イヴですね、どうもこんばんは。あの英文の名前欄は一体誰得なのか真剣に考えちゃいました。
例の如く通行止めの未来捏造です。苦手な方は注意して下さい。それと、一方さんがあんまりヘタレじゃないです。とは言え用心して下さい。7レスほどいただきます。
--------------
いつもより少し豪勢な晩御飯を食べ、あまり好きではない甘味を彼がコーヒーを片手に食し終わったそんな少し寒い夜。
風呂から上がってきた一方通行は、同居人で紆余曲折あって恋人となった少女がフローリングのカーペットの上で膝を抱えて丸くなっている姿を見た。
「ふっふふん、ふっふふん、ふっふっふーん」
「何はしゃいでンだよ」
言いながら、3mほど歩いて側に移動する。
冬の夜なので冷えるのだが、彼女はワンピース型のパジャマを着ていた。
「今日はクリスマスイヴだからってミサカはミサカは伝えてみる」
「くっだらねェ……」
「なんでー!ってミサカはミサカはあなたに空気を読んで欲しかったり」
「むしろなンで信者でもねェお前が、二千年以上前に死ンだ奴の誕生日前夜に浮かれるのかが知りてェ」
すると、打ち止めはむすりと頬を膨らませ、咎めるような視線を一方通行に向ける。
「クリスマス限定の雰囲気ってものがあるじゃないってミサカはミサカは訴えてみる」
「雰囲気ねェ……。お前に言われても頭の軽い冗談としか受け取れねェ」
「……あなたは色々と失礼極まりないってミサカはミサカは遺憾の意を示しちゃうんだから」
腕を組んでそっぽを向き、ぷんぷんと擬音が聞こえそうな表情を浮かべる。
「おい」
「…………」
「打ち止めァ?」
「…………」
呼びかけに全く応じてくれない。
これは意地を張るモードだなと一方通行は長年の勘で理解した。
仕方がない、クリスマスぐらい平和に過ごさなくてはいけないだろう。
「……俺が悪かったンですゥ」
「腑に落ちなさそうな顔して言われてもなあ」
頭をこちらに回転させジト目でこちらを見上げてくる。睨もうとしているのだろうか。
しかし、はっきり言って打ち止めのその目だって、ちっとも恐ろしくない。一方通行にとっては庇護欲をそそるだけだった。
唐突に彼の右手が下に延びていく。
逆光で何が起きるのかが分からなくて、思わず打ち止めは目をつぶって衝撃に耐えた。
「ばァか」
ぽすん。なんとも気の抜ける音を打ち止めは頭上から感じた。
その手は、彼女の頭を優しく撫でていく。
「……俺がお前のことを叩くとでも思ったのかよ」
優しくて、だがどこか呆れた節のあるその声に対して、打ち止めは首を振った。
「……悔しいけど、やっぱりあなたには、そのぅ、勝てないなあ……」
「あァ?」
--あなたに撫でられるのがずっと昔から好きなんだ--
声と同時に、スラックスが弱い力で引っ張られる。
打ち止めが手を伸ばしている--、その光景に鋭くてなおかつ甘い精神的な刺激を感じさせられた、どうしてなのか頭も回らないし、口も動こうとしない。
ただ、沈黙は苦ではなかった。髪をすく音が部屋中に響く。
静かで、寒い夜だ。
だから、どうしようもなく80cmという彼女との距離がもどかしく思えた。
手を止めてなんの予告もなく膝を曲げる、驚いた素振りは無いようだった。
視線が同じ高さになる、それは前髪同士が軽く交差し合う距離。
正面の彼女を見据える。
10cm先の打ち止めは少し焦点の合っていない目をしていた気がする、一方通行も視界はやけに薄くぼんやりとしていて定かではなかった。
瞳に、自分の白髪が映り込んでいたのがどうしてか嬉しい。今は目の前の自分しか見えていないのだろうと考えると、密やかに湧き上がってくる高揚感は愛情でもあった。だが、詰まるところはどうしようもない独占欲でしかないと感じる。
四年前まではそもそも一緒に過ごさなかった。三年前は確かに家族愛だった。二年前は感情の揺れに戸惑うしかできなかった。
去年は苦悩した、果たしてこれで良いのか。この一年でその答えは出せた、つもりだ。分からない、来年の自分からしたらきっと、今年の自分だって不甲斐ない自分だろう。
だが、一つだけ誤魔化さずに言えることがある。今までの人生の中で、今日が一番満ち足りた12月24日だと。
「ねぇ、今年はミサカにサンタは来ると思うってミサカはミサカは疑問を投げかけてみたり」
「来て欲しいのか」
「ううん、違うよ」
一呼吸ついて、言葉が放たれた。
「ミサカはもう子供じゃないから、サンタは来なくて良いの」
少女の手は、彼の胴をしっかりと握っていた。体が少し震えているのが右手越しに伝わった。
「あなたが居るからミサカがお願いすることも無いんだよね」
結局、彼女だって昇華出来ない思いを抱えた五回のクリスマスを過ごしていたということに収束する。まるで後手後手で戸惑うしかなかった最近を追想して、一方通行は薄く笑うしかなかった。
「ねぇ、雪降ってるみたい」
「……行くな」
上体を打ち止めの側に近づける。縮まる距離はおよそ5cm。
「どこへも行かせねェ」
「……そっか、ってミサカはミサカは雪は後の楽しみに残しとくね」
その声に、また感情が爆ぜた気がした。
あと5cm。
「打ち止め」
「どうしたの?」
「……来年も次の年もいつだって、今日はお前と居る」
3cm
「あなた、初めて言ってくれたねってミサカはミサカは微笑んでみる」
2cm
「ミサカだって、一緒に居るよ」
笑い合う顔は、今日を共に過ごせる喜びに溢れた、ただの恋人たちで。
1cm
「メリークリスマス」
0cm
250 : おわり[] - 2010/12/24 23:55:54.75 vu6.iIAO 8/8今回はタイトルがそこまで変じゃないと自信を持っています!ふんす!
しかし、本気出して通行止めを考えてみたらもうすぐイエス様産まれちゃう時間に……、申し訳ないです
お付き合いいただきありがとうございました