730 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage] - 2011/03/04 22:39:38.41 hFf7tHdq0 1/6

上イン←美琴の失恋話です。
純粋な美琴嬢ファン、上琴ファンの方々には嫌厭される可能性もありますのでご注意ください。
4レスほど頂きます。

元スレ
▽ 【禁書目録】「とあるシリーズSS総合スレ」-24冊目-【超電磁砲】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1298034529/
731 : ……アンタなんか、大っ嫌い。 1/4[saga] - 2011/03/04 22:41:11.52 hFf7tHdq0 2/6




「そんな訳でまたタイムセール逃しちまったわけでさあ……神様、上条さんはあなたに何かしたでせうか?」

「アンタが補習なんかに引っ掛からなければ良かったんでしょうが。また赤点だったワケ?」

「いや入院してた間の授業分がね。インデックスごめん、お前の食欲に俺の薄い財布はもう限界です」

「あははっ、アレで聖職者だとは思えないほどの暴食っぷりだものね」


偶然会ったアイツと――――本当はもしかしたら会えるかもしれないと立ち寄った先で会ったアイツと下らない世間話に花を咲かせたのが一週間前。


「またこんな遅くに出歩いてんのか?お前に絡んだ不良の人達が可哀想だから早く寮に帰りなさい」

「どういう意味よ、ソレ!?」


捻くれた言葉の中に夜更けに出歩く女の子を心配する気持ちが垣間見えて、恥ずかしさのあまり思わず電撃を飛ばしてしまったのが3日前。


「………だから、好き、なの……アンタの事が……」

「――――ごめん、御坂。……俺には、護りたいヤツがいるから――――――」


素直になれない自分を何とか抑え込んで、見事玉砕したのがつい昨日。


「1歩進んだ関係になりたい、だなんて………慾かいたのがいけなかったのかなぁ………」


黒子が居なくて本当に良かったと思う。
学園都市の平穏の為に日夜働く黒子には悪いが、今日ばかりは悪さをしでかしてくれた犯人に心の底から感謝した。
昨夜から羞恥心をかなぐり捨てて泣き喚いていた私には唯それだけが救いだった。
お姉様と呼び親しんでくれる黒子に心配を掛けないで済む、唯それだけが。


「―――――……気分を、変えなきゃ」


プライドも何もかも忘れて朝までずっと泣き叫んでは放心し、
点呼の収集ではたと現実に戻って来た私にとってそれは半ば義務の様に思えてならなかった。
気分を変えなくては。嫌な事も辛い事も全部上書きして塗りたくって、心の奥底に埋めてしまおう。
一刻も早くそうしなければ私が私で無くなってしまう様な気がして。
私でありたかった私が音を立てて崩れ落ちてしまう様な気がして。

そしてその予感は、恐らく前兆だったのだ。




732 : ……アンタなんか、大っ嫌い。 2/4[saga] - 2011/03/04 22:42:07.27 hFf7tHdq0 3/6




「―――――どうしたの短髪?暗い顔して」


なんで。なんでこんな時にコイツに遭ってしまうのだ。
人の気も知らないで。呑気にどうしたの、なんて。馬鹿らしい。


「あ!もしかしなくてもとうまが私の為に手ずからお料理教えてくれ始めたの知って嫉妬してるんだ?」


黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ!
敗北者を哂いに来たのか?自分が勝者たる事をまざまざと見せつけに来たのか?
そうやって蹴落とした女が二度と這いあがってこないように壊しにかかったのか!!


「何にも言わないって事は図星だね?ふふん、これで短髪と私は互角になったんだよ!」


―――――違う。この子は何にも悪くない。
最後に会った日に私がアイツと1日中一緒にいて宿題を教えてあげた事を自慢したから、意趣返しをしただけだ。
いつもの事なのに。
互いに牽制し合ってやれ自分の方が1枚上手だ、自分はでも別の事で上手くいっている、そう張り合って来たじゃないか。
なのに、


「アンタさあ……勘違いしてんじゃないわよ」


なのに、


「アイツがアンタに料理教えたのは、迷惑しか掛けない穀潰しに少しは見合う分だけ働かせる為よ」


なのに、どうして私はこんな事言っているんだろう?




733 : ……アンタなんか、大っ嫌い。 3/4[saga] - 2011/03/04 22:43:31.03 hFf7tHdq0 4/6




「アイツ言ってたわよ?ガツガツガツガツ人の苦労も知らないで端から食いまくるのはやめてくれ、って」


確かにアイツは言っていた。
でもそれは、手の掛かる我が子を惚気る様な優しい眼差しを伴っていた筈なのに。


「食ってばかりいないで偶には自分で飯くらい作れ、って」


好きな女の子の料理を食べてみたい、なんて思春期の男の子が持つ当然の感情だった筈なのに。


「もう、限界だ、って」


学生としての自由を縛り上げるギリギリの財布をオーバーリアクションで冗談の様にみせるアイツがどれだけこの子を愛しているか、知っていた筈なのに。


「…………何アンタ、勘違いしてるワケ?」


なのに、どうして私はこんなにも醜いんだろう。


驚いた顔をして、暫くしたら酷く傷ついた表情をしたあの子を見て罪悪感に苛まれながら、しかし私は心の何処かで確かな優越感と快感を抱いていた。
ざまあ見ろ、心の奥底から湧き上がるそんな感情が醜くて汚くて卑しくて気持ちワルイ。

ゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイ。
謝罪の言葉も否定の言葉も、喉に突っ掛えて出て来やしない。
真相を確かめに行ったのだろうか。それとも、彼の下から離れようと思い立ってしまったのか。
走り去っていくあの子を目にして僅かに釣り上がった口角に、自分で自分を軽蔑した。




734 : ……アンタなんか、大っ嫌い。 4/4[saga] - 2011/03/04 22:44:29.99 hFf7tHdq0 5/6




寮に駆け込んで自室へ飛び込む。
ベットに跨り長く茫然としていたが、今にも泣きそうなあの子の表情を思い出して慌てて口元を押さえる。


「お、べぇっ……」


這う様にして向かった洗面所で思わず吐いた。文字通り、反吐が出る思いだった。
ゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイ。
自分勝手な理由で、恐らく私は取り返しのつかない事をしてしまったのだ。

苦しい、痛いよ。心が痛い。誰か助けてよ。
誰か、と言いながら未だアイツに縋る自分に再び吐き気が込み上げる。

あんな事をしておいて、アンタになんかアイツに助けを求める権利はないのに。
自分で捨て去ってしまったくせに。
かつてアンタを助けてくれたヒーローは、今頃誰かさんの所為で傷つき果てた女の子を慰めに行っているだろうに。


散々吐き散らかした後、ふと映った俯く自分の顔に気付き嘲笑する。
なんて醜い顔をしているんだろう、私は。

見て。私、悲劇のヒロインみたいでしょう?だから助けてよ。いつもみたいに助けに来てよ。
滑稽にもほどがある心の軋みに、沸点の低い神経がブチ切れる音が聞こえた気がした。


「―――――――……アンタなんか、大っ嫌い」


鏡に映った自分を見て罵倒する。
もしこれが面と向かって、こんなイイ女を振るだなんてと小馬鹿にした様にアイツに言えたら、こんな自分を知らずに済んだのだろうか。

気付いた所でだがもう遅い。
私の心は、光輝くあのヒーローから最も遠い場所に離れてしまった。此処まで自ら足を運び入れてしまった。


「………本当に、大っ嫌い……」


取り返しのつかない事をしてしまった。
きっと自分という悪者の所為で、離れようとするヒロインとそれを追いかけてゆくヒーロー、恋愛ドラマの様に二人は結ばれてしまうのだ。



そんな光景が過った頭に、再度私は反吐をブチ撒いた。




≪ ……アンタなんか、大っ嫌い。≫(完)





735 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage] - 2011/03/04 22:45:17.81 hFf7tHdq0 6/6

以上です。
普通に恋愛モノを書こうとしたのに俺が書くといつもこうなる。何故だ。
最近此処の投下量が全盛期に比べて大分少なくなっている様な気がして寂しいです。皆もっとカタカタすればいいよ!