497 : VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] - 2010/08/04 01:49:13.82 y4RIH6AO 1/6

初投稿で、数レスお借りします。
一方通行さんの子供時代で、捏造とか色々なんでのんびりと読んで頂ければ幸いです

元スレ
▽ 【禁書目録】「とあるシリーズSS総合スレ」-11冊目-【超電磁砲】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4gep/1280324048/
498 : VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] - 2010/08/04 01:49:53.38 y4RIH6AO 2/6



あの時――いつもは真っ暗なだけの世界が、ほんの少しだけ俺に優しかった。


その日は記録的な猛暑日であり、コンクリートジャングルに囲まれた中で忘れられたように存在する公園にも子供の影すら見えなかった。
蝉時雨がジリジリと熱を助長させて太陽が肌を焦がす痛み――流石にこんな日くらい、クーラーのきいた部屋でゆっくり過ごすのを選びたい。
けれども陽炎と共に茹で上げられる公園には、そんな炎天下も“反射”して――キィと掠れた音をたてるブランコに座っている子供が一人居たのだ。

真っ白な髪、真っ白な肌、そして相反する真っ赤な瞳。
足元には汚れのないサッカーボールが転がり、その姿はあまりにも寂寥感に包まれた――胸が痛むようなものであった。

少年は今日、研究漬けの中で本当に久々の休日を貰ったところだった。
日々研究所の窓から見える公園で普通に遊ぶ同年代の子供達を羨むように観察していた彼を見兼ねてか、親切な研究員がくれたボールを携えて。
彼ら彼女らに向ける第一声は、「何してるの?」かそれても「仲間に入れて」か、もっと別のものがいいかなと眠る前に考えながら、
今までは空想の中にしかなかった『友達と一緒に遊ぶ』を現実にしようと、まだ未成熟な胸に興奮を溜め込みながら此処に来て――そのまま、絶望したのだ。

もし周囲に大人でも居ればこんな真昼に一人で、可哀相な程に薄い肩を震わせながらブランコの鎖を握りしめて涙を堪える子供に声をかけたかもしれないが、
幼い少年に対して世界は甘くなくて、公園に関心を向ける人間など猛暑のせいか誰一人として存在してはくれなかった。

499 : VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] - 2010/08/04 01:50:45.29 y4RIH6AO 3/6



(……泣いちゃダメだ、泣いちゃダメだ)
(木原くンも言ってたじゃねェか……だから、泣いちゃダメなんだ……!)


必死になって幼い身体に無情を溜め込みながら、あと10分、あと5分と諦めるのを伸ばし伸ばしにしてきた少年が絶望に耐え切れずに揺らした爪先はサッカーボールを軽く蹴飛ばした。
ころころころ……誰にも受け止められることのない少年の悲しみを表すように転がっていくボールを回収しなければ、と彼は頭をあげると。


――病的に真っ白で、薄く、ほっそりとした掌が、ボールを受け止めていた。


「――――ッ!?」


驚き、慌てて眼を凝らす少年。
そんな彼の前には、いったいいつから其処に居たのか――少年の白髪に近い銀を宿した長髪で痩身の人がしゃがみこんでボールを拾っていた。
男とも女とも、若者にも老人にも、人間にも天使にも見える不思議なその人は――何も言えず固まる少年に対して、ボールをキャッチして立ち上がると、


「こんにちは、少年」


まるで楽器でも鳴らすような心地好い声音で、特に何か想いを篭める訳でもなく、ただあっさりと――彼に挨拶してきた。

500 : VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] - 2010/08/04 01:51:21.29 y4RIH6AO 4/6



「こっ、……こンにちは……」

「これはキミのボールかい?」

「……そォです」

「綺麗なボールだ。おろしたての新品……だろうか」

「………………」

「少年、実は私は寂しい人でね。……もしよかったら、このボールで遊ばせてくれないかい?」

「………………!!」

「勿論、一緒に」


その時、本当に真っ暗だった世界に一筋の陽光が差し込んだ。
大袈裟に頷いてブランコから立ち上がると、一定の距離を取ってボールを適度な速度で転がしながら相手はのんびりと会話を続けていた気がした。

501 : VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] - 2010/08/04 01:52:00.15 y4RIH6AO 5/6



――嗚呼。そういえば。


「名前……聞いてなかったなァ」


そんな独白と共に回想から帰還した一方通行は、自堕落に寝転がったソファーの上でぼんやりと瞳を瞬かせた。
あの記憶は不思議なことに、細部を思い返そうとすればするほど掌から流砂のように零れていって訳が分からなくなる。
だから幻覚かなんだったのかと思うが、そうではないのだとと――本能的な部分と、砂で僅かに灰色になったサッカーボールが教えていた。


あの時。
身体中をいじくりまわされて絶望しか見えなかった俺に、ほんの少しだけ世界が優しかった。
気紛れのような優しさだったが、小さな子供にはそれが道筋を指し示すような圧倒的な希望にも見えた。


「……くっだンねェ」


――そして。
そうやって笑い飛ばす事が出来なかったのは、その曖昧な記憶に残る掌の感触があまりにも柔らかかった。


[ end ]

502 : VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] - 2010/08/04 01:53:26.83 y4RIH6AO 6/6

以上です。
前に小ネタスレで落とした、上条さんや一方通行さんとかの子供時代に一度だけ会っていたりするアレイスターの話です。
みんなが☆さん書かないからむしゃくしゃしてやった、もっと☆さん増えればいいのに。アレイスターは俺の嫁