760 : VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] - 2010/09/20 12:43:19.37 1/cAUOc0 1/1515レス程お借りします。
以前、GEPで書いていたスレの後日談的なモノです。
未現崩し(極々一部、電磁通行と青髪×心理掌握)ですので、苦手な方はご注意を。
学生たちが暗部とかに落ちず普通に学生生活をエンジョイしています。
―――
第七学区の、デザートが評判のとあるファミレス。
窓側の奥の方の席を陣取っている二人の少女の注文の品も勿論、独特の甘み特徴的なデザートだ。
大好物のケーキと、暖かい紅茶に、にんまりと口角があがる。
口内に広がる濃厚な生クリームの味にふわふわとした幸福感が押し寄せてくる。
窓から差し込む日差しも気持ち良く、ガールズトークを繰り広げるには絶好の環境だ。
「でさ、実際のとこ、垣根さんとは上手くいってるの?」
最初に口を開いたのは、ショートケーキに舌鼓をうつ御坂美琴だった。
好物は最後に食べる派なのか、ショートケーキの主役とも言えるイチゴにはまだ手をつけていない。
超難解物件だった男を『押して、押して、押しまくる』という手法で
口説き落としてモノにした彼女にしてはちょっぴり控え目な行動に見えた。
そんな御坂の一面が意外過ぎて、向かいの席でティラミスを食していた麦野沈利は内心驚きを隠せずにいたが、
心の中だけで止め、聞かれた質問に対して無難に答える。
「さぁ、どうかしらね」
「ちょっと、無難に答えて流そうとしないで頂戴。私は沈利を心配して聞いてるんだからさー」
「とかなんとか言っちゃって。おおよその事はアンタの彼氏から聞いてるでしょ?」
「いや、まぁ、そうだけど」
確かに、麦野の指摘通りだ。
御坂は自分の恋人である一方通行から、垣根と麦野のその後の関係について教えてもらっているため、大体の経過は知っている。
けれど、一方通行から聞かされる話の八割は、学校に居る間ず~~~っと垣根の惚気話の相手になっている事に関する
愚痴で占められており、細かい部分がいまいちわからないのだ。
「沈利と垣根さんが付き合いだした、ってのは知ってる」
けどさぁ、と貞腐れたように口を尖らせて御坂が続ける。
「『どういう経緯で付き合うことになったのか』とか『あんなに毛嫌いしてた垣根さんのどこに沈利が惚れたのか』とか、全然知らないもん」
「それに私は沈利の口から直接聞きたいのよ」と上目づかいでおねだりする様な視線を麦野に向ける御坂。
少女の愛らしい仕草を微笑ましく思いつつ、(あの白モヤシは、この表情にヤラレタ訳だ)と余計な推測をたてニヤニヤする辺り、本当は麦野もそれほど『恋バナ』が嫌いではないのだ。
「もん、なんて可愛く言われても、ねぇ?」
「む~。いいじゃん、減るもんじゃないし」
減りはしないと麦野も思うが、ただ、ここ最近は、普段一緒に居ることが多い三人の友人に根掘り葉掘り聞かれて、少しお疲れ気味だったのだ。
恋に恋するお年頃な絹旗最愛と、祭りにはとりあえず便乗しておけ精神のフレンダからの
猛攻にはへとへとになったもんだ、と遠目で振り返る麦野を、御坂は不思議そうに見守った。
「青髪さんとのデートが重なって今日ここには来られなかったけど、
心理掌握だって沈利のこと心配そうにしてたんだからねー」
『沈利さん、ちゃんと第二位と上手くやっているのかしら。心配だわ』と、
同じ超能力者で常盤台中学の先輩にあたる心理掌握から託された言伝を御坂が伝えると、麦野は困ったような笑顔を浮かべた。
(……ったく、どいつもこいつも、仕方ないヤツらばっかりね)
興味しんしんに、茶化すような雰囲気で聞いてくる御坂であったが、
心の根底にあるのは、大好きな麦野に対する優しさからくる心配りなのだろう。
きっと、御坂だけじゃなくて、心理掌握も絹旗もフレンダも同じなのだ。
(ま、恋バナに興味深々ってのも本当だろうけどね)
姉妹のいない麦野にとって、御坂は妹のような存在なのだ。
共同の身体検査が開始されて超能力者達が出会い、それなりにつるむようになって、早いもので3年がたつ。
赤いランドセルとしょってた時から、彼女は麦野を姉代わりのように慕ってくれている。
そんな子に、あまり、心配をかけるのもどうなのかしらねと麦野が思ったから、
「―――まぁ、少しだけよ。少しだけ」
結局、年上である麦野が折れる形となった。
「で、なにについて知りたい訳?」
「えっと、じゃあね垣根さんの何処を好きになtt」
「却下」
「まだ全部言ってないのに!」
「絶対言いたくない。どんなに美琴がお願いしても絶対に言いたくない!!」
ここだけは百パー譲らないと凄む麦野の視線に、おのずと身体を後方へとのけぞらせる御坂。
麦野はけっこう頑固なところがある。
これは無理だな、と御坂はしぶしぶ諦め次の質問をすることにした。
「じゃあ、別の質問。どうして付き合ってもいいかな? って思った理由って何?」
「付き合ってもいいかなって思った理由?」
「理由、ねぇ」
金魚の糞の如く自分の後ろをついて回ったストーカー野郎こと、垣根帝督と付き合うようになった特別な理由はない。
―――――あえて。あえて、言葉にするならば、
「なんとなく」
麦野の意見に、御坂は面白くなさそうな、それでいて、納得したような、微妙な面持ち。
「なんとなく、かぁ。 彼の優しさにくらっと来たの!とか、そういう乙女的な理由はないの?」
「あのね、私に乙女的な反応を求める方が間違ってるのよ、美琴」
えっ、と御坂はちいさな驚きの声を上げ、持論を説いた。
「女の子はみんな、乙女でしょ?」
どんなに強度が強かろうが、どんなに男勝りであろうが。
恋する女の子はみんな可愛らしい一面を持っているはずだ、と御坂が続ける。
麦野の話を聞くのに夢中になって、フォークを握る手が止まっている。
まだ半分以上残っているショートケーキと、まだ残っている主役の苺。
「物事にはなにごとも例外、ってのがあるもんなの」
中学生の純粋な発想を、彼女より少しだけ人生経験を積んでいる高校生が一刀両断した。
「なんつーか、私にこっぴどく振られた後も、めげないアイツに呆れたというか、諦めたというか。ま、そんなところよ」
「一緒にいてやってもいいかなって思うようになった理由はね」と付け足すと、
この話題はお終いだと言わんばかりに、ティラミスを突いていたフォークを皿の上に置いた。
カラッ、と金属と陶器がぶつかって、小さな乾いた音が生じる。
四人用の座席。
右隣の空席に置いていたショートバックを持ち、財布を取り出す麦野。
「ちょ、それで終わり? てか、帰るの?」
「終りよ、おーわーり。悪いわね、私も例の男とこれからデートなんだわ」
「さいですが……」
「せっかくの休日でしょ? 久しぶりに買い物しようかと思って。アンタはこの後の予定ないの?」
「特になし。アイツ、超出不精だから。超何時も通りよ。アイツの家にいって夕食を作るだけ」
御坂のもの言いが絹旗にそっくりで、クスッと笑う麦野。
テーブルの端に置かれていた伝票を手に持って立ち上がる。
「ま、心配かけたみたいで悪かったわね。ココは私が全部出しとくから」
「良いわよ、そんな」
「いーのいーの。年上の厚意には素直に甘えろ。まだ、ショートケーキ残ってるでしょ?ゆっくり食べて行きなさいよ」
「……そう? じゃあ、ありがたく。ご馳走になりまーす」
「それじゃ、私は行くから」と麦野が声をかけて席をたつと、もごもごとケーキを目一杯頬張る御坂が空いているほうの手を振った。
会計後、麦野がレストランのドアを潜りながら、
「彼氏に喰われないように気をつけろよー」とちょっと大きめの声で中の少女をからかう。
「な、な、なに言ってんのぉおおおお!!?」というような悲鳴とともに、紫電の光のようなものが見えた気がしたが、
御坂の暴走はある意味いつものことなので麦野は時に気にせず待ち合わせの場所へと向かうのだった。
―――
約束の時刻まであと2分ほど。
待ち合わせの目印である噴水の前には数人の人が、思い思いに過ごしている。
携帯電話をいじる若い男性、鏡を取り出し髪型のチェックに余念がない女子高生、エトセトラ。
麦野は左右に眼を動かし、垣根の姿を探すが、探せど探せど見つからない。
(うっそ、あの馬鹿、まだ来てないの?)
垣根は麦野の行動をいつも先回りしているというのに、
珍しいこともあるものだと驚愕する少女の後方から、ゆっくりと伸びる影が一つ。
「むーぎーのっ」
「ひぁ!!?」
気の抜けた声とともに、勢いよく後ろからぎゅっと抱きつかれて、麦野は思わず悲鳴をあげた。
聞きなれた声の持ち主だったから良かったものの、
そこらへんに居るただの他人が麦野にこんなことをすればきれいさっぱり原子崩しで溶解させられて、数秒で天国行きだ。
「『ひぁ』とか、可愛い声で反応されると嬉しいもんだな」
「お黙り、バ垣根。さっさと離れろ。ただでさえ今年は猛暑の影響で秋になっても暑いんだよ」
暑苦しいんだ、と苛立ちを隠さずにとげとげしい言葉を返しても、
後ろから抱きつきてくる暑苦しさの原因その一は、くくっと声を押し殺して笑うだけで一向に離れようとしない。
更に近くに彼女を感じたくて、垣根帝督は麦野の腹に回した両腕に力を加えた。
より肌を近づけるように、それでいて、愛しい女性を傷つけないような優しい手加減で。
「ちょっと、止めてよ。周りの人が見てるし、本当に止めて」
噴水の近くにいる何人もの人が二人を見ている。
ただでさえ容姿が整っている者同士のカップルだからか、街中で他人の視線を奪うことは多々あれ、それは並んで歩いている時とかに限った話だ。
(……こんな、べたべたしているとこなんて……っ!!)
正直、こうやって垣根とスキンシップ取る事すら
未だに億劫な他称・恋愛初心者の麦野にとって、今の状況は拷問に近いものがあった。
それに、じんわりと心にしみてくる安心感にだってまだ慣れていなくて、背中がむず痒くなる。
「はーなーれーろってぇの!」
「いーやーでーすー。お前の言うことなんてきかねーよ」
麦野の視界には入らないと高をくくって、垣根はそれはもう締りのない面構えでにやけている。
けれど、彼の弾む声一つで、彼女には彼が情けない笑顔を晒していることを容易く察している。
それくらい出来るほどには、彼の隣にいるのだから。
呆れつつも、「マジで、いい加減にして」と麦野が口を尖らせて講義しても、
垣根は「嫌だ」と速攻で拒絶。
(あーもう、ああああ、もうっ!!
ちくしょう。慣れてないんだよ、むず痒いんだよ、照れるんだよ馬鹿野郎!!!)
ぐるぐると円を描く様に、
いろんな気持ちが引っ切り無しに顔を出して麦野の心を乱していく。
閉じ込められる心地よさ。
背中に感じる垣根の体温。
くくっと笑う男の声が鼓膜をダイレクトに震わせる。
「なぁ、麦野」
簡単に。
いとも容易く。
ちょっとした事だけで、麦野沈利は囚われる。
今もまた、垣根の一声で。
たった、それだけで。
(……あっ、ヤバイ)
――――ほら、捕まった。
麦野が身体を絡まらせたコトに気付きつつ、垣根は素知らぬ顔で話し続ける。
「本当に嫌なら、俺の腕をはねのけるなり、吹き飛ばすなりすればいい」
低抗なんてみみっちい真似はしねえよ、と付け足す。
ほら、お前にはそれが出来るだけの力が、『原子崩し』としての絶対的な能力があるだろう? と囁く。
「…………最低っ」
ポツリと、麦野が呟く。
最低、さいてい、サイテー。
私が導きだす答えなんて知っているという態度が気に食わない。
「そうだな、俺は最低な男だな」
ポツリと、垣根が答える。
だって、お前が俺の腕を拒絶することないって、知っているからな。
「………もう、知らない。アンタの勝手にすればっ?」
むぅ、と無自覚に口元をヘの字に曲げる麦野が余りに可愛くて。
どれほど、つんけんとした言葉や表情、態度で冷たくあたられたとしても、
麦野のほんのりと桜色に染まった頬で全てがチャラになる――――、と垣根は目を細めた。
(やっぱ、こいつには桜の色がよく似合う)
そんな、普段から思っていたことを、改めて認識。
「おー、それじゃ勝手にさせてもらうわ」
残暑の暑さ。太陽の眩しさ。
それ以上に、今日も今日とて、垣根提督は麦野沈利に酔わされる。
垣根は、くるりと腕の中に閉じ込めた小鳥を己の方へと向かせると、軽い口付けを一つ落とした。
773 : VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] - 2010/09/20 13:14:53.34 1/cAUOc0 14/15以上です。
2レス目の改行もみにくくなった上、12レスで収まりました……orz すみません
随分前のネタですがようやく書けてよかったです。
それでは、お邪魔しました。
774 : VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] - 2010/09/20 13:43:08.43 HhcbwEAO 15/15むぎのん可愛いよむぎのん
いい加減返事聞かせろよ、の人だよな。すごく面白かった!乙!