970 : 生きる自由があるならば[saga sage] - 2010/06/17 00:24:44.40 FY8k3iA0 1/1

※単発ネタ


「……殺してよ。殺せよ。殺せ、殺せ殺せ殺せ私を殺せぇぇぇえええええええ!!!」

番外個体の悲痛な叫び声が、美琴の身体を切り裂いた。
勢いのまま美琴の身体に縋りついて、殺せ殺せと叫び続ける番外個体。

あれほど殺したいと切望した一方通行との戦いに敗れた。
その上、お優しい少年のお情けで、死に行く運命だった彼女の生き様すら否定された。

「いいだろ、もういいだろ!! 私を殺せよお姉さま(オリジナル)!」

番外個体は名の通り、他の妹達とは別個の存在。
怒り、憎しみ、悲しみ。そんな負の感情しか知らない彼女。そんな感情しか理解できない彼女。
白い少年や目の前の少女が必死になって掴みとった世界の平和なんて、番外個体にはどうでもよかった。
どんなに他の人間が素晴らしい世界と褒め称えたとしても、ソイツは彼女にだけは優しくないのだから。

「私は喜びなんて知らない、楽しみなんてわからない!
 他の妹達が幸せそうに笑っているのに、私だけが激情の渦の中に取り残される!
 そもそも私には『幸せ』なんてものは理解できない! 私は変わることなんてできないんだよぉおおおっ!!」

もう、たくさんなのだ、とその背中が語る。
もう、充分なのだ、とその瞳が訴える。

お願いだ。
こんなくそったれの世界で生きるのは御免なんだ。
白い髪の少年は番外個体が『妹達』というだけの理由で殺してくれない。
ツンツン頭の少年は『生きなきゃだめだ』と言うだけで殺してくれない。
ならばせめて、姉であるアンタが私を殺してくれ、と番外個体は訴える。

『コレ以上ミサカは死んでやらない――』

上位個体や他の妹達が勝手に決めたルールすらも、番外個体である自分には関係ないのだ。
生きる自由を手に入れたのなら、死ぬ自由を手に入れたっていいじゃないか。

「頼むから、私を殺してよ……っ。
 少しでも私に慈悲っつー心を持っているのなら、私を殺して……っ!」

自分より背丈の少し小さい美琴の胸に顔を埋めて、声を絞り出す番外個体。
美琴には彼女が泣いている様に見えた。些細なワガママを聞いてとねだる子供のようにも、見えた。

(―――――これも、私が引き起こした『妹達』の悲しい定めなら……)

罪人である自分が背負おう、と美琴は決意する。
せめて、姉である自分だけは、彼女に生を終わらす自由を許そう。
ツンツン頭の少年が、白い髪の少年が、他の妹達が―――世界の全てが美琴の行為を攻め立てたとしても、それを背負おう。

「…………、こんなことしかしてあげられなくて、ごめん」

美琴の小さな呟きに、番外個体が嬉しそうに微笑んだ。

元スレ
▽ 【禁書目録】「とあるシリーズSS総合スレ」-6冊目-【超電磁砲】
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