501 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(島根県)[sage saga] - 2012/01/10 21:26:27.25 ViNEiYx3o 1/5

4レス程いただきます
通行止めです



「ねぇあなた、学校ってどんなところ?」

「何だ急に」

「急にっていうかずっと気になってるの。同じ年の子たちが同じ所に集まって何するの?」

「そりゃ勉強だろ。つーかオマエの頭ン中にも学校がどンなもンかインストールされてンじゃねェのか?」

「うん、一般常識レベルではね。でも知識だけ持ってるのとそこにいたことがあるのじゃ全然違うはずだよ」

「いたっつってもオレは能力が発現して以来研究所をたらい回しだからな。ろくに覚えてねェ」

「でもちょっとはいたんでしょ?あなたに限って忘れてるなんてことないんじゃないってミサカはミサカはあなたの記憶力に全幅の信頼を寄せてみる」

打ち止めの言葉に一方通行は鼻を鳴らす。
それは、確かにそう。思い出そうとすればきっと浮かんでくるはずの記憶たち。

今まで思い出すことをしなかったのはなぜだろう、なんて考えるまでもない。

きっと、あの日すべてが変わってしまったから。
普通の少年が引き起こした災害。
先ほどまで遊んでいたクラスメイト達の視線。
もうそちら側に帰ることは決してできないのだと悟ったあの日。
だから少年はもう振り返ることをやめたのだ。

それなのに、目の前の少女の声は一方通行と呼ばれる前の少年の記憶を解きほぐそうとする。

「ねぇ、学校の七不思議ってあった?」

元スレ
▽【禁書目録】「とあるシリーズSS総合スレ」-35冊目-【超電磁砲】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1324178112/
502 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(島根県)[sage saga] - 2012/01/10 21:26:57.07 ViNEiYx3o 2/5

「七不思議ィ?そンな話は夏にしろ」

「あなたにもそういう季節感あったのねってミサカはミサカは地味に驚いてみる」

「ほっとけ」

「で、七不思議。学校なら必ずあるってミサカは学習装置にインストールされてるんだから。あなたの学校のはどんなだったの?」

「あったかどォかも覚えてねェ。忘れた」

「またまた」

「つかなンで七不思議なンだ。それ以前に色々あるだろォが」

「朝のテレビで学校の怪談やってたの。ほわほわほわほわ~♪」

「すぐ影響されやがって。オレは」

「トイレの花子さん」

「む」

「あ、今反応したでしょ!?やっぱり覚えてるんだ!」

「うるせェメチャクチャ有名どころだろォが。誰だって反応する」

「えー?だってあなただよ?」

「なンか引っかかる言い方だな」

「夜中に動く二宮金次郎!」

「今どきねェよ」

「ほら知ってるじゃない。ミサカあなたのお話聞きたい。
あなたの学校の七不思議は、何だった?」

少女の星を宿した目は一方通行をとらえて離す気がないらしい。
話そうが話すまいがしばらくはこのままなのだ、なら体力の消耗がやさしい方を選ぼう。
遠い記憶も、少女と一緒なら。

503 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(島根県)[sage saga] - 2012/01/10 21:28:53.34 ViNEiYx3o 3/5

1. トイレの花子さん

「超定番だよねってミサカはミサカはまずはこれ!」

「あー」

「いきなりだるそうねあなた。ミサカの学習した知識によるとすっごいたくさんパターンがあって、学校ごとにアレンジされているとのことだけど」

「一体どォいう期待があってその知識は導入されたンだろォな?
はァ。花子さン、ねェ」

「ドアを三回ノックしてはーなこさん、とかやらなかった?」

「面倒くせェやらねェよ。つか花子さンってことは女子トイレだろ。オレがやろォとした時点で悲鳴が上がるわ」

「女子トイレに侵入するあなた・・・!」

「やめろ想像すンな」

「そうかぁたしかに女の子の怪談なのかもってミサカはミサカは出だしからしょんぼりしてみたり」

「あー、そォいや女子がなンかこそこそやってたことがあったなァ」

「ほんと!?」

打ち止めの言葉のいくつかが鍵となり、一方通行の意識の表に浮かび上がるものがある。
最初に思い出すのがトイレかよと呆れつつ、記憶の紐を手繰り寄せる。


504 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(島根県)[sage saga] - 2012/01/10 21:31:53.90 ViNEiYx3o 4/5

「みきちゃんがやってよぉ」

「やだよぉかなちゃんがやってみてよ」

「じゃんけんできめようよ」

こそこそこそ。内緒のささやき声が空間を震わせる。
そこは女子トイレの手洗い場。
学校という一種の異界の中にあって、さらに異界につながる場所。

「おくから二ばん目のドアだよ」

「三回ノックして」

「はーな」

「まだだめ!」

「ノックしてないし平気だよ」

「じゃんけんまけたのえりちゃんだよ」

「わかってる」

こそこそこそこそ。
執り行われる少女たちの儀式。女子トイレにだけ現れる女の子にコンタクトをとるための、簡単なおなじない。
それは彼女たちだけの秘密のはずだった。
けれどそこに行きあってしまった少年が一人。
そのトイレは一階の、生徒たちが共通で世話をする畑に面していた。
畑を見る当番だった少年は、竹ぼうきをもったままトイレの壁際に突っ立っていた。

(どうしよう)

少女たちはだれがノックするのか決めたらしい。
もうすぐ奥から二番目のドアを叩くのだろう。
その返事があるのかないのか、足が縫いつけられたように少年の足は動かない。
少女たちの秘め事に立ち会ってしまった。

コン

とてもいけないことをしているという罪の意識、早く逃げなければいけないと言う焦燥感。
けれど聞きたい。本当に返事が来るのかたしかめたい。

コン

ないならないで構わない。ただ最後まで

コン

返事は

「はーなこさん」

***

「・・・え?」

「ここまでだ」

「えー!?何それ途中じゃない!最後どうしたの?花子さんお返事したの?」

「さァ忘れましたねェ」

「そこまで思い出してそんなわけないじゃない!ねえどうなったの!」

「さァなァ。また思い出したら話してやるよ」

「もー!」





***

「はーい」




505 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(島根県)[sage] - 2012/01/10 21:32:56.88 ViNEiYx3o 5/5

以上です

お目汚し失礼しました