763 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga] - 2012/01/24 02:38:31.88 2nBZ2gH0o 1/12

10レス程お借りします。

・PSP『とある魔術の禁書目録』麦野沈利編を補完する再構成ものです。ネタバレ満載のため注意。
・ストーリーの流れ、台詞は基本的にはPSPのものとほぼ同一です。
・暴力描写有り、麦野が救いようの無い外道で胸糞悪い話だと思いますので一応閲覧注意です

元スレ
▽【禁書目録】「とあるシリーズSS総合スレ」-35冊目-【超電磁砲】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1324178112/
764 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga] - 2012/01/24 02:39:45.16 2nBZ2gH0o 2/12


??「――悪い話じゃないはずだ。テメェは頭の上にのしかかってる、面倒臭ぇ超能力者(レベル5)をまとめて排除するチャンスに恵まれる」


空は快晴。
澄み切った空気が科学の街を通り過ぎていく。学生たちは各々の学校にて眠気と戦いながら午後の授業へと臨んでいる時間。
麦野沈利は第七学区の街並みが見渡せるビルの一室に呼び出され、部屋に入るなりいきなりそう告げられた。
右手にマイクロマニピュレータ搭載のグローブを付け、顔に刺青の入ったどう見ても堅気ではないその男の言葉に、麦野は眉一つ動かさずにソファにどっかりと座りこむ。

それは麦野が暇を持て余していた午前中の出来事。
珍しく学校に行ってしまった仕事仲間達に悪態をつきながら麦野は一人いつものファミレスでコーヒーを飲んでいた。
そこに突如鳴り響く見知らぬ番号。
プレイベートで鳴ることの無い携帯に、辺りを見渡して警戒を怠らずに電話に出た。

電話口に出た男の声に、麦野は聴き覚えがあった。
体中を駆け抜ける嫌悪感と憤怒。その男は、麦野が大嫌いな能力開発研究者。
その中でもとりわけ黒い噂の絶えない、悪党と称するにこれ以上無い程相応しい男だった。
彼は暇なら仕事を紹介してやると言った。
報酬も悪くない。おまけに、部屋に入った時確認するように告げたその言葉通り、麦野を学園都市の頂点に君臨させてやると彼は告げたのだ。

もちろん麦野は何一つ信じてなどいなかった。
ロクに会話したことも無い赤の他人。ましてや間違いなく暗部の人間である男の言葉を額面通り受け取るなど愚の骨頂。
しかしそれでも麦野はその話少しばかりの興味をそそられた。


麦野「そっちのメリットは?」


たっぷりと間を開けて麦野が問いを返す。
男は優秀な研究者だった。
学園都市第一位の能力開発を始め、その分野で多くの功績をあげてきた天才と称される人物。
年齢は麦野の二回りほど上であったが、ギラつく野心が彼を必要以上に若く見せていた。
だから麦野は、少しだけ話を聞いてみてもいいかという気になった。
暗部の下っ端達のような馬鹿の相手は疲れるが、この男の話はある意味では実に生産的だ。
何より己の利益と欲望に忠実なあたりはそれなりの好感がもてた。

麦野は最近暗部入りした下っ端構成員『浜面仕上』のことを思い出す。
あれも馬鹿っぽい男だが、それよりも麦野は彼が同じく『アイテム』構成員である『滝壺理后』と仲良くなっていることがひどく気に食わなかった。
そんな鬱憤が日々溜まっているので、ストレス解消の場所を提供してくれるかもしれないというのが、ここを訪れた一番の理由だった。


木原「ちょいと『実験』を試してみたいんだが、生憎と普通の機材じゃ糸口が見えねぇ」


その男。木原数多は白衣のポケットに両手を突っ込み、ソファに座る麦野を嘲るように言い放った。
こちらを利用する気まんまんとでも言いたげに。
だがそれはそもそも初めから折込済だ。
麦野の持つ『原子崩し』の力を利用させてやる代わりに、彼が一体金以外の何を提供してくれるのか、試すように麦野が木原の鋭い瞳を睨みつけた。


木原「特殊な能力者とやらを確保する必要に迫られたって訳だ」


やがて帰ってきた答えは思ったよりはつまらないものだった。
能力者確保のための戦力。
もっと壮大で悪辣な、麦野の嗜虐心をくすぐるようなことを期待していたのに。


麦野「で、私一人に全部やれって?」


ふわふわの髪をかきあげながら、麦野が軽い調子で返す。


木原「いやぁ、面白いモンに横槍入れて小間使いを手に入れてるよ」


そう言って木原は、麦野が入ってきたドアの方を顎でしゃくり上げた


「……」


そこには音も無く。一人の少女が佇んでいた。
短い髪に、学園都市有数の名門校である常盤台中学の制服を来た彼女の顔を見て、麦野の眉間に深く皺が寄せられる。
虚ろな瞳で空を見つめ、力の入っていない顔つきはまるで壊れたロボットのようだった。

765 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga] - 2012/01/24 02:41:15.76 2nBZ2gH0o 3/12


木原「性能的にテメェと吊り合うかは疑問だが、この俺が操ってんだ。
    サポートくらいにはなるだろ」


木原の声を聴きながら麦野はソファから立ち上がり、チョコレート色のパンプスのヒールを打ち鳴らしながら少女の元へと歩み寄り、顎を指先で持ち上げて真っ直ぐに見据える。
感情の無い眼球に、獣の目をした自分が残酷に笑っているのが映っている。


麦野「まあ良い。乗ってやるよ
    いい加減に第四位とか、半端な数字にも飽きていたところだしね」


麦野はその少女の姿を見て、彼の実験の手伝いとやらに協力することを決めた。
理由はとても単純なことだった。
彼が用意したこの『人形』。
それは、麦野にとってこの世で最も殺したい人間の一人である学園都市第三位『御坂美琴』とあまりにも酷似していたからだった。


麦野「んでね、それはいいんだけど。ちょっとこのお人形と二人きりにしてくんない?」


いつだったか、御坂美琴と交戦した際に彼女のクローンが存在していることを知った。
あの日から、ずっと思っていたのだ――


木原「あ? 何で」

麦野「主従関係を叩き込むために調教してやんなくちゃねぇ」



――御坂美琴を二万回も殺せるなんて


   なんと素敵なことなんだろう


舌なめずりをしながら麦野が御坂にそっくりな少女の髪を乱暴に掴んで同じ目線まで引き上げる。
ゾクゾクとした感覚が背中を這い上がって来た。
あの忌々しい第三位と同じ顔の女を、自由に出来るというその事実だけで異様な興奮を覚える。
見れば見るほど腹立たしく、そしてブチ壊してやりたくなってくるのだった。


木原「それなら心配いらねえよ。支配系統から完全に独立させてある。
    遠隔操作で上位個体が介入してくることもねぇし、もちろんこいつに個人の意思はほとんど無い。
    テメェがいちからお手やらお座りを教え込まなくたって何も問題ねぇってわけだ」

麦野「ちげぇよ」

木原「あ?」


麦野の楽しそうな顔に、木原は面倒くさそうに首を傾げてこちらに歩み寄ってきた。
せっかく手に入れて調整した人形を、何もさせないまま壊されたく無いのだろうか、こちらへの非難の色が瞳に宿っていた。


木原「どう扱おうがテメェの勝手だが、そいつを壊したら一人でやってもらうぞ。
    一個体あたりの価格は大したこたねえが、調整に結構な時間と金を注ぎ込んでる。
    まあ俺の金じゃあねえからどうだっていいが、貴重な時間分は働いてもらわなくちゃなんねえ。
    特に上位個体からの干渉を妨害するのには苦労したんだぜ?
    ネットワークから切り離したらただのデクの棒だからな。
    得られる最低限の恩恵は維持しつつも、不要な干渉を全てカットするには一からプログラムを組んで学習させにゃならん。
    俺の苦労を鑑みちゃくれねぇかな、ええ? 麦野さんよぉ」

麦野「ごちゃごちゃうるせえよ。これは何だ? 私へのあてつけかぁ?
    この私の前に、あのクソ第三位の面を突き出しゃこうなるって、想像しなかったとは言わせないわ……よ!」

御坂妹「ぐっ!」


麦野の長い脚が膝から少女の腹部に叩き込まれる。
鈍い声と共に少女は腹を抑えてカーペットの敷かれた床に膝から崩れ落ちた。

766 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga] - 2012/01/24 02:42:32.89 2nBZ2gH0o 4/12


麦野「へえ、人形でも痛みは感じるんだねー。
    血の色は赤いのかにゃーん? どれどれ、確認確認っと」

御坂妹「ぶぐっ!」


追い打ちをかけるように麦野は少女の頭を思い切りヒールで踏みつける。
鼻から床に叩きつけられ、少女の鼻血がカーペットにシミを作っていった。


麦野「ありゃ、真っ赤だねぇ。
    おい。こいつ命令は何でも聞くの?」


血を流して呻く少女を満足げに見下ろして、麦野は木原に問いかける。


木原「ああ、一応な」

麦野「一応?」


曖昧を嫌う科学者の木原にしては適当な返事に、麦野が機嫌悪く問い返す。


木原「不可能なことはできねぇってことだ。
    例えば、空を飛べって言ったって出来る訳がねえからやらない。
    ここはビルの20階だが、こっから跳んで死ねっつったら飛ぶ。
    その程度だ。
    あとは基本的には俺の命令しか聞かねえように出来てるが、まあテメェが遊びてぇって言うならそのくらいの微調整はしてやるよ」

麦野「なるほどね。おい人形」

御坂妹「はい、とミサカは素直に返事をします」


うめき声をあげていた少女が、機械の様な淡々とした声で立ち上がり、麦野を真っ直ぐに見つめる。
形の良い鼻から垂れ流された痛々しい鼻血をふき取ろうとする様子もなく、ポタポタと床にシミを作っていくのを見て麦野は途轍もない優越感に浸った。


麦野「靴を舐めろ」

御坂妹「了解しました、とミサカは床に跪いて麦野沈利の靴に舌を這わせます」


床に跪き、少女は麦野のパンプスに何のためらいもなく下を這わせ始めた。
ピチャピチャという水音を立てながら、一心不乱に犬のように靴を舐めまわす少女を見ていると、麦野の全身が異様な熱を帯びてきた。
相手を屈服させることの興奮。それも相手は唾棄すべき対象たる御坂美琴である。
不要になったら是非こいつをもらおうと麦野は決意した。
グチャグチャの肉塊になるまで、苛めて虐めていじめ抜く。


麦野「くくくっ……御坂美琴と同じ面の女をオモチャに出来るってのは気持ちいいねー。
    サンドバック丁度欲しかったんだよね。興奮してきた」

木原「女の恨みってのは怖ぇな。本人じゃねえのによ」

麦野「関係ねえよ。私の気分が晴れるならそれでいい。
    遺伝子レベルで一緒なら似たようなもんじゃない。
    っていうか、この後第三位もブチ殺していいんでしょ?」


そしてさらに麦野は餌をぶら下げられていることを期待する。
偽物の人形でこの興奮だ。
本物の御坂美琴を好きに出来ると言われたら、想像しただけで絶頂。
考え得る最悪を行使して、御坂美琴を辱めたい。
自分を打ち負かし、コケにした女に最大級の屈辱を与えたい。
麦野の頭には今それしかなかった。


木原「俺の実験に使えないなら、靴でもクソでも好きなだけ舐めさせてかまわねえよ」


そして木原は、口元を歪めて麦野の期待通りの答えを言い放った。


767 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga] - 2012/01/24 02:43:48.06 2nBZ2gH0o 5/12

――――

一頻り人形遊びに興じた麦野は、木原と三人で街へ繰り出した。
彼によれば、一応順序というものがあるらしい。
人気の少ない夕方のビル街で、先を歩く木原の背中に髪の毛先をいじりながら適当に問いかけた。


麦野「んで、最初はどうすんの?」

木原「まずは一つ厄介な邪魔者がいる。そいつの始末が先だ。
    お偉いさん方には手を出すなって言われてるけどな、これまでの戦歴を考えると潰しておかにゃまずい相手だ」


木原数多が厄介な敵と断定するほどの相手だ。
おまけに学園都市のトップが手を出すなと釘をさすだけの重要人物。
どんな相手なのか、麦野は少しだけ興味が沸いた。


麦野「へえ?」

木原「絶対能力進化計画の妨害、度重なる学園都市への侵入者の排除。
    テメェも聞いたことくらいはあるだろ? 『あちらサイド』を相手に真正面から喧嘩売った馬鹿だ」


第一位が無能力者に負けたという話は麦野も聞いたことがある。
そして科学とは別の理論を持つ他の勢力についても。
だが実際に目の当たりにしたことは無かった。
今から相手にするのは『そちら側』の人間だということなのだろうか。


麦野「ビビってんのかよ」


嘲笑うように告げる。
麦野にはだからどうしたと吐き捨てる程度の些末事だった。
単純に考えれば『こちら側』と『あちら側』が拮抗を保つ程度の間柄だということは、『こちら側』の戦力の頂点である麦野が、
『あちら側』の頂点と渡り合えない道理は無い。
とは言え、勝てる根拠もなく動く程木原は愚かではない。
麦野にとってその言葉は単なる軽口以上の意味は無かった。


木原「はっ、褒めてんだよ。アレイスターすらわざわざ顔を覚えているような奴だ。
    逆に言えばそいつをブチ殺せばこの街にとって面白ぇ事が起こるはずだからな」

麦野「アレイスターのクソ野郎に恨まれるわよ」

木原「だから?」


木原は愉快そうに顔を歪めた。
ちなみに、木原がリーダーとなっている暗部組織『猟犬部隊』を既に斥候として送り出しているらしかった。どうやらこの辺りにいるのか、木原は立ち止まった。


木原「にしてもよぉ。何だって犬っころみてぇに歩かせてんだ? あんまり無茶させるといざ戦闘になった時に役に立たなくなるんじゃねぇ?」


麦野はチラリと後ろを見やる。
命令できっちり3歩後ろを四つん這いになって歩いてくる御坂人形は、やはり戦力として導入されているようだ。
前もって聞いた性能ではレベル3程度らしいが、そんなものが本当に役に立つのだろうか。


麦野「こいつの性能なんざハナっからアテにしてねぇんだよ。
    特に操ってるのがテメェだってんだから、後ろから引き金引かれても困るしね」

木原「信用ねえなあ。安心しとけ、少なくとも実験の目途が立つまでは何もしねえからよ。
    警戒すんのはそれからでも遅くねえぞ? 俺はこう見えても義理堅い男なんだ」

麦野「お構いなく。半分は趣味だから。
    オラッ、人形! もたもたしてんじゃねえぞ。歩き疲れたから椅子になれよ」

御坂妹「了解しました、とミサカは甲斐甲斐しく麦野沈利のお尻の下で四つん這いのまま硬直します」


麦野の背後で椅子代わりに止まった人形に、麦野はわざと勢いよく飛び乗る。
麦野の体重は女性としても平均的な50キロ弱。
それがか細い腕の少女の上に跳びかかるように座り込んだのだから、腕への負荷は結構なものだろう。
プルプルと腕を震わせている人形を見て、麦野は目を細めて微笑んだ。

769 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga] - 2012/01/24 02:46:43.27 2nBZ2gH0o 6/12


木原「そっちのケでもあんのかよテメェは」

麦野「ええ、今目覚めそうだ。私が男だったら犯したりしてもいいんだけどねぇ」

木原「マグロ犯って何が面白ぇんだ?」

麦野「違い無いわ。ねえ人形、お前レイプされたらどんな気持ちになるの?」

御坂妹「命令なら従います、とミサカは当然の言葉を口にします」


麦野を背中に載せたまま、人形は震える腕と声でそう答えた。


麦野「はっ、こりゃつまんねえわ。私のサンドバック以外の役にゃ立ちそうもないわね」


呆れたように麦野が息を吐く。
ふと木原を見上げると彼は口元に邪悪な笑みを湛えて、夕焼けを背に歩いてくる二人の人影を見据えていた。


麦野「お出ましってわけ?」

木原「ああ」


麦野は仕事が始まると踏んで、人形の背から立ち上がる。
続いて人形も立ち上がろうとするが。


麦野「誰が立っていいっつったんだ? 豚らしく地面でも舐めてろ」

御坂妹「……」


麦野の制止で再び四つん這いの状態に戻り、硬いアスファルトに舌を這わせる御坂人形。
むき出しの膝は既に擦りむけ、痛々しく血が滲んでいるのを確認して麦野が笑う。


土御門「……木原。お前何でここに」


現れたのは二人の少年だった。
そのうちの一人、金髪にサングラスをかけたアロハシャツの少年、土御門元春が驚いた様にそう言った。


木原「ああ、まあ何だ。テメェらが目障りだから殺しとくかと思ってな」

麦野「何? っつかどっちが例の相手?」

木原「黒い方だ」

麦野「ふぅん、こっちがねぇ」


麦野が肩をコキコキと鳴らしながら一歩前に歩み出た。
その時、もう一人の黒髪の少年、上条当麻が後ろで四つん這いのまま微動だにしない人形に声をかける。


上条「御坂妹? どうしてそんな奴らと一緒にいるんだ!?」

御坂妹「……」


呼びかけられても返事をしない御坂人形こと御坂妹。


麦野「ダメダメ。このおっさんの言葉以外、聞く耳持たないみたいよ?」


どうやら知り合いのようだが、残念ながら彼女にはもうマトモな感情など残されてはいない。
もっとも、初めから感情などあったのかは定かではないが。
状況がいまいち飲み込めていない様子の上条だったが、さすがは第一位を倒しいくつもの戦いを乗り越えてきたと言われるだけのことはある、
すぐに闘志を漲らせ、戦いに踏み切る覚悟を決めた鋭い目つきに変わった。


上条「ちくしょう、操られてるってのか」

770 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga] - 2012/01/24 02:48:07.25 2nBZ2gH0o 7/12


悔しさが顔に滲む。
それ見て麦野は滾った。相手がこちらに向ける怒りや憎しみ、哀しみといった負の感情。
悔しそうに歪む顔つきが、麦野の嗜虐心をこれでもかと刺激する。
もっともっとその顔を、苦痛に歪めてやりたいと思った。


土御門「そいつを誘ったのは『0次元の極点』のためか?」

麦野「?」


すると、未だに冷静さを失わない土御門が聞き慣れない言葉を口にした。
首を傾げる麦野を無視して木原が鼻で笑い飛ばしながら応えを返す。


木原「生憎と手持の工具箱じゃ、1次元の壁は破れないらしくてな。
    ちょいと心当たりのあるトコへご相談に行きたい訳だ」

土御門「させると思うか?」


土御門の声色が変わった。
何かは知らないが、色々と彼らにとって都合が悪い事であるらしい。
ビリビリと張りつめていく空気の中、木原はポケットに突っ込んだ手を出す事無く歪んだ笑顔を浮かべた。


木原「こっちも言わせてもらおうか。
    反抗なんざ、させると思うか?」


その言葉と同時に、麦野が演算を開始する。
こいつらは実験材料ではない。つまり、再現不可能な醜い肉塊に変えたとて何の問題も無い訳だ。
次の瞬間迸る一条の閃光。
それを避けるように左右にそれぞれ跳んだ上条と土御門。
懐から銃を取り出した土御門と、拳を握る上条がこちらを射殺すように捉えた。


麦野「まずはテメェだ金髪っ! ドテっ腹の風通し良くしてやんよぉ!」


好きな食べ物はあとからゆっくり美味しくいただくのが麦野流。
まずはいらない副菜から平らげる。
さらに光球を周囲に四つ程浮かべ、そこから一斉に粒機波形高速砲を解き放つ。
同時に襲う四条の光の槍が、容赦なく土御門へ向けて放たれたその時だ。


上条「土御門!」


上条が麦野と土御門の射線上に割り込み、右手を電子線にかざした。

――パキッ……ンッッ!!

ガラスの割れるような音と共に、麦野の光がかき消える。


麦野「!?」


不可思議な現象だった。
原子崩しは電子の壁を高速で叩きつけるようなもの。
射程範囲内で障害物にぶつかったからといって消滅したりはしない。


木原「ほーう。それが噂の幻想殺しちゃんかよ。おい人形、仕事だ、テメェもやれ」

麦野「ゴラァッ! 邪魔すんじゃねぇええええ!!!」

木原「麦野、人形、そいつの右手は異能を打ち消す。面白ぇから右手だけは残せ」

御坂「了解しました、とミサカは状況を開始することをここに宣言します」


御坂妹は携えていたカバンからライフルを取り出して構える。


771 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga] - 2012/01/24 02:49:28.83 2nBZ2gH0o 8/12


上条「止めろ! 御坂妹!」

土御門「カミやん! 右だ!」

上条「なっ……にっ!?」


上条当麻は心優しい少年だった。
いくら戦いの覚悟を決めても、顔見知りの、それも操られていると分かっている女の子を殴り飛ばすなんてことは出来ない。
そして麦野は、今の彼の叫びでそれを確信した。
躊躇いなく上条の懐へ飛び込み顎に掌底を叩き込む。
グラついた彼の身体を打ち崩すように、さらに麦野は膝蹴りで思い切り鳩尾を抉った。


上条「ぐ……がぁっ!」

麦野「超能力者は殴り合いなんてしねぇって思ってねえか?! ああっ!?」


吐しゃ物を撒き散らして地面に蹲る上条。
その顔面を黄色いストッキングで覆われた足で蹴りあげると、彼の前歯ば綺麗な放物線を描いて宙を舞った。


上条「ぐぼぁっ!!」

土御門「上や……!?」


渇いた音が鳴る。
土御門が引き金を引く瞬間。ほんの一瞬だけ早く彼の脳天に風穴が空いた。
御坂妹の手にした銃から放たれたものだ。
ピチャピチャと飛ぶ赤い飛沫が舗装された地面を濡らし、サングラスの下の瞳から光が消えていく。


土御門「木原……、貴様、『0次元の極点』を……」

上条「土御……門」


地に伏せて絶句する上条。
余韻を残すかのような仲間の死が彼の思考能力を奪い取る。
そして


麦野「ギャハハハハハッ!」


そんな隙を、麦野が見逃す筈がない。


麦野「余裕だなオイ。死ねよ」

上条「がはっ……! ちくしょう、俺はこんなところで倒れるのか……」

麦野「ゲームオーバーだよ。ヒーロー気取りのクソ野郎」


麦野は上条の頭をもう一度踏みつぶし、御坂妹に目配せ。
命令に逆らわない御坂妹は。
きっと恩人だった彼の脳天を容赦なく貫いた。


772 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga] - 2012/01/24 02:51:05.52 2nBZ2gH0o 9/12

―――――

麦野「終わったわよん。何これ。全然張り合いないじゃん」


麦野は髪をクルクルと弄びながら、『念のため』土御門の死体を穴だらけにして生ごみへと作り変える。
その横を通り抜け、木原が絶命した上条当麻の死体を靴のつま先で小突きながら愉快そうに嗤った。


木原「おーおー、ヒーローちゃんが一番最初に死んじまって良いのかよ?
    これじゃあ、ここから先は真っ暗闇だぜぇ?」

麦野「ほんとにこれが第一位の実験を妨害したの? ただのガキじゃん」

木原「殺しのコツは相手に覚悟をさせねぇことだ。準備も含めてな。
    心構えも何も無いうちに、速やかにぶっ殺しちまえば案外こんなもんよ。
    ここは超能力者の街だがよ、テメェらみたいな一部の化け物を除きゃ銃弾に勝てる人間なんていねぇ」


そう言って木原はマイクロマニピュレータと手持のノートパソコンを操作しながら上条の死体にいくつかのコードを着け始めた。


麦野「ちょっと。人来るんじゃない?」

木原「封鎖させてるから問題ねぇ。
    それに、肉が新鮮なうちに調べとかねえと、せっかくの検体が勿体ねえだろ」


見たところ学生のようだし、戦い慣れてはいても24時間警戒状態でいられる人間などそうそういないと言っていい。
学園都市の能力者の中には銃弾で殺せない人間もいるにはいるが、そんなものは上位のごく僅かだ。
木原が散歩気分で出かけたのには、きっと負けることなど微塵も考えなかったからに他ならないだろう。


麦野「あ、そだ。なあ人形。お前こいつの知り合い?」


上条の死体をじっと見つめていた御坂妹に、麦野が何気なく問いかけた。


御坂妹「はい。上条当麻はミサカ達を救ってくれた恩人です、とミサカは自らの行動に矛盾を感じながらも他意なく答えます」

麦野「あー、そっかそっか。ってことは第三位を救ったってのはこいつのことなのね。
    ……それだけ?」


大恩人を自らの手にかけた気分はどうだろうかと尋ねたかったが、よくよく考えれば強姦されても命令なら従うとまで言った筋金入りのお人形だ。
感情なんて無いだろうから、麦野は特に期待もせずもう少し訊いてみる。


御坂妹「これをプレゼントしてもらいました、とミサカはもう見られない彼の笑顔を思い出しながら見せびらかします」


そう言って胸元から取り出したのオープンハートの可愛らしいネックレスだった。
安もののようだが、この様子ではかなり大切にしていたようで、ピカピカに磨かれて夕日を反射している。
麦野はそれをそっと手に取りマジマジと見つめた。


麦野「ふぅん、まさか恋人とか?」


それならばもう少し別のいたぶり方もあったなとちょっとだけ悔しくなる。
最愛の恋人が辱められる姿など、実に麦野好みのシチュエーションなのに。


御坂妹「いえ。残念ながらそうではありません、とミサカは忌々しげに歯噛みします」

麦野「じゃこれちょうだい」

御坂妹「あっ……」


麦野は邪悪に微笑んだまま、その細い鎖を引きちぎって奪い取った。
もちろんこんな安物のネックレスが欲しかったのではない。
そうすることによって見られる、御坂美琴と同じ顔をした御坂妹の表情の変化が見たかったのだ。


麦野「へえ、綺麗じゃん。いくらしたの?」

御坂妹「税込一〇〇〇円です。しかしこういった贈り物は値段では無く、また麦野沈利にはもっと高価なものが似合うのでは? とミサカは暗に返却を訴えます」

773 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga] - 2012/01/24 02:52:19.32 2nBZ2gH0o 10/12


麦野「返して欲しい?」


千切れたチェーンを持って、御坂妹の眼前でプラプラさせながら麦野は意地悪く笑う。


御坂妹「はい。とミサカは」

麦野「ヤダ」

御坂妹「!?」


原子崩しを発動。
消滅する思い出のオープンハートのネックレス。
チャラリと地面に落とされたチェーンの残骸を、麦野は愉快そうに踏みつけた。
それを見つめる御坂妹の表情には、明らかに先程までとは違う色が見て取れた。
かけがいの無いものをブチ壊す。
その瞬間の絶望的な表情。
麦野は絶頂に震える体を抱き締めて強く奥歯を噛みしめ笑い声をあげた。


麦野「アハハハハハハハハハハッッ!!
    ごめんごめん。手が滑った。弁償するよ」


同じものを用意することに何の意味も無いことを分かっていてなお麦野はそう提案する。
返ってくる答えなど分かっているのに。


御坂妹「……結構です、とミサカは彼にもらったネックレスでなければ意味が無いことを伝えます」

麦野「ああ? 何か文句でもあんの?」

御坂妹「ありません、とミサカは麦野沈利を非難するつもりが無いことをアピールします」


逆らうことが出来ないとは哀れなものだ。
だがだからこそ虐めがいがある。
もっともっと、素敵な絶望が見たい。
彼女達に感情が無いなんて真っ赤な嘘だ。
そもそも木原は最初からそんなこと言ってないのだから、勝手に麦野が思っていただけなのだが、
とにかく起伏には乏しいが、哀しみもするし怒りもする。
普通なら今頃、腸の煮えくり返るような想いか、もしくは絶望感に言葉もないと言ったところだろう。
果たして彼女は何を思うのか。
御坂妹の単調な表情でも、それを考えれば実に愉快な顔に見えてきた。


木原「よし。あらかたデータは取り終わった。おい原子崩し、こいつの右腕切り取ってくれ」

麦野「ちっ、めんどくさいわねえ。私は雑用じゃないんですけど?」


木原に呼ばれ、麦野は頭をかきながら気だるそうにそちらに歩いていく。
麦野の足で踏みつけられたネックレスの残骸を人形が拾っていたことに、麦野は気づかなかった。


木原「そう言うな。こいつは色々と利用できる。手早く終わらせるためには重要なことだろ。
    まあテメェが代わりに汗水垂らして頑張ってくれるってんなら話は別だがな、どうするよ?」

麦野「分かった分かった。分かったわよ。ごちゃごちゃうっさい男ねぇ。オラ」


原子崩しを使い、上条当麻の特殊な右腕を一瞬で切断する。
能力を打ち消されるのではと思ったが、首付近から切り取ってやれば問題なく断ち切れた。
一応止血し、それを布で包む木原に、麦野は一つの疑問を思い出して問いかけた。

774 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga] - 2012/01/24 02:53:05.97 2nBZ2gH0o 11/12


麦野「おい、『0次元の極点』て何よ?」

木原「いずれ教えてやるよ。この俺が興味を持つくらいには愉快なもんだ」


そう言って笑った木原の歪んだ笑みが、真っ直ぐに麦野に向けられていたことの意味を、麦野はまだ気づけなかった。


麦野「あ、そだ。ねえ人形」

御坂妹「……?」


麦野は極めて気分がよかった。表情は満面の笑み。
艶やかな美貌と少女のあどけなさを残す、無邪気で残酷な笑顔。
首を傾げる御坂妹の表情が、次の瞬間にまた変化することを考えるだけで、とてもとても清々しい。
丁度今日みたいに、快晴の空のような晴れ晴れとした気分だ。




麦野「これの首、常盤台の寮に投げ込んでこいよ」




だからこの良き日に麦野は、もっともっと『彼女たち』が苦しむ顔が見たくなったのだ。


775 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga] - 2012/01/24 02:54:57.09 2nBZ2gH0o 12/12

以上です。続きもある程度は書き溜めてますが聖人倒そうとすると無理が出てくるのでとりあえずここまでで。
PSPのストーリーが淡々としてるけど実は結構恐ろしい内容なので補完してみたくなって書きました。
それではお目汚し失礼しました。