401 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga] - 2013/05/23 23:37:00.69 MbThVQ8h0 1/9と、7,8レス貰います。
『コーヒーとミルクティー』
美琴と上条の恋愛ものですが……。
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…………苦い、なあ……
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「よっ」
「げっ、ビリビリっ」
「私の名前はビリビリじゃないって何度いったらわかるのよ」
「ごめんなさいごめんなさい!謝るから電撃はやめてくださいおねがいします!」
「……私のイメージはそれしかないのかしら。さすがに傷つくわよ……」
「いやいやいや、出会いざまに毎回電撃くらってたらそうもいいたくなるだろ」
「…………」
「あああ、怒らないでくださいすいません冗談ですごめんなさい」
「……別に怒ってないわよ」
「ほ、ほんとうか……?ところで御坂、俺に何か用か?」
「用がなくちゃ話しかけちゃいけない?」
「いや、そういうわけでもないけれど」
「あ、ちょっと待ってて」
「お、おう……?」
私は自動販売機まで走っていき、二つ飲み物を買って、あいつの元へと戻った。
「好み聞き忘れちゃったから、無難にコーヒーとミルクティーを買ってきたけど、どっちがいい?」
「学園都市の自販機にもまともなもんがあるんだな……。って、まさか!また自販機に蹴りいれてきたのか!?」
「そ、そんなわけないでしょ!人におごるもんまでそんなことしないわよ!そんなことより、どっちがいいの?早く選びなさいよ」
「お、おう。それじゃコーヒーもらっていいか」
「はい。どうぞ」
「ありがとよ、とその前に……」
あいつはなぜか差し出された缶を受け取らず、財布をとりだしあさりだした。
「いくらだった?」
「は?私のおごりっつってんだから飲みなさいよ」
「いやいや、いくら貧乏学生の上条さんといえど、年下の女の子に奢ってもらうわけにはいきませんのことよ……」
「いいっつってんの!これはあれよ。日頃の感謝というかお礼というか……もう、いいからほら!」
そういって私はあいつにコーヒーを無理やり受け取らせる。
「そ、そうか。……ありがとな」
「……うん」
そうして、あいつと私は、私の買った飲み物を飲みながら、色々なことを話した。
あいつの学校での話や能力補習への愚痴、私の学校の話に黒子に対する愚痴など、二人してとりとめのない話を交わし続けた。
平凡ではあるものの、あまくせつない時間であった。
しかし、そんな時間も長くは続かず、あいつは最後の一口を飲んだ後、時計を見てこういった。
「あ、もうこんな時間か」
「あら、そうね」
「早く帰んねえと色々と大変なことになるんで、そろそろ帰るわ」
「ん、そう」
「コーヒーありがとな!それじゃ」
私はその場に座ったまま、手を振り見送る。
彼は公園の入口を出ていき、ついに姿が見えなくなる。
そして一人になった途端、ベンチに座っていることに急にさびしさを感じた。
「……さて、それじゃ私も帰るか」
そうつぶやき、手持無沙汰になるのが怖くて一口分だけ残しておいたミルクティーを、一気に飲みほした。
「…………あまい……」
ミルクティーの最後の一口は、たった今彼と過ごしていた瞬間と同じように、あまくあまく感じられた。
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今、彼女は再びあの公園へやって来ている。
彼女の手の中にあるのは、かつてと同じコーヒーとミルクティーの二つの缶。
その二つを持ったまま、彼女は一人でベンチに座っている。
そして彼女は手元の缶を見つめる。
「……今の私には、こっちよね」
右手にもっていたミルクティーを、かつて誰かがいた場所へ置き、左手にあるコーヒーのプルタブを開ける。
ぷしゅっ、と音をあげて開いたコーヒーを、すぐさま一口口に入れる。
「…………苦い……」
彼女の顔に浮かんでいるのは、かつてここにいたときとは正反対の、暗い表情であった。
「…………苦い、なあ……」
彼女が感じている苦さは、コーヒーそのものの苦さと、初恋の破れさったほろ苦さの合わさったものであった。
彼女は苦い苦いコーヒーを飲みながら、彼とのあまいあまい思い出を思い出し続ける。
そうしながら一口、もう一口とコーヒーを口に運んでいく。
「……あはは。それでも、やっぱり苦いや」
彼女はそうつぶやく。
笑っているはずの彼女のほおには、それとは似つかない、一筋の涙が伝わっていた。
「……今の私はここから、なんだね。一歩、踏み出すこともできなかった私には、この苦さがお似合いだよね」
かつて彼女は、彼との偶然の出会いのみを楽しんでいた。
偶然を装うために、彼が行きそうなところを片っ端からまわっていたりもした。
それでも、
「私は、積極的に彼に会おうとはしてなかった。もっと会って、もっと話をして、もっとあいつと一緒にいたかったけれど、自分から誘うことはなかった」
それらを自然にこなし、彼と結ばれたのは、白い修道服を着た小さな女の子だった。
「……あはは。これぞ自業自得ってやつなのかな」
なんていいながら、彼女は自虐的な笑みを浮かべる。
「……つらいなあ、つらい。それでも、私は前に進まなくちゃいけないんだよね」
そうして、彼女はコーヒーの最後の一口を飲みほした。
「……やっぱり苦いや……。でも、少しは苦さに慣れた……かな」
そう呟いてベンチから立ち上がり、彼女は振り向きもせずに、公園から立ち去っていった。
誰もいなくなったベンチには、一つのミルクティーの缶だけが残されていた。
それはまるで、彼女による、彼とのあまい思い出との決別を表しているようだった。
409 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga] - 2013/05/23 23:47:43.45 MbThVQ8h0 9/9以上です。ありがとうございました
連日失礼しましたって書こうとしたけれど、今見たら昨日と今日でID変わってるのね
美琴には幸せになってもらいたいのだけれど、美琴で書くとつい悲愛にしてしまう……