782 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga] - 2011/06/29 01:00:05.98 vqhFHl+g0 1/12

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【関連】

もしインデックスと出会ったのが上条さんではなく、○○だったら
http://toaruss.blog.jp/archives/1034282385.html

『無敵』なンざ興味ねェ
http://toaruss.blog.jp/archives/1034361154.html

元スレ
▽ 【禁書目録】「とあるシリーズSS総合スレ」-30冊目-【超電磁砲】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1307804796/
783 : ベクトルガール登場 1/10[saga] - 2011/06/29 01:01:10.50 vqhFHl+g0 2/12



第七学区の通りを、一台の車が疾走していた。
片道三車線のその道で、その車は次々と車を追い越し、信号を無視し、脱兎のごとく突き進んでいる。

その車を追いかけるのは、十台近い警備員の車両だった。
けたたましいサイレン音を響かせ、弾丸のようなスピードで驀進している。

しかし両者の間隔は簡単には埋まらなかった。
暴走車の運転技術は、警備員をして舌を巻くほどの腕前であった。


「無茶苦茶やってくれるじゃん、アイツら!」


警備員の車両の中で、一台飛びぬけて疾走している車がある。
その車の中で、運転手である黄泉川愛穂が吼えた。
興奮から鼻息を荒くし、ギラギラと輝かせた瞳で暴走車をねめつける。 その彼女の瞳が見開かれた。

暴走車が対向車線に飛び出した。
反対車線を走っていた車に構うことなく、暴走車はスピードを上げてゆく。
何度も衝突の危険が彼らを襲ったが、彼らはその全てを潜り抜けていく。 彼らは全く、恐れを知らなかった。

暴走車を避けようとした一般車両が次々と事故を起こしていく。
それらは壁となり、あるいは制御を失い道路を滑り、警備員の行く手を阻んだ。

黄泉川は大きくハンドルを切った。
神業的なハンドル捌きで一般車両をかわしながら、アクセルを踏み込む。
再び、彼女の怒号が車内に響いた。


「鉄装! 道路の封鎖と車両の非難はまだ出来ないのか!?」

「この先の通りの封鎖は完了したと報告がありました! ですが、車両の非難が間に合いません!」

「クソォッ!! 強盗に暴走、捕まえたらお仕置きじゃ済まさないじゃんよぉ!」

暴走車の正体は、銀行強盗犯だった。
高校生ほどの男が三人、全員銃で武装したスキルアウトであると聞いている。

鮮やかな手並みで銀行を襲い、現金を手にした彼らは、そのまま車を使い逃走を図った。
通報の遅れから初動が遅れたものの、警備員はすぐさま犯人グループの車を特定し、追跡を始めた。
そして、事態はカーチェイスへと移っていった。



784 : ベクトルガール登場 2/10[saga] - 2011/06/29 01:02:08.95 vqhFHl+g0 3/12



「おうおう、目標がやってきましたよ」

「それじゃあ、超作戦の確認です。 私が受け止めて、あなたが支える。 オーケー?」

「オーケーオーケー。 殺さないでってなると、それが一番簡単だ」


封鎖区画にあるビルの屋上に、二つの人影があった。
声は少女のものだった。 どこか幼さを残しているものの、力強く、自信に溢れている。
二人とも背はあまり高くなく、年の頃は、恐らく十代前半であろう。

だが何よりも眼を引くのは、彼女らの格好であった。
全身に纏った装甲のようなボディスーツとそれを覆うマント、口元だけが露出したマスク。
細部のデザインこそ異なるものの、それはベクトル仮面を強く連想させるものだった。

二人のスーツは、それぞれ異なったカラーリングを施されていた。
一方はベクトル仮面と同じ白いカラーリング、もう一方はそれとは対照的な黒尽くめだった。


「しくじるんじゃないぞ」

「そっちこそ、超タイミングを合わせてくださいよ」


グングンと、暴走車が近づいてくる。
それを確認し、二人は一度視線を交わすと、屋上から飛び降りた。



785 : ベクトルガール登場 3/10[saga] - 2011/06/29 01:03:42.30 vqhFHl+g0 4/12



白尽くめの少女は、一切減速することなく道路に降り立った。
重い音が道路に響き、しかし少女は、なんでもない様子で軽く体を伸ばした。
彼女が立ったのは、ちょうど暴走車の正面だった。 こちらへ向かってくる車を確認し、彼女は不敵に笑みを浮かべる。

その後ろで、黒尽くめの少女が着地した。
こちらは、白尽くめのように単純に飛び降りた訳ではなかった。

彼女は断続的に両掌から窒素を発射しながら落下した。
落下の勢いを窒素が生む衝撃波で殺し、着地を成功させたのだ。

突如現れた少女達に、しかし暴走車は容赦しなかった。
スピードを上げ、正面から少女達に突っ込んでくる。


「来ましたよ。 超早く準備をしてください」

「慌てんなって」


白尽くめの少女は僅かに腰を下げ、衝突に備える。
その彼女に、黒尽くめの少女は背中合わせに体をくっつけ、両手を正面に突き出した。
同時に、黒いスーツから何本かの細長い義手が伸び、少女達の体を固定した。


「準備オーケー」

「了解。 ……超今です!」

「あいよぉ!」



786 : ベクトルガール登場 4/10[saga] - 2011/06/29 01:05:36.41 vqhFHl+g0 5/12



白尽くめの少女が叫び、黒尽くめの少女が答えた。
その一瞬後に車が衝突し、同時に黒尽くめの少女の掌から窒素が噴出した。

耳をつんざく破壊音が轟いた。
押し負けたのは暴走車の方だった。 少女達はその場を一歩も動かず、車を受け止める事に成功していた。

暴走車はフロントのエンジン部分を大きく凹まされ、停止した。
衝撃に後輪が持ち上がり、地面に叩きつけられる。
車は半壊していた。 もはや走れる状態ではない。

シュルシュルと小さい音をたて、義手が黒いスーツへと格納された。
それを確認すると、黒尽くめの少女は身を翻し、猫のような身軽さで運転席まで駆けていく。

車内の三人は、全員エアバックに押しつぶされ、うめき声をあげていた。
エアバックが彼らの頭を直撃したようで、彼らの鼻は折れ曲がり、血が滴っている。


「超作戦成功ですね」


そう言って、白尽くめの少女は笑みを覗かせた。



787 : ベクトルガール登場 5/10[saga] - 2011/06/29 01:10:05.95 vqhFHl+g0 6/12



彼女らの作戦は、いたってシンプルなものだった。

白尽くめの少女には、窒素を固めて装甲として扱う能力があった。
至近距離からの散弾銃の連射にも耐えられるこの能力でもって、走ってくる車を受け止める。
その際にこちらが弾き飛ばされないよう、黒尽くめの少女が窒素を噴射し衝撃に備える。

強盗犯の命はエアバックが守ってくれる。
そして同時に、そのエアバックが彼らを押しつぶし、身動きを封じる。

見事に彼女らの計画が図に当たった結果となった。


「でも痛ぇよ。 思ったより衝撃キツかったし、もぉちっとマシな作戦無かった訳?」

「何言ってんですか。 一番簡単だって、あなただって超賛成したじゃないですか」

「もっと簡単な方法あったんじゃないのー?」

「じゃあ、次はあなたが作戦考えてください」


軽口を叩き合っている二人の下に、ようやく警備員の車が到着した。
いの一番に飛び出したのは、黄泉川だった。

厳しい表情を浮かべる彼女に、しかし少女達は隣人に挨拶するような気軽さで声をかけた。


「やあ来た来た。 あ、強盗犯は車の中だから」

「命には超別状ありませんし、これでもう動けませんよ」

「……そのようじゃん」


車内の様子を確認すると、黄泉川はトランシーバーに指示を飛ばす。
即座に後続の警備員が車に駆けつけ、強盗犯の救出を始めた。

それを横目に、少女達は警備員に手を振りつつ、揚揚と現場を立ち去ろうとする。
その背中に、黄泉川の厳しい声がかかる。


「待て二人とも! このまま返す訳にはいかないじゃん!」


少女達はゆっくりと振り返った。
黒尽くめの少女は頭の後ろで両手を組み、気だるそうに目を細めた。
対して白尽くめの少女は、軽く腕を組んで、口の端で笑った。


「二人は何者じゃん? その格好、ベクトル仮面関係者じゃん?」

「ふっふ。 超その通りです」

「まぁ、ベクトル仮面の右腕ってやつかな。 せっかくだ、自己紹介といこうか」


黒尽くめの少女の顔にも笑みが浮かんだ。 両手を腰に当て、大きく胸を張る。
彼女に習い、白尽くめの少女も精一杯に胸を張った。 仮面の奥の瞳が、キラキラと輝いている。


そして彼女達は、同時に宣言した。



788 : ベクトルガール登場 6/10[saga] - 2011/06/29 01:10:52.27 vqhFHl+g0 7/12









『ベクトルガール――――見参!!』










『――――あァン?』



789 : ベクトルガール登場 7/10[saga] - 2011/06/29 01:12:15.16 vqhFHl+g0 8/12



「オフェンスガールちゃーン!! ベクトルガールの名は私のもンだって言ってンでしょーよォ!!」

オフェンス「ふざけンじゃねーですよボンバーガール!!
      ベクトルガールの名前は、私の方が超相応しいンですゥ!!」

黄泉川「あ、あの……」

オフェンス「大体! スーツから見ても一目瞭然です!
      見てください、この綺麗な白を。 ベクトル仮面と超御揃いで超セクシーです!」

オフェンス「この白こそ、ベクトルガールを名乗るのに超相応しいンです。
      何せ超お揃いですからねェ。 二人並んだら、もォ超ペアルックですねェ」

ボンバー「……ハッ」

ボンバー「ベクトル仮面の隣に立つなら、私の漆黒のスーツの方が映えるンだよォ」

ボンバー「白と黒がお互いを引き立たせる。
     だから私こそが、ベクトル仮面のパートナーに相応しいンだよォ!」

オフェンス「負け惜しみですかァ、ボンバーちゃン」ププッ

ボンバー「!」

オフェンス「素直にお揃いが羨ましいと言ったらどォですかァ?
      ボンバーちゃン、私たちの超ペアルック見て超羨ましそうにしてましたもンねェ」

ボンバー「……」

オフェンス「物欲しそうに指咥えて、私のスーツを見てましたもンねェ。
      まァ自分のスーツが黒じゃあ仕方ないですかねェ」

オフェンス「なにせ『一人だけ』超お揃いじゃァないンですからァ」ニヤニヤ



790 : ベクトルガール登場 8/10[saga] - 2011/06/29 01:14:21.60 vqhFHl+g0 9/12



黄泉川「オイおまえら……」

ボンバー「……ひっはは」

オフェンス「……?」

ボンバー「なァにがペアルックだ。
     ベクトル仮面はそンなお子様趣味じゃ喜ばねェっつゥの」

オフェンス「……なンですと?」

ボンバー「ベクトル仮面の好きな色って知ってる? 黒、なンだってさ。
     あれェ、黒ってどっかで聞いた事のある色だよねェ。 ……そォ、私のスーツの色だ」

ボンバー「それだけじゃァない。 黒ってのは私のイメージカラーみたいなもンだ。
     私の黒髪も、艶があって撫で心地良いって褒められた事あるしィ」

ボンバー「おやぁ、これってひょっとして、私ってばアイツの好みにドンピシャって事かなァ?」

オフェンス「ぐぬぬ……っ」

ボンバー「いやー、まいっちゃうなァ。 私ってば罪な女だ。 ……でェ」

ボンバー「単なるお揃いのオフェンスちゃンとォ、どストライクで好みのこの私、
     果たしてどっちがパートナーに相応しいかなァ?」ニヤァリ

オフェンス「……っ」プルプル

ボンバー「そもそも、妖しい色気を持つ私が、お子ちゃまオフェンスに負ける訳がないンだよねェ」

オフェンス「……育つ見込みの無い断崖絶壁のクセに」ボソッ

ボンバー「ッ……なァに自分自身を卑下しちゃってンのかねェ、オフェンスちゃーン?」

オフェンス「あなたの事を言ってるンですよォ、断崖絶壁ちゃーン?」

ボンバー「……」

オフェンス「……」

ボンバー オフェンス『……あ゙ァン?』



791 : ベクトルガール登場 9/10[saga] - 2011/06/29 01:15:36.69 vqhFHl+g0 10/12



黄泉川「ええっと……なんでか手が出し辛いじゃん」

ベクトル仮面「……」

黄泉川「おわっ! ……いつからそこにいたんじゃん?」

ベクトル仮面「……」スタスタ




ボンバー「ちょっと面貸しな、久しぶりにキレちまったよ」

オフェンス「超いい度胸です。 今日という今日は許さ……って、あっ」

ボンバー「あァ? ……っ!」

ボンバー「あ、あの……これは、その、違くて……」

オフェンス「そ、そうです! 超ちょっとしたアレがあってケンカなんて……えっとぉ」

ベクトル仮面「ベクトルチョップ」ズビシッ

ボンバー オフェンス『フギャッ!!』




ボンバー オフェンス『』チーン

ベクトル仮面「……なンか、すまねェな」

黄泉川「いや、それよりその子達は」

ベクトル仮面「俺が責任もって家に帰しとく。 世話かけたなァ」ヒョィ

黄泉川「……いいじゃん。 その二人の事はあんたに任せるじゃん。 けど、」

黄泉川「余り危険な事に首を突っ込ませるなよ。 しっかり教育してやるじゃん」

ベクトル仮面「よく言っておく」

黄泉川「それともう一つだ、ベクトル仮面。 今のやり方は変えられないじゃんか?」

ベクトル仮面「……」



792 : ベクトルガール登場 10/10[saga] - 2011/06/29 01:16:48.33 vqhFHl+g0 11/12



黄泉川「おまえには何度も助けられたし、悲劇を無くそうっていう考えは理解できる」

黄泉川「でも、おまえはまだ学生じゃん。
    いくら強い力を持っているとはいえ、一人で戦って欲しくないじゃんよ」

ベクトル仮面「一人じゃねェさ」

黄泉川「!」

ベクトル仮面「それに、課外活動はご免だ」

黄泉川「……そうか」

ベクトル仮面「またな」タンッ

黄泉川「――っと。 行っちゃったか」

黄泉川「……」フゥ

鉄装「黄泉川先生、救急車が到着しました!」

黄泉川「ん、分かった。 おまえと私の二人で付き添うぞ」

鉄装「分かりました!」



793 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga] - 2011/06/29 01:19:00.17 vqhFHl+g0 12/12


以上です

ちなみに、オフェンスガールとボンバーガールについて

・基本的に仲がよくない
・同列扱いされるのは不満
・どちらがベクトル仮面の役に立つか、信頼されているかで争っている
・腹の底では、お互いに実力を認め合っている
・いざという時のコンビネーションは抜群
・どちらも自分の方が、バストが育つと信じている

後ボンバーガールの義手はスーツのアタッチメントで、サイボーグ化はされていない

ここまでは考えた
話全体の整合性は考えつかなくなってきたけどね