466 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(空)[saga] - 2012/01/09 19:48:31.18 L5XT4bVS0 1/15

>>280 と>>399 の者です
度々すみませんが13レスお借りします

・超窒素禁書
・普通の小説に近い形式

>>427 物理的な脳構造よりも、世界の認識の仕方が重要なんだよ! っていうご都合主義です
……絹旗に治療させたかったんですごめんなさい



【関連】

超窒素禁書
http://toaruss.blog.jp/archives/1040856132.html

超窒素禁書2
http://toaruss.blog.jp/archives/1040941995.html

元スレ
▽【禁書目録】「とあるシリーズSS総合スレ」-35冊目-【超電磁砲】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1324178112/
467 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(空)[sage saga] - 2012/01/09 19:49:27.99 L5XT4bVS0 2/15


「ぅ……」

眠りに就いた記憶が無かった。
頭の中がぐるぐると空転しなかなか寝付けなかったはずだが、身体は休息を求めたのだろう。
真っ暗だった部屋はいつの間にか色付いている。

ソファーなんぞに横になっっていたから、寝苦しさに目覚めてしまったようだ。
午前八時三十八分。
携帯のディスプレイを確認し絹旗は身体一杯伸びをする――と、

「ふぁ、んうぅー……っい゛!?」

ばりばりばり! と弾けるような感覚が突如両腕を覆った。

「いっ、痛っ、何ですかこれ超痛いんですけど!」

慌てて腕を確認すると、斑に水ぶくれができている。
カーテンを開けてよくよく見れば腕全体も赤らんでいるし。
思い返せば絹旗は昨日炎を払った時に高熱を受けており、手当てもせずに放っておいたツケが今現れている訳だ。

腕を動かすとびりびりばりばりと痛い。
動かさなくてもひりひり痛い。

「あん、の腐れバーコード……っ! 次に会ったら全身超バッキバキにしてやります!!」

今更ながらに処置をしながら、絹旗は脳裏でシニカルな顔をしやがる魔術師に吼えた。

「ん……、おはよう、なんだよ」

「! おはようございます」

気だるい声は少しだけ顔の赤いインデックス。
まだ休んでいた方が良いだろうに、うっかり起こしてしまった。
ちらりと見遣った滝壺のベッドからは落ち着いた寝息が今も聞こえてくる。

「身体の具合は?」

「ちょっと熱っぽいかも。って、あれ? 私、大怪我してたのに……」

背中に手を遣って傷口を確かめている。
昨日あれだけ冷静に魔術の指揮をしておきながらそれを丸ごと忘れているようだった。
インデックスは何に対してだろう、涙を溜めてふにゃあと顔を歪める。

「治ってる……結局、『私』は絹旗に魔術を使わせちゃったんだね」

「でも超ピンピンしてますよ。私が勝手に聞き出して勝手にやったんですから、インデックスが気に病むことじゃないです」

柔らかい銀の髪にぽふぽふ触れて。
それよりも、と強引に話を打ち切った。

「敵戦力について、ちょーっと超詳しく教えて欲しいのですが」

事によると、昨日の相手とまた対峙するかもしれない。
両足の骨折なんて魔術で治ってしまう可能性が示唆されたのだから。

468 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(空)[sage saga] - 2012/01/09 19:49:59.43 L5XT4bVS0 3/15


ぐるりと周囲を見渡す。
七月二十一日、午後七時。
絹旗は一人、第七学区の薄暗がりを歩いている。

「ルーン、ですか……」

聞いたことがない訳ではない。
ただそれはフィクション、それも胡乱な幻想譚の中だけで意味を持つ物だ、この都市の感覚では。

(まぁチョウノウリョクだって一昔前なら空想科学の産物だったんですけどねー)

絹旗は実際にあの炎を見て、あの熱により身体に痕を残しているのだ。
幾何学的な模様の配列で多種の現象が起こせる、そんな突飛な話を努めて飲み込もうとする。
そもそも自身で魔術を発動した経験もあるのだし。

インデックスの解説では、昨日の敵が使っていたのがそのルーンによる魔術。
あらかじめルーンを刻んだ範囲内で特殊な言葉を唱え力を発揮するとか何とか。
また少なくとも昨日の戦闘時には、ルーンを直接壁などに彫るのではなく、大量にコピーしたカードを貼り付けて使用していたらしい。

(範囲が超限定されている、って意味では私の「窒素装甲」にも通じますかね……?)

こちらの見識に無理矢理当て嵌めること自体、間違いなのかもしれないが。
いずれにせよ昨日の男はルーンの範囲外なら敵ではないということだ。
逆に言えば、あらかじめカードをばら撒くことができるなら――。

「何でもない道路だって、奴のテリトリーに超なり得る、と」

基本的に逃げに徹していたというインデックスは、昨日の敵についてしか攻撃方法などを知らなかった。
つまり現状、具体的な警戒ができるのはあの魔術師に対してのみ。
また詳細は不明だがインデックスの背を切り裂いた相手が最低一人。

もう一度辺りを注視する。
視界に小さな紙片は入らないが、さて。

469 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(空)[sage saga] - 2012/01/09 19:50:35.82 L5XT4bVS0 4/15


僅かに時間を巻き戻し、午後五時半。
場面は時折揺れる小さな空間、改造されたワゴンの中。
窓にはスモークが掛かり外の様子は判らない。

「ちょっ、絹旗、この包帯どうしたって訳!?」

話し掛けたのはフレンダ=セイヴェルン。
絹旗よりも年上でスレンダーな身体付き、金髪色白脚線美と三拍子揃った少女である。
造りの良い風貌に快活な雰囲気を纏っている。

「この前超しくじりまして。若干痛みますが問題は無いですよ」

「ふーん、まぁ簡単な仕事らしいし平気か」

「そう。大丈夫って言ったからには、任務に支障をきたしたら承知しないからね」

横から挟まれた声は幾分大人びている。
麦野沈利。
同じく絹旗よりも年上、豊かな茶の長髪に淡色のワンピースと落ち着いた風情だが、メリハリの利いたスタイルは隠し切れない。

「結局滝壺が不参加ってことは、能力者相手じゃない訳よね?」

その問いを麦野は肯定した。
潤んだ唇を開き、続ける。

「今回は調子に乗った研究者をぶっ潰すだけ。対象は護衛含め五人、二手に分かれて逃走中でそれぞれ外の連中と落ち合う予定。護衛は非能力者で確定よ」

広げた地図を指しながらの説明に、絹旗とフレンダは目線だけで頷いた。

「というと、私と麦野は超別働ですね」

「そ。私が三人の方に行くから、絹旗は残りをヤって。フレンダは遠隔制御で両方の補助を頼むわ」

「了解ーって訳よ! ばっちり援護するからね!」

麦野が指示し、他が了承の意を示す。
三人に、今ここには居ない滝壺理后を加えたのが「アイテム」の正式構成員である。
うら若き女性のみで活動する彼女達はしかし、不穏分子の抹消を担う暗部の精鋭なのだ。

470 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(空)[sage saga] - 2012/01/09 19:51:32.48 L5XT4bVS0 5/15


そんな訳で絹旗は所定の小路の奥に向かいつつ、危険極まりないカードが配置されていないか確かめていた。
周囲に人気は無いがこれは敵の使う魔術(インデックス曰く「人払い《Opila》」)ではない。
例えば路地の入り口の絶妙な位置に立ったティッシュ配りのアルバイト、客引き、そういったものに扮した下部組織の工作によって人の流れが巧妙に操作されているのだ。

「んー、完全にはチェックできませんが、今のところシロですか」

勿論敵の狙いはインデックスなのだが、現在彼女は滝壺と共に息を潜めており、「歩く教会」を着ていないため相手からは居場所が見えないはずだ。
この状況でふらふら外を出歩く絹旗から情報を引き出そうとする可能性はあるだろう。
警戒するに越したことはない。

(と、本業の方も超疎かにはできませんね)

連絡によると二人の標的――研究者と武装した護衛は一般乗用車でこちらに向かっているらしい。
後方支援に回っているフレンダが弾き出した予想到達時間はまではあと二十三分あるが。
絹旗は携帯に目を落とし――、丁度その時、通りから猛スピードの車が突っ込んできた。
ナンバープレートは、標的の、もの。

「っふ、フレンダぁぁあああぁあ!」

拙い、抜けられる――!
絹旗は、咄嗟に横にあった軽自動車をブン投げた。

471 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(空)[sage saga] - 2012/01/09 19:52:03.31 L5XT4bVS0 6/15


「……手間を掛けさせてくれましたね」

ビルの狭間、最後の標的の頭を壁に叩き付け、絹旗は呟いた。
思ったより時間を喰ってしまった。

敵が強力だったのではない。
実はこちらに向かってきたのは三人で、科学者の振りをした護衛を潰しているうちに本物が逃げようとしたのだ。
射撃や投擲で補っているとはいえ絹旗の能力は遠距離戦には向かないため、フレンダと協力して追い詰めた。

「ったく、上からの情報が間違ってるんじゃ超やってらんないです」

相手の来る時間が予測と大幅にずれたのも、そのせいか。

一度麦野と合流して討ち漏らしがないか精査すべきだろう。
絹旗はすたすたと歩き出す。
当初待機していたポイントからもかなり離れてしまったし――、と、そこで気付いた。

(物音が、しない……!?)

風の音、ビルの中から響く駆動音。
それらに混じるべきヒトの生活音が一切聞こえない。
下部組織によって出入りが制限されていたのは最初の路地から数ブロックのみだ。

「…………」

絹旗は目を細め、周辺の地形や障害物を脳に刻み込む。
瞬発的に動けるよう姿勢を低く。

果たして。

「なるほど。ステイルの言う通りですね、実に場馴れしている」

「あなたこそ、こうして超向かい合ってもまるで気配が無いようですが?」

すらりとした女性が、自身の写し身のような刀を携え対峙する。
「ステイル」とは昨日の男のことか。

「神裂火織、と申します。インデックスを――保護したいのですが」

「保護、ですか」

く、と喉を鳴らし、絹旗は地を蹴った。

472 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(空)[sage saga] - 2012/01/09 19:52:59.97 L5XT4bVS0 7/15


ずしゃぁぁああぁぁぁぁぁっ!! と、激しく地を擦る音。
身体を覆う窒素の壁がアスファルトと削り合う。

(今、何、)

吹き飛ばされたのだ、と辛うじて知る。
神裂の長身は一歩も動いていない。
いや、絹旗は見ている。
その手が、柄に掛かった手が一瞬刀身を引き抜くように動いた。

それだけ。

「……マジュツシの癖に、超力技ですね」

派手に吹き飛んだものの能力のお陰で怪我は無い。
立ち上がる絹旗を、神裂は警戒もせず眺めている。

「分かりやすい現象だけが魔術ではありません。身体を強化し――瞬間に七度の斬撃を放つことも」

当たり前のように手の内を明かした。
何故か震える脚を抑え絹旗は敵を真っ直ぐに見つめる。

「その鎧では、私の『七閃』は防ぎきれませんよ」

この魔術師は、絹旗を敵とも認識していない。

「そういうのは一度でも貫通してから言ってください!」

現在の位置から最も近いオブジェクトを算出。
右斜め後方の放置バイクを掴み、振りかぶって、

「仕方、ありませんね」

不意に。

轟音。

切り裂かれるバイク。
風を纏い迫る斬撃。
爆裂する残骸。

窒素の壁を潜り、肌を裂く、

「っ、ワイヤー……!」

予感はしていた。
前の攻撃で身体そのものにダメージが無かったのは神裂が手加減したのだと。

防壁で速度を殺され爆炎に照らされた斬撃の正体を確かに看破しながら、しかし絹旗は知ってしまった。

コレには、勝てない。

473 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(空)[sage saga] - 2012/01/09 19:53:41.87 L5XT4bVS0 8/15


「フレンダぁっ! B4からD9に今すぐ点火っ!!」

次の行動は速かった。
懐の携帯を最小の動作で同僚に繋ぎ、叫んだ。

やがて、ズ……ン、ドドン、と振動が伝わる。

「……何の真似ですか」

「あなた達も『裏方』なら、人に見られるのは超嫌でしょう?」

大丈夫、身体中にできた傷はそこまで深くない。
挑発的に口の片側を吊り上げ絹旗は告げた。

「辺りで数十箇所爆破しました。保ちますかね? 人払い」

神裂は初めて表情を硬くする。
絹旗は知らないことだが、今回の人払いは重傷のステイルに代わり神裂が構成している。
ルーンのカードを大量に用い枚数が効果と比例するステイルの術式とは異なり、神裂の術式はワイヤーの立体的な形状が要なのだ。

故に――外部衝撃によって壊れやすい。

冷ややかに細まる目。

「ならば、誰かが来るまでに彼女の居場所を話してもらいましょう」

神裂ならばそれは可能だっただろう。
揮うことを好むかは別として、この魔術師の力は途轍もなく強大なのだから。
ただ一つの誤算は意外に早く第三者が現れたこと、ではない。

「きぃーぬはたぁー、仕事に支障は出さないって言ってたよなぁ?」

その第三者がただの「一般人」などではなく、学園都市の誇る超能力者第四位、麦野沈利であったこと。
夏の夜気を存在感だけで打ち払い、「原子崩し」が舞台に立つ。

「ごめんなさい、麦野……」

「まぁ良いわ、行きな。事情は後でゆっくりと聞かせてもらうから」

絹旗は何かに耐えるように眉を顰め、戦場に背を向け走り出す。
その姿は路地の角を折れすぐに見えなくなった。

474 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(空)[sage saga] - 2012/01/09 19:54:14.92 L5XT4bVS0 9/15


「あぁん、日本刀だぁ? 随分ファンキーな格好してるわね」

ゆったりと髪を掻き上げ、麦野は気安く眼前の相手に話し掛けた。

「邪魔を、しないでください」

「はっ、任務外の闖入者にヤられるような雑魚は要らないっつって――切り捨てる程あいつは無能じゃないからね」

今一つ会話が成立しない。
にやにやと嘲り笑う麦野も、体勢に一切の揺らぎが無い神裂も、互いに相手の話など聞いてはいない。

「ほらよぉ、今すぐ尻尾巻いて逃げるんなら命だけは助けてやるけど?」

「生憎私も先程の方に用があるので。あなたと遊んでいる暇はありません」

その一瞬、確かに時は止まり。

「あっそ、じゃあ死ねよ」

簡潔な言葉の割に愉しくて仕方が無いといった表情で――麦野はその能力たる白光を放った。

闘いの空気に触れて初めて、二人の歯車は噛み合う。

475 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(空)[sage saga] - 2012/01/09 19:55:08.80 L5XT4bVS0 10/15


これは戦って良い相手ではない、神裂はそう気付いている。

「オラァっ! ちょこまか逃げてんじゃねぇよ!!」

(この攻撃自体は私の『唯閃』を凌ぐ速さ。ですが……)

暴れ狂う光線を紙一重で避ける。
背後の建物はコンクリートも鉄筋もまとめて崩壊し、おぞましい断面を晒している。
次弾が放たれる方向を読み切り神裂は跳躍した。

(発射に至るまでの溜め、予備動作。高威力のためか隙も大きい)

それでも常人に対応できるものではないが、神裂はいわば超人だ。
身体能力も、反応速度も。
単純に制圧だけが目的なら負けるとは思わない、が。

「少しは楽しませてみろ老け顔がッ! ○○○にブチ込んでイかせてやっからよぉ!!」

「――――っ」

この女は「科学」の粋だ。
先程の少女とは、おそらく都市内での重要度が一桁違う。
ただでさえこちらはアウェー、「魔術」の粋たる神裂が無用に傷付けては軋轢を生んでしまう。

牽制に放った「七閃」を幾重にも分岐した光が迎え撃つ様はまるで光の壁。
ふつりふつりと何本かのワイヤーが切れる感触。

「オイコラ不感症ですってかぁ!? テメェの歳なら更年期障害だろうよッ!!」

まともにはぶつかれない。
無視して素通りできるような相手でもない。

「本当に、仕方ないですね――」

476 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(空)[sage saga] - 2012/01/09 19:55:43.78 L5XT4bVS0 11/15


背後の轟音に追い立てられ、絹旗は駆けている。
爆破の影響か周囲の空気は普段以上に暑い。

「滝壺さん! 任務終了後に超襲撃されました。そちらは!?」

『こっちは何ともないよ。ただインデックスの熱がまた上がってる。きぬはたは平気?』

あの場から距離を取った直後、まずしたのは二人の安否の確認。
こちらに来たのは囮である可能性もあったからだ。

「こちらは……駆けつけた麦野が相対しています」

『――むぎのが』

滝壺の息を呑む音に泣きたくなった。
巻き込んだ、などと言うのは、その身を心配するのは、超能力者である麦野には逆に失礼かもしれない。
しかし敵は学園都市の序列とは別系統に属しているのだ。
絹旗から見て、どちらが強いのかなんて判るはずもない。

体晶で身を削った滝壺。
得体の知れない相手の前に立つ麦野。
フレンダは、――特に無いか。
たった一つの願いのために皆に迷惑を掛けている。

「どうしてこうなっちゃうんですか。インデックスを超助けたいと思うのが、そんなに悪いことですか」

「悪いさ。それが彼女自身の命さえ縮めているんだからね」

誰にともなく吐き出した言葉に、応えたのは炎の魔術師。
瞬間、装甲を纏い空を切るように――、

「僕達にインデックスを渡せ。このままでは、いずれ彼女は死ぬ」

振りかぶった腕は寸前で止まった。

魔術師――ステイルは凶器に等しい拳が迫っても微動だにしなかった。
両腕には松葉杖をついており、表情はごく真剣だが戦闘への気概というものが感じられない。

「……あなたのお仲間がやった傷は超治療しましたが」

勿論その全てがフェイクである可能性は低くないと、絹旗は警戒する。

「そうじゃない。病のようなものだ。治療をしなければ命は無い」

「はっ、それであなた達に任せて、そのまま連れ去られるのを黙って見ていろと?」

ぎりり、と。
ステイルの瞳に怒りが宿り、だがその色は故意に抑圧されたように見えた。

「君は勘違いをしている。僕達は彼女の同僚で、本来彼女を守る立場だ」

どうして話を聞く気になったのか。

「……話しなさい。超手短に。呪文、でしたか、妙なことを呟いたら即座にすり潰します」

魔術師の燃えるような瞳が絹旗ではなく、ここに居ない誰かを射抜くようであったからか。
修道服の少女を「ソレ」ではなく「彼女」と呼んだからか。
拳を至近距離に突き付けたまま促した。

インデックスの抱える悲劇を、絹旗は余すことなく知った。

477 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(空)[sage saga] - 2012/01/09 19:56:46.67 L5XT4bVS0 12/15


一〇万三〇〇〇冊の原典。
脳への負荷。
残された記憶の容量。
思い出の消去。

「……C級ですね。それも考証のなってない超駄作です」

それら全てを聞いて、始めに思ったのは失望だった。

インデックスは、自分達は、こんなことも分からない連中に傷付けられてきたのかと。

「魔術師ってのは、検索窓に単語を打ち込む程度のこともできないんですか。超便利なローテクノロジーの弊害ってやつですかね?」

「何を、言っている?」

眼前の魔術師から急激に高温の殺意が発せられるが、絹旗は怯まない。

「記憶で、人は死にません。後は自分で調べたらどうですか」

「っ、ふざけるな!! 現に彼女は何度も苦しんできた。僕達と居た時も、その前も、ずっと!! あの表情以上の真実なんて有り得ない!!!!」

遂に激昂するステイル。
反比例するように絹旗の体内は冷えていった。
冷静に、冷徹に、――そうだ、これは「怒り」だ。

「えぇ、そうでしょう。そうなるように『上』に超仕込まれたんでしょうね」

「は、何を言って――」

この期に及んで理解できないらしい。
いや、今まで信じていたものがまるで虚構だと言われたら、人はこうなってしまうのだろうか。

「ねぇ。あなたも裏の人間なら解るでしょう。世界を捻じ曲げる知識とそのパートナーを手元に飼うために」

凍れる瞳が炎を撃ち抜く。

「人質を取る。罪を犯させて枷を嵌める。超簡単なことでしょう」

478 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(空)[sage saga] - 2012/01/09 19:57:23.67 L5XT4bVS0 13/15


「そ、れは、」

「それであなたは、またインデックスの記憶を消すんですか」

「あ、僕は……じゃああの時も、」

ステイルは、今まで張り詰めた気配を散らしていた魔術師は、宙を見詰めうわ言のように呟く。
辛うじて立っているが、両の杖に凭れた身体は小刻みに震えている。

(これは、もう駄目ですね)

絹旗は目を細めた。
こんな風になった人間を今まで何度も見てきた。
この底知れない暗部でも、過去に居た研究所でも。

打ち砕かれた芯は戻らない。
自身が追い詰めた魔術師に何の興味も見せず、絹旗は踵を返し、

「――ける」

ばっ、と振り返る。

「助ける! 今度は絶対に消さないっ!! 『期限』が来る前に、必ず軛を解いてやる……!!」

絹旗は目を見開いた。
三〇〇〇度の業火を封じた瞳がぎらぎらと輝いている。
それはどん底に堕ち、全てを諦めた故の開き直りでは決してなく、

「大した気概ですね、――私にも超一枚噛ませなさい」

和やかに手を取り合うことはない。
科学と魔術は静かに視線を交わす。

479 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(空)[sage saga] - 2012/01/09 19:58:37.90 L5XT4bVS0 14/15


ステイル、神裂。
二人はインデックスを愛し、そのために騙された。
挙句何もかも忘れてしまう少女に耐え切れずに敵にまで回った。

(真実、無知は超罪ってやつですよね)

絹旗は声に出さず思考し、そしてふと思い当たる。
知らないことが罪悪なら、一〇万三〇〇〇もの知識を詰め込まれたインデックスはその対極だ。
救われるべき、全き無垢。

「……ねぇ。必ず地獄から追い出してあげますよ、インデックス」

480 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(空)[sage saga] - 2012/01/09 19:59:08.24 L5XT4bVS0 15/15

以上です

>>423 戦闘力的にも年の功的にも釣り合うのは麦野しかいなかったです
おや? 誰か来たようだ

読んでくれた人ありが/とう!