282 : 無能力者は終末への夢を見るか?[] - 2010/06/13 10:26:33.16 Nv0QVcEo 1/27ギャグばかりかいてるとその逆が起きたりとかね!
何レスかお借りします。
最後あたりグロ注意、学園都市が外によって滅びたという設定です。
※途中まで
――学園都市は滅びた。
能力者は悪とされて。狂った人間とされて。
世界は学園都市を滅ぼし、学園都市は自らが生み出した兵器で滅びた。
能力者は、一人残らず殺される事となり。
原石は、一人残らず使いつぶされる事となり。
虐殺されゆく能力者。
人として扱われない原石達。
――無能力者は、ただそれを廃墟と化した学園都市で見る事しかできなかった。
元は公園だったであろう廃墟の中、唯一形を残したまま存在したベンチに二人の人影。
「……なぁ佐天さん、泣いてても仕方ないだろ。」
「……ひっく、わかってるけど、初春がぁ……」
無能力者浜面仕上は同じく無能力者である佐天涙子の隣に座っていた。
別に怪しい理由などではなく、彼女が泣いてるのがほっとけなかったのだ。
今、佐天が泣いてる理由は、
昨日、目の前で彼女の親友が、「レベル1の保温の能力を有していた」だけで殺された事。
別に『今の学園都市』では珍しい事ではない、と浜面は思っていたが、やはり自分の知人が殺されるのは悲しいに決まってる。
「……み、御坂さんや白井さんだって、キャパシティダウンの中、がんばって、それで、死んだんですよ……」
御坂、その言葉はチンピラの浜面には聞き覚えがある。
学園都市第三位、超電磁砲の異名を持つ電撃使い――御坂美琴。
そう、御坂美琴もレジスタンスのリーダーとして抵抗して死んだのだ、と思いだす。
「……俺達に出来る事は、その初春っていう奴の代わりに長く生きるのと、こんな不条理な街から逃げられるように努力する事だ」
そういう浜面自身、大事な仲間をなくしている。
アイテムと呼ばれた、暗部のチームだ。
レベル5の麦野は無論、そのほかのメンバーも大能力者や爆弾魔という事で危険視され、キャパシティダウンの中虐殺された。
第四位ですらこの始末なのだ。
他の大能力者をはじめとするレベル5以下レベル0以上の能力者は、監視に見つかれば即刻殺されていった。
噂では、第一位、一方通行も演算能力を剥奪された上蜂の巣にされて殺されたらしい。
「……佐天さん、とりあえず地下に行こうぜ。 こんな所いて、監視の目にかかったらいくら俺らでも危ないしな」
地上にいては監視に見つかる危険性が高く、殺される可能性もある。
最近では、能力者にあきたらず無能力者まで狩るようになっていった。
そこで彼らは、監視の目が届かない地下で暮らす事を強いられた。
「……そうですね、私も、うじうじしてたら、初春におこられちゃいます……」
涙を拭いて、力なく笑う佐天。
アイテムのメンバーが殺された時、俺もこんなやつれた表情をしていたな、と浜面は同情していた。
学園都市にもまだ超能力者は何とか逃げて生き延びていた。
その生き残りの一人である垣根帝督は、廃ビルの屋上から曇天の空を眺めていた。
空一面が黒く見え、今にも雨が降り出しそうだ。
「……つまんねぇの……。」
一見すると飛び降り自殺でもするのか、と思われる程バランスの悪そうな場所に腰をかけ、適当に買った紙パックのムサシノ牛乳を飲む。
『監視』の目に見つかればアウトだが、逆にいえば監視の来る時間が分かっていれば外に出ても安全なのだ。
その、『日替わりで変わる監視についての情報』を、垣根はとあるルートで入手していた。
今日は、その情報を持ってきた人物と会うためにここにやってきていた。
しばらくすると、カツ、カツと足音が屋上に響いた。
「よぉ、第二位。」
「……相変わらず元気そうだな、ナンバーセブン?」
学園都市の第七位にて、世界最大の原石――削板軍覇。
今現在学園都市の能力者は殺されている。が、どんな分野にも例外はある。
原石、は自然に生み出されたものである為、という建前で、超能力開発の為の実験に利用されている。
無能力者、は能力がないヤクチュウという事で反逆しない限りはほっとかれている
彼は前者であった。
身体をいじくりまわされる代わりに、彼自身の安全と少しばかりの自由、そして人質の安全を得ていた。
反逆防止策として、体中に学園都市によって作られた爆弾も入れられてようやく、だったが。
その『人質』が誰であるかは垣根はしらない。知る必要はなかった。
恐らく、彼にとって大事な人なのだろう、と適当に推測する事はあっても、基本興味はない。
ただ、削板がせめてもの抵抗として流すその情報こそが重要。
垣根はその情報を、直接渡せない削板に代わって、さらに「レジスタンス」に横流しにするだけだった。
『それだけ。』
思わず、その言葉が胸に刺さり、目を細める。
そして、同じレベル5の姿が自然と思い出された。
打ち止めを託して殺された第一位は、少なくとも一人を救えた。
レジスタンスのリーダーとして、人々に希望を与えた後に第三位は『世界』に殺された。
第四位は、一人の無能力者を庇って死んだらしい。
第五位はいまだにもぐっていて、生き延びようと努力しながら、情報を集めてるらしい。
第七位はこの通り、いまだに抵抗しようともがいてた。
――では、第二位である自分は?と考えずにはいられなかった。
他人が得た情報をただ横流しにして、自分の為に生きて。
ただ、第一位や第三位が目の前で死ぬ所を見て。
何もしなかった。
結局、『垣根帝督』という人間は。
「……どうしようもねぇ奴だ」
「? どうした垣根?」
その最後の言葉が口に出ていたらしく、反射的に垣根はビクッ、となる。
「……何でもない、気にするな。 俺は打ち止めにご飯作ってやんねぇといけねぇし。また今度な」
「お、おぅ。」
打ち止め。現在垣根帝督が預かっている、小さな妹達の上位個体。
それは今は亡き一方通行に、遺言で託された守るべきもの。
削板も何度かあった事はあった。
「じゃ、地下に戻るぞ。お前もバレないように帰れよ。」
そういって逃げるように屋上から立ち去る。
能力は使わない。徒歩だ。
理由は単純。彼の能力はメルヘンとかそういう問題以上に、ひたすら目立つからだ。
いくらなんでも天使のような奴が空を飛んでいたら、『監視』の時間じゃなくても虐殺確定だ。
キャパシティダウンを直接向けられた時には墜落して惨めに殺されるのだろう。
『監視』の方もAIMを感知する何かはあるのだろうか、性能が悪い為、それでバレる事はレベル5クラスでもまずない。
元々『学園都市』は科学の頂点だ。
学園都市製の兵器を何段階も落としても世界で通用していたような、まるでチートのような存在だった。
そこが作った物でようやく超能力者や大能力者等のAIMを感知出来る。
……ちなみに、学園都市が作ったそれも、その他多くのものも、大規模殲滅戦の時に焼き払われている。
(……まだ再現すら出来てないのに滅ぼすなんて、世界って何を考えてるのかわかんねーな。)
長年暗部に身を置いた垣根だが、世界はそれ以上に深かった。
地下。
それは防空壕とかそういった物ではなく、地下街をそのまま利用してるためにけっこう広いしきれいだ。
今は無能力者や逃げ延びた能力者達と一緒に、レストランをやったりゲーセンを経営したりと、普段と変わらない日常が行われていた。
が、無論地下に全てがそろってる訳はなく、地上に出る必要もある。
その時に監視の目に見つかれば、処刑される。
そう分かっていても、ここより安全な所は思い当たらない為、人々はここで生活してるのがほとんどだ。
垣根はとある居住スペースに戻る。
「おい、いるか?」
それだけで誰が帰って来たか分かったらしく、中から10歳程の少女が出てきた。
「あ、カキネだってミサカはミサカは帰ってきた事に喜んでる事を身体全体で表現してみたり!」
ピョーンピョーンとその場で跳ねる打ち止め。
垣根としては彼女は守るべきもので、第一位としてはの最期の希望だった。
「……ねぇ、カキネ、今日の晩御飯は何なの?ってミサカはミサカはお腹空いた事をそれとなく示唆させてみたり。」
随分時間がかかってたらしく、時計を見るともう夜だ。
「しょーがねぇな。 じゃ、今日はおでんでも食べに行くか?」
それを聞くなり打ち止めの目が輝いた。
「いく!いくってミサカはミサカは!」
今度は垣根の周りを回るように飛び跳ねる。
ちなみに。
彼女は一方通行が死んだ事を知らない。
ナンバーセブンはすでに雨が降りしきる中、実験場に戻るために歩いていた。
高速移動が可能な削板だが、彼は能力を使わない。
否、使えない。
世界最大の原石として、その能力は応用性が高く、『危険』だった。
それは学園都市では
だから今も身体に能力を落とすそれを埋め込まれてるし、
もし使ったとなったら、身体の一部が吹き飛んで制裁を加えられるように、爆弾も埋め込まれてる。
(……、本当は第二位がしっかりしてりゃ、心おきなく戦えたんだけどな)
第二位の垣根帝督は、一方通行が死んだせいで現最強の座にいる。
が、悪党と自分を責めているのであろう彼は、レジスタンスのリーダーになる事もなくただ過ごしている。
(……別に悪いとはいわねぇし、わざわざ危険を賭して情報を受け取って、横流ししてくれるだけで十分だけどな)
仕方ない事だ。と思い、彼は空を見上げる。
ひたすら暗く、ただ降りしきる雨。
勢いを増す事はあっても、未だその雨は止まず。
その雨の中、二人の無能力者が地下に入った。
「すいませーん、タオルとかありますか…?」
佐天涙子はこの雨の中、服も靴も全部びしょぬれの状態だった。
隣の浜面も同様の状況だ。
「どうぞなの。」
それを見かねてか、同じくらいの年齢の少女が二枚程タオルを持ってきてくれた。
一枚を浜面に渡し、とりあえず髪を拭く佐天。
「あー、服とってこなくちゃ……」
学園都市のクリーニングはすごく、服を傷めず一瞬で乾かせる。
なので、この雨で部屋干しだとか半乾だとかそんな心配はする必要はなかった。
「佐天さん、風邪ひかねぇようにしてくれよなー」
「それをいうなら浜面さんもびしょぬれじゃないですかー」
そんな会話をして、二人とも自分の場所に戻る。
部屋に戻った佐天は自分の携帯を開く。
(……初春。)
初春が生きていた頃のメールを開く。
悲しかったが、現実味がなかった。
目の前で蒸発するように殺された初春。もしかしたら――
そんな希望的観測と、そんなはずはない、という考えがせめぎ合う。
ただ、理解できているのは、自分のせいだという事。
何度も何度も繰り返す、昨日の悪夢のような現実。
昨日は地上から武器等細々した物を回収しにいったのだ。
レジスタンスのリーダーである御坂美琴は既に死んだが、レジスタンス自体は未だに活動を続けている。
そのメンバーでもあった元風紀委員の初春と一緒にいった。
のだが、途中で佐天が地図を落としてしまい、迷子になった。
そのせいで、一緒にいた初春が。
監視に見つかった。そして――
「――ッ!」
思わず、恐怖と後悔で声をあげそうになる。
体中に鳥肌が立つ。体中が震える。歯がガチガチと音をたてる。
あの時初春は何を思ってたのだろうか。
叫び声すらあげる間もなく。
駆動鎧(パワードスーツ)のようなものに砲口を向けられて。
一瞬で溶けて消えた。
死という恐怖を目前にして歪んだ、あの時の顔が脳に焼きついていた。
「……私が、もし、能力者で、初春より、強かったら、私が、代わりに[ピーーー]たのかな……」
手の力が抜け、携帯が落ちた。
その震える手で、頭を抱える。
もう既に意味のない、その問答をただ繰り返した。
――
とある第二位の独り言
『例え、明日が絶望だったとしても!私はあらがう!この街を守るために!』
誰が言ったかその言葉。
そう、確か第三位が言ってた言葉だ。
あいつはその後、レジスタンスに参加したほかの奴らを守るために、身を呈して闘って。
死んだ。
俺は別にあいつが悪いとかそんな事を言うつもりはねぇ。けど……。
なぁ、打ち止め?
お前なら、第一位と一緒にいたお前なら分かるだろ?
何もせず生きてる俺と、
何かを守りたいが為に死んだあいつら。
そして、今もあらがってるあいつ。
誰が、一番ダメな人間か、お前ならすぐ分かるだろ?
――
とある複製品の感想
カキネ、どうしてそんな悲しそうな顔をしてるんだろう、ってミサカはミサカはただ疑問に思ってみる。
今日だけじゃない、あの人がどっか長い旅をし始めた時から、ずっと。
だから、ミサカは心配している。
このカキネは、あの人が戻ってくるまでの間、ずっと世話をしてくれているこの、優しい人を。
自分を悪党とかいってる所とか、あの人に少し似ているから、
あの人みたいに何か抱えてるのかも、ってミサカはミサカは根拠のない考察をしてみる。
あ、もうおでん屋さん着いたみたい、だからミサカは考えるのをやめてみる。
……やっほぅ!これは味が染みてる大根だってミサカはミサカはおいしさを身体で表現してみる!
翌日。
朝から、相変わらずの曇天だった。
ただ、雨は降っていなかった。
初春の墓を作るという事で、浜面と佐天は廃墟が転がる地上に出た。
二人とも無能力者で、何より垣根がよこした最新の『監視』についての情報に基づいて動いてる。
別に危険がゼロという訳ではないが、襲われる危険があまりないと踏んでいたからだ。
そして、二人は初春が殺された場所に来た。
元商店街に出る、路地裏だ。
そこには血痕一滴すら残っていない。
ただ、道路が一部、異常な程の熱によって溶けかかっていた。
「……やっぱり、初春は死んだんですよね。」
そう自分に言い聞かせる佐天。
浜面は、伏せていて分からないが佐天が昨日会った時と同じような顔をしてるのだろうと推測した。
「……佐天さん、」
「いいんです。 早くやりましょう、そうしないと、監視がきますから。」
言葉を区切って、今やるべき事を確認するように告げる佐天。
浜面は、佐天に何も言えなくなった。
黙々と作業を続ける二人。
ようやく作業を終えた時、既に昼になろうか、という時間だ。
「今は、こんな墓だけど……。 いつか絶対立派なのを作るから、待って、てね、初春ぅ……」
途中から嗚咽が混じる佐天。
涙が一滴、落ちた。
堰を切るようにして、佐天は泣いた。
「……ごめ、なさい浜面さ、ん、わ、私、まだ気持ちの整理が……」
「俺だってそうだったし、泣くのは悪い事なんかじゃない。」
「で、でも……」
「泣きたいときに、泣いた方がいいぜ?」
アイテムのメンバーが死んだ時、誰かにそう言われた。
それと同じ事を、浜面は佐天に言う。
「……ひっく、あり、がとうございます……」
それを隠すように、雨が再び降り出した。
ガシン、ガシンと雨の中で物音が響いた。
高さはおよそ5m。シルエットは駆動鎧に近い。
学園都市の廃墟の中、人型兵器が、パトロールをしていたのだ。
迷彩などはせず、あえて目立つような白いカラーリング。
だが、能力者などの学生を処刑した際の返り血をそのままにしてる為、所々赤く染め上げられている。
その姿も、その残虐な性能も、全てが学生たちに恐怖を植え付けていた。
「……ちっ、こっちもこっちで忙しーってのに。これだからジャパニーズは」
その、『恐怖の代名詞』のコクピットには、一人の金髪碧眼のグラマーな女性がいた。
その主張の激しい胸のおかげで、身を黒いスーツで縛り上げているようにすら見える程。
ウェーブのかかった金髪。顔立ちも整っていて、その碧眼は宝石を思わせる程。
ただ、今の彼女を手放しで美人だと言える人はなかなかいないだろう。
なぜなら。
・・・
「こちとら学園都市のうざってぇ奴らを皆殺しに出来るっつうんでわざわざ入隊したんだぜぇ!?」
その形の整った唇から漏れる言葉はあまりにも恐ろしく。
その顔は獲物を逃したといったような、行き場の無い怒りのあまり恐ろしく歪んでいた。
「……最近監視の網にひっかからねぇしよぉ……」
ギリギリ、と歯ぎしりをする音。
「……ま、いっかー♪ とりあえず目についた物ぜーんぶ皆殺しすればいいや♪」
急に、にやりと、待ち受けているだろう快感を思い、顔をほころばす。
もっとも。その表情は傍から見ると、恐怖しか与えない物だったが。
恐怖は、ただ雨の中、蠢いていた。
人を壊すためだけに。
削板は学園都市に新規に建てられた原石実験場の中庭にいた。
灰色の高い壁に切り取られた、四角の雨空。
今は昼の休憩時間で、この時間には他の実験隊である原石に会う事が出来る。
彼がここにいるのは、実験場で唯一空を見れる場所で、単に原石が集うような場所だったからだ。
「くっそ……。 また雨かよ。はっきりしねぇ天気はこれだから……」と、どうにもならない事にイラついている削板だったが、
「削板君。ちょっと時間ある?」
という聞き覚えのある声がしたので、音源の方に向く。
「時間ぐれぇはあるけど、何だ? 姫神。」
彼の視線の先にいたのは、巫女服姿の原石。
検体名(というより能力名)は『吸血殺し』。姫神秋沙だ。
「今度。学園都市に抜け出す時に。持っていってほしいものがあるんだけど。」
姫神は持って行ってほしいものであろう小さな箱を持っていた。
「おう。今度と言わず今すぐでも構わねぇぜ?」
いつの間にか姫神に近寄り、箱を(勝手に)受け取る削板。
「こんなご丁寧に、包装までしっかりしてさ?よっぽど大事な奴がいるんだろ?」
「………そう、だけど。」
図星だったのか、少し動揺する姫神。
それを知ってか知らずか、削板は続けた。
「善は急げ、って奴だ。 今日にでもまた抜け出して持ってってやるよ」
クルッ、と姫神に背を向ける。
「……二日連続は。さすがにいけないんじゃ。」
「大丈夫だ。バレて実験内容が少しばかり増えるだけだろーし。」
まるで彼の口ぶりだと、実験自体が楽そうな物に思える。が、実際はそうではない。
姫神は死ぬギリギリまで血を抜かれた。
削板は、世界最大の原石として、どんな扱いを受けたのだろうか。
しかし、削板は笑っていた。
姫神が随分前に本人に聞いた事がある。
その時、彼はただ、『自分だけ逃げるような根性無しにだけはなりたくねぇ』と言ってた。
「宛先は、上条当麻って奴でいいんだな?」と確認だけして、すぐさま出かけて行った削板。
姫神はただ、それを見送る事しかできなかった。
削板が実験場を抜け出した。
姫神に託されたものを、とある人物に渡す為に。
佐天と浜面が地下街に戻ろうとしていた。
目的を果たし、それ以上いるのは危険なだけだったから。
恐怖の代名詞が獲物を探していた。
ただ、学園都市の人間を殺したいが故に。
雨は。そんな彼らをも包み込んでしまった。
もう昼を回った。
垣根は、墓を作るといっていた二人が気になった。
いくら墓とはいえ、本格的な物を作る訳でもないし、本人達も2、3時間で戻ってくると言っていた。
「……あいつら、遅いな。」
「そうだね……。 監視の目に引っかかってないといいけど。てミサカはミサカは希望的観測を述べてみる。」
打ち止めの言った通り、監視に見つかっている可能性もある。
だが、最新の監視のルートを削板から受け取った。恐らくそれはないだろう。と思っていたのだが。
「……雨ひどくなってきました……」
「今日も降りそうな雰囲気だったし、仕方ねぇよ。」
相変わらず、雨は勢いを増すばかりで一向にやむ気配がなかった。
昨日と同じようにびしょぬれになった二人。
さすがに二日連続だと風邪を引くかもしれないと思い、急いで来た道を戻る。
一方、削板も急いでいた。
姫神から預かった小箱を塗らす訳にはいかなかったからだ。
そして、『恐怖の代名詞』は獲物を探していた。
恐怖の代名詞のパイロットは、人影をレーダーで発見した。
どうやら能力者らしい。
……みぃーつけた。
思わず舌舐めずりをしてしまう。
興奮して操縦桿に力を入れる。
「……さぁ、虐殺ショーの始まりだあああああ!」
グッ、と操縦桿を前に傾ける。
――
そのオブジェクトとも形容出来そうな勢いで突っ込んできた『恐怖の代名詞』。
削板はそれに気づいた。が、遅かった。
「ご、っがああああ!?」
何が起きたか分からなかった。気づいたら地面を何度もバウンドしていた。
ただ、何か物理的に吹き飛ばされたのだと思った。
その『恐怖の代名詞』のスピーカーから、女性の声が聞こえた。
「あらあら?能力は使わないの? 今ならキャパシティダウンきってあげてるけど?」
そう言いながら、人型のオブジェクトは巨大な足を持ち上げて、削板を踏みつぶそうとする。
(ちくしょう……! 能力さえ使えれば!)
能力を使えば、恐らく身体が爆散する。
今はただ、逃げる事しかできない。
突如、『恐怖の代名詞』が砲口を向ける。と同時に青白いレーザーが発射され、削板は衝撃により再び転がった。
「ぐ……」
「んんー? あら、あんたもしかしてぇ原石!?」
ようやく気づいたらしく、少し動きを止めた。
削板は少し安堵した。実験体である彼は、それなりに価値がある為、容易に殺されはしない。
………はずだったが、すぐに絶望に塗り替えられる。
「ま……いいや♪ せーぜー抵抗ぐらいしろよぉモルモットォ!」
ドガッ!と再び動き出す『恐怖の代名詞』。
腕状の武器によって殴られ、10mぐらい吹き飛ぶ。
能力が使えれば、これぐらい何でもないはずだったのだが。
何度かそうやって弄ばれた後、ようやく攻撃をやめた。
削板はもう動けなかった。
むせて、せき込んだ。血が吐き出された。
もう骨は何本か折れていた。内臓も破裂してるかもしれない。
それでも。
『恐怖の代名詞』は、その名を体現するかのように。
恐怖を彼に叩き込んだ。
「……じゃ、まずは足でももらおうかなーっ♪」
「……ッ!?」
パイロットはそう宣告してから、削板を機体の腕で掴んだ。
「……じっくり痛めつけてやるにゃーん♪」
「ぐ、がああああああああああああああああ!?」
絶叫が、雨の中響いた。
ありえない力で、足が引っ張られる。
激痛が走る。
ビキビキ、と嫌な音が足からする。
「あれー? 案外力足りないのかな―?」
そう軽く言って、さらに引っ張る力を強くするパイロット。
「ああああああああああああああああああああああああああ!!」
ブチン、と何かがとれた気がした。
激痛を通り越してもう感覚がない。
感覚が、ない。
佐天と浜面が叫び声を聞いた。
「今の……何だろ?」
「……ただ事じゃねぇな、もしかしたら『監視』に誰かが見つかったのかもしれねぇ」
『監視』。今の時間は巡回の時間ではないはず――だが、その線はありえる。
それを知ると、佐天は考えるより先に身体が動いていた。
「おい、佐天さん!どこへいく!」
「私、いかないと! もう誰かが死ぬのは見たくないんです!」
「もう手遅れだ!今の声を聞いただろ!? もう殺されてるに決まってる!」
あきらめろ、と浜面は言った。
しかし……浜面の制止の声も振り切って、佐天は雨の中、駆ける。
目指すは叫び声が聞こえた場所。
「……くそっ、俺も行くぞ!」
浜面も、佐天の後を追う。
佐天と浜面が叫び声が聞こえた場所に辿り着いた時、すべては終わっていた。
「きゃーははは! いい様ねぇ能力者さん!?」
「………っ」
浜面は、『監視』であり『処刑』を行う、世界が用意した兵器だと勘付いた。
恐怖の代名詞のスピーカーから聞こえる声は、あまりの嬉しさに笑いが込められていたよう。
恐らく、無能力者の二人については気付いていないのだろう。
そして
「……あれは、」
佐天は、目の前の光景を見て、何も言えなかった。
目の前の、もしかしたら初春のカタキかもしれない兵器よりも。
その信じたくない光景に目を奪われていた。
返り血を浴びたような兵器は人型だった。
その兵器の腕の先に、ナンバーセブンがいた。
そのナンバーセブンは。
膝から下が、なかった。
正確には。
膝から下の肉の部分がもぎとられたように、なかった。
血濡れた骨が、突き出しているようにただ不自然にあった。
ボタリ、と血が骨を伝って落ちていた。
血が落ちていく先を見ると、そこには、
無理やり握って固めたかのような肉塊があって。
「ぐ……うぼぁ!?」
佐天はそれを見て、強烈な吐き気に襲われた。
こみ上げるそれは限界で、無駄だと分かっていたが口に手を当てる。
「佐天さん、見ちゃダメだ! 早く地下街に戻れ!」
浜面は暗部関係の仕事をしていた為、多少の耐性はあった、が見たいものではない。
「あらあああん? 無能力者がいたのぉ!?」
こちらに気づいたらしく、機体が二人の方に向いた。
「く……! 逃げるぞ!」
浜面が佐天の腕を引っ張って地下街に走ろうとする。が、佐天は動こうとしない。
「佐天さん、あいつはもう手遅れだ! あんだけ血が抜けてたら失血死しちまう!俺らまで死んじまう!」
浜面は握る手に力を込め、急かす。
だが、佐天はそれでもその場から動かない。
吐き気をぐっと飲み込み、『恐怖の代名詞』から目を離さず。
「……私は、あの人を助けます。もう、死なせません。」
「………佐天さん……。」
浜面はその言葉だけで、彼女が何をしようとしてるのかを理解した。
―親友が助けられなかった。そして、今目の前で。
そこまで思案すれば十分だ。浜面は手を離した。
「!? ……浜面さん?」
「行くぞ。どうせあいつら化け物なんだ、逃げても追いつかれるさ。」
「……、すいません。付き合わせる事になって。」
「いいんだ。 それよりも、早く始末つけないとナンバーセブンが死ぬぞ」
「……分かりました。行きましょう!」
パイロットは二人のやりとりを見てもなお、余裕を崩さなかった。
「……無能力者の分際でたてつくの? ……ま、ちょうどいいわ」
腕を横に薙ぐ。ナンバーセブンが腕から離れて、地面に落ちた。
「……ちょーど、皆壊したい所だったのよねぇ!?」
後にオブジェクト 0.1世代とも言われる『恐怖の代名詞』に、
たった二人の子供が挑んだ。
そして。
同時刻。
降り出した雨はますますひどくなった。
そんな中、金髪碧眼の青年が、学園都市に侵入した。
侵入者と聞いて駆け付ける警備隊と駆動鎧部隊。
無論、超能力者の反逆という可能性もあるため、キャパシティダウンも発動させていた。
しかし、一分とたたない内に彼らは戦闘不能になる。
その侵入者の男は、傷一つさえ受けなかった。
その侵入者の男は、指一つさえ動かさなかった。
それなのに、彼らは全て地面に倒れ伏せた。
『理解することすら不可能な力』によって、全身にまんべんなくダメージが浸透して。
侵入者の男は、倒れたそれらを一瞥して、ため息をつき、独り言を吐いた。
「学園都市……。 やはり、あれを任せる事も出来ないな。」
彼は適当な駆動鎧を見繕い、中のパイロットを引きずり出して地図を借りた。(というか奪った)
地図を広げ、とある実験場の場所を確認する。
「……さてと、あれが行使される前に、原石を全員保護しないとな。無論、あの少年も」
地図を戻し、廃墟同然の学園都市を行く男。
目的はただ一つ。
場所は変わりイギリス。
オフィルビルに近い建物の一室にて、二人の人影が対峙していた。
「ぐぐぐぐ……、何たる事だ!我々の崇高なる目的を邪魔するつもりか! イギリス清教!」
とある魔術結社のボスであろう男が、負け惜しみに近い台詞を吐いた。
「崇高な目的だと? 笑わせるな。」
そう言って赤髪の神父、ステイルはあらかじめ設置していたルーンのカードを用い、魔女狩りの王を召喚する。
灼熱が人の姿をしたような、教皇クラスの魔術だ。
「な……!?」
驚いたボスは、後ろへ尻もちをつく。
「早く言え。あの子は、禁書目録はどこにいる?」
ステイルはいらだちを隠さず、目的だけを言った。が、ボスはうろたえながらも答えようとしない。
「……そうか。じゃあ、死んでもらおうか。」
「は……何を……?」
ボスが何かを言いかけたが、聞く必要はなしと判断した。
その直後、魔女狩りの王が、ボスを飲み込んだ。
叫び声をあげる間もなく、男は骨だけの焼死体と化した。
「ふん、手こずらせてくれるね。まったく。」
ステイルは禁書目録を回収、もとい連れ帰る為に一人で乗り込んだ。
ちなみに、彼が怒っているのは魔術結社が彼女を攫ったからではなく、
現保護者である、学園都市の上条当麻が彼女が攫われるのを止められなかったからだ。
(……今度会ったら炎剣を四発ぐらいぶち込んでやろう)
ステイルは上条当麻を殺す勢いで恨みつつ、ビル内のどこかにいる禁書目録を探す事にする。
「浜面さん、とりあえずあの人を止血しないと!」
「分かってる、くそ! あのヤロウ! 腕振り回すせいで近づきづらいなっ!」
浜面と佐天はそう言いながらも、大雨の中削板に近づく。
『おい何してるんだー!? さっさとつぶれちまえ!ヤクチュウども!』
ご丁寧に日本語で罵倒するパイロット。
ビュン!と当たれば吹き飛ぶような勢いで、腕が二人の間をかする。
「ちっ、何だよあいつ!? 見えてないのか!?」
「そっちの方がありがたいですけどね!」
二人はそう言いつつも、先程振り落とされた削板を二人掛かりで抱えて逃げる。
とりあえず地下街に行けば、カエル医者もいる。時間との勝負だ。
『んー? 原石が移動……? テメェら、そいつ助けたいワケ? ばっかじゃねーの!?』
駆動鎧にも、オブジェクトにも似た機体が三人を追いかけようとする。
「うわっ!?」
「ちっ、何だあいつ!? さっきからの様子みると、俺らの事は見えてないのか!?」
そう言いつつも着実に距離を埋められる。
「どうしよう……! とりあえず止血しないと!」
佐天の言うとおり、削板の足は骨がむき出しで、ボタリボタリと血がまだ流れている。
「分かってるが、どうする!?」
今のところ、あの機体のパイロットの趣味か、自らの手(といっても機体の、だが)で潰したがっている。
よって、恐らくレーザーやレールガンの類は使わないだろう。が……。
距離を詰められれば、三人とも潰されてしまうだろう。
とても止血なんて事をしてる暇はない。
「くそっ……とりあえずあのビルの中入るぞ!」
「はい!」
二人はそう言って廃ビルの中に飛び込んだ。
二人は知らなかったが、そこは昔、とある錬金術師と魔術師と幻想殺しが戦った、三沢塾だった。
『どこだー?どーこーだー?』
ガシンガシンと音を響かせながら、三沢塾の前を通る『恐怖の代名詞』。
二人はそれが通り過ぎるのを確認して、ホッと一息つく。
彼らがいるのは三沢塾の隠し部屋だ。偶然壁にもたれた所そのまま転がり入ったのだ。
二人は壁にもたれかかり、さっそく削板を止血する作業に入る。
(……レーダーとかで補足する事が出来ないのかな、あれ?)
佐天は小声で、隣の浜面に聞いた。
(……いや、恐らく逆だ。 あれはレーダーでしか目標を認識できないんだ)
浜面はそう言って、削板の服を一部ちぎり、包帯に加工する。
(一応、能力者を優先で消すために、それ以外の人物が映らないようにする必要があったんじゃないのか)
(そういえば、AIMを観測する……なんでしたっけ、そういうのがあるんだっけ?)
佐天も見よう見まねで、削板のジャケットをちぎっては細く破り、包帯にする。
(多分、それを搭載してるから、ナンバーセブンの居場所が分かったんだろう。)
それでも、低能力者あたりはそのAIM拡散能力場が狭いから、中々レーダーに映らないんだろう。と浜面は補足する。
(……じゃ、もしかして、私たちがわからないのは、そのAIM拡散何とかがないから?)
(多分、な。 それに『監視』の奴らって、中々気性が荒いんだろう。目につく奴全員ぶち殺しそうだから……)
二人は削板の太ももあたりに、先程作った包帯をきつく縛る。
(……そっか、もし何でもない人を殺したら、『化け物を殺す』っていう大義名分が使えないって訳だから……)
(そうだろう。 多分俺らに気づけたのは、マイクか何かで音を拾ったからだと思う。)
削板の足から、血が流れ出るのがようやく止まった、が、依然彼が危ない状況なのは変わらない。
傷口をほっとけば、化膿するかもしれない。
(……とにかく、私たち二人だけはあの『監視』に気づかれず帰れるけど、この人は居場所がバレちゃうんだよね……)
ナンバーセブンを地下街の医者に任せなければいけないのに、元気な自分たちだけは安全に帰れるとは、何という皮肉だろう。
(……だけど、勝算はある。)
(……えっ?)
浜面はそうおいてから、今自分が考えついた事を話す。
(多分、ナンバーセブンはここに置いておけば居場所はばれない。さっき通り過ぎたのを見ただろ?)
(あ……。 でも、それはたまたまじゃ?)
(いや、偶然なんかじゃない。)
浜面はそう強く断言する。そして続ける。
「……この塾、色んな所に隠し部屋があるみたいだ。」
「ここ以外にも、あるってどういう……?」
「わかんねぇけど、多分何かやましい事をしてたんだ。その証拠に……」
浜面は隠し部屋の中央を見る。つられて佐天も見ると、そこには何かの儀式場があった。
「げ…… 悪趣味ぃ……」
「問題はそこじゃねぇ。このメモみたいなのを見てくれ。」
げんなりする佐天に、儀式場に落ちていたメモを見せる浜面。
「何々……。 吸血殺しを用いた 吸血鬼召喚の法……ってこれ怪しげな魔術じゃ?」
「いや、違う。これは多分 超能力だ。」
「えっ、でも吸血鬼とか……」
「昔、聞いた事がある。 吸血鬼を呼び寄せる『能力者』が学園都市にいた、って。」
「……はぁ。 で、でもそれと、居場所がバレないってどういう繋がりが……」
佐天はまったく分からなかった。
が、浜面は依然として自信に溢れた表情で説明する。
「考えても見ろ、こんなやましい事をする奴らが何の対策もしてない訳ないだろ?」
「あ……。ま、まぁそうだろうとは思うけど……」
「多分、吸血鬼を呼び出してる事……能力を発動させてる事が分からないようにする為の仕掛けがあったんだ」
浜面自身、その仕掛けについては知らなかったが、それは昔、アウレオルスが行った『三沢塾全体をある種の結界』というモノだった。
「つまり、だ。 多分今もなお、その仕掛けが生きてるおかげで、AIM拡散能力場が遮断されてるんだ。」
とりあえず佐天が削板の応急処置を続け、浜面が助けを呼ぶ事にした。
その時、浜面は削板がもっていた『上条当麻へ』とカードがついた小箱も届ける事にした。
「勝手に持ってくのはあれだけど、とりあえずナンバーセブンが届けようとしたもんなら速くとどけた方がいいだろ。」
と、多少勘違いしてはいたが。
という訳で、浜面が助けを呼びに行った後。
「うーむ……。ここまで怪我がひどいと、どこから手をつければいいんだろう……」
何本か骨が折れていたので、とりあえず部屋の儀式場にあった木材やらなんやらで、固定する。
雨にぬれていたので風邪をひかないように、とこれまた儀式場の布(何かびっしり書かれていたがしかたない)で身体を拭く。
一番の問題点、相変わらず骨はむき出しのまま。
さすがに雨にぬれたあの肉塊を回収する事は出来なかったので、これはどうしようもない。
「……どうしよう。」
吐き気はこらえたが、あまり見たいものではない。
何か汁が出てきてるし。拭いた方がいいのか、と思ったが下手にいじらない方がいいと浜面に言われたのでほうっておく。
「そぉい!」
浜面は地下街の出入り口に滑り込むようにダイブした。
何事だ、と人が集まってくる。
好都合だと思い、浜面は叫んだ。
「重傷人一人、地上にがいる! この中で無能力者で、度胸がある奴だけ来い!」
垣根はその声を聞いた。
浜面一人だけが帰ってきて重傷人、と聞いて佐天が危ない目にあったのかと推測した。
彼は罪滅ぼしの意識のためか、行こうと思案したのだが、『無能力者』という条件に当てはまらなかった。
(……監視に見つかるから、か?)
もしかしたら、自分が行った方が足手まといになるかもしれない。
……自分の能力さえなければ。そんな考えまで浮かんでくる始末だ。
(……なっさけねぇな、俺。 昔はもっと………。)
そこで彼は打ち止めが裾を引っ張ってる事に気付いた。
「……カキネ、どうしてそんな悲しい顔をしているの?」
「………、俺が? 悲しい顔?」
ふと、地下街のショーウィンドウのガラスを見る。そこに薄く反射して映し出された自分の顔。
「……本当だな。……なっさけねぇ顔だぜ。」
そして、視線を下に落とす。見上げる打ち止めと視線がぶつかる。
「……なぁ、打ち止め。」
「……あいつは、あの第一位は。 こんな時、どうするんだろうな?」
「………、それは……。」
打ち止めは黙った。
思い当たる節がない訳ではない。
ただ、言うべきかどうか迷っている。
目の前の彼までいなくなるかもしれない。
でも、彼に嘘を言う事は出来ない。
しかし、彼が答えを求めている以上、言わなければいけない。
打ち止めは、彼がいなくなる事も覚悟して、告げた。
「………あの人なら、」
「あの人なら、きっと、守りたいものの為に動くと思うって、ミサカはミサカは断言してみる。」
「………そうか。」
垣根にとって、それはあらかた予想していた事でもあり、はじめて知った事実でもあった。
あの第一位が……と少し笑いたくなったが、あいつなら当然だろうとすぐに受け入れ理解する。
証拠はあった。
一方通行の、その信念の『結果』が目の前にいる少女なのだから。
377 : VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] - 2010/06/13 16:41:09.37 Nv0QVcEo 27/27とりあえずここまで、です。
しかし全然終わりそうもない……やはりスレ建てすべきだろうか。