86 : SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)[sage] - 2011/12/22 21:59:25.25 UK0C77DSo 1/2

 ハワイはコーヒーの一大産地である。そんなことを聞かされた浜面仕上はホテルのラウンジで地元のコーヒーをオーダーした。
 浜面仕上の舌は冴えない外見と同じく細かいコーヒーの銘柄の違いを見分けるほど鋭敏ではない。
 それでも名産だというのなら土産話ぐらいにはなるだろう、と日本円で二千円強という値段に驚愕しながら注文したのだ。

 麦野沈利と負けず劣らず我の強い少女が黒服の部下たちと姿を消してから丸一日。
 幻想殺しの少年と最強の能力者一方通行、そして常盤台の電撃姫(客寄せパンダともいう)の三人がこれからの行動に関して喧々諤々の話し合いをしているのを脇目にこっそりと抜け出してきたのだ。
 因みに番外個体と黒夜海鳥はアレでも馬があったらしく一緒にアメリカンで凶悪なパンプスタイルを求めてショッピングに出かけている。

 ロベルト=カッツェというセクハラ大統領はこの場にいない。
 何処かしら浜面とよく似た空気のもつ破天荒な政治家はあれでもアメリカという国家にとっては最重要人物であり、テラウエアの噴火や海軍基地への襲撃などで揺れる地元ハワイの混乱の収集に躍起になっている。
 一方、メディア王オーレイ=ブルーシェイクの支配下から逃れた上院下院の議員たちにコンタクトをとり自軍に取り込んでいるらしい。
 やることが早すぎるとは思うが即決も政治家の能力の一つである。

 まぁ、難しいことは難しいことを考える人間に任せればいいのである。
 浜面仕上は自分が頭がいいとはこれっぽっちも思ってはいない。
 多少は機転の利く方だとは思うが、何かしらの事件に追い込まれて発揮する機転ばかりなので、ウニ頭の不幸の如く、発揮する機会がない方がいいのだ。

 とにもかくにも今は一人のんびりコーヒーを楽しもう。
 そういう空気を浜面仕上は発している。
 ラウンジのテーブル席で、相がけもせず、一人で。

 そんな浜面に陰がさした。
 そのままなんの言葉もなく浜面の対面に座る。
 タイツで引き締めた太腿を見せつけるようなミニスカートの、そしてサングラスをかけた若い女性がそこに居た。

 当然、見覚えなどない。
 しかし予感はあった。

「アンタが連絡員か」

 ボサボサの頭をボリボリ掻きながら浜面が言うと女性は唇だけで笑みを返した。

元スレ
▽【禁書目録】「とあるシリーズSS総合スレ」-35冊目-【超電磁砲】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1324178112/
87 : SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)[sage] - 2011/12/22 22:00:46.67 UK0C77DSo 2/2

 ロシアから滝壺理后と麦野沈利を連れて帰ったとき。
 学園都市上層部との交渉材料として素養格付という一枚のチップを手に入れていた。
 それは学園都市のすべての能力者の”能力開始前からその生徒の素養が全てわかっている”というデータである。
 能力は才能だけではなく努力によって向上する、とお題目を上げている学園都市の教育指針を、ひいてはその吸引力を大きく損ねる情報である。
 交渉材料としては充分なものであると言えた。

 しかし。
 しかし、だ。

 素養格付をどうやって手に入れたかというと。
 浜面仕上と麦野沈利を抹殺し、滝壺理后を回収しようとした部隊の長から手に入れたのだ。

 ――そんなもの信用できるのか?

 浜面仕上は思う。

 部隊の長たる女は自身を代替のきかない優れた存在であると過信していたが、学園都市の開発の頂点である超能力者、麦野沈利を用なしと判断して切って捨てるような上層部が現場指揮として派遣するような、そんな程度の存在ながどれほどの重要人物だというのだろうか。
 まして、そんな存在から手に入れたデータで何故自分たちの身を守れると信じ切れた?

 戦争の直後ならわからなくもなかった。
 あの時、学園都市は余計な混乱を避けようとしていた。
 一方通行による暗部解体の申請(或いは脅迫)が成功したのも偏にその点であろう。

 いや、もしくは浜面たちの安全の確保こそ学園上層部の意思だったのかもしれない。
 自分たちがカードをもったことで、ゲームに参加できると勘違いして、自分の意思で動いていると勘違いしている駒を作り出すために。

 第一、学園都市から外に出ることもできない超能力者が、今二人もハワイにいるのだろうか。
 そして、今現在ハワイにいる浜面仕上をコントロールしようとする場合において、もっともわかりやすい方法は何か。
 人質に決まっている。
 誰だってそうする。浜面でもそう考える。
 それは逆の状況でも言える。
 アイテムをコントロールするには浜面仕上を使えばいい。
 どちらかがどちらかのコントローラーとなるのであれば、その両者は離れていればいるほど都合がいいことになる。

 今現在。この状況。
 世界のバランスは大きく科学側に傾き、そして科学側の力が削ぎ落されつつある今この瞬間。

 浜面がどこから仕入れてきたわからないデータを、捏造することができる相手が出来てしまった。
 つまりもう、素養格付は交渉材料にならない。
 ≪そう浜面が判断する≫、と学園都市上層部が判断したのであれば絶対にコンタクトをとってくる。

 浜面は自分になんの価値があるのかを知らない。知ろうとも思わない。

 学園都市理事長、アレイスター=グロウリーのプランを大幅に乱し、故に再構築すべきプランの最大の除外因子と判断され、だからこそ完全に敵に回すのではなく自身の影響力の及ぶ範囲に置くことで新たなプランへの影響を最小限にしようと、そのような判断が下されたことを浜面仕上は知るすべもない。

 しかし、「自分たちアイテム」の敵ならば容赦はしない。「アイテム」のためならば誰だろうと裏切ってやる。幻想殺しも一方通行も超電磁砲も関係ない。
超能力者も無能力者も科学もオカルトも知ったことか。

 だが、だからと言って完全な敵に回るつもりもない。彼らは心強い味方である。味方であるうちは彼らのために協力しよう。情報も回してやろう。
アイテムのためにならないと判断するその時まではセイギノミカタでいようじゃないか。なんだかんだ言っても今の関係は心地よい。
浜面仕上は悪人にはなりきれない。

 熱いコーヒーが二つ、運ばれてきた。
 芳しい香りに鉄錆の臭いが混じっているように浜面は感じた。

 さて、顔に似合わないことでもしようか。少なくとも此処で拐われたりしたら麦野に殺されかねない。

 交渉が始まる。
 世界の誰かを守るためではなく、自分の知っている誰かを守るための戦いが。