬんじゃないわよ!」

バヂッ……バヂヂヂヂヂ……!!!!

御坂 「………………」

――――――――――――パチッ……

アックア (来るのである……!!!)

御坂 「――――――――落、ちっ…………ろぉぉおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」



――――――――――――ズッッッバンンンンンンンンンンンンン!!!!!!



 御坂美琴が自ら述べたとおり、稲妻はほぼ光速に等しいで対象へ落ちる。

 そして彼女の学園都市第三位の頭脳を用いれば、対象に正確にねらいを定めることなど容易である。

 故に、アックアにその雷光が直撃したのは言うまでもないことなのである。

御坂 「……やった」

 ただし、

 ――――――――――――――――――――――――――――ユラリ……

御坂 「……!?」

 ――――――命中したからといって、相手が必ずしも倒れているとは限らない。

288 : アックア 「必要悪の魔導書図書館であるか……」10/22[saga] - 2011/06/18 00:46:25.90 X2gtDqmjo 11/24

御坂 「なっ……ど、どうして……?」

アックア 「……さすがに効いたのである」

 アックアは立っていた。
 もちろん無事、というわけではない。

 事前に上条当麻にあらゆる魔術的加護を破られている。

 急造で防御魔術は行使したものの、それは場当たり的なもの。

 圧倒的な出力を持つ学園都市製レベル5の全力を防ぎきれるものではない。

 ならば彼はなぜ立っていられるのか。

アックア 「……これが 『聖人』 のフィジカル……そして 『幸運』 である」

御坂 「ッ……! ま、まさか……橋……!?」

アックア 「当然、金属製の橋であるな」

御坂 「まずった……! 電束密度が散ったのね!」

 小学生でも知っていることであるが、金属は電流を流しやすい。

 そして、高校レベルの物理を習えば分かるが、空気中に放電された電流は、流れやすい場所で向かう。

 それはたとえ、御坂美琴というレベル5が必死で放電先を指定したとしても、容易に覆せるものではない。

 否。周囲が金属だらけの橋の上。
 そのような場所で、お世辞にも電気が流れやすいとは言えない人間に直撃させただけで凄まじいことなのだ。

御坂 「ッ……! 悪運の強い……!」

アックア 「……まぁ、たとえ今の雷を私だけに直撃させたところで、致命傷とはなりえなかったのである」

御坂 「なんですって……?」

アックア 「言ったはずだ。私は 『聖人』 である。ただの雷ごとき、そう大して効きはしない」

アックア 「『神』 の象徴でもある雷を利用し、私を討ち倒そうとしたのかと思ったが……」

アックア 「そうではなく、単なる物理的な攻撃であったのか。拍子抜けだな、レベル5」

御坂 「『神』 ……?」

289 : アックア 「必要悪の魔導書図書館であるか……」11/22[saga] - 2011/06/18 00:47:22.28 X2gtDqmjo 12/24

アックア (古今東西あらゆる宗教・伝説において、最高神の用いる力は “雷” に象徴されることが多い)

アックア (十字教においてもそれは裁きの力として 『神』 の力を象徴している)

アックア (我々 『聖人』 の弱点は大きくふたつある)

アックア (ひとつに、かつて 『聖人』 を刺し死に至らしめたロンギヌスの 『槍』)

アックア (そしてもうひとつが、いま君が作り出した雷雲…… 『雷』 である)

アックア (トリニティにもあるように、『神』 と 『聖人』 は 『聖霊』 と共に三位一体を形成している)

アックア (トリニティにおいて 『神』 と 『聖人』 は同一の尊さを持つと言われるが……)

アックア (それは裏を返せば “本物の 『聖人』 でようやく 『神』 と同格” ということになる)

アックア (階位において、私のような “ただ身体の構造が似ているだけの 『聖人』” では到底たどり着けぬ境地である)

アックア (故に、神の力を象徴せし 『雷』 は私にとっては脅威となりえる……の、であるが……)

アックア (……今の雷撃にそんな要素は皆無であった)

御坂 「っ……なら今度は、橋のことも演算に入れて、あんただけに直撃させる雷を落とす……!」


アックア 「――――――ふむ。させると思うのであるか?」


御坂 「ッ……!!」

290 : アックア 「必要悪の魔導書図書館であるか……」12/22[saga] - 2011/06/18 00:48:12.40 X2gtDqmjo 13/24

 御坂美琴が気づいたときには、すでに男は動き出していた。

御坂 (けど、周りは金属製の橋……! 磁力を利用して……――――)

――――――――ガクッ……

御坂 (なっ……!?)

 とっさのことに、電力が足りないことにすら気づかなかった。

 体勢を崩し、そのまましゃがみこむ。

御坂 (まずい……! 一発大きいの落としたばっかで、力が……!)

アックア 「終わりであるな」

                  ――――――ザッ……!!!!!!

御坂 「ひっ……」

 男は御坂の様子に、それ以上の反撃はないと踏んだのだろう。

 速度をゆるめ、ゆっくりと御坂の目の前で立ち止まった。

アックア 「安心するのである。生命まで取ろうとは思わぬ」

アックア 「四肢を潰す程度である」

御坂 「い……嫌……」

アックア 「……この都市ならば、義手や義足には困らないであろう。すまぬな」

 無慈悲な目だった。

 間違いなく、言ったことを実行するであろうと、御坂には分かった。

 気づけば、へたりこんでいた。

 当たり前だ。レベル5であろうと、学園都市第三位であろうと、なんであろうと、

 御坂美琴という己は、結局のところただの中学生で、ただの少女なのだから。

御坂 「た……す、けて……」

アックア 「………………」

御坂 「――――――誰か……助けて……っ……」


                    「―――――――― 『Fortis931』 !!!」


アックア 「む……!?」

御坂 「えっ……」

291 : アックア 「必要悪の魔導書図書館であるか……」13/22[saga] - 2011/06/18 00:49:42.00 X2gtDqmjo 14/24

 それは、一瞬の出来事だった。

?1 「……その少女から離れろ、外道」

 それは、どこか大人びた、少年の声だった。

アックア 「……この炎は……ケルト系であるか」

?1 「……聞こえなかったのか?」

 それは、怒りに打ち震えた声だった。



?1 「その少女から離れろ……ッ!! 燃やされたくなければなッ!!」



アックア 「ッ……」

 そしてそれは、御坂にはとても暖かいものに見えた。

 不思議と、恐怖はなかった。

御坂 「きれい、な……火……」

 助けてもらったからかもしれない。

 そう。その、紅蓮の炎に。

 ――――紅蓮の炎剣を携えた、その少年に。

292 : アックア 「必要悪の魔導書図書館であるか……」14/22[saga] - 2011/06/18 00:50:28.45 X2gtDqmjo 15/24

?2 「ステイル、この介入行動は非常にまずい気がするのですが……」

ステイル 「おいおい、今さら常識者みたいなことを言うなよ神裂」

ステイル 「そう言うなら、その 『七閃』 、今すぐ引っ込めたらどうだい?」

神裂 「……そうですね。ええ、間違いなく」

神裂 「魔術師にいたぶられている一般市民を放っておけるはず、ありませんね」

 恐ろしいくらい不自然な二人組だった。

 片や長身に赤い長髪、右目の下にはバーコードの入れ墨の(声からして恐らく)少年の神父。

 片やアンバランスなダメージジーンズに裾を大きくまくった露出度の高い女性。

神裂 「……大丈夫ですか?」

御坂 「あっ……」

 気づけば、アックアと名乗った男は大きく後退していた。

 そしてそれに代わるように、神裂と呼ばれた女性が、両手で御坂を優しく包み込んでくれていた。

神裂 「『手当』 ……古くは古代人が “手を当て合う” ことによって痛みを和らげていたことに起因します」

神裂 「術式とも呼べぬ簡易的なものですが、震えは止まりましたか?」

御坂 「あ……」

 不思議なことに、震えは消えていた。

神裂 「よかった。今日のことがトラウマになったりしたら大変ですからね」

 にこっ、と。とても優しい笑みだった。
 弱り切った御坂には、神裂が天使のように、聖女のように見えた。

御坂 「あっ……あ、あの……! もうひとり、男の子が、あいつに吹き飛ばされて……!」

神裂 「ご安心を。ここにいます」

御坂 「えっ……?」

 いつの間に、という言葉すら出なかった。
 神裂の傍らに、ツンツン頭の少年が寝かされていたのである。

神裂 「……大丈夫。大丈夫です」

 御坂に言い聞かせるような神裂の顔を見て、
 不覚にも同性にときめくとある後輩の気持ちが分からなくもないと思えた御坂であった。

293 : アックア 「必要悪の魔導書図書館であるか……」15/22[saga] - 2011/06/18 00:50:58.40 X2gtDqmjo 16/24

アックア 「……なるほど。イギリス清教であるか」

アックア 「いいのであるか? 秘密裏の作戦行動中だったのではないのか?」

アックア 「私などにかまけて、本命を落としたら目も当てられないであろうに」

ステイル 「くだらない。本命なら必ず救うさ」

ステイル 「……僕はあいにくと見ず知らずの人間を救うほど優しくはない」

ステイル 「ただ虫酸が走っただけさ。君のように、一般人に危害を加えようとする魔術師がね」

アックア 「ふむ……」

神裂 「……余裕ですね。撤退する気もないと?」

アックア 「せっかく見つけたターゲットである。ここで逃せばガードが堅くなる」

アックア 「それは面倒である」

神裂 「……それはご自分が 『聖人』 であるという余裕ですか?」

アックア 「“自分も 『聖人』 だから舐めない方がいい” とでも言いたいのであるか?」

神裂 「なるほど。やはり分かりますか」

ステイル (……神裂、相手の所属はおろか魔術分野まで不確定な今、正面からやり合うのは得策ではない)

ステイル (この少女を連れて逃げるのが最良だろう)

神裂 (ええ、ですが……)

神裂 (――――――あちらがそれを許してくれるとは思えませんが、ね)

ステイル 「……!?」

294 : アックア 「必要悪の魔導書図書館であるか……」16/22[saga] - 2011/06/18 00:52:22.74 X2gtDqmjo 17/24

 繰り返すが、そこは陸橋の上である。
 そもそも、橋とはなぜ作られるのであろうか。

 河川等の障害物を通過するためである。

アックア 「これもまた 『聖人』 であるが故の幸運とは思いたくはないが、」

アックア 「本当に水が豊富であるな、この国は」

 アックアの背後に、巨大な魔法陣が形成されていた。
 それは河川の水を吸い上げ、簡易的に作り出した魔法陣……

 アックアがもっとも得意とする大規模攻撃魔術の魔法陣であった。

神裂 「……まずいですね。一応 『七閃』 で防御魔術の形成はできますが……」

神裂 「……妙です。相手の出力が高すぎます」

ステイル 「どういうことだい? 君もあちらも同じ 『聖人』 だろう?」

神裂 「分かりません。ですが……あれほどの出力の魔術を私が一度に使えば、」

神裂 「……おそらく、この身体が負荷に耐えきれず暴発するかと」

ステイル 「………………」 フゥ 「……出力勝負では勝ち目がない、か」

ステイル 「仕方がない。こういうのは気が引けるんだが……」

御坂 「………………」

ステイル 「……君、ちょっといいかな?」

御坂 「えっ……?」

295 : アックア 「必要悪の魔導書図書館であるか……」17/22[saga] - 2011/06/18 00:53:10.05 X2gtDqmjo 18/24

 その時点で、アックアは目の前の敵を見すえていた。

アックア (……一撃で終わりにはできぬであろうが、少なくともあの 『聖人』 以外はやれるであろう)

 “敵” を見据え、“敵” を討ち倒すことを念頭に置いていた。

アックア (たとえ敵が増えようとも正攻法でたたきつぶすのみ)

 “敵” を屠るために魔術を形成していた。

アックア (魔術師として戦場に割り込んできたからには、潰される覚悟くらいはあるであろう)

 そう。“敵” のみを見据えていた。

アックア (ならば――――――)


             「――――あんた……アックア、って名前だったわよね……」


アックア 「……何であるか?」

 故に、その少女の声に、彼は少なからず驚かされた。

御坂 「………………」

アックア (相当の恐怖を味わったであろうに……まだ立ち上がるのか……)

アックア (……否。まだ “あのような目” をすることができるのであるか)

 その瞬間、アックアは認識を改めた。

アックア (……なるほど。学園都市製レベル5の第三位……御坂美琴)

アックア (君……否、“貴様” を、敵として見なそう)

296 : アックア 「必要悪の魔導書図書館であるか……」18/22[saga] - 2011/06/18 00:54:10.43 X2gtDqmjo 19/24

御坂 「……あんたが魔術とやらを形成する前に、私の雷があんたを貫く」

 見るからに限界が近い少女は、しかし毅然とした表情でそう言い放った。

アックア 「……何を言い出すかと思えば、そんなことか」

アックア 「無駄である。魔術的意味を帯びていない雷撃など、私の 『聖人』 としての肉体だけで防ぎ得る」

アックア 「それは先ほど示したばかりであるが?」

ステイル 「それはどうだろうか?」

アックア 「………………」

ステイル 「先とは違うファクターがある。僕たちだ」

アックア 「……大した脅威ではないのである」

ステイル 「言ってくれる。しかし、上を見ても同じ事が言えるかな?」

アックア 「上……? ――――――ッ……!?」

神裂 「気づいたようですね」

神裂 「……あなたが水で魔法陣を描くように、私もまたワイヤーで魔法陣を描きます」

神裂 「そしてあの我々の頭上に張り巡らせた魔法陣の意味……」

神裂 「やはりあなたなら分かりますか」

神裂 「―――― 『聖人』 であるあなたなら」

アックア 「っ……考えたものであるな……」

アックア 「神を象徴する 『雷』 ……」

アックア 「科学で作り出した 『雷』 をあの陣形に通すことによって、意味を後付けする……」

神裂 「急造の魔法陣です。科学との競合が起きないとも限りません」

神裂 「しかし、これは私見で恐縮ですが……」

神裂 「……この少女が死ぬ気で作り上げたあの雷雲が、あなたを貫く気がしてならないのですよ」 ニコッ

297 : アックア 「必要悪の魔導書図書館であるか……」19/22[saga] - 2011/06/18 00:55:00.04 X2gtDqmjo 20/24

アックア 「………………」

アックア 「……肉体的な損耗はゼロではない」

アックア 「加えて、その少年の力かは知らぬが、魔術的加護がゼロに等しい」

御坂 「………………」

アックア 「……覚えておくといい、御坂美琴」

アックア 「私は 『後方のアックア』 。近いうちに必ず、貴様を含めた全レベル5を潰す者だ」

御坂 「………………」

ギリッ

御坂 「……そっちこそ覚えときなさいよ」

御坂 「私の名前は御坂美琴! 学園都市のレベル5! 第三位の 『超電磁砲』 !」

御坂 「次は絶対に……あんたなんかを怖がったりしないから!!」

アックア 「………………」

タッ…………………………――――――

298 : アックア 「必要悪の魔導書図書館であるか……」19/22[saga] - 2011/06/18 00:55:49.56 X2gtDqmjo 21/24

…………………………――――――――

ステイル 「……行った、かな……」

――――……ハァ……

ステイル 「……冷や冷やしたよ。いつはったりが見破られるかってね」

神裂 「いい演技でした。協力ありがとうございます」

御坂 「い、いえいえ、そんな……」 フラッ 「……あ、あれ……?」

ステイル 「おっと」

 倒れ込む御坂を、長身の神父が抱き留めてくれる。

御坂 「あっ……あり、がと……///」

ステイル 「ふむ。やはりだいぶ消耗しているようだね。無理をさせてすまなかった」

御坂 「い、いえ……むしろ、本当にありがとうございます……助けて、くれて……」

ステイル 「……べつに好きで助けたわけじゃないさ」

神裂 「……しかし凄まじいはったりを思いついたものですね、ステイル」

神裂 「彼女はこの通り雷撃を撃てるような状態ではありませんし、」

神裂 「加えて私が作り出した魔法陣も単純に “YHVH” を表すだけの紋様です」

神裂 「たとえ雷を通過させたところで、効果が出るかは正直疑問ですし……」

ステイル 「ああいうのは言ったもの勝ちだ。“可能性” があるだけでいいんだよ」

ステイル 「……さて、」

スッ

御坂 「わっ……わひゃっ……」 (お、お姫様だっこ……?)

ステイル 「軽くて助かる。一応は英国紳士だからね。家までは送るよ」

神裂 「では、私はこの少年を」 スッ 「……きちんと食べているんですかね? やたら軽いですが」

上条 「………………」

299 : アックア 「必要悪の魔導書図書館であるか……」21/22[saga] - 2011/06/18 00:56:53.38 X2gtDqmjo 22/24

御坂 「なっ、何からなにまで……すみません……」

ステイル 「ああ……もし、ほんの少しでも感謝してくれているなら、協力してくれると助かる」

御坂 「協力? 私にできることなら、是非!」

ステイル 「……人を探しているんだ」

御坂 「人……?」

神裂 「……ちょうどいいです。明日から一緒に探してはいただけませんか?」

ステイル 「神裂……?」

神裂 「……この少女のことも心配です。『聖人』 に狙われているんですよ?」

ステイル 「お節介な奴だ。あの子を助ける障害になり得るぞ?」

神裂 「ならばなぜ助けたんです? あのまま見逃していればよかったじゃないですか」

ステイル 「っ……ああ分かったよ!」

ステイル 「ならこういう契約としよう。べつに馴れ合うわけじゃないぞ?」

御坂 「は、はぁ……?」

ステイル 「君には僕らに協力してとある少女を捜す手伝いをしてほしい」

ステイル 「学園都市の人間なら、僕らが知らない隠れ場所とかも知っているかもしれないからね」

ステイル 「その代わり……僕らが君を守るよ」

御坂 「……!!」 ドキッ

ステイル 「……? どうした? 顔が赤いが」

御坂 「にゃっ、にゃんでもにゃいれす! わ、わかりました!」

ステイル 「?」

神裂 「………………」 ハァ

300 : アックア 「必要悪の魔導書図書館であるか……」22/22[saga] - 2011/06/18 00:58:27.14 X2gtDqmjo 23/24

………………学園都市 裏路地

アックア 「………………」

アックア (……やはり、魔術的加護が完全に消滅しているのである……)

―――― 『うおぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!』

アックア (あの少年に、魔術的な気配はなかった……ならば、何故……)

ガサッ……!!!

アックア 「む……?」

「う……」

アックア (……? 誰か、倒れているのであるか……)

 アックアの志向は揺らがない。
 アックアの目指す先は変わらない。

 先ほど、齢14の少女の両手両足を潰そうとしたその両の手で、

 少女を再起不能に落とそうとしたその魔手で、

 悪魔のごとき力を発揮するその毒手で、

 そこに倒れている何者かを救おうと手をさしのべる。

 そこに矛盾はない。

 彼にとって何より大事なのは、戦場であるか否か。そして敵であるか否か。

 戦士であるか否か。

アックア 「む……――――――――――ッ!!!?」

 しかし、彼にはひとつ誤算があった。

 “倒れているただの一般市民を助けよう”

 そんな考えは、見るも無惨に打ち砕かれた。

アックア 「こ、これは……馬鹿な……! なぜ、こんな場所に、こんな……!!」

 それは戦士であるか。否。


「……う、ん……?」


「あなたは、だぁれ……?」



 紛れもない、


インデックス 「ごはんをくれると、嬉しいな」



        ――――――――――『魔神』 であった。


301 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage] - 2011/06/18 01:02:17.32 X2gtDqmjo 24/24

以上です。長々とスミマセン。