53 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[sage] - 2016/02/13 20:42:34.11 U1d4Cy9y0 1/11

9レスほどいただきます。
タイトル「全員覚醒」で。

元スレ
▽【禁書目録】「とあるシリーズSS総合スレ」-41冊目-【超電磁砲】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1450865667/
54 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[sage] - 2016/02/13 20:47:25.99 U1d4Cy9y0 2/11



「なんだこれぇぇぇぇぇぇ!!!??」

上条は、今時分が見ているものが信じられなかった。
いつも寝ている風呂場で目が覚めた。そこまではいい。


右手が、龍の頭になっていた。


……カフカもびっくりだ。
具体的には、右手首から先が爆発的に広がっていて、鱗がついて頭の根元に繋がっている。
境目が半漁人の肌っぽくてグロい。
とりあえず眠ったように目を閉じているが、なんか呼吸音がするような……。

(いやいやいやこれはねーだろこれでも今までいろいろ経験してきた上条さんはたいがいのことには驚かないですけどちょっとこれはホントないっていうかこれどうすればいいのかってもう右手でジャンケンできねえよいやそれ以前に生活できねえよ俺がなにしたっていうんだよ)

混乱のあまり声を出すのも忘れる上条。
戦うときはともかく、日常生活において利き腕の右手を欠くのはあまりにも痛すぎる。
ちなみに、今の右手(?)でもグーとチョキは出せるだろう。
どうでもいいことだが。


あまりにも非現実的な右手の状況を前にして、混乱した頭を振りながら半狂乱一歩手前で風呂場を飛び出す上条を、見知った顔が出迎えた。

『おはようございます、上条当麻』

……これ以上ないほど顔は見知っていたが、纏う雰囲気も、口調も何から何まで違う。

何より、浮いてる。

「なああああああああああああああああああああああああああああ!!!!????」
『近所迷惑です。速やかに口を閉じることを提案します』

上条はこんなインデックス、いままで見たことがない。
……何かが心のどこかに引っかかっている気もしたが、今はそんなもの二の次、三の次だ。

『警告。栄養失調、飢餓、衰弱等の危険が迫っています。
 この危機的状況が解決されなければ、危険回避のため10万三千冊の魔道書から該当する魔術を使用し――』
「まってまってまって!突っ込みどころが多すぎる!
 お前そのゲーム最終盤のボスキャラで出てきてもおかしくなさそうなモードなんなの!?
 というか魔術使えんのかよ!?そして空腹を抑える魔術なんてあっちゃったりするんですか!?
 なによりかによりとりあえず、いつものインデックスはどうした!?」
『何を言っているか不明ですが、現在、主人格のインデックスは、自らの意思で自動書記を起動し、また制御しています。
 それよりも上条当麻、家主としての義務を果たして差し迫った危険に対する解決策を提示することが必要です。
 
 ――――お腹が空きました。朝食はまだでしょうか』

「…………相変わらずそれかよ」



55 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[sage] - 2016/02/13 20:49:11.57 U1d4Cy9y0 3/11



「まったく、騒がしいなお前らは」

驚天動地の中、声につられて上条がそちらを見ると、ベッドにオティヌスが座っていた。
いつもの彼女は注意を払わないとこの狭い学生寮でも見つけるのが難しい。
なにしろ大きさが大きさだ。
しかし今日に限っては、オティヌスを見つけるのはあまりにも簡単だった。

……とんがり帽子を被った人間大のサイズの彼女が、片手にバカでかいグングニルまで持っているからだ。

「オティちゃんんんんん!!!???」

もはや空いた口がふさがらない上条。
目の前の彼女はどこか得意気な顔をしているが、この状況でインデックスといいなんで二人とも余裕があるというのか。
この状況を仕組んだ誰かがいるなら、そいつに今すぐでてきてほしいという上条の切実な願いに答え、オティヌスが解説を始めた。

「お前が混乱するのは分かっている。
 妖精化で力を失ったはずの私が力を取戻し、あまつさえコイツ<グングニル>まで所持しているんだからな。
 こんなことは現実にありえない。
 ただ、ここにいる私にとってはこれは当然のことだ。疑問を挟む余地すらない」
「お前にはこの状況がわかっているっていうのか!?」
「お前が眠りから目覚めてからありえない状況の連続だ。
 だがそもそも、お前は本当に目覚めているのか?
 人間は魔術なんぞ使わなくても、そいつの脳内の電気信号の働き次第でなんでも見たり感じたりすることができる。

 ――よく考えてみろ、今のお前は本当に『覚醒』しているのか?」

「……つまり?」
「これはお前の夢だ」


56 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[sage] - 2016/02/13 20:53:32.65 U1d4Cy9y0 4/11



あっはっはー夢なのか。そいつは安心だ。

(いや、安心……なのか?)

上条のうろ覚えの知識によれば、夢はその人の深層心理を表すのではなかったろうか。
であれば、この状況が上条が望んでいることだと?

(そんなわけねえ。
 確かに、右手のことを詳しく知りたいと思ったことはあったよ?
 だけど、右手に龍の頭ぶら下げて歩きたいなんて思ったことはありませんのことよ!
 というか、なんでオティヌスやインデックスまで変に進化しちゃってるんですか!?) 

夢の中というならと、ありあわせの朝食を置いてとりあえず外に出てみた上条は、ぐるぐる回る考えを落ち着かせようとしながらさ迷っていた。



結論。これは夢だ。



道中、上条はそう思わざるをえない……というかそう思いたくなるようなものを度々見かけた。

それは真っ白な翼を生やして頭の上に輪っかが浮かんでいる学園都市第1位や、それに付き添う「ミサカはミサカは~」という語尾が特徴のどこかで見た顔のアダルトボディの美人さんだったり。

あるいは背中から天まで届かんとするほどの長さの翼を何枚も生やした学園都市第2位が妹達もびっくりな数で行進していたり。


57 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[sage] - 2016/02/13 20:56:38.69 U1d4Cy9y0 5/11



途中、お前はどこの特撮ヒーローものだと言いたくなる格好をしたライダー浜面が、時速1000kmで逃げようとしてどうみてもレベル5以上のテレポート能力を持った怖そうなお姉さんに捕まっていた。

その近くでは千手観音の如く背中から手を生やした目つきの悪いちびっ子が際どい格好をしたちびっ子を追い回し、ジャージ姿の浜面の彼女が美琴の友達とかいう黒髪ロングの女の子に何かして、その女の子が「やった!遂に私も能力者、しかもレベル5!」などと快哉を上げていた。
いったいどういう繋がりだ?繋げる力を持った上条にもわけが分からない。

あるいは、うんざりした顔をした上里が女の子に数十人単位でまとわりつかれながら歩いていたり。

止めに、魔神連合が当たり前のような顔をして歩いていたのはどうしようもなさすぎて言葉もない。
見つかってしまったから逃げる間もなく覚悟を決めたら、皆やたらと友好的でネフテュスには抱きしめられた。役得と言わざるをえない。

風斬にも会った。光り輝き、一方通行のように翼を生やして頭の上に輪っかがあったが、事情を聞いても本人は何も変わった事がないと言う。
インデックスのことを話すと、遊びに行くと言って一度頭を下げてから、嬉しそうなをしながら男子寮まで飛んでいった。癒される。マジ天使。
もはやトラウマになっている堕天使エロメイド姿で会いに来た神裂と、「あの子を傷つけたら僕のミリオンイノケンティウスが黙っていないよ」とかのたまったステイルとは大違いだ。

「……?」

上条はいつの間にか、いつもの公園にたどり着いていたらしい。
夢にしたって行き過ぎな情報量を抱えて、考え事をしている内にフラフラ入ってきてしまったのだろう。


58 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[sage] - 2016/02/13 20:59:08.64 U1d4Cy9y0 6/11



そこで、見慣れた常盤台の制服姿を見かけた。


「……お前もかよ」


薄い羽衣のような翼をまとい、パリパリと電流を迸らせている御坂美琴がそこにいた。
まるで雷神のような姿。あの形態は見覚えがある。
おっかなびっくり近づくと、こっちを向いて片手をひらひらと振った。

「おっす、格好いい右手ね」
「……あのときと違って口がきけて良かったよ」
「? 何言ってんのよ」

近くで見ると髪が逆立ち、角のようなものも生えているが、当人はまったく気にしていないらしい。
他の奴らと一緒で、自分が今こうなっているのは何もおかしくないといった感じだ。
オティヌスだけが例外だったが、あれはまあ上条に対する解説役で特別なのだろう。
上条もいつの間にかオティヌスを解説キャラとして位置づけてしまっていたらしい。

「まあいいけどさ、その右手を振るうときはちゃんと声かけなさいよー。
 一人で突っ走ったりしないで、たまには周りの奴に力を借りなさい。
 その、例えば、私とか」
「……『今の』お前なら、大抵の奴には勝てるだろうしな」
「だから単純な武力なら、アンタより私の方がって言ってんでしょ」

両腰を手に当てて心なしか胸を張る美琴。……の額から、にょっきりと大きな角が出てきた。
ぎょっとする上条に美琴は気付いていない。額の角は真ん中の辺りが大きく膨らんで中に目のような黒点が出現し、代わりに美琴の目がやや閉じられた。

59 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[sage] - 2016/02/13 21:02:39.35 U1d4Cy9y0 7/11



「え、えーと、御坂さん?」
「何よ。言っとくけど、アンタに私が負け越してるってのは重々承知だからね。
 それでも、適材適所ってもんがある。
 ……ううん、たとえそうでなくたって、私はアンタの力になりたいの」

この変化は美琴のテンションに連動しているのだろうか。
わからないが、ひょっとしてこのまま行くと――

「嬉しい!凄く嬉しいんだけど御坂――」
「もう私、あの時みたいにアンタに置いてかれたり、見送ることしかできないのはイヤなのよ」

口調こそ抑え目で、表情も分かりづらくなってきたが、間違いなく美琴の心がヒートしているのが上条にも分かる。なぜなら。

美琴の手足が伸びて長い翼と鳥の脚のようになり、身体全体が光り始めた。
果たして本人は、身体の変化に気付いているのかいないのか。

「御坂さん、御坂さん、ちょっと落ち着こう!?
 お前には散々世話になってるし、色んな奴を助けてきたんだろ!?」
「でも私、アンタに助けられてばっかりで、妹達のことだって――」
「美琴!!」

今やその手足は尖り始め、少しずつその顔が宇宙にも似た漆黒に染まり始めていた。
が、その変化も危ういところで止まった……ように上条には見える。

「いつかも言ったけどな、お前は俺の命の恩人だって。
 その時だけじゃない、グレムリン騒動の時だってそうだ。
 妹達だってお前には感謝してるんだぞ?
 
 ……いいか、お前が自分はなんの役にも立ってないお荷物だなんて大間違いなことを思っているってんなら、まずはそのふざけた幻想をぶち殺す」


なるべく刺激しないようにあくまで控えめに、しかし決め台詞まで動員して説得する上条。
美琴の表情は今や読み取れないが、その佇まいは落ち着いているように見える。

――そう思った上条は、美琴の全身が細かく震えているのに気付けなかった。

自分の台詞がどれだけ相手の心を揺さぶったのかに気付けなかった。


60 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[sage] - 2016/02/13 21:04:35.11 U1d4Cy9y0 8/11



そしてダメ押す。



「だからあんまり悪く言うなよ、俺の(仲間として)好きなヤツのことをさ」



「す、す、好k――」

ことここに至って、上条は全身が激しく震え始めた美琴に気付いたがもう遅い。
いきなり巨大な漆黒の球体が美琴の頭の上に現れた。

「み、御坂さん?まさかと思うけどこれはもしや――!?」
「ふ、ふ、ふ、ふ……」
「くっ!!」

上条は今やロケットパンチよりも使い方がわからない眠ったままの右手を無理やり振りかざす。
これは間違いなく御坂の「アレ」だ。
だが、上条の想像通りなら。
そんなラブコメチックなノリで世界を滅ぼされてはたまらないっっ……!!

球体が爆発する寸前ように激しく渦巻く。
かくして上条は日常シーンでシリアスな笑いを取るキャラのごとく、一人バトルシーン並のテンションで叫んだ。



「ふにゃーー」

「ドラゴンストライクゥゥゥゥゥ!!!」



61 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[sage] - 2016/02/13 21:06:24.99 U1d4Cy9y0 9/11




「ん……?」



ぼやけた視界と霞が掛かった頭をはっきりさせると、そこは上条家の風呂場。
上条がむくりと身体を起こす。そして、

バッッッ!!と右手をみると、…………そこにあったのは普通の右手だった。

「よかっっったぁぁぁぁあああ……………」

上条は深く深くため息を吐いた。
そりゃそうだ。誰が好き好んであんな右手を振りまわして生活していかなきゃならんのか。


(まったく、酷い夢だったなあもう)

頭を振って風呂場を出ると、そこには見慣れたシスター姿があった。
雰囲気も何もかも、いつものインデックスだ。

「おはよう、『とうま』」
「ああ、おはよ」

ほっとしながら通り過ぎようとした上条だったが、

(……ん?)

その挨拶に違和感を感じてインデックスを見つめた。

「なあ、今、なんて言った?インデックス」
「? おはよう、『とうま』、だよ。それより朝食を――」
「……なんかイントネーション違くないか?」
「え?」
「え?」


二人して首をひねっていると、ベッドの上から声が聞こえた。

「二人して何を要領の得ないことを言っているんだ」

15cmの妖精オティヌスが立っていた。これもいつもの光景だ。


62 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[sage] - 2016/02/13 21:07:46.56 U1d4Cy9y0 10/11



「なあ、オティヌス、今インデックスが俺のこと変な風に呼ばなかったか?」
「なんだ、自分の名前すら忘れてしまったのかお前は」

オティヌスがやれやれとため息を吐く。





「顔を洗ってきた方がいいんじゃないか?
 まだちゃんと『覚醒』してないようだからな


 ―――――――――――――――神浄討魔」



果たしてこれは、夢だろうか。



63 : 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[sage] - 2016/02/13 21:09:15.86 U1d4Cy9y0 11/11

以上で終わりです。
これにて失礼します。