232 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga] - 2011/01/23 15:57:13.25 q0fuJHc+o 1/10

思いつきネタでちょろっと投下
クロス注意。幾つか浮かんだシーンだけのダイジェスト版

元スレ
▽ 【禁書目録】「とあるシリーズSS総合スレ」-22冊目-【超電磁砲】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1295367884/
233 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga] - 2011/01/23 15:58:13.37 q0fuJHc+o 2/10

――さて、講義を始めようか、少年。

そう、散々私が論じて止まない既知感についてだ。
既視ではなく既知。既に知っているという感覚。
それは五感、六感に至るまでありとあらゆる感覚器官に訴えるもの。

たとえばこの風景は見たことがある。
この酒は飲んだことがある。
この匂いは嗅いだことがある。
この音楽は聞いたことがある。
この女は抱いたことがある。

そして、この感情は前にも懐いたことがある。

「常々感じているのだが、貴方は前置きが長すぎる。
 諧謔的な弁は貴方こその業だろうが、はたして今この場で必要あるだろうか。私の外に他に聞く者などないというのに」

否。それは否だよ少年。君は実に優秀な生徒だがいささか気が急きすぎる。
 確かにこの場には君と私しかいないだろうが、だからと言って外に聞く者がいないとどうして断言できよう。

「――ほう」

234 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga] - 2011/01/23 15:59:32.07 q0fuJHc+o 3/10

では講義を続けようか。

ここに一つの円環がある。
輪廻。永劫回帰。ウロボロス。好きなようにとって構わない。
エッシャーは知っているかね? 階段を下りていたら、あるいは上っていたら、いつの間にかまた同じ場所に戻ってしまう。そういう騙し絵のようなものだ。

既知。既に知っているという感覚。
すなわちそれはこの道は既に通ったことがあるというものに他ならない。
覚えていないだけ。人は忘れる事のできる生き物だ。忘却という記憶の安全弁を持つからこそ人は苦楽を新鮮なものに感じることができる。
世界で最も美味い料理を毎夜毎夜食べることができたとして、その何が幸せというのだろう。
彼の最高潮は最初の一晩のみである。以後は単なる反復。
美味いからといって同じ味を毎度毎度食わされるのは徐々に苦痛となっていくだろう。
それ以外に料理を食らうことすら許されぬ。拷問も同義だ。何しろひたすらに同じ事を繰り返させられるのだから。

「つまり貴方は――未知を経験できぬのであれば死んだ方がましだと、そうおっしゃるのか?」

それは間違いではないが正しくもない。
死とは生あるものにこそ訪れるものだ。なればこそ、始めから生きていないものに死など訪れようもない。
未知とは知ることであり、また知らないことだ。

「なるほど。確かに今まさに生まれてきた赤ん坊――世界の全ては未知で溢れている」

そのとおりだ少年。君は幼い時分世界のあらゆるものが新鮮に見えたはずだ。
成長とは未知を既知で変える作業。知っているもので世界を塗りつぶしていくことに他ならない。
それがゆえにこう思う。毎夜毎夜同じ説教を繰り返す父。同じ料理を与える母。同じ笑顔しか浮かべぬ隣人。同じ声で鳴く小鳥。同じ匂いしかしない家。
究極――同じようにしか沈まぬ太陽。

ああ、なんとつまらない。世界はこんなにも退屈だ。

「それを“老い”と、貴方は言う」

235 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga] - 2011/01/23 16:00:40.40 q0fuJHc+o 4/10

理解が早いな少年。さすがと言うべきか、それとも当然と言うべきか。

「では一つ、質問をよいだろうか」

ああ、いいとも。

「その既知感――既に知っているという感覚。それを貴方は抱いているというのか。すなわち私と――既にこの会話をした事がある、と」

然り。私は以前も君とこの会話をした事がある。この質問も聞いたことがある。そして私は答えたことがある……君はないかね?

「さあ、どうだろう。あったかもしれないし、なかったかもしれない。私には判断が付かぬゆえ」

なるほど。君はまさしくそうだろう。なぜなら君の渇望はそこにこそあるのだから。

「そう、私は知りたい。未知を既知に変えてしまいたい。私はあなたに似ているようで確実に違う。
 私の知りたいものは未知と既知のさらに向こう側だ」

それでこそだ少年。師と同じ道を歩く弟子など不要。既知感以前の問題。
それはただの反復ですらない。劣化模造品――代替にもならぬ粗悪でしかない。

「では私は私の道を往くとして、一つ弟子に手を貸してはくれませぬか」

手を貸す? 私が? 違うだろう。手を貸すのは君の方だ。
君が用意してくれたこの舞台、一体誰のためだというのかね。

「知れたこと。外でもない貴方のために、我が師よ。ところで一つ質問がある」

ほう……? なんだね、言ってみたまえ我が弟子。

236 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga] - 2011/01/23 16:01:28.14 q0fuJHc+o 5/10

「私は貴方の事をなんと呼べばいいだろうか。
 カリオストロ? ノストラダムス? ジェフティ?
 それとも貴方の友人、かの獣殿に倣ってカール=クラフトと呼ぶべきだろうか。
 我が偉大なる師――アラン=ベネット」

どうとでも。君の好きなように呼ぶがいい――
と言いたいところだが、ここは君も合わせてはくれないだろうか。すなわち。

「了解したとも。メリクリウス、と。この舞台にはその名こそ相応しい」

君は実に理解が早くて助かる。我が弟子、アレイスター=クロウリー。
いやはや、これから彼女に贈り物をしようという立場なのにこれでは先が思いやられる。
だがこれもすべて――

「――ああ、そういえば、私と貴方は前にもこの話をしていた」

然り。然り。百億回も繰り返した。

「だが――未だ知らぬことがある」

なればそれを見つけよう。既知という既知、三千世界の全てを塗りつぶし未だ見たことのないものを見つけるまで。

「そう、そのためにこそ」

ゆえにこの舞台では外でもない君の用意した“彼”がいるのだよ。

――幻想殺し(ツァラトゥストラ)が。

237 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga] - 2011/01/23 16:03:17.88 q0fuJHc+o 6/10




「あー……こういうのを既視感っつーンだっけ」

繁華街の中にあるハンバーガーショップ。その一角に異様な気配を放つグループがいた。

一人は白髪。足が悪いのか、前衛芸術作品にも見えるおかしな杖を突いた少年だ。
ボックス席にどっかと腰を下ろし向かいの席に呆れたような視線を送っている。

「なァ……なンだか前にも同じような事があった気がするンだが」

少年の隣に座る十歳くらいの少女。頭から一房、重力に逆らうように立った髪の毛が印象的な女の子。
彼女もまた向かいの席に呆れたような視線を向けていたが、少年の言葉に振り返り苦笑した。コメントしたくない、という事なのだろう。

そして三人目。二人と机を挟んだ反対側の席。金髪の、見るからに外国人な容貌。美しい髪は綺麗に結い上げられている。年頃の少女だ。
少年の隣に座る彼女とは対照的に、出るところは出ている。街を一人で歩いていればすぐさま男に声をかけられてしまうような美人だ。
ゴシックロリータ調の服も彼女の外見と相まってどこか神秘的な印象を与える。

だがそんな少女が。

「んぐ……あむあむ。ごくん」

一心不乱にハンバーガーを口に詰め込んでいた。
体裁など微塵も気にする様子もなく、フードファイトでもしているかのように次々と口に放り込み、もっきゅもっきゅと咀嚼する。
その姿は彼女の本来持っているだろう神秘性など欠片も残さず破壊するには十分だった。

「なァ、外人っつーのはどいつもコイツも『こう』なのかよ」

「ミサカに聞かれても困るなぁ……ってミサカはミサカは思ったままを口にしてみる」

238 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga] - 2011/01/23 16:04:42.19 q0fuJHc+o 7/10




――既知感。

目の前に立つ黒衣に身を包んだ男は自分の知る『アイツ』によく似ていた。
白い髪、赤い目、吊り上がった口の端。そんな外見上の特徴はこの際些細な事だ。
何よりもその放たれる雰囲気――魂の質とでも呼ぶべきものが余りにも似通っていた。

「――カハッ」

彼は吐くように嗤い、こちらに視線を向ける。
――また既知感。嘲笑、侮蔑、視線に込められた意図は見下すものだ。彼は他の全てをゴミ以下にしか見ていない。
そう、彼にとってこちらは一方的に搾取される側。ただの――エサだ。

「なんだよ、なんなんですかぁテメエはよぉ。
 マレウスみてえな魔術師でもなし、聖遺物を持ってるなんて事もありえねえ。だったら今のコイツはなんだ?
 ……ハン、これもアイツのフラスコって訳か。メリクリウスめ、クソッタレが。アイツにしては気が効いてんじゃねえか」

一体何が可笑しいのか、その男は独り嘲るような笑みを浮かべていた。

「レーベンスボルンの応用ってかぁ? 確かにこれならスワスチカを開くには絶好の場だ。
 しかし戦時でもねえのにこれとは、やってくれやがる。最悪だぜ副首領殿ぉ!」

――こちらには彼の言葉の意味が分からない。だがただ一つはっきりしていた。目の前にいるのは――悪夢そのものだ。

「劣等だが、これなら食いでがある。オマエもアイツお手製のツァラトゥストラって訳じゃあなさそうだが……
 臭う、臭うぜ。鼻が曲がりそうな水銀の臭いがプンプンしやがる。
 どうしてなかなか、粋な計らいじゃねえかよ。なあ、嬢ちゃんよぉ?」

その目。自分は見たことがある。それは一方的な簒奪者の目だ。
蹂躙し、食らう。獲物を見る目。圧倒的強者の高みから見下ろすその目。
月を背に立つその姿は人類の天敵――まるで吸血鬼。

239 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga] - 2011/01/23 16:05:56.67 q0fuJHc+o 8/10

「そんな訳で、だ」

「――!」

思わず背筋に緊張が走り身構える。――いや、反射的に『身構えさせられた』。
相手は構えも何もない、ただの棒立ち。
だというのに彼の背後から溢れる、まるでコールタールのようなどろりと暗く重いもの。一般人であれば卒倒しかねないような濃密な殺意だった。

「聖槍十三騎士団黒円卓第四位、ヴィルヘルム・エーレンブルグ=カズィクル・ベイ中尉だ」

悪夢の具現でしかない戦場の悪鬼は嗤った。

「名乗れよ劣等。そんで精々足掻け。そうでないとこっちも困るんだよ」

その物言いに、ぶちんと何かが切れた
轟音と共に閃光が闇夜を切り裂く。一条の光芒が二人の間を貫き炸裂した。
だが見ずとも分かる。こいつは『あれ』と同じくそんなものは効かない。――だから今のは要するに、喧嘩を買ってやるという宣言だ。

「いいわ、こっちもアンタに合わせてあげる」

足は震えている。心臓もさっきから暴れまくっている。
だけど――これは許しちゃいけない。コイツは存在そのものが悪の塊。いわば世界の敵。

「――超能力者第三位」

その意思は、その姿は、どこかあの戦姫を髣髴とさせる。あのいけ好かない甘ちゃん野郎。
あの場にただ一人相応しくなかった少女と言ってもいいほどの女性軍人。
奇しくも今目の前にいる少女の周りには、彼女と同じく炸裂する光の蛇が舞っていた。

両者はお互いに異なる既知感を覚えながら対峙する。

「――超電磁砲、御坂美琴っ!」

白雷を纏う少女は高らかに叫んだ。

「イイねぇ、実に活きがいい。それでこそ食いでがあるってもんだ! 前からアイツは気に入らなかったんだよ!」

「それはこっちの台詞だっ……!」

両者は互いの後ろに別の人物を幻視しながら。新たな舞台での最初の戦いが始まった。

240 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga] - 2011/01/23 16:06:51.07 q0fuJHc+o 9/10




「なあ、オマエ一体何者だよ」

「――分からない」

「え?」

「分からないの。何も……思い出せない」

「思い出せないって……記憶喪失か?」

「ええ、そうみたい。自分でもおかしな事を言ってると分かってるんだけど、まったく思い出せないの」

「パスポートとかないのか? オマエどう見ても外国人だろ」

「外国……? ここ、どこ?」

「日本。学園都市。ええと、じゃぱーん」

「ニホン……? ああ、ヤーパンね。極東の、島国」

「そうそう。で、パスポートとかないのか? 身分証明書みたいなものは」

「残念ながら持ってないみたい。私、ほら。着の身着のままみたいだから」

「じゃあせめて名前は思い出せないか?」

「名前……?」

「そう、オマエの名前。せめてそれくらいは思い出してくれないとなんて呼べばいいのか困る」

「……アンナ。ええ、そう。アンナ。それが私の名前」

241 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga] - 2011/01/23 16:08:23.53 q0fuJHc+o 10/10

そんな訳でDies iraeクロスネタでした。マイナーネタでごめんね。誰か書いてくれ