929 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県)[] - 2011/03/27 22:35:52.10 6D3wzZlco 1/9

黒夜と絹旗の話しを投下するよ
してもいいかな、雰囲気的にしづらかったから

しちまうぞぉ

元スレ
▽ 【禁書目録】「とあるシリーズSS総合スレ」-25冊目-【超電磁砲】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1299734320/
930 : miz 「黒夜と絹旗の暗闇の五月計画」[] - 2011/03/27 22:38:42.42 6D3wzZlco 2/9

「仕事の時間だ」
「わかってる」

短く返事をする黒夜海鳥。
相手はシルバークロース、仕事の同僚。
お互い目的は同じ仲である。

「今回の作戦においては、アイテムが絡んでくる可能性は十分に高い」
「アイテムねぇ……」
「……そういえば、絹旗最愛とは面識あるのか?」
「なんでそう思う?」
「暗闇の五月計画の被験者だろう」
「……ひっはは。そうだな」

黒夜は思い出す。あの時の事を。

────
──



「あ?なんだって?」
「移動よ、移動。これからの研究は貴方一人では無理なのよ」
「私一人じゃ無理だって?」

研究者と、被験者。黒夜海鳥は会話をしていた。
会話内容は、研究室の移動について。
黒夜は、今回の計画『暗闇の五月計画』の被験者である。
数々のテストや、研究、能力開発をこなして行った。
しかし、今研究員が言うように、黒夜一人では限界が見えてきたのだ。

931 : miz 「黒夜と絹旗の暗闇の五月計画」[] - 2011/03/27 22:39:25.95 6D3wzZlco 3/9

「そうよ、もう貴方に敵う相手は居ない」
「……そうかよ」

短く返す反面、そう言われ少しだけ喜ぶ。
顔がにやけているのは、絶対に隠すのだった。
だが、その顔がにやけているのは研究者にはバレバレだった。

「そんなに嬉しい?」
「別に」
「そう」

短い会話。
研究以上の会話はいらない。それが黒夜のやり方だった。

そう、黒夜は被験者であると共に研究者でもあったのだ。


「研究室は第31研究室よ」
「はいはい」

そのままその研究室を後にする。
今まで、研究を続けてきた号室は第23研究室。
31と番号が飛ぶ為に、少しだけ研究室は離れていた。

「はぁ……めんどくせぇ」

一人で呟く黒夜。
こう言いながらも、新しい研究室に期待を込めていた。
どんな研究室なのか、一体どんな研究なのか……私はもっと強くなれるのか。
そんな事を想像しながら、みるみるうちに足が早くなっていった。

「ひっはは」

いつの間にか込み上がる笑い。
そして……
勢いよく扉を開けた。

932 : miz 「黒夜と絹旗の暗闇の五月計画」[] - 2011/03/27 22:40:34.86 6D3wzZlco 4/9

「……」
「……」

向かい合う二人。お互い顔を見るのは初めて。

「なんなんですか、ノックもしないで超失礼ですね」
「なっ……」

いきなりダメだし。
あの期待はなんだったのだろうか。

「……第23研究室から来た黒夜海鳥だ」
「ああ、貴方がそうだったんですか」
「やあ、来たんだね。いらっしゃい、ようこそ第31研究室へ」

出迎えたのは、研究者と一人の被験者。
身長も歳もさほど変わらない被験者。変わっているのは髪の色と長さくらいだろうか。

「私は絹旗最愛。超よろしくお願いします」
「……あ、ああ。黒夜海鳥だ」

互いに握手をする。
少しだけ、お互いの握り具合が高かったような気がした。
そんな気がしたのは黒夜だけだが。

「君たちはお互い能力が同じなんだ」
「なっ……!?」

驚いたのは黒夜。
絹旗は既に知っていたのだろうか。

「しかし、研究においては先行を変えた。同じ能力者が違う演算方法を検出したらどうなるか
これが、今回の研究においての一番の目的だ」
「なんだと……」

やはり、絹旗は何も言わない。
黒夜は悔しかった。
自分よりも先に事実を知っていたコイツが少しだけ憎かった。

「絹旗最愛は『防御面の特化』、黒夜海鳥は『攻撃面の特化』。それぞれ演算のモデルは『一方通行』の演算。
 そして、この場合……どちらが勝利をするのか」
「つまり、私とコイツを戦わせようってのか?」
「……そういう事だ。互いに、攻撃性も防護性も基準値を越している」

933 : miz 「黒夜と絹旗の暗闇の五月計画」[] - 2011/03/27 22:41:35.67 6D3wzZlco 5/9

ふざけんな、と黒夜は心の中で思った。
同じ能力者。最初に聞いた時は、どうやって演算をしているのか、とか。アイディアを出し合ったり、とか。
少しでも『仲間意識』というのがあった。のかもしれない。

「戦闘は明日だ。今日は顔合わせだけ、ゆっくり今日は休め。あとは好きにしたまえ」

そう言うと、研究者は出て行った。
暗闇の五月計画。

やはり、ふざけた計画だ。


研究者が出て行った後、黒夜と絹旗は適当な会話をすることにした。

「あんたは知ってたのか?」
「この計画をですか?知ってましたよ、超胸糞悪いですけど」
「……それで何もしなかったのか?」
「何も出来ないのくらい、あなたにもわかるでしょう?もしかして、超オバカさん?」
「……」

話していて、気分が悪い。
明らかに、相手が馬鹿にしている。
そう思った黒夜。

「あんたも大能力者なのか?」
「そうです。貴方よりも先に大能力者になりました」
「……防護性が優れているって聞いたが、どんな能力なんだ?」
「これから戦う相手に能力を教えるなんて、超馬鹿のする行為ですよ」

やはり、不愉快になる。
そんなに私が嫌いなのか? と思ってしまうくらいには。

「……まぁ、そうだな」
「超そうです」

そう言い切った絹旗を最後に。
会話は終了した。


翌日。

戦闘は予定通りに行われた。

934 : miz 「黒夜と絹旗の暗闇の五月計画」[] - 2011/03/27 22:42:33.75 6D3wzZlco 6/9

「それでは、絹旗最愛と黒夜海鳥による戦闘訓練を開始する」


(そういう名目じゃなくても、研究者から聞いたっての)

一応、訓練という事にはなっていた。
上の連中が見に来ているのだ。

「始め!」

研究者の合図から、戦闘は始まった。
絹旗は一向に動かない。

(そうか、防護性特化って……攻撃はしてこないのか?)

そう思った黒夜は、先手を打つ事にした。
自慢の能力『窒素爆槍』を相手にぶつける。

「くらえ!」

二つの手から、二つの槍が形成され、それが絹旗の方へと飛ぶ。
そして、絹旗に当たると共に爆発をする。

原理は、窒素爆発。
架空の物とされていた、窒素爆発が能力の使用により『実現された』のだ。
研究者からすると、夢のような事であった。
黒夜も、最初に使えた時は研究者としての喜びがそこにあった。

……しかし。

「はぁ、超ダメダメですね」
      、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、
確かに、当たったのに傷一つの無い絹旗最愛がそこに居た。

「なンだと……」

口調は能力を使っているので、一方通行の口調。

「そンなンじゃ、超ダメダメだって言ってるンですよ。貴方『弱い』ですね?」
「なンだとォォォォオオ!!」

935 : miz 「黒夜と絹旗の暗闇の五月計画」[] - 2011/03/27 22:43:20.74 6D3wzZlco 7/9

弱い、という言葉に反応した。
全力で、槍を形成し撃ち込む。
何度も何度も
演算をし尽くした。
何回も当てた
何回も当たった。

だが、絹旗には傷一つ無かった。

「はぁ……はぁ……」
「戦闘訓練は終了ですね」
「まだ終わってねェンだよ!!」
「これ以上やっても『無駄』なンです。貴方の体力が消耗するだけですから、つまらない戦いをこれ以上続ける意味は
全くありませンから」
「……クソ」

膝をつく黒夜。
彼女は初めての敗北を手に入れてしまったのだ。

戦闘訓練という名目は何回も行われた。
しかし、何回やっても黒夜の攻撃が通る事はなかった。
戦闘をする度に、黒夜は絹旗から罵倒された。
何回も弱い弱い、と言われた。


矛盾、という言葉がある。
最強の矛と、最強の盾が存在し、互いにぶつかったらどうなるか。
今回の研究で出た結果は『最強の盾の勝利』であった。

そうして、研究者からは絹旗が優遇された。
絹旗は、立派な『成績』をあみ出したのだ。
対する黒夜は、負けた者としての『成績』を与えられた。
『暗闇の五月計画』においては、もう捨て駒扱い。

936 : miz 「黒夜と絹旗の暗闇の五月計画」[] - 2011/03/27 22:44:29.27 6D3wzZlco 8/9

全てはあの絹旗のせいで。


好きなイルカのぬいぐるみを殴りつけた。

「クソ……」

何回も何回も。
殴りつけた。このイライラが無くなるまで。

「絶対に、私は変わってみせる」

自分の部屋で宣言をする。

「……ひっはは、最強の盾も、最強の矛が何本もあればどうなるか、だよな?」

頭の中でいろんな対策を考える。

「どんな方法を使ってでも、絹旗最愛を超えて見せる。絶対に」



──
───

そうして、今に至る。


「私はここまでやった、私はここまで変わった。これで絹旗最愛に負けたら私はそこまでだったということだ」
「? 何を言っている?」
「……なんでもねぇ、行くぞ」

黒夜は向かう。
昔の目標を、果たすために。

         #            #

「懐かしい名前を思い出しました」
「? どうしたの絹旗?」
「あ、いや。研究の為に罵倒していた奴なんですけどね……」

おわり

937 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県)[sage] - 2011/03/27 22:52:54.50 6D3wzZlco 9/9

新訳読み返すと、黒夜を応援してる俺がいるんだ
暗闇の五月計画時代の黒夜ちゃんをもっと見たいものだね