981 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage] - 2011/07/03 21:50:05.27 dyn4ikR30 1/6

埋めに紛れて水槽ネタ。水槽ネタは基本使えないネタ、これをストーリーに入れるとどうなるか、なんで使えないネタなのかが分る、そんな5レス。
下ネタ、弱グロ注意です。

関連

おさかな煉獄
http://toaruss.blog.jp/archives/1033164733.html

おさかな転國
http://toaruss.blog.jp/archives/1033534276.html

おさかな煉獄2
http://toaruss.blog.jp/archives/1034185525.html

おさかな転國2
http://toaruss.blog.jp/archives/1034282810.html

おさかな煉獄3
http://toaruss.blog.jp/archives/1034549184.html

おさかな外伝
http://toaruss.blog.jp/archives/1034635749.html

元スレ
▽ 【禁書目録】「とあるシリーズSS総合スレ」-30冊目-【超電磁砲】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1307804796/
982 : 理由は南アメリカ、ただそれだけ[sage saga] - 2011/07/03 21:52:25.70 dyn4ikR30 2/6


「残念だよ、海原。お前とは本当に友達になれると思ってたんだぜ」

「自分はたったの一度もそんな事を思った試しはありませんでしたけどね」

『海原光貴』を騙る魔術師はギシギシと彼らの周囲の建物が放つ崩壊の予兆も気にせずこう続けた。


「大体、あなたが悪いんだ。自分はこの街が好きだった。御坂さんが居るこの世界が大好きだった。でも、上が上条勢力は危険だと、そう判断してしまったから。あなたがもっと穏便でいてくれたら、問題ナシと報告させてくれたら壊さなくて済んだんだ。誰も傷付けなくて済んだんだ。」

魔術師は歪んだ顔に激情を乗せて

「でも結果が出てしまった。今の自分はあなた達の敵です。そうなったのは誰のせいだ??」

魔術師の全身から殺意が溢れ出る。不可視の、しかし濃密な気配が場を支配する。


「お前、本当に御坂のことが好きなのか」

ええ、と答えが返ってくる。

「でも、もう無理なんですよ。……これを見てください」


というと魔術師は回れ右をして建物の奥へ向かう。付いて来い、と言っているのだと理解した上条は警戒しつつも後に続いた。


建設作業用エレベータ付近まで歩かされたそこには、なにやら電子レンジ大の物体があった。黒い布が被せられていて何であるか確認する事は出来なかったが、布の一端からコードが延びておりどうやら近くのコンセントから電源を拝借しているようだった。



「あなたに自分の気持ちなど分るはずがない」


魔術師は、そう言いながら黒い布を優しく引き剥がす。その顔は不思議と、怒りにも悲しみにも恍惚にも見えた。

中から出てきたのは戦場には全くそぐわない、平和の象徴のような直方体。

「こりゃ、水槽じゃねえか。魚もいるみたいだけど……」


割と横長の1mほどの水槽の中には、循環式なのか上部から落ち続ける水がかなり速い流れを作っていて、その流れに逆らうように十匹ほどの白っぽく細長い10cmほどの魚が泳いでいた。

983 : 理由は南アメリカ、ただそれだけ[sage saga] - 2011/07/03 21:53:42.92 dyn4ikR30 3/6


「自分がアステカの魔術師だったから、アステカは南アメリカの文明だから、そしてこの魚が南アメリカの魚だから。そんな理由でこんな役目を押し付けられる気持ちが分るわけがない!! ……この魚の名前はカンディル、詳細は>>554 そういう魚です」



「な、ま、まさか御坂にこれを使うつもりだって言うのか!?」

上条は魔術師の言葉が信じられなかった。好きな女を殺す、それだけでもとんでもない悲劇だというのに、そのための手段がそんなおぞましいものだなんて。狂ってる。彼の属する組織とやらの中枢は間違いなく正気を失っているのだろう。
だが上条にはもう一つ理解しがたい事があった。そんな悪魔の魚を見つめる魔術師の視線はなぜあれほど熱いのだろう……。


「カンディルはアンモニアに反応して獲物に襲い掛かります。男性の場合、尿道が長いので人体に大きな影響が出る前にそこを切開すれば事足りてしまうのですが」

言いつつ魔術師は黒曜石の槍をスッと縦に引いて、その部分を切るマネをする。上条は股間がツーっとなるのを隠し切れなかった。

「女性の場合は進入されれば即、命に関わります。ですからこれは彼女の為の拷問、といったところでしょうか。……言いたい事は分ります。なぜ自分がこんな卑俗の極限とも言うべき方法にわずかながらも喜びを感じているのか? ですよね」


そのとき初めてまじまじと見た魔術師の顔は、まだ幼さの残る浅黒い少年、といった感じだった。

「いいですか? カンディルは先ほども言ったようにアンモニアに反応します。女性の場合、代表的な進入経路は三箇所、ですよね。そのどれもが生命の証であり、神秘であり、侵すべからざる聖域と言えましょう。想像してみてください、身動き出来ない御坂さんが誰にも触れさせた事もないその場所を、あろうことか魚類などに晒し、あまつさえその横暴な突入を許してしまう、その絶望を!」

少年は厳しい表情を浮かべたまま、しかし段々と昇りつめていくような口調で続けた。

「そしてカンディルが次に見る景色は、本来誰も覗く事のないはずの楽園、文字通り女神の裏側です。神々が住まう天界に辿り着いた悪魔達は、秘密の花園を蹂躙します。彼らの口は吸盤状になっていてその中は鋭い歯列があります。齧りついて血を吸い、肉を喰らい噛み付いたままドリルのように回転して穴を開け……しかもです、痛覚がそれほど鋭敏ではない場所ですから、御坂さんご自身は中で侵入者達が何をしているのか、恐怖で震えながらも感じられるのはせいぜい、重さ、だるさだけなのです。強烈な痛みを感じた時にはもう全てが終わったと思っていいのですが、それまで御坂さんが正気を保っていられるか……フフッ」


ああ、と上条当麻は理解した。敵になりたくなかったのに敵になってしまった男、歪んでしまった心が求めたのはNTRだった訳だ。
それも好きな女が美しいまま誰の物にもならず朽ちていく最悪の方法で。そこに快の感覚を持ってしまったのは抗せざる命令に対するせめてもの心理的自己防衛であったのだろう。

ここまで己の醜い本音を晒した相手を受け流す事など出来なかった。

「この先、御坂に手を掛ける以外無いって言うんなら仕方がねえ。殺してやるよ、お前のその幻想を!」



984 : 理由は南アメリカ、ただそれだけ[sage saga] - 2011/07/03 21:54:56.68 dyn4ikR30 4/6


既に始まっていたビルの崩壊は戦闘再開とともに激しくなっていった。鉄骨が雨のように降り注ぐが上条も魔術師もそれを気にもしない。
ただ相手との距離を詰めること、それだけを考え前に足を繰り出し続けた。形勢は次第に露わになる。

怪しげな術式に頼りきりで体を鍛えていないのか、上条の攻撃に魔術師は徐々に消耗していったのだ。と、ふらつく相手にトドメの一撃を御見舞いしようとした上条の真横に鉄骨が突き刺さった。間の悪いことにさらにその上にもう一本落下した鉄骨が激突する。衝撃波じみた轟音が上条の鼓膜を貫いた。

「く、う……!?」

思わずよろめいた上条に、同じくふらついた魔術師が捨て身のタックルを仕掛けてきた。仰向けに倒された上条は脳を揺さぶられていて思うように動けない。一方の魔術師は覚束ない動きでしかし確実に上条に馬乗りになろうとする。

なんとか魔術師から身を逃れようとする上条は見た、自分達の真上に落ちてくる大量の鉄骨を。そのうちの一本が確実に自分達を串刺しにするルートを通っている事を。距離にして20M、時間にして数秒か。魔術師はこちらに注意が向いていてまだ気付いていない。

「避けろ、このバカ」

上条は馬乗りになろうとしていた魔術師を思い切り蹴り上げた。仰向けに転がされた彼は上を見て、そしてようやくそれに気付いた。

その時、上条は魔術師と目が合った。
降り注ぐ鉄骨を避けもしないで、笑っていた。薄く寂しく、まるでこの戦いに勝利することで何が得られるのか知ってしまったように。


上条にはこんな魔術師を助ける義理はない。だが、意識するより先に体が動いていた。腕を掴まれた魔術師は驚きの顔を浮かべた。上条にも分っている。間に合うはずなどなかった、それでも見捨てられなかった。


刹那、大量の鉄骨が激突し、地面が大音響とともに振動した。

985 : 理由は南アメリカ、ただそれだけ[sage saga] - 2011/07/03 21:56:02.50 dyn4ikR30 5/6


粉塵がおさまっていく。その中にはあるべき悲劇が存在していなかった。ぺたんと尻餅をついた上条が力なく笑う。
奇跡、を上条は信じない。だがあの鉄骨の雨の中、生き残っていたことをどう評価するべきか。

「ははっ……運が良かった、って事はねえよな。御坂か?」

上条は今にも倒れそうな絶妙のバランスを保つ鉄骨の山にビビリながら辺りを見渡す。魔術師はすぐ近くで鉄骨に腕を挟まれて倒れていた。
といっても潰されているわけではなく、隙間に腕を突っ込んだような状態であるようだった。まあ動く事は出来そうも無いが。


魔術師は自分が生き残っている事が不思議だと、そんな感じでしばらくぼうっとしていたが、やがて口を開く。

「自分は、負けたのでしょうか?」


「さあな、これは俺がやったわけじゃねーし」

上条はそう言ったが、魔術師は首を横に振った。どうあれ、もはや戦闘など出来ない状態なのだ。

「負けましたか……これで御坂さんも、誰も殺さずに済むって事なんですかね」


「……」

上条は何も答えずに魔術師の顔を見た。

思えばこの男はずっと迷っていたんだと思う。誰も殺したくなどない、傷つけたくなどない。そんな中で己の欲望が暴走しておかしな方向に捻じ曲がってしまったのだと。ならば正してやらねばならない。同好の士になり得る素材を正しい道へ、光の差すほうへと導かねばなるまい。


「自分は、何が間違っていたんでしょうかね」

魔術師の問いに、上条はさっきまでの敵意も忘れたかのように饒舌に答えていく。


「お前の最大の間違いは、カンディルを使うことを拷問、と言った事だ。好きな女の苦しむ姿を見たいってのは健全なサディストであれば当然持つべき情念だけど、相手を死なせちまったら楽しくねえだろう? あくまでも生理的嫌悪感を催したり許容範囲内の痛みを与える行為が快感であるべきなんだ。それと、これは割とどうでもいいことだけどな。カンディルはナマズ目だから電気魚なんだ。電気魚ってのは>>552参照だ。で、アイツは発電能力者だから常時電磁波を周りに出し続けてる。だからそもそもカンディルは近くに寄ってこないんだよ。相手のことをよく知らないままプレイしようって姿勢は感心しないぜ。いいか、拷問に使う魚といったらドジョウ……いや御坂ならシマドジョウ……でもダメか。……スジシマドジョウ(東海型)で充分なんだよ。ドジョウ科はコイ目だから電磁波の問題もねえしな。分ったらさっさと始めようぜ、魔術師!」


「ふつ、全く……最低の返事だ」

と魔術師は、倒れたまま苦笑して、呟いた。




そんな2人を遠くの鉄骨の影から見つめる視線…………。


(な、何を言いたりけるのか全く分りたりけらぬのことなのよおおお !?……あのバカども♯)


986 : 理由は南アメリカ、ただそれだけ[sage saga] - 2011/07/03 21:59:18.93 dyn4ikR30 6/6

以上です。ご登場の3人様には多大なご迷惑をお掛けしました。

ね、使っちゃダメでしょ?