絹旗「公式の出勤としては今日が超初めてですか」
浜面「お前が治安維持とはなー」
滝壺「でも、合格できて良かったね」
絹旗「ええ。どんなものか超楽しみなんですが……」
絹旗「いきなり裏路地で女の子が超絡まれてます」
絹旗「正式な配属って超まだだった気がするんですけど」
絹旗「腕章あるから突入しても超大丈夫ですかね」
浜面「ぐだぐだ言ってないで行くなら行けよ。行かないんなら俺が行くぞ」
絹旗「浜面1人じゃ超不安です。滝壺さんについてあげててください」
浜面「やっぱこいつ泣かしてえ。……まぁ滝壺は任された」
滝壺「きぬはた。気をつけてね」
絹旗「超わかってますよ。……さて」
絹旗「そこまでです。そこの超気持ち悪いお兄さんたち」
絹旗「超風紀委員です!」
黒子「あら、絹旗さんではありませんの」
絹旗「白井さん。超遅かったですね」
黒子「風紀委員が偶然居合わせてたなんて報告受けてませんわよ」
絹旗「本当に超偶然通りかかっただけですけどね」
黒子「というか。貴女まだ正式な処理をしてないでしょう?」
絹旗「やっぱ超まずかったですか?」
黒子「一応始末書の書き方お教えしますわよ」
絹旗「超最悪ですね……」
黒子「何を他人事みたいに……」
黒子「ところで、あちらのお二人はお知り合いで?」
絹旗「ええ、知人です。柵川に行く途中まで出かけついでについてきてくれてたんですけど」
黒子「なるほど」
絹旗「まだ時間超かかりますよね。超待たせるのも悪いのでちょっと行ってきます」
黒子「わかりましたの」
絹旗「超お待たせしました」
黒子「仲がよろしいんですのね」
絹旗「あの二人はいろいろありましたからね」
絹旗「この先は超平穏に過ごしてもらいたいんですけど」
黒子「貴女は……」
黒子「あの二人を守るために風紀委員になったんですのね」
絹旗「なっ……!?」
黒子「そう照れなくてもよろしいんですのよ」
黒子「訓練の時に聞いた志願理由より、ずっとそれらしくていいですわよ」
絹旗「……訓練の時って私何言いましたっけ? 超覚えてないんですけど」
黒子「適当に口から出た志願理由なんて今となってはどうでもいいことですの」
黒子「貴女はあのお二人を守りたくて風紀委員に志願した」
絹旗「べ、別に私はそういうつもりで志願したわけじゃ」
黒子「本当に?」
絹旗「………………」
黒子「わたくしも、最初でこそ人の役に立ちたい、なんて思ってましたの」
黒子「もちろん今もそれに変わりはありませんけど」
黒子「今はそれだけじゃありませんのよ」
絹旗「さっきの言い方だと、その方が超自然ってことですか」
黒子「ええ。わたくしも守りたい人たちが、世界がありますの」
黒子「貴女が、あの方たちを、あの方たちの世界を守りたいように」
絹旗「……どうしてそんな話を超急にしだしたんですか」
黒子「貴女はわたくしに似ているかもしれない。そう思ったからですわよ」
絹旗「超不本意ですね」
黒子「言ってくれますわね」
黒子「……認めませんの?」
絹旗「認めましょう。超その通りです。特にあっちの男の方には借りが超あるんです」
絹旗「風紀委員の仕事でどこまでそれが返せるかなんてわかりませんけどね」
黒子「……やはり貴女は風紀委員(ここ)で自分を犠牲にしようとしてるんですのね」
絹旗「おかしいですか?」
黒子「ええ。せっかくですし、しっかり忠告しておきますわよ」
絹旗「なんで超そこまで噛みつかれるのかわかりませんけど、聞きましょう」
黒子「とある大馬鹿野郎みたいですの、その考え方」
絹旗「大馬鹿野郎って……」
黒子「その方のおかげでわたくしも今の考えのように至ったのですから、感謝すべきなのかもしれませんけど」
絹旗「……それで?」
黒子「…………」
黒子「貴女の守りたい世界に」
黒子「貴女自身は居ませんの?」
絹旗「そ、それは……」
黒子「貴女が犠牲になった時、あのお二人は悲しみませんの?」
絹旗「…………」
黒子「わからないのなら代わりに教えて差し上げましょう」
黒子「貴女にあのような優しい笑顔を向ける方々が、貴女の犠牲を悲しまないわけないでしょう」
絹旗「わかってますよ、超わかってますけど……」
絹旗「そういうの自分で言うのも超恥ずかしいですし」
黒子「それはそうですわね。でも、自覚してるのなら話は早い」
黒子「自分自身を守るべき対象にしなさい。自分を犠牲にする以外の道を探しなさい」
黒子「見つかるまでの間はわたくしがその世界を、貴女を守って差し上げますわよ」
絹旗「……それ、超屈辱です」
黒子「だったら、早くすることですのね」
絹旗「肝に銘じておきましょう。ところで……」
絹旗「その大馬鹿野郎さん、超変な人なんでしょうね」
黒子「ええ、それはもう」
黒子「お姉様とその周りの世界を守るという約束があるとかなんとか言って」
絹旗「……お姉様?」
黒子「ほとんど他人だったわたくしの命まで助けてくださったのに」
黒子「お姉様にも認められて、それでもあの方は……」
黒子「自分をその世界に含むことなく危険に飛び込んでいってしまうのですから……」
黒子「今の言葉は、あの方にも言いたいのですが。それこそ耳にタコができるくらいに」
絹旗「超言えばいいじゃないですか」
黒子「それが、……すごい鈍感なんですの」
絹旗「はい?」
黒子「おっと、おしゃべりはここまでですわね」
黒子「行きましょう。警備員と合同で検証ですわよ」
絹旗「あ、ちょっと……」
絹旗「ふふ……。白井さんも、その人に負けないくらいに超変な人ですね」