927 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[sage] - 2015/04/01 20:52:19.96 E0yUyl2Qo 1/21少し借ります。
チャーハンを作る話です。
浜面「……こうして見ると結構溜まってたんだなぁ」
麦野「あ、なんだこりゃ。
山積みパックの中身は……ご飯?」
浜面「おう、麦野。
いやさ、そろそろ冷蔵庫整理しようかなと思ってさ」
麦野「なにやってるのよ、アンタ」
浜面「いや、だから冷蔵庫の整理」
麦野「そうでなくて。
ご飯だったらいつも普通に炊いてるじゃない。
冷凍なんてしてないでしょ?」
浜面「そうでもないんだな。量はきちんと炊いてるけどお前ら食う時と食わない時と差があるじゃん。
だから結構余るんだ」
麦野「そんなもんかねぇ」
浜面「そのくせ、炊きたてがいいとかなんとか言いやがって。
まぁ、俺もコメは炊きたてが好きだけどさ」
麦野「だって、暖め直したご飯って美味しくないじゃん。
そりゃ、学園都市の電子レンジはすごく発達してるのはわかってるけどさ。
炊きたてのに比べたら絶対美味しくないもの」
浜面「言う事ごもっともだけどな。
勿体ないからどうしても余ったご飯はこうして冷凍しているの。
できるだけ弁当とかに回して使い切ってるけどさ」
麦野「ふぅん。
お財布とか環境にやさしいってやつ?
正直あんまり考えたことないけど」
浜面「……スゲェ納得」
麦野「なんだその目は」
浜面「いや、別にぃ」
麦野「アンタ、私のこと、前世紀のバブル女みたいに思ってんだろ」
浜面「思ってない、思ってないから。
思ってないから義手をみしみしイわせるの超やめて。
スゲェ怖いわ」
麦野「ふん、どうだか」
浜面「でもさ、麦野だってもったいないって気持ちはわかるだろ?」
麦野「そりゃ分かるわよ?
概念としてはとても良くわかる。
でも実際問題、これだけのご飯どうするのよ」
浜面「食うに決まってるだろ?
こういう時のとっておきの料理があるじゃないか。
チャーハンがさ!」
麦野「……チャーハンか。
あれってさ、私作れないのよね。
どうしてもご飯が塊になっちゃってさ。
フライパン振るスピードには自信あるだけど」
浜面「って、あぶねぇだろ!
その義手のジャブは世界チャンピオンだってよけられねぇわ!」
麦野「避けてるじゃん、浜面。
本当、回避力だけはレベル5超えてるわよね。
顔面に穴あけるつもりのストレートだったのに」
浜面「余計に酷い!
俺が一体何したつぅんだよ!」
麦野「色々と?
私のカラダ弄んでくれたじゃん?」
浜面「おまえなぁ……
ニタニタ笑いながら言うセリフじゃねぇだろ。
それ言われると俺だって結構こたえるんだぞ?」
麦野「浜面が悪いんじゃん。
あんとき私を殺せなかった時点で、もう一生私のオモチャって確定してんだよ」
浜面「あーもー。
どれだけ俺のピュアで小さなハートを虐めてくれるんだよ」
麦野「さーねー?
私の気が済むまで?
ってか、それよりもさ」
浜面「はいはい、なんだよ?」
麦野「美味しくないチャーハン作るんだったら店行ってちゃんとしたの食べたほうが良くない?
そりゃお財布には優しいけど、満足度は全然違うぜ?
なんだったら、本場物奢ってやろうか?」
浜面「はっはっは。
大丈夫、大丈夫。
俺が麦野にもちゃんと作れるパラパラチャーハンを教えてやるっていうのが話の流れってやつだろ?」
麦野「アンタにモノを教わるのってなんか抵抗あるっていうか(ちょっと嬉しいケド)」
浜面「?
前にも料理を教えたことはあるだろ?
まぁ、嫌ならいいけど……」
麦野「嫌だって言ってないでしょ!
もう、ほらさっさと教えなさいよ、パラパラチャーハンの作り方!」
浜面「???
わかったから背中押すなって!」
浜面「とりあえず、3人前計算で行こう。
材料はこんな感じかな?
①冷ご飯 3合
②卵 3個
③ネギ 大1本
④ゴマ油 大さじ1(攪拌用)
小さじ1(具材用) ※今回は使わない
小さじ半(仕上用) ※場合によっては無くてもいい
⑤紅しょうが 大さじ1程度
⑥具材 焼シャケ1人前
⑦酒 適量(ふっくらさせる程度)
⑧醤油 適量(オイスターソースと合わせて大さじ1~1.5)
⑨塩胡椒 適量
⑩オイスターソース 適量(醤油と同量)
⑪砂糖 小さじ1
基本的にこれでうまく作れるはずだけど、薄味にしておいたほうがいいな。
あと、結構油が多めなんで、合わせて大さじ1.5ぐらいの感覚にしてくれ 」
麦野「なんか、ゴマ油がややこしいんだけど(仕上……ね)」
浜面「そこがキモなんだよ。
まぁ、とにかくよく見ててくれ」
浜面「まず、冷ご飯をレンジで温める。
今回は冷凍していたからそのまんま解凍だな。
そして、その時にできるだけ広げてバラバラにしておこう」
麦野「?
炊飯器のご飯じゃダメなの?」
浜面「あ、あ、うん。
まぁ、それでもいいんだろうけど。
一回冷やしてあるご飯だと水分飛んでるんで、パラパラになりやすいんだよ」
麦野「へぇ、知らなかった」
浜面「出来なくはないんだろうけどな。
で、元々パラパラになりやすいことに加えて、まずここでバラバラにしておく。
ご飯粒は表面についている澱粉の膜でほかのくっついているからな」
麦野「あ、なるほど。
澱粉のα化前にバラしておくのか。ふぅん、そうなんだ」
浜面「なに、α化って?」
麦野「おいおい、そこからか。
要するに、澱粉が食べられる状態のことよ」
浜面「だったらそう言えよ。俺頭悪いのに……
まぁ、いいや。
で、電子レンジでチンしている間に具材を準備しよう」
浜面「ネギは白い部分をご飯粒の大きさに切る。
やり方はだな、筋目に沿って包丁をザクザク入れる」
麦野「?
所謂みじん切りでしょ?
それじゃ繋がってるじゃない?」
浜面「いいのいいの。
この状態で、今度は筋目を断つ方向で包丁を入れてやる。
するとだな……」
麦野「あ、みじん切りになった。
あれ、でも縦方向には繋がってたわよね?」
浜面「繋がっいたけど、筋目を断つ包丁の時にネギそのものが包丁で押されるだろ?
その勢いで筋目に沿って付けた切り目が広がるんだよ。
この方法だと柔らかいネギをみじん切りにするのには楽なんだ」
麦野「へぇぇ。
テクニックよねぇ」
浜面「ふふん。スゲェだろ」
麦野「はいはい、調子のんな。
で、ほかの具材は鮭か。
嬉しいわねぇ」
浜面「麦野、鮭好きだからな。
まぁ、それに昨日食わなかった分が余ってたんだ」
麦野「おい、残り物かよ」
浜面「まぁ、残り物の鮭なかったら焼いてもいいけどな。
鮭フレークでもいいし。
個人的は鮭は皮が旨いから鮭フレークより焼き鮭をほぐす方が好きだな」
麦野「ふぅん。でもさ、どうせ火を通すのなら、別に生の鮭でもいいんじゃないの?」
浜面「チャーハン作るときの具材に関しては、基本的にネギ以外は生禁止。
普通だったらチャーシューとかハムとか、そのままでも食えなくはないやつばっかだろ?」
麦野「そう言われてみれば・・・・・・」
浜面「エビとかカニとかだって、一応生でも食えなくはないもんだしな。
大抵は火を通してあるけど」
麦野「なんか意味あるの?」
浜面「具材の火の通りとコメの火の通りは速さが違うんだよ。
具材に合わせてコメ炒めるとぱっさぱさになっちまうの」
麦野「へぇぇぇ。
いやはや、全然知らなかった。
そっかぁ、火力があればいいってもんじゃないんだ」
浜面「意外とそこ勘違いしている奴が多いんだよな。
でも一回そういうもんだって思っちまえばあとは大丈夫」
麦野「そういうことって本には書いてないのよねぇ。
そうかぁ、なるほど」
浜面「で、このタイミングでレンジが俺を呼んでいる」
麦野「解凍終わったね。
ホカホカだ」
浜面「よし、じゃあ熱いうちにボールに移して……」
麦野「えっ!?
ちょ、ちょっと浜面、何やってるのよ!」
浜面「ご飯にごま油混ぜ込んでるんだけど?」
麦野「ええええ?
おかしくない、それ!?」
浜面「フライパンに入れる前に、ご飯に油を絡めておくとだな、綺麗にパラパラチャーハンになるんだよ。
あったかいうちだと特に油が絡みやすいからオススメだ」
麦野「……ま、まぁ?
最終的にはおんなじになるんだろうけど……
しかし、油ご飯って、すごくマズそう……」
浜面「そうか?
牛脂使ったガーリックライスとか、普通に美味いだろ?」
麦野「そう言われてみりゃそうね。
アレも油ご飯って言えるわね」
浜面「まぁ、確かに白米に油かけてそのまま食べてたら変人だとは思うけどよ。
ともかく、綺麗に油を纏わせたら、とりあえずそのまま置いておく。
余計な油も分離するし」
浜面「で、次は卵の番だ。
ここがポイントの2番目だな」
麦野「まずは卵をボールに割り入れて、で砂糖入れるのね」
浜面「チャーハンに砂糖はダメだろって思うかもしれないけど俺は好きなんだ」
麦野「油ご飯見たあとだからもう、別に気にならないわよ。
それでよく混ぜ込むのね。
さっきから混ぜ込んでばかりのような気がするわね」
浜面「仕方ないよな、こういうもんだ。
で、まずは卵を炒める」
麦野「え?
ご飯入れてからじゃないの?」
浜面「それが不正解ってわけじゃあない。
ただ、こっちのほうが卵の火の通し方がうまくいくんだ」
麦野「へぇぇ……
あれ、火力弱になってる。これじゃダメじゃん」
浜面「ポイントの3!
卵料理は弱火!」
麦野「え、そうなの?
チャーハンっていったら大火力の料理じゃないの?」
浜面「麦野の言うことはすごくごもっとも。
けど、そんな大火力ご家庭じゃあ作れないからな。
ちなみに、これはオムレツもおんなじで、本当のオムレツは大火力で一気に仕上げるんだが、
ご家庭でオムレツつくる場合は弱火でじっくり、2~3分かけて半熟に作るのがいい」
麦野「強い火力が使えない場合、弱火でじっくりになるとは……
料理っていうのも奥が深いものねぇ」
浜面「まぁ、少なくとも正統派じゃないけどさ。
弱火でじっくりにすると卵が油を吸いやすいっていう弱点もあるし。
で、程よく半熟に火が通ったら一回これも別のボールに移す」
麦野「あれま、これにご飯入れるんじゃないの?」
浜面「ここまでが下準備。
ここからが本場ってわけ。
まずはフライパンが熱いうちにクッキングペーパーでさっと拭いて。
で、煙が上がるほどに加熱する。
きちんと拭いておかないとこの時焦げちゃうから気を付けよう」
麦野「そうしたらご飯を投入するのね。
油が混ぜ込んであるから、油ひきなおさないのね」
浜面「そういうこと。
で、ご飯がバラけるように木べらで切るように混ぜ合わせる。
程よくバラバラになったら、卵を投入。
すぐに醤油、オイスターソースを入れて、またかき回す。
色が均一になってきたら具を入れて、すぐ酒をいれて、ご飯の飛びすぎた水分を回復させて……
で、アルコール分が飛んだら出来上がり!」
麦野「はや!
ご飯入れてから2分も経ってないわよ?」
浜面「お皿に盛り付けて、色合いに紅しょうが乗せてっと」
麦野「おお!
ちゃんとしたチャーハンだ。
ちゃんとパラパラしてるわよ、これ」
浜面「それだけじゃあない。
きちんとご飯粒に卵がコーティングされてるだろ?」
麦野「本当!
なんで?」
浜面「卵は油と相性がいいからさ、あらかじめ油でコーティングされているのがここで効いてくるんだよ」
麦野「へぇぇ……
具は最初っから火が通っているようなもんだし、ネギは半ナマでも問題ないし……」
浜面「まぁまぁ、解説はそこまでにして、食ってみようぜ?」
麦野「では、いただきます……」
麦野「うわ、なにこれ、すごくパラパラしてる。
家庭で作ったチャーハンとは思えない」
浜面「だろ?
結構いい味してるだろ?」
麦野「まぁ、味についてはちょっと私には薄いかなって思うけど。
でも、まずいって訳じゃないわね。
オイスターソースと醤油で、じんわりと口の中に旨味が残る感じ。
文句があるとしたら、鮭チャーハンなのに、鮭の風味がないってことぐらいかな」
浜面「ちと鮭の量が足らなかったか?
それなら鮭フレークでも足してくれ」
麦野「そういう問題でもないんだけど。
なんていうのかな。この場合鮭が無くても普通に美味しいんじゃないかなって味なのよね。
ご飯と卵だけで十分なんじゃないかなって気すらするわ」
浜面「それはある意味褒め言葉だな。
チャーハンはご飯と卵の料理だから」
麦野「褒めてるっていうか、なんていうか……
でも、レベル高いチャーハンなのは確かね。
家庭のキッチンでこんなチャーハン作れるなんて思ってもいなかったわ」
浜面「俺もそう思ってた。
正直に言うとさ、これもテレビでやってた方法なんだよ。
ボケーっとテレビ見てたらたまたまやってて、それを真似しただけなんだ。
自分の言葉で喋ってないってやつさ」
麦野「それは違うんじゃない?
オリジナルじゃないにせよ、浜面はきちんとそのスキルを習得していて、私の目の前でそれを証明した。
そういうのはね、『学んだ』っていうのよ」
浜面「うん、それも褒め言葉として受け取っておくわ。
で、もう一つあるだろ?」
麦野「ん?
あ、ああ……『ごちそうさまでした』」
浜面「お粗末さまでした。
喜んでいただけてなによりだ。
冷凍したご飯だってうまく食えるもんだろ?」
麦野「本当にそうね。
最高の食材を最高のテクニックで料理するものが一番美味しいって思ってたけど、考え変わるわねぇ」
浜面「だろ?
麦野が言ってることこそが王道だと俺も思う。
けどよぉ、こういう対したことのない素材をうまく食えるっていうのも料理だと思うんだよな」
麦野「そうね。そういうことも体験しないと分からないわよね」
浜面「それに、余り物もうまいこと処分できる訳だ。
エコでお財布にも優しいってわけよ、麦野流に言うとな」
麦野「おいおい、ここで余り物処分とか言うなよなぁ。
せっかくの気分台無しだろうが」
浜面「まぁ、事実は事実だし。
それにこういうスキル持ってないと主婦にはなれないんだぜ?」
麦野「アンタ、微妙なところでドライよね。現実割り切ってるというか」
浜面「冷蔵庫の中身と会話しないと料理って作れないんです」
麦野「その割には味にこだわってるじゃない」
浜面「持っているデッキの中で最強の組み合わせを考えるのは当たり前だろ?
おんなじ材料使っているんだったら一番美味くするのがコストパファーマンスもいいってもんだよ。
費用対満足度って意味でさ」
麦野「反論はできないわね。
実際、ベチャッとしたチャーハンもこのチャーハンもコストは変わらない。
だったら美味しい方が幸せかぁ」
麦野「(コイツの『思考回路』の原則は『現実主義』なのよねぇ。
現実に負けてスキルアウトなんかやってたくせに、
一番勝利する確率が高いのであれば『自分の命をかけることを躊躇しない』程にイカれてる。
そのくせ、理想主義的な所もあるし、現実に打ちのめされて泣きそうな顔することもある。
……なんでこんな男に惚れちまったかなぁ。
それに、『滝壺を振って私を選んでくれる浜面仕上』なんてきっと魅力なんてないって理解もしてる私がいたりする。
初恋を自覚した瞬間には失恋が決定されているっていう『現実』って、どーなんだろ?)」
浜面「ん?
どうした、麦野?」
麦野「……私ってコスパ悪いなぁって、そう思っただけ」
浜面「いきなり詩人だな。
なんか賞でも欲しくなったか?」
麦野「私の欲しいのは、ソレじゃないんだよ、バカ」
947 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[sage] - 2015/04/01 21:03:56.02 E0yUyl2Qo 21/21以上です。
チャーハン作るときにマヨネーズを使うという方法、知っている人は知っていると思います。
けど、自分でやってみた結果ですが、こっちの方法の方がパラパラになります。
あと、ご飯は酒でふっくら感を取り戻せますが、火を通しすぎた卵はどうやっても元に戻りません。
チャーハンの作り方は色々とあるかとは思いますが、今現在、自分の中ではこの方法がベストですね。