50 : 上条当麻が堕ちる時[sage saga] - 2016/07/03 00:09:28.32 OwNdGinr0 1/8何レスかお借りします
インデックスとスフィンクスが死んでます注意 多分ネタ被りしてると思いますが許して
「スフィンクス、…インデ、ックス?」
何かしらの能力によって壊された扉を無視し、荒らされた室内に入った上条の鼻に、記憶を失って以降何度も嗅いだ未だに慣れない鉄臭い臭いが届いた。嫌な予感が喉元までせり上がってくる、心拍数が上昇する。
「………」
一人と一匹は———血塗れで倒れていた。予想出来ていた光景、同時に絶対に見たくないと思っていた光景が、目の前に広がっている。
「……………………」
インデックスがその手で抱きしめ必死に守ったおかげか、スフィンクスはまだ息があった。しかし、インデックスの血かスフィンクス自身の血か分からない程に毛並みが赤くなっている事がその命が長く続かない事を物語っている。傷口に触れないようゆっくりと抱き上げるとにゃあ、とか細く鳴き上条の指を一舐めして、それきり動くことはなかった。命が失われていく感覚だけが残る。スフィンクスをベッドに横たわらせる。
「………………………………」
自慢だった銀髪も、純白の修道服も、数時間前まではまばゆい笑顔が浮かべられていた顔も、全て全て全て真っ赤に染まってしまっている。上条にとって唯一の救いはその瞳が閉じられている事だった、その瞳がもし開いていたら—考えたくもない。
「………………………………………………………………………あ」
今まで、この世界には悪意よりも善性の方が多いと思っていた。
だが、その結果がこれだ。これも全部、自分が人間を信じ過ぎたから、人間の善性を盲信し過ぎたから、スフィンクスは動かない、インデックスは笑わない、彼女達は怒る事も悲しむ事も何もできない。何もできなくなってしまった。
「……………………………………………………………………………………………………あ、ああ…」
インデックスの身体を抱き締める。本来なら他人を安心させる様な体温を持っていた、しかし今は酷く冷たくなっているその身体を。ぽたぽたとその頬に涙が落ちる、それでもインデックスは瞳を開かない。何も、反応を示さない。
「あぁぁぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」
世界を引き裂くような咆哮があった。
今まで、この世界には悪意よりも善性の方が多いと思っていた。そんな、優しくて純粋で愚かで無知な少年は、初めて、初めて、生まれて初めて本当に———————心の底から世界を呪った。
襲撃者は息を潜め、標的が来るのを待つ。能力は大能力者(レベル4)の発火能力。一般的にはエリート扱いされてもおかしくない程度の力を持った青年がこんな世界に居るのか、それは余りにありふれた理由なので割愛する。ただ一つ分かっているのは、襲撃者の青年は標的を殺すつもりでいるという事だ。
「…!」
来た。ゆっくりと、標的の少年が此方へ向かって歩いていく。持っているのは学生鞄のみ、他に武器になりそうな物は持っていない。例の右手も、死角からの物なら反応できない筈だ、そんな風に襲撃者は考え、そして左手を少年に向かってかざした。そしてその表面から、炎が生み出され———少年の身体を貫くべく少年へ向かう。が、その炎が少年を焼く事はなかった、死角からの攻撃にも関わらずその攻撃があらかじめ来ることを予測、いや感知していた様に、少年は二つ名にもなっている右手を振るうとその炎はあっさりと消し飛び、それに怯んだ襲撃者の腹を思いっ切り蹴り付けた。
「がっ…!」
吹き飛ばされ、壁に凭れ掛かる様に座り込んだ襲撃者の前に立つと、少年はその右手ではなく、素人でも扱えそうな銃が握られている左手を向けた。
「ヒッ、止めてくれ、助け…!」
パン、パンと二つ銃声が響く。弾丸は襲撃者の太腿を貫き、腕を貫いた。男が呻くのも無視し、少年はその場を後にする。頭や心臓は狙えた筈だが、少年はそんな事はしない。別にこの襲撃者の命を案じた訳ではない、殺す事が怖いわけでもない。ただ、少年は決めている。この手で殺すのはただ一人だとあの時から決めていた。
「…」
いつの間にか、少年の背後には別の少年が立っていた。少年と同じような学生服に、金髪にサングラスといういでだちをした少年が。突然現れたその存在にも、驚くことなく、振り返る事もなく少年は背中越しに言う。
「…カミ、」
「背中刺す刃(Fallere825)」
「…」
「アレ、後は頼んだ。俺はまだ仕事がある」
「…了解だ。幻想殺し」
以前までただのクラスメイト、その次は秘密を共有する友人、最後には"仕事"仲間となってしまった少年に、土御門は何も言わない。ただ、自分の出来る範囲で彼の復讐の手伝いをする。それ位しか、彼を支える方法が今の土御門には思い付かなかった。
「………あーあ」
土御門が男と共に立ち去ると何事もなかったかの様に幻想殺しは歩き続ける。闇の奥へ、奥へ奥へ奥へ。日常の象徴を奪った者を探すために、そして—————。
「……………………………不幸だ」
57 : 上条当麻が堕ちる時[sage saga] - 2016/07/03 00:14:07.75 OwNdGinr0 8/8終わり。本当に誰もが書いたネタだと思うけどバーチャロンのキレ条さんに痺れた結果。インデックスの事になると怖くなる上条さん大好き。
御目汚し失礼しました。