エイワス「土御門元春の事が好きだ。」
問一.突然、自分の守護天使がそんな事を言ってきたらどうします?
アレイスターの解答例。
☆「エイワス、はっきり言わせてもらおう。 最近おかしいぞお前。」
エイワス「そうか? 人間らしくふるまってるだけ、なんだがな。」
エイワスの人間観察 土御門元春の観察。
エイワスはアレイスターとある種対極の存在である。
全ての生命活動をも機械に任せた人間と、
人間の、アレイスターからすれば無駄である行動に価値を見出す天使。
効率と価値。 それらが、彼らの違い。
彼が今度、価値を見出した行動は。興味を持った行動は。
『恋』。
そこで、彼は誰かを愛することにした。
何千年も、現出しないとはいえ、存在出来るであろう『彼』が、
ほんの百年も生きれないかもしれない人間を、暇つぶしで。
それだけのはずだった、守護天使のお話。
☆「私としてはプランに支障が出なければ、それでいいんだがな……。」
土御門元春。イギリス清教などとの多角スパイ。
エイワスが接触することにより、イギリスなどへと情報が漏れる事を懸念してそう告げるアレイスター。
エイワス「何を言う。 彼らはもう知っている。 今更プランに支障がでるとでも?」
☆「……エイワス。」
エイワス「何。 私は興味のある事以外はしない。」
☆「……」
エイワス「という事だ。」
土御門「と言う事だ、とかどや顔で言われても困るんだぜい!?」
土御門元春は心底驚いた。
かつて彼が追っていた、ドラゴンが目の前にいるのだ。
平然と。 何も感じさせることなく。
彼の寮の部屋の中で。あたりまえのように。
エイワス「こちらとしては、恋をさせてもらえればいいのだが。」
土御門「いや何それ!? 丁重にお断りしたいんだぜいッ!!」
エイワス「そうか。仕方ない。」
土御門「! は、話の分かる奴でよかったですたい! いや、最初の時点でおかしいですけど!」
エイワス「……訂正しよう、実はもう恋してる。 むしろ愛して。」
土御門「考え直してッ!」
頭をぶつける勢いで土下座する土御門。
それを見てエイワスは、何だかやりきれない気持ちになる。
エイワス「何故拒む? お前はアレイスターと同じような人間か?」
土御門「……アレイスターがどんな人間かはしらないが、俺としてはお前とは……その、な……」
エイワス「何だ、ちゃんと言え。 ヘッダが足りない訳ではあるまいし。」
土御門「……まず、人間と天使っという違いが……」
エイワス「……?」
エイワス「人間と天使の違い……か。」
☆「感傷にふけるのはいいが、わざわざ歩いてくる必要はないだろうに。 何度も言うが、効率的ではない。」
エイワス「全てを捨てたお前には分からないだろう、この価値が。 rgfdざxwrtpxまzxwqrvfぁwwwwdxlbh」
☆「何それ自慢?」
わーわーというアレイスターを尻目に、エイワスは一つの言葉を思い出す。
ボソリ、と土御門が言った『人と天使の違い』。
エイワス「……。」
☆「……エイワス、あなたは本当にあの、幻想殺しの隣人が好きなのか? 恋してる……とまで言ってたが。」
エイワス「滞空回線(アンダーライン)か? プライバシーの侵害だぞ。」
☆「お前にはそもそも人権はないだろうに。」
エイワス「この街自体、人権侵害の塊だな。 学園のくせに、な」
☆「否定はしないがな。」
エイワス「……先程の質問だが、私は価値をそこに見出した、それだけだ。」
☆「……エイワス。」
彼が言う間に、エイワスは自らの足で、どこかへと歩いて行った。
☆「……あなたがやっているのは、私と同じ事だと気づいているはずだ。」
その表情は、読み取れず。
夜。
土御門「……エイワス。」
あのドラゴンは、天使はそう自らを言っていた。
土御門(……愛して、か)
土御門にとって大事な物は。この街や友人?――否、自らの義妹だ。
舞夏の為なら誰でも裏切る。裏切れる。
土御門「……こんな嘘つきの土御門さんに、そんな事言われても困るんだぜい?」
そう言う言葉は、どこか切なげで。
たびたびエイワスはやってくるようになった。
その度に土御門は告白されるのだが、曖昧な返事でのらりくらりとかわしていた。
手を握られた事もあった。
エイワス曰く、「学園都市で観察した恋人、とは手を繋ぐものだそうだ」らしい。
しぶしぶ付き合ってやったが、調子に乗ったのかキスを迫られた事もあった。さすがに死ねと思った。
一方通行がよく打ち止めの事を心配してた。海原とエイワスはストーカーという点では似てると思った。
結標が香焼を見つけてハッスルしてた。 舞夏は相変わらずかわいかった。
一週間がたったとある日、学校。
土御門「……なぁ、カミやん」
上条「ん? 何だ?」
土御門「……ちょっと右腕で消してほしいもんがあるんだにゃー」
上条「おいおい、また魔術関係の仕事でせう? 上条さんはもう面倒事は……」
土御門「んー、ちょっと違うんだぜい、俺んちにでた、幽霊を殺してほしいんだが。」
上条「……幽霊?」
土御門「んあ、そう。 何か……とり憑かれちまったみたいでにゃー。」
上条「……そいや、お前顔色悪いし、ちょっと頬こけてるな。」
土御門「ふふふふ。 今日、帰ったら隣の部屋だし、ついでにぶち殺していてほしいんだぜい。」
上条「それくらいならいいけど。」
土御門「ありがたいんだぜい。」
上条「いいよ、 俺達友達だろ?」
土御門「そうだにゃー。」
==
部屋
土御門「? 今日は来てないみたいだにゃー。」
上条「へぇ? 自縛霊じゃないのか。」
土御門「そんな縁起悪い部屋……、陰陽師の土御門さんならすぐわかるぜい。」
上条「あ、そうか。」
土御門「カミやんは帰っていいぜい。 明日また、にゃー。」
上条「うん、じゃあな。」
パタン、と扉を閉じ、上条が自分の部屋に戻って行った。
途端に、今まで感じた事のない……否、ここ一週間ずっと感じていた気配がした。
土御門「………げっ、ちょうどきやがって。」
エイワス「何か問題でも?」
土御門「問題だらけだぜい。」
エイワス「そうか?」
土御門「まぁ一つ分かった事はある。 お前、幻想殺しで消えるんだろう?」
エイワス「それはどうかな。 おそらく数年はrfbhfxkylrty……おっと、現出が出来なくなるかもしれない。」
エイワス「だが、私の自殺防止機構が働くかもしれないし、何、彼を恐れるほどではない。」
土御門「ふん。そうなのか?」
エイワス「そうだ。 それより、何故私を消そうとする?」
エイワスが本当に疑問のように聞く。
土御門は当然のように答える。
土御門「……『こうやってつきまとわれるのがいやだから』。 それに、『正直お前といるといい気がしない』」
エイワス「……それは……なるほど、な。 ふん、そうか。」
一瞬、エイワスが哀しそうな顔をしたような気がしたが土御門の知ったことではない。
☆(……何故、エイワスはあんな事をするんだ)
アレイスターは、先程のエイワスを思い出した。
喜怒哀楽全てを含まれた顔が、一瞬心配するような表情に歪んだ。
『私は、嫌われてしまったようだ』と。
エイワスは帰ってきてそうそうそんな事を言う。
いつも通り、アレイスターからすれば非効率に日本足で歩いたり携帯を使ったりしたあれが。
「ならば、他の事をすればいい。」と言ってやったが、聞き入れてくれない。
☆(……本当に、本気だったというのか、あなたは)
エイワスが、『失恋とやらを味わってみる』と言った時。
『彼』は泣いていた。
恐らく、知らずのうちなのかもしれない。
指摘すれば、『泣くのも価値の一つだ、アレイスター』とか言われるだろう。
☆(……あなたは一体何がしたかったのだ。)
あの日を境に、エイワスは土御門の部屋にも、どこにも来なくなった。
半分せいせいとした気持ちで、半分不思議に思いながら、日々を過ごす土御門。
ある日、帰り道にて。
上条「そういえばさ、 この前の幽霊って結局何だったんだ?」
土御門「ん? この前の幽霊? もう出てないけど……、 何かって聞かれると、にゃー。」
土御門「んーー、 いきなり告白してきたんだぜい。」
上条「へぇ? モテモテじゃないか土御門。 上条さんにしては羨ましい限りですよ。」
土御門「カミやんが言うな。 うーん、人外にもてても嬉しくないんだぜい。」
上条「俺は幽霊でも何でも、とりあえず出会いが欲しいですよー。」
土御門「はっ、 同居人がいるじゃないか」
上条「手を出したらロリコン確定だしステイルに殺されるだろッ!」
上条「……そいや、 お前はその、幽霊にどう答えたんだ?」
土御門「ん、答え?」
上条「断ったのか? 受け入れたのか? ま、多分断ったんだろうけど……。」
土御門「………んー、結局、答えてないにゃー。」
土御門「ストーカーするな、っていったら次から来なくなっちまって……」
上条「ざっけんじゃねぇ!!」バン!!
土御門「!?」
急に横の壁を殴り、怒る上条。
上条「お前の事を思って、何度も来たんだろ!」
上条「お前が好きだから、勇気を振り絞って告白したんだろ!」
上条「そいつの事を好きになれとは言わないが、」
上条「自分の気持ちぐらい、そいつに言うのが礼儀ってもんだろ!」
土御門「か、カミやん……。」
土御門(……そうだ、確かにドラゴンと人間という違いはあるけど)
土御門(……だからといって逃げていい理由にはならない。)
上条「……どうなんだよ! お前はあいつと同じくらいの覚悟を持って、答えたのか!?」
土御門「…………」
土御門「……俺は、」
エイワスの問いに対する。
土御門元春の解答は。
廃工場。
エイワス「……失恋というのも、つらい物だな。」
エイワス「……さてと、何の用だ。 第一位。」
一方「……最近、打ち止めがひどく弱ってるンだよォ」
エイワス「あぁ。 私を現出させる為に生み出されたのだ、別におかしくないだろう。」
エイワス「ここのところ、ずっと現出していた訳だからな。」
瞬間、ドガッ!という音ともにエイワスの頭をコンクリートの破片が通過する。
一方「ざっけンな! 何のためにッ! 打ち止めが犠牲にならねェといけねェンだ!!」
エイワス「……やはり、第一位は精神が弱いな。」
エイワス「……まぁいい。 私ももう現出する理由がないからな。 おめでとう。打ち止めはもう苦しまなくて済むぞ。」
一方「どォいう事だ!?」
エイワス「……まぁ、単にふられただけだ。」
一方「……は?」
エイワス「ではさよなら第一位。 あぁ、最後に一つ。」
一方「……何だよォ」
エイワス「君の仲間に、土御門という少年がいただろう。」
エイワス「彼に、『kgjrtxsrywmvlwrtygxghtァ』と言っておいてくれ。」
天使語で語られたその言葉。 それを理解できたのは、一方通行だけだった。
一方「……それって、まさか……おい!」
一方通行が叫ぶも、エイワスは気に留めずに、どこかへと、自らの身体を崩しながらどこかへ歩いていく。
第七学区まで歩いてきたエイワス。
未練があるのか、と考えて何だか笑ってしまう。
エイワス「………、まさか、自分が本気で彼の事がすきだったとはな。」
仮に、土御門が受け入れた所で、寿命がそもそも違うから、結局は同じ道をたどっていただろう。
これでよかったのだ、彼に拒まれたようとも受け入れられようとも、同じなのだから。
エイワス「……さてと、後はアレイスターの計画がどうなるかを見つつ、私は帰る事にしよう。」
もう身体も、下半身はすでに空気のように消えかかっていた。
土御門「ドラゴン、いやエイワス!」
エイワス「……?」
エイワスがゆっくりと振り返ると、そこには息も絶え絶えにした土御門が立っていた。
恐らく走ってきたのだろう彼は、言葉を少しづつ紡ぐ。
土御門「俺は、俺はお前の事が好きじゃない」
エイワス「存じているよ。」
土御門「……だけど、あの時の事は悪かった。言いすぎたと思ってる。」
そして土御門は一旦言葉を切る。相手の出方を待つように。 自分の言葉を整理するように。
土御門「俺は、お前よりも、守らなきゃいけない家族がいるんだ。 だから、お前みたいな奴とは、一緒にいれないんだ。」
エイワス「……そうか。」
そう言うと、エイワスは何となく満足そうな顔をしたようだった。
エイワス「……失恋には変わりないが、最後の最後で何となく心が楽になったよ。」
身体がどんどん光となって消えていく。
土御門「エイ、ワス……?」
エイワス「私はもう、君の前には現出しないだろう。 ……第一位に叱られてしまった事だしね。」
頭も消えていく中、エイワスは最後に、最期に、言う。
「……――愛していたよ。」
スゥ、と消えていった。
後に残されたのは、土御門だけ。
土御門「……何だったんだよ、あいつは。」
一方「俺もしらねェよ。」
土御門「!? お、お前何時の間に!?」
土御門が慌てて振り返る。
それを滑稽とでも言うように鼻で笑う一方通行。
一方「ついさっきだァ。 しっかし、エイワスの野郎……まさか、オマエの事がなァ……」
土御門「ふん、 俺は勝手に好かれて困ったがな。」
一方「……『俺は、お前よりも、守らなきゃいけない家族がいるんだ。』(笑)」
土御門「!? お、お前ェ! ま、まさか全部聞いて――!?」
一方「さァて、 これをさっそく打ち止めが回復したらMNWに流してもらわねェとなァ(笑)」
土御門「ま、待て! やめろ! やめるんだにゃああああ!!」
一方「お断りしますゥ!!」
怪しい悪だくみの笑みを浮かべながら、その場を立ち去ろうとする一方通行。
だが、何かを思い出したように立ち止り、土御門へと振り返る。
一方「最後に一つ。」
キリッ、とした表情に切り替え、一方通行は指を土御門に向けて、言う。
土御門「?」
一方「あいつからだ。 ――『今まで付き合っててくれて、ありがとう』、だと。」
土御門「……そうか。」
土御門は一方通行に見られないように、クスッ、と笑った。
エイワス「という訳で光源氏計画を発動させて数年後、私は彼と結婚するつもりだが。」キリッ
☆「待て。 あなたは頭おかしい。」
end