969 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[saga] - 2012/02/04 21:59:34.65 95jknnaq0 1/11

埋めがわりに>>946の続きを10レスほど落としていきますよ
相変わらずステイルが誰コレ珍百景状態なのでそのへん注意

当方に迎撃の用意なし
http://toaruss.blog.jp/archives/1041526912.html

元スレ
▽【禁書目録】「とあるシリーズSS総合スレ」-35冊目-【超電磁砲】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1324178112/
970 : 当方は迎撃の準備中[saga] - 2012/02/04 22:01:32.66 95jknnaq0 2/11


学園都市第七学区、とある学生寮からそう遠くない路上。
上条当麻は手ごろなベンチに腰掛けて、なんとなしに空を泳ぐ白雲をぼうっと眺めていた。


(……そろそろ十分たったかな)


上条はダウンのポケットから携帯電話を取り出して時間を確かめる。
急な来訪者とインデックスの対話の時間を邪魔するまいと、自室を足早に去ってから九分が経過していた。
軽く伸びをして立ち上がると、慣れ親しんだ家路につくべく腰を上げる。


「やあ」


その時、素っ気ない低い声が上条の耳に届いた。
やけに高所から聞こえた声音の発生源に目をやる。
するとそこには案の定、ステイル=マグヌスが無表情で佇んでいた。


「もういいのか?」

「ああ、インデックスとの用事はもう済んだ。しかしせっかく学園都市くんだりまで飛んで来たんだ、ついでに君とも話そうと思ってね」

「……なんか、今日のお前気持ち悪いぞ」

「僕は君の顔を視界に入れるたびに気を悪くしてるがね」


横柄な憎まれ口に、上条は内心安堵した。
柄にもなく友好的な態度をとってきて何事かと勘繰ってしまったが、なんというか、やはりステイルはステイルだった。

971 : 当方は迎撃の準備中[saga] - 2012/02/04 22:02:34.58 95jknnaq0 3/11


「へいへい。で、俺に話ってなんだ?」


これでいい、そう思った。
いつかステイル自身が言ったように、ステイル=マグヌスと上条当麻の関係とは“こう”あるべきだ。
自分がステイルと、たとえば高校のクラスメイトとするような馬鹿な猥談で盛り上がるようなことなど起こってはなら


「君の好きな子、誰だい」

「ぶ!? ん、げほ、がほっ!!」


むせた。
それはもう、盛大にむせた。
口になにか含んでいたわけでもないのに、喉に言い知れぬ異物感が走った。


「リアクションまでそっくりでいやがる。実に腹立たしいね」

「んぐっ、ごほっ! なんだお前、藪から棒に!?」

「いいから答えろ」

「……好みのタイプは寮の管理人的な包容力あるおねーさん、尊敬する女性は特に無し。これでいいかよ」

「ああ、いいよそれで。僕にとっては大変耳寄りな情報だ」

972 : 当方は迎撃の準備中[saga] - 2012/02/04 22:03:37.11 95jknnaq0 4/11


「……? さっきからなんなんだよ? だいたい、そういうお前の方はどうなんだって。変わってないのか、好きなタイプは聖女マルタで尊敬する女性はエリザ」

「Index-Librorum-Prohibitorum」

「は?」

「僕の好きな女の子の名前だ」

「へ……え? あ、ええ?」

「インデックス=ライブロラム=プロヒビットラム」

「わざわざカタカナ発音で言い直すな! 聞き取れなかったわけじゃねーよ!!」


衝動的に頭をガシガシと掻き毟る。
なんだこの状況。
というか、今の発言の意味するところを考察するに――――


「っていうかなに!? お前、そこまで吹っ切っちゃったの!?」

「悪いか」

「いや、別に悪かねぇけど……」


本当に、なんだこの状況。
誰だこの一見ステイルのように見えなくもない赤髪長身真っ黒神父は。
ステイル=マグヌスという少年は、ちょっと色恋話でからかっただけですぐに赤面してしまうシャイボーイではなかったのか。

973 : 当方は迎撃の準備中[saga] - 2012/02/04 22:04:48.26 95jknnaq0 5/11


上条が悶々と受け入れがたい現実に頭を抱えているところに、ステイルがさらに声を掛けてきた。


「どう思う?」

「んあ、え? な、なにがでせう?」

「仮に、だ。僕があの子に告白して、あの子もそれを受け入れてくれて、めでたく付き合うことになって、ロンドンなりに連れて帰るから、よしよし今までありがとうもう君はお役御免だよ、なんてことになってしまったら」

「なっ!」

「そんな事態を想像してみろ、どう思う?」


上条は先刻とはまた別の意味で頭を抱える羽目になった。
正直に言って、考えたこともないケースだった。
否、考えたくもない事態である、と言った方が正確かもしれない。
つまり、それは。


「…………お断り、だな」

「へえ」

「俺にとってあいつは、そばにいてくれなくちゃ自分の存在が成り立たない、酸素みたいなもんなんだ」

「なかなかに情熱的かつ、僕に対しても挑戦的なお言葉だね」

974 : 当方は迎撃の準備中[saga] - 2012/02/04 22:06:23.35 95jknnaq0 6/11


「俺はあいつを、インデックスを一番近くで守りたい。あいつが傷付くようなことだけは、耐えられそうにない」


ただ残念なことに上条は、彼女の存在にそそられる庇護欲が果たして、等号で男女の愛と結び付くものなのかについては100%の自信を持てなかった。
そもそも上条は、男女の愛とはいかなるものなのか知らないし、“覚えていない”のだから。
それは目の前の、図体ばかりでかくてガキっぽい魔術師とて変わらないだろうと、そう思っていたのに。


「つまり、彼女を愛していると」

「そこまでは言ってねえだろ!?」

「そうかい、ちなみに僕は彼女を愛しているがね」

「……なんか、今日のお前には勝てる気がしねえ」


思っていたのに、このザマである。
いったい如何様な心境の変化があったのかは窺い知れない。
だが、ステイルの中で劇的な意識革命が起こったのだ、ということだけはもはや疑いようがなかった。


「心配しなくても、現状のアドバンテージは圧倒的に君がとっているよ。インデックスにとって、“男”とは君一人のみを指す言葉だ。彼女は君に絶大な、という言葉ですら生ぬるいほどの信頼と好意を寄せている」

「お、おう。本当にどうしたんだよお前」

「それがたとえ“君ではない君”の行いの延長上にあるものだとしても、それでも彼女は君が好きだ」


上条は束の間黙りこくる。
ベツレヘムの星における上条とインデックスの対話を、ステイルが漏れ聞いていたとしても不思議はなかった。


「僕が、インデックスの記憶の有無にかかわらず、彼女を好いているのと同様にね」

975 : 当方は迎撃の準備中[saga] - 2012/02/04 22:08:07.75 95jknnaq0 7/11


「あいつがどう思ってるのか、ってのはこの際問題じゃねえよ」


しばらくの沈黙ののち、上条は一定の結論を見出して口を開いた。


「俺はさ、結局この期に及んでまで、あいつを女の子として好きなのかどうか、ってのがわからないんだ。一番大事な、自分の気持ちが理解できてない」

「ふむ。何を言っても己に跳ね返ってきそうだから、ノーコメントとさせてもらうよ」

「お前のはただのツンデレだろ……とにかく。俺自身がインデックスに向ける感情に整理をつけない限りは、あいつがどんな結論を出そうが、俺はお前に勝ったことにならない」

「なにひとつ事が動いていないうちから勝手に勝った気にはならないでほしいな。僕は君に、大真面目に勝つ腹積もりでいるんだからね……ま、張り合いがありそうでよかったよ」


ステイルは上条の決意を耳にしてなお余裕を崩さず、大きな肩を小さくすくめた。
右手が口許に運ばれたかと思えば、一瞬停止した指先が落ち着きなさげに唇の上を滑る。
姿を一目見た時からなにかおかしい気はしていたが、そういえば今日のステイルはシケモクをふかしていない。


「どのみち最終的な選択権は彼女の側にこそあって、このままいけば彼女は君を選ぶだろう」


端を軽く吊りあげた口腔から次に吐き出されたのは、煙ではなく強気で果敢な宣戦布告文だった。


「…………このままいけば、ね」

976 : 当方は迎撃の準備中[saga] - 2012/02/04 22:10:30.72 95jknnaq0 8/11


かすかに背筋に怖気が走った。
ステイル=マグヌスという少年の中で、長年燻っていた何かに火が付いてしまったのだ、と上条は感じた。
燃やそうと思っても燃やしきれなかった誓いの残滓が熱を取り戻し、いま再び少年を突き動かしている。


「インデックスが、いや君たちが浸かっていた、ぬるま湯のような日常を掻き回してしまったことは………………すまない、とは思っている」


熾火のような小さな灯はやがて燃え広がり、押しとどめようもない大火となる。
そしていつか、上条とインデックスを包んでいた穏やかな日々を焼き尽くすのだろう。
誰よりも――という言い方には語弊があってほしいと上条は願うが――インデックスの身の幸福を願うステイルとしては、決して手放しに喜べる事態ではないはずだ。

しかしもう止まらない。
車輪は勢いを付けて押し出され、坂道を転がり落ち始めた。
もう誰にも、加速を深める一方の輪を止めることはできないし、行く末を推し測ることもできはしない。
インデックスがどう結論を下したところで上条と彼女にかつてのような、恋だの愛だのといった事情を絡めない日常は、もう戻ってはこないのだから。


「いいや。よかったんだよ、これで」


だが上条は、利己心に走ったのだと自嘲気味に笑うステイルに対して、力強く頷いて見せた。


「なんとなく、俺とあいつはずっと一緒にいて、なんとなく、一生そのままなんだと思ってた。でもさ、何かしらの変化は、きっかけは必要だったんだ」


少年と少女が大人になっていく上で、これはきっと避けられない、避けてはいけない壁だったのだろう。
そう、自分とステイルを納得させながら、上条は曖昧に笑った。

977 : 当方は迎撃の準備中[saga] - 2012/02/04 22:13:19.61 95jknnaq0 9/11


「まあなんだ。結局のところ、僕に態勢を立て直すだけの暇を与えてしまった、君たち二人が悪いんだよね。だからそんなに僕が気に病むこともないんだろうな。うん、スッキリしたよ」

「自分で言うか。一言多いヤローだな、相変わらず」

「いずれにせよ、僕はただ待つだけだ。 君たち二人の感情に整理がついて、それで僕はようやっとこの勝負のスタートラインに立てる」

「勝負、か」

「ああ、勝負だ。僕が、君から、彼女の心を奪う。火とは侵略の象徴でもあることを忘れてくれるなよ」


刺すような牽制の応酬をきっかけに、二人は互いの背後に向けて一歩脚を踏みだした。
すれ違う背中と背中。
固い絆で結ばれた戦友などでは間違ってもあり得ない二人の少年は、今日この時から明確に敵同士となる。

交差する瞬間に一瞥したステイルの表情は、やはり不敵に口の端を吊りあげたままだった。
男の眼をしている、上条はそう思った。
自分も今、あんな眼をしているのだろうか。
頬が緩むのを感じながら、そうも考えた。

やはりそうだ。
上条当麻とステイル=マグヌスの関係とはこうあるべきだ。
交わし交わされる視線の色は、友誼ではなく敵意に染まっているべきだ。


「じゃあな」


振り向かずにヒラヒラと手を振って、上条は守りたい人の待つ我が家目指して歩みを始める。
ゼロからの仕切り直しは、なにもステイルに限った話ではない。
ドアを開けて「ただいま」と声を上げれば、そこが自分とインデックスにとっての新たなスタートラインとなる。


(俺も覚悟を決めなきゃな)


小さいが確かな決意を一つ嚥下して、上条は蒼穹を行く絹雲を、もう一度だけ仰いだ。

978 : 当方は迎撃の準備中[saga] - 2012/02/04 22:15:22.19 95jknnaq0 10/11









「ああちなみに、ロンドンや学園都市には君に好意を寄せる女性がよりどりみどり、多士済々だからそのあたりを考慮に入れて思い悩んで、あわよくば彼女らに浮気なんてしてくれると僕としては非常に都合がいい」

「!?」

「なんなら具体的に個人名も挙げようか」

「デタラメ言うんじゃねえ! 俺にそんな優良フラグが降って湧いてくるわけないだろ!」

「オーケー。その言葉、そっくりそのまま彼女らに伝えておくよ。昼夜問わず人気のない通りにはくれぐれも注意することだね」

「いろいろとえげつねえなお前!」

「当然だ。魔術師相手に正々堂々の戦いなど期待するものじゃない」

「くそ、お前がそうくるならこっちにだって考えがあんぞ! 小萌先生とバードウェイ妹のこと、インデックスに仔細バッチリ教えちゃうからな!」

「おい待て貴様どこからそれを嗅ぎつけた」

「土」

「御門ぉぉーーーーっっっ!!」


――――END

979 : 当方は迎撃の準備中[saga] - 2012/02/04 22:16:47.72 95jknnaq0 11/11


まあ、ステイルがここまでやっても勝つのはきっと上条さんでしょう
つまり何が言いたかったかというとですね
上イン派の方もたまにはステイルちゃんのことを思い出してあげてほしい、ということなのですよ
あとついでに、姫神ちゃんのことも時々でいいから思い出してあげてください