655 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage] - 2012/03/23 19:39:19.48 D/cALrEto 1/12

10レスもらいます
最近本編に顔を見せないインさんです

元スレ
▽【禁書目録】「とあるシリーズSS総合スレ」-36冊目-【超電磁砲】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1328256460/
656 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga] - 2012/03/23 19:39:55.79 D/cALrEto 2/12


 数え切れないほどのビル群に太陽が沈んでいく。
 夕闇の学園都市を猫を抱えた一人の少女がてくてくと歩く。

 高級な白い生地に金糸の刺繍が入った高級なティーカップのような修道服を纏った修道女。
 あどけなく幼い顔に色素の薄い銀髪をたなびかせたシスター、禁書目録。

 これから上条当麻の担任の月詠小萌の家に夕食をごちそうになるのだ。
 友人の姫神秋沙も上条のクラスメイトの吹寄制理も小萌の家の居候の結標淡希も一緒に焼き肉パーティである。
 これまでならばにこやかにスキップでもしながら往路を行くところだがインデックスの顔色は晴れない。

 森や林はそんなにないはずなのに黒いカラスがかぁかぁと鳴いた。
 見上げると赤く染まった空に数羽のカラスが群れをなして飛んでいる。
 家族だろうか、友達だろうか。仲の良さそうな光景にインデックスは目を細めた。

 カラスは不吉な鳥ともいわれるし幸運の鳥ともいわれる。
 結局は土台となる文化の違いでしかないし、そのような多種多様な文化を頭に叩き込まれているインデックスはイメージによる偏見を持たない。

657 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga] - 2012/03/23 19:40:27.19 D/cALrEto 3/12






 上条当麻がハワイに行くと言って学園都市から姿を消して一週間ほど経つ。
 テレビではハワイでの火山の噴火や超能力者の戦闘行為、そして学園都市協力機関の離反が連日報道されている。

658 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga] - 2012/03/23 19:41:13.09 D/cALrEto 4/12


 学校の出席日数が足らない、とさんざん愚痴っていたのにどうしてもやらなければいけないことがあると旅立っていったのだ。
 イギリスでの内乱、ロシアでの戦闘、第三次世界大戦終結後の顛末。

 ずっと学校に行っていなくて平気なのだろうかとインデックスは思う。
 イギリスのクーデターから一ヶ月以上休んでいるはずだ。
 いくら戦争が発生していたからといってもこのままでは「りゅーねん」してしまう。


「こもえも、あいさも、せいりも、あわきだって心配してるんだよ?」


 それぐらいに重要なことなのだろう。きっと闘わなくてはいけないのだろう。
 それでもやはり納得はいかなかった。


「だって、私はまだごめんなさいって言ってないんだよ」


 腕の中でミャオミャオ暴れる子猫に語りかける。
 上条がいない間、インデックスの家族はスフィンクスしかいない。
 土御門舞夏も、月詠小萌も面倒を見てくれている。
 それでも、さびしい。


「とうまが記憶を失ったこと。ずっと隠してたこと。私は許したけれども、私は許されていないんだよ?」


 上条当麻が学園都市にいたのはたったの五日。
 もちろんその間に学校にも通わなくてはいけなかったしさまざまな準備も行っていた。
 インデックスが彼と静かに過ごす時間は存在しなかった。
 それでも、ごめんなさいという一言をいう時間ぐらいはあったのだろうけれども、とうとう最後まで言うことができなかった。

659 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga] - 2012/03/23 19:41:46.65 D/cALrEto 5/12


 ずっと甘えていた。
 記憶が無くて、それなのに十万三千冊の魔道書が頭の中にあって。毎日毎日命を狙われて恐怖に怯えていて誰にも縋れなくて。
 そんな自分を救ってくれた救世主にずっと甘えていた。
 カミサマだと思っていた。
 ヒーローだと思っていた。

 でも彼は本当はずっと傷ついていて。
 一番そばにいたのに気付いてあげられなかった。


 まだそのことを許してもらっていない。


 ごめんなさいって聞いてもらっていない。


 記憶を失わせるようなことに巻き込んでごめんなさい。
 平穏な生活を奪ってごめんなさい。
 ずっと傷ついていたのに気付かなくてごめんなさい。
 わがままばかり言ってごめんなさい。

660 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga] - 2012/03/23 19:42:13.27 D/cALrEto 6/12





「おなか、へった」



 最初に出会った時の台詞。



「おなかへったって言ってるんだよ?」



 一番に聞いてもらいたい人は隣にいない。
 足りてないのは腹ではなくて胸の中で、そこがぽっかり穴が開いたよう。
 彼に出会うまでの一年間はずっと怖くて震えていたけれども確かに生きていた。
 でも今は生きている気がしない。

661 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga] - 2012/03/23 19:42:40.04 D/cALrEto 7/12


 ベツレヘムの星が堕ちた後、上条当麻が行方不明になって自分の足元がガラガラ崩れていく音を聞いた。
 完全記憶能力を持つインデックスはその時のことを一生忘れることができない。
 今この瞬間にでも、少しでも意識を向けてしまえばその音が再生されてしまう。
 本当の恐怖を知ってしまったインデックスはもう無邪気に笑うことができない。
 きっと、もう一生、彼が傍にいなければ心の底から笑うことはできないのだろう。


 帰ってくるという約束は果たしてくれたけれども、それだけじゃ駄目なんだ。
 傍にいてくれれば他には何にも要らないのに。
 なんで傍にいてくれないんだろう?


 ぎゅう、と腕の中の子猫を抱きしめる。
 ミルクの匂いがした。

662 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga] - 2012/03/23 19:43:05.64 D/cALrEto 8/12





「インデックスはね、とうまのことが大好きだったんだよ」



 今どこにいるのだろう。
 今何をしているのだろう。
 何万冊の魔道書があったってこの気持ちを伝えることができない。



「インデックスはね、とうまのことが大好きなんだよ」



 一緒について行った超電磁砲を恨めしく思う。
 きっと彼は考えて自分を連れていかなかったんだ。
 それはわかる。
 でも傍にいたい。
 他には何もいらない。

663 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga] - 2012/03/23 19:43:34.45 D/cALrEto 9/12





 完全記憶能力を持つインデックスは今の気持ちを忘れることはできない。
 絶対にできない。

664 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga] - 2012/03/23 19:44:26.71 D/cALrEto 10/12


 恋という名前の呪いは永遠に彼女を拘束し続ける。
 もう、ヒーローなんかいらない。世界なんか救わないで。
 ただの上条当麻がいてくれればいい。
 わたしだけを見て。他の女のことなんて考えないで。


 涙目になりながら暗くなりつつある空を見上げた。
 心に渦巻く嫉妬と独占欲。
 同じ空の下で闘っている彼はこんな醜い私をどう思うのだろう?


 それでももう止められない。


 あやまりたいことがある。
 つたえたいことがある。
 だから早く帰ってきて。
 わたしのところに帰ってきて。

665 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage saga] - 2012/03/23 19:44:55.30 D/cALrEto 11/12







 にゃーん





 腕の中で子猫が鳴いた。
 見下ろすとその鼻先に滴が光っている。
 ぽたり、と零れ落ちる涙。
 くすぐったそうに猫が鼻先をかく。
 その姿に思わず笑った。


「ごめんね、スフィンクス。もう少しだけこうさせていてほしいかも」


 金髪碧眼の少女がすすり泣く。
 小さな鳴き声を聞くのは幼い子猫だけ。
 苦しそうに悶えた子猫は少女の腕から上半身を伸ばして小さな舌を伸ばして、ちろりと綺麗な涙を拭った。

666 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage] - 2012/03/23 19:47:01.94 D/cALrEto 12/12

以上でした

インさんヒロインなのに出番なさすぎだろうと思う次第
魔術の解説役まで取られてしまって本当に居場所がないというかなんというか
上条さん、もっとかまってあげてよ!