369 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage] - 2014/05/13 18:55:54.47 zKVKmsH2o 1/9
とある魔術の禁書目録×Dies iraeのクロスネタです
7レスほどお借りします
――では一つ、皆様私の歌劇をご観覧あれ
――と、言いたいところだが
グランギニョル
――此度の 恐怖劇 、これまでとはいささか勝手が違っているようだ
――諏訪原市、と呼ばれている筈だった場所は、科学の粋を極めた都市が聳え
――その内を超能力者と呼ばれる少年少女が闊歩し
――世界には魔術が蔓延り
――そして、本来の主演は不在
――大きく歪められた世界。私もまた、踊り手の一人とならねばならぬようだ
――演目の果ては、誰も知らぬ未知か、ありきたりな既知か
――しかし
――役者が良い。至高と信ずる
――ゆえに面白くなると思うよ
――ロシアでの激闘を経て、上条は日常に帰還していた。
「おっ、上条じゃんーひっさしぶり~」
「おっす綾瀬。好きで休んだわけじゃないんだ、久しぶりはやめてくれよな。司狼も、おはよ」
「はよっす。珍しい顔が見れたな、今日は雨か? 雷か?」
「万年サボリ魔のお前にだけは言われたくねぇ!」
「はい~上条ちゃん綾瀬ちゃん遊佐ちゃん、ホームルームを始めるので着席するですよ~」
その頃、学内を賑わせていたのは連続首切り魔の噂。
「……本当にいるのか? 都市伝説とかじゃなくて……」
「本当。先輩で。見た人がいるって」
「混乱を呼ばないように警備員が箝口令を敷いてるらしいけどな。人の口に戸は立てられんもんだぜい」
「強能力者の人もいるらしいよ……だから、犯人は大能力者や……超能力者じゃないかって」
「もう七人も殺されてるらしいで……怖いわあ」
――暗部を瓦解させ、日常を奪い取った一方通行は、奇妙な夢に悩まされていた
「血、血、血、血が欲しい」
黄昏の浜辺……学園都市には存在しないはずの海。
そのほとりで歌を口ずさむ、息を呑むほどに『外れた』女。
美しいが、気の触れた女。
粗末なドレスと裸の足。しかしそれも女の美を邪魔することはない。
首を一周する赤い線は、間違いなく斬首痕のはずだが、まるで首飾りのように女を彩っている。
「ギロチンに注ごう、飲み物を。ギロチンの渇きを癒やすため」
毎夜毎夜、眠る度にこの様を見る。
ロシアから帰還してからずっとだ。
「欲しいのは血、血、血」
女の歌を聞きながら、砂浜に座り込んだ。
時間が過ぎれば夢は終わり、目が覚める。経験から学んだことだった。
しかし――
「浴びた血、食らった肉、その魂の総量。特異点に足を踏み入れる事が可能なほどの変質。
――なるほど君が、かの御仁の努力の成果か」
今回は、違った。
老人のようにも若者のようにも見える、見れば見るほどとらえどころを失う、影絵のような男が、佇んでいた。
「何者だ、オマエ」
「私はただ、彼女に魅入られているだけの羽虫。それ以上でもそれ以下でもない」
男から受ける感覚は、女のものとよく似ていた。
圧倒的に、徹底的に、外れている。学園都市最強程度の怪物では及びも付かないほど。
「出会いの記念に、君に魔名を贈ろうと思うのだが、どうだろうか」
口調こそ可否を伺うものだったが、返答を待たず語り出す。
ル シ フ ェ ル
「――光を掲げるもの」
背筋がぞわ、とした。その言葉はひどく、そう、――呪いに満ちていた。
「君は光を掲げるばかりで、決して光を抱きしめる事は出来ない。
君はその身、その姿、その存在そのものが地獄であり、愛するものを地獄に引き摺り込む。
――身に覚えがあるのではないかな」
「…………、」
「つれないな。
君があの男の思うとおりに成長するならば、また違う形で私や、彼女と出会うこともあろう。
あるいは私の用意した彼や、遙か遠い国から集った彼らと。
その時、君はどれだけ変じているのか、果たして既知の外に在れるか。――楽しみにしているよ」
「――ふざ、」
けやがって。言葉は最後まで告げることは出来なかった。
一方通行は次の瞬間、ファミリーサイドの自室で目を開けていた。
――ある夕刻、学園都市で最も治安が悪い路地裏の一角では、白い男が忌々しそうな顔で佇んでいた。
白い髪、蝋のような印象を抱かせる白い肌、血色の瞳。
周囲は血で染まり、殴打され、切り裂かれ、貫かれた屍十数体が、モノのように転がっている。
何もかもが気に食わなかった。
路地裏を歩いていて絡んできた劣等の弱さも、
その劣等の一人の奇妙な能力によってサングラスを壊され、掠り傷とはいえ傷を負ったことも、
サングラスを失った自分を見て、劣等達がダイイチイなどと呼んできたことも。
「ベイ。あなた、ちょっと気が抜けすぎなんじゃないの?」
くすくすくすくす。
男の背後から、かわいらしい見た目の少女が現れる。
「……マレウス」
「その目の下の傷、こいつらにやられたんでしょ? シリアスな顔しちゃって」
「シリアスにもなるさ。俺ぁ使ってたぞ、形成」
「――!」
少女が息をのむ。
聖遺物を用い戦う彼らの秘技、エイヴィヒカイト。
霊的装甲を纏う彼らには、本来同じ聖遺物でなければ太刀打ちできるものではない。
ましてや最も位階の低い『活動』ならまだしも、『形成』の域にあるものが傷を負うなど――。
「超能力者の街……か。この街はおかしいぜ、マレウス」
――窓のないビルの中では、統括理事長が生命維持層の中で逆さまに浮かんでいた。
そしてそのさらに奥、生命維持層の発するオレンジ色の光が届かない場所に、目をこらさないと分からないがもう一つの装置があった。
「…………」
中にいるのは、一人の黒髪の少年。女性と間違ってしまいそうな、綺麗な顔をした少年だった。
その傍らに、ある一つの物品が置かれている。
木の枠と、斜めの刀身を有するもの。
数えきれぬ程の命を喰らい、観衆の熱狂を沸き起こしたもの。
断頭台。
ギロチン。
正義の柱。
どの名で呼称しようと科学の街にはそぐわぬ中世のそれが。
まるで当たり前のような顔をして、そこにあった。
「終戦と共に身を隠してから六十余年。……現れるか、黒円卓」
「ツァラトゥストラを手に収め、狼煙は上がった。機会はこのたった一度。
失敗すれば、第六天になり損なった畸形のように、因子から綺麗に消されるだろう」
「だがそれでも、私はあなたを殺す。水銀の王よ」
「永劫は二度と起こらない」
378 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] - 2014/05/13 19:08:02.86 zKVKmsH2o 9/9
以上です。うっかりsaga忘れてましたすみません
魔術サイドいなければ