467 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage] - 2012/03/03 00:38:33.22 FpnYiPy3o 1/5

三月三日ということで三主人公。3レス程いただきます

元スレ
▽【禁書目録】「とあるシリーズSS総合スレ」-36冊目-【超電磁砲】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1328256460/
468 : :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] - 2012/03/03 00:39:15.17 FpnYiPy3o 2/5

 三月三日。

「とうまとうま。枯れ木の蕾、みーんな大きくなってるかも」

 街を行くインデックスが、歩み両の手を広げて回る。
 優雅に広がる白い袖がはためいた。

「ああ、ありゃ桜だな」

 数歩後ろから上条当麻。春休みを恋慕しつつの日曜日、何に追われるでもない彼の歩みは穏やかだ。

「サクラ」
 
 インデックスがそのまま返す。
 育った場所が違うのだ。と上条はそこに込められた情で量る。桜、その言葉がどれだけ気を狂わすか。記憶の壊れた自分でさえそうなのだ。
 この街は桜が多い。だからこんなに枯れ木ばかりなのだ。
 ぷくぷくと水を含み始めた蕾を見やる。

「鳥が来てる。食べちゃだめなんだよー」

 鼠色のふっくらとした鳥。ムクドリだったかヒヨドリだったか。群れ成して樹にとまる。
 この街は鳥が少ない。食べるものはロボットが取り払ってしまうから。冬の末、彼等にとって新芽とは馳走でしかない。
 インデックスが回した腕を勢い殺さず上にやり、乾いた音を立てさせる。
 ぱん、と一音。街の鳥はのっそりと、申し訳程度に他の樹へ。

「もー、お花減っちゃう」
「こんだけ並んで立ってんだ、そのくらいじゃ変わんないだろ」

 道の始まりから終わりまで、すべてが桜の通りだった。
 明らかに人工の選択。好きな樹を植えられるとして、その人物は迷わず桜を選んだのだろう。春の花、それは冬枯れを忍ぶに値すると。

「サクラってお花がすっごく多いんでしょ?雲が降りてきたみたいになるって」

 地上の雲、薄桃の霧を上条当麻は知らない。樹を見ればそれと答える、写真を見ればそれと答える。けれど、やはり知らないのだ。

「咲いたらすぐ動かないとな。すぐに散るから……あれ」
「どうしたの?」

 それでも心に刻まれている。
 桜は、咲いたらすぐに散るのだ。

「冷えるといいな」

 何千年と続く熱狂は、たしかに彼にも継がれている。

「どうして?あったかいほうがいいかも」
「寒いほうが花がもつ」
「そっか、じゃあ寒くていいや」

 散ることなかれ、咲き誇れ。
 咲かぬ先からこんなにも狂おしい。

「なぁインデックス。俺、桜が咲いたらおかしくなるかも」

 雨よ避けよ、風よ控えよ。けれど上条当麻は知っている。

「ふぅん?」
 
 散らぬ花ほど興の醒めるものはない。
 その矛盾に一人裂かれつ、春待ちの道を行く。

469 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] - 2012/03/03 00:40:12.53 FpnYiPy3o 3/5



「あなた、一緒にお雛様飾ろうよぅってミサカはミサカはあなたと一緒に風物詩を楽しみたかったり」

「やらねェ。オマエらの日だろォが」

「いいじゃない減るものじゃないし。五月は一緒に鯉のぼり飾ろうね!ってミサカはミサカは季節もののイベントを制覇する気満々だったり」

「誰が買ってドコ置くンだよ」

「あなたが買って……屋上?」

「追い出されンだろ」

「いいからあなたも飾るのーっ!買ってくれたのあなたでしょ。最後まで面倒見てねってミサカはミサカは必殺床上バタ足!」

「やめろ埃が立つ」

「あなた、春が来るよ」

「そォだな」

「考えるだけで頭がぱーんってしそうなの!なんだかどっかに飛び出したいかも!」

「リードが必要かァ?」

「上着が軽くなるの。朝がだんだんまぶしくなるの。あなた、ミサカ土筆が見てみたい!」

「この街に生えてンのか……?」

「さあ、お家にこもってる場合じゃないよ!春を探しにお出かけだー!ってミサカはミサカは出発進行withあなた!!」

「聞いちゃいねェ」

470 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] - 2012/03/03 00:40:58.91 FpnYiPy3o 4/5




「うおー寒い!」

 もはや共同マンションと言った方が正しいアイテムのアジト、その一室から出てきた二人。

「寒の戻り、じゃ早すぎるね」

 浜面仕上と滝壺理后は、早朝から二人で買い物である。その表情に明け方の爽やかさはない。

「三寒四温のうちだなぁ。悪いな滝壺、買出しつき合わせちまって」
「ううん。二人とも頭が痛いって言ってるし」
「絹旗は確実に未成年だろ何やってんだ。麦野は……駄目だ聞けねえ」

 春だ!飲むぞ!と騒ぎ出した麦野と絹旗。二日酔いを訴える二人のために、こうして買出しに出てきたのだ。

「昨日は暖かかったから」
「浮かれすぎだろ。桜が咲いたら発狂するんじゃねえの」

 つまみの供給に尽力した浜面は、二日酔いは免れしかし頭痛がする。労災を申請したい。ぼんやり呟いたがリーダーは不在である。
 滝壺は液体を延々流し込んでいたような気がするが、平時と変わらぬ静かな瞳。付き合うほど底の知れぬ彼女である。

「春だね」
「頭がな」

 暗部の仕事がなくなって、残ったのは姦しさ。

「ほら、桜がもうすぐ咲きそうだよ」

 延々の凍えを乗り越えてみれば、失くした分まで取り戻そうかと毎日が騒がしい。

「……ああ。そういやこれ、全部桜か」
「この街って桜が多いよね」
「作った奴が好きだったのかもな。そうか、道理で枯れ木ばっかだ」

 小道を曲がる。冬の間はまるで気がつかれずに、木々はその存在感まで甦らせようと企んでいる。

「咲いたら、みんなでお花見しようね」
「俺は二人でもいいけどな」
「でも?」
「が」

 うん、と滝壺がはんなり笑う。

「はまづらはきっと場所取り係になると思う」
「同感だ」
「だから一緒に夜桜を見よう」
「……風邪引くぞ」
「大丈夫。はまづらとだから」
「早く咲くといいな」
「春、楽しみだね」

 三者三様、春が来る。

471 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage] - 2012/03/03 00:42:16.68 FpnYiPy3o 5/5


以上失礼しました。どなたもよい週末を。